記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成28年6月14日(火曜日)9時25分 於:本省会見室)
外務省幹部人事
【日経新聞 地曳記者】先ほど閣議決定された人事なんですけれども,今回の人事で,一部年次が逆転するところも生じました。霞が関ではこの年次バランス,年次が逆転するというのはまだ珍しいことなんですけども,この点,大臣,どのような思いを込められているんでしょうか。
【岸田外務大臣】おっしゃるように,年次を気にされる方もおられますが,やはり人事というのはあくまでもそれぞれの能力,そしてこれまでの経験,こういったことに鑑みながら,その能力を十分に発揮するためにはどうしたらいいのか,こういった点が重要であると考えます。今回の人事もあくまでも適材適所という観点から,外務省として万全の体制を整えるべく,検討をした結果であると認識をしております。
核兵器保有国と非核兵器保有国との仲介の役割
【フリー 上出氏】核兵器禁止条約のその後の動きについて質問いたします。サミットの後,オバマ大統領が広島を訪問され,核廃絶を訴えられました。とりわけ岸田大臣にとっては感慨深いものがあったんじゃないかと思います。一方ですね,4月に検討会なんかが行われました核兵器禁止条約,これについてはですね唯一の被爆国でありながら,日本は保有国,非保有国の間に立って頑張ると言っておられるんですけども,核保有国と立場としてですね,唯一の被爆国,ただ一方,エジプト,メキシコなどからですね,被爆国としての役割,そういうビジョンなどを十分示していないんではないかと,そういう役割を果たしてないと強い非難も聞かれるんです。
こういったオバマさんが訪問されたことも含めましてですね,岸田大臣としては,この核兵器について何か新たなお考えがある,あるいはそういう取組の決意みたいのがあったらお聞かせいