記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成28年6月28日(火曜日)11時17分 於:本省会見室)
冒頭発言
英国のEU離脱
【岸田外務大臣】英国のEU離脱問題につきまして一言申し上げます。
今般の投票結果に関し,我が国としては,我が国及び国際社会への影響につき注視し,我が国の国益の観点から適切に対応して参ります
日英両国は,基本的な価値を共有し,政治,経済,安全保障など,様々な分野で強固な協力関係にあり,引き続き日英関係の維持・強化に努めて参ります。
その観点から,杉山外務次官をロンドン及びブリュッセルに派遣し,英国のEU離脱に伴う日本企業の活動への影響を含め,意見交換を行わせることといたしました。そして,それに先だって杉山次官は27日,米国においてブリンケン副長官ともお会いし,英国のEU離脱を踏まえ日米で協力をしていく,こうしたことを確認しております。
加えて昨日は,ヒッチンズ駐日英国大使の表敬を受け,ハモンド大臣のメッセージを受け取りました。その際にも申し上げたとおり,英国に対しては,英国に進出する日系企業がこれまでどおり活動できるよう対応を求めていく考えです。
また,事前及び事後における企業との情報共有が重要であるという考えの下,まずは今月13日,すなわち国民投票が行われる前ですが,ロンドンの日本大使館において現地で活動する主要日系企業の出席を得て情報交換会を開催いたしました。そしてその上で本日28日,再度,同様の情報交換会を現地で開催する予定にしております。
さらに,明日29日,モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表との間で英国のEU離脱問題について電話会談を行う方向で調整中です。また,英国ハモンド外相ともできるだけ早く電話会談を行いたいと考えております。28日及び29日と欧州理事会が行われる予定ですので,最新の状況について電話会談の際に意見交換を行いたいと考えています。
外務省としては今後も情報収集に努め,価値を共有する英国との関係強化に引き続き努めて参ります。また,様々なチャンネルを通じて経済界の意見を聞きつつ,経済の予測可能性を高める取組を行って参ります。
英国のEU離脱問題関連
【ジャパンタイムズ 三重記者】今大臣がですね,英国に対しては日系企業が活動できるよう対応を求めていく考えというふうにおっしゃっていたんですが,具体的にはどのような対応というのがありますでしょうか。
【岸田外務大臣】具体的な対応については今後英国,そしてEUとの間でどのような交渉が行われ,どのような動きがあるかによって対応は変わって参ります。まずは今後,英国とEUとの交渉のありようなど,様々な状況をしっかり把握した上で具体的な対応を考えていかなければなりません。いずれにせよ状況は刻々と変化しておりますので,その中でまず基本的な考えとして英国に対して日本企業が安定して活動できる,こうした対応を求めた,こういった次第であります。
【フリーランス 上出氏】今の英国のEU離脱に関連してお伺いします。野党などからはですね,今回のこの状況,こういう世界経済危機という状況,これはある意味で株高と円安,これを日本経済の起爆剤にしてきたアベノミクスの戦略そのものを見直さなければならないんではないかというような声も出ております。一方で政府与党は,参議院選挙などでは,こういう時こそ政権の安定が必要なんだということを強調されております。現実におっしゃりにくいかもしれませんが,参議院選挙の中でこの問題,何らかの政府与党にとっての悪影響という感じで出ているのか,あるいは逆に政府与党にがんばってほしいという期待が高まっているのか,この辺の受け止めについてできる範囲でご教授いただければと思います。
【岸田外務大臣】たちまち,様々な動きが出ています。例えば金融市場等においては短期的な動きも具体的に見えるわけですが,こうした動きに対しましてはよく状況を注視しながら,安定に万全を期していかなければならないと思いますし,実体経済につきましても,中長期的な影響も現れている可能性はあるわけですから,引き続き注視をし,そして状況を把握した上であらゆる政策を動員して,適切に対応していくことが重要であると考えます。
その際に,政治の安定というものは極めて重要であるということは様々な場でしっかり強調していかなければならないのではないか,こうした政治の安定は重要であるということはしっかりと説明していくべきだと考えます。
【フリーランス 上出氏】関連ですが,現実に,ちょっとおっしゃりにくいかもしれませんが,参議院選挙は今戦われております。ここでの中での影響,良い,悪い含めまして,何かそういうものをお感じになりますでしょうか。それはあまりお感じにならないのでしょうか。いかがでしょうか。
【岸田外務大臣】参議院選挙の影響等については,まだ参議院選挙が今続いておりますので,予断をもって申し上げるのはなかなか難しいと思いますが,いずれにせよ今申し上げたように,こうした不透明な状況,国際的な混乱がある中でありますので,その中にあって我が国自身がしっかりとした経済政策対応を進めていく,政治の安定が重要である,こういったことについては,しっかり理解をいただくよう努力をしていくべきであると考えます。
【朝日新聞 安倍記者】今のイギリスの国民投票についてお伺いしたいのですけども,国民投票の結果を受けて,EUの主要国の間からはイギリスはできる限り早期に離脱手続を進めるべきだというような主張が出ていますけれども,国民投票の結果ははっきりしているわけで,早期に離脱すべきがどうか,その手続を早期に進めるべきがどうかという点については,大臣どのようにお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】まずもって,英国及びEUの関係者の中でこれから,しっかり議論が行われ,さらにはお互いに意思疎通が行われた中で決まっていくはなしであると思います。6月28日,29日においては,欧州理事会も開催されると聞いております。そうした状況をしっかり注視しながら,我が国として必要な対応,適切な対応を考えていくべき課題であると考えます。英国及びEUの手続きの問題について何か申し上げることは控えたいと存じます。
【共同通信 下江記者】29日のモゲリーニとの電話会談なんですけれども,大臣,先ほど英国に対しては,日系企業がこれまでどおり活動できるように求めていくと,EUに対してモゲリーニとの電話会談で,日本政府として求めるものは何かということと,念のためなんですが,29日に欧州理事会が終わるんですが,それが終わってからモゲリーニ及びハモンドと会談して,対応を協議していくということで良いでしょうか。
【岸田外務大臣】今,電話会談の時間は調整中ですので,完全に28日,29日の欧州理事会の日程が終わった時点になるかどうかはまだ確定はしておりませんが,いずれにせよ欧州理事会はスタートした後の時間になるのではないかと想像をしています。まずモゲリーニ上級代表との電話会談においては,そうした欧州理事会での議論のありようですとか,現状をしっかりと把握をし,意見交換するのが主な目的であります。その状況に応じて我が国の要望も変わっていくと思いますので,まずは今回の電話会談においては状況把握,そして意見交換,これが主目的であります。
【毎日新聞 田所記者】感想についてのお尋ねなんですけれど,イギリスでは今回の結果についての後悔が国民の間で広がっていると言われているんですけれども,その状況についての所感があればお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】これは英国における国民投票というものは,英国の国民の皆さんのご判断ですので,これは尊重されるべきだと思いますが,それ以上のことについて我が国の立場から何かコメントする,そういった立場にはないと考えています。
【時事通信 石垣記者】24日の開票結果が出てきた日に,岸田大臣が東京にいらっしゃらなかったという,総理,官房長官もその時いなかったんですけれども,それについて野党から危機感が足りないんじゃないかという,そういう指摘が挙がっていますけれども,事実関係はどうだったのかというのと,それに対する反論がありましたらお願いします。
【岸田外務大臣】ご指摘のように私(大臣)は地方におリましたが,元々,英国での国民投票の結果が判明することを想定して,外務省としても万全の態勢を整えておりました。連絡手段につきましても,秘書官を通じて万全を期しており,状況については充分把握をしておりました。だからこそすぐに杉山次官の英国,あるいはEUへの派遣も決定し,指示をしたところであります。こうした対応自体については何か問題があったとは考えておりません。
慰安婦問題に関する日韓合意関連
【読売新聞 森藤記者】今日で日韓合意から半年を迎えましたけれども,韓国政府の財団が来月にも設立される見通しとなっています。日本政府として10億円の資金の拠出の時期も含めて,今後履行に向けてどのように進めていくのかを,改めてお願いします。
【岸田外務大臣】まず日韓合意につきましては,両国政府が責任を持ってその合意の中身を実施していくこと,これが大変重要であると考えます。引き続き韓国政府ともしっかり連携をしていきたいと考えておりますが,財団発足につきましては,財団の設立の時期について,現時点ではまだ何も決まっていないと承知をしております。様々なレベルを通じて,引き続き韓国側と緊密に連携をしていきたい,このように考えております。
中国海軍艦艇の接続水域内の航行
【テレビ東京 鵜飼記者】今月,中国の軍艦が日本の接続水域・領海に侵入するケースが相次いでいる問題で,その領海への侵入もありましたけれど,これが無害通航に当たるかどうか外務省で検討を随分していると思うんですけれど,これの結果というのはもう出ましたでしょうか。
【岸田外務大臣】ご指摘の点につきましては,様々な事案が連続して発生をいたしました。その一つ一つについてもそれぞれ対応を行い,そして必要であれば確認すべきことを確認している,こういった対応を取っております。さらに,そうした一連の動き,全体をどのように評価するかなどもしっかりと分析をしていかなければなりません。引き続きしっかりとそうした分析等を進めていきたいと思いますが,いずれにせよ,その内容につきまして,こうした公の場においてどう分析するかとか,我が国政府としてどう考えているか等,明らかにできることは限られているということもあるということは,ご理解いただきたいと思います。
【テレビ東京 鵜飼記者】少し私思うのが,イギリスの在日大使との会談で,法の支配という価値観を共有するとありましたけれど,法の価値観を重視するのであれば,自国への領海の軍艦の侵入が,その法の解釈として無害通航かどうかというのは公に毅然として表すべきだと私は思うんですが,この点,大臣いかがでしょうか。
【岸田外務大臣】ご指摘の点も含めて,我が国としての判断,今しっかりと確認をしております。そして適切な形で明らかにすべきものは,明らかにしていきたいと考えます。
【テレビ東京 鵜飼記者】どういうものが明らかにすべきではないと考えますか。
【岸田外務大臣】これは内容,大変複雑な内容がたくさん含まれております。その内容をしっかり確認し,全体をしっかり判断した上で明らかにするべき,どう発言するべきなのかを判断していくべき課題であると考えます。
共産党藤野政策委員長の発言
【産経新聞 田北記者】共産党の藤野政策委員長が26日のNHKの番組で防衛費を「人を殺すための予算」というふうに発言しました。その後に撤回したとはいえですね,ちょっとこの発言に関してはいろいろと波紋が広がっているんですけれども,大臣の受け止めはいかがでしょうか。
【岸田外務大臣】まず私(大臣)自身は,防衛費というものは国民の命,そして暮らしを守るためにこれは大変重要な予算であると認識をしております。そしてご指摘の発言については,ご本人も撤回されておりますので直接コメントすることは控えますが,防衛費の重要性,そして意義につきましては政府としてしっかり説明をし,国民の理解を得ていくことは大変重要であると考えます。
英国のEU離脱問題関連
【ロイター通信 竹中記者】イギリスのことに戻って恐縮なんですが,今回は終わった後で後悔の思いも多少広がっているというような,あちらの国民の間で,そういうようなことも伝わってきますが,日本で今後,憲法改正になった場合,最終段階として国民投票というのがありますが,仮にそういうことになった場合に,そういったような後々後悔の念が広がるというような,そういうようなことが起こらないためにはですね,そこに持っていく前の環境整備としてどうしたらいいのか,何をしなければいけないのか,今回のことで学ぶようなことというのは何かありますでしょうか。
【岸田外務大臣】日本と英国では法律が違いますので,国民投票の扱いも異なります。要は,今,国民投票ということについてはご指摘の憲法改正といったようなものが,日本の国内においては考えられるわけです。その際に,国民投票というものの意味をしっかりと理解した上で,そして何よりも政治家の説明責任,そして国民に対する丁寧な説明,こうしたものが重要であると考えます。国民投票自体は一つの重要な意思表示の手段であるとは思いますが,様々なこうした手段というものが,より国民の幸せにつながる,国民の理解につながる,こういったことになるよう,適切な運用が重要であるということは感じます。
在沖縄米軍人等の事件・事故関連
【朝日新聞 安倍記者】日米間で協議してます沖縄の事件の再発防止策ですけど,進捗状況どうでしょうか。日米地位協定をめぐる議論になるかと思うんですけど,大臣としてはどのようなイメージの改善策をお持ちでしょうか。
【岸田外務大臣】日米の間においては,先の防衛相会談において確認した3点につきまして,協議を続けております。すなわち軍属を含む日米地位協定の地位を有する米国人の扱いの見直し等について協議を行っております。まだ協議が行われていますので,具体的な中身について,この時点で私から触れるのは控えさせていただきたいと思いますが,いずれにせよ,再発防止につながるしっかりとした対応が全体として作り上げられなければならないと考えます。すでに沖縄におきましては,沖縄の地域におけるパトロールの開始など,様々な取組もスタートしているところでありますし,米国側におきましても是非,しっかりとした対応を期待いたします。そういったもの全体として是非,沖縄県民の皆様方にも納得していただける対応を作り上げていかなければならない,このように考えます。
【テレビ東京 鵜飼記者】週末にもまた米軍属が,沖縄で酒気帯びで逮捕されるという事案がありまして,参院選の投票にですね,日本政府,こういったことも含めて,どのような態度で臨むのか,どういった防止策を日米間で作るのかというのが,県民にとって投票にもつながる,そういったことも加味して投票したいという声も上がっています。参院選の投開票の前までに,うるま市の事件も含めて再発防止策をまとめるというお気持ちはありますでしょうか。
【岸田外務大臣】再発防止策につきましては,ただ今お答えさせていただいたような考え方に基づいて,しっかりと努力をしていかなければならないと思います。そして,時期につきましては,今,協議が行われている最中ではありますが,これはできるだけ早く,スピード感を持って対応しなければならないと思います。これは参議院選挙があろうがなかろうが,これは県民の皆さんの思いをしっかり受け止めて,スピード感を持って対応すべき事柄であると考えます。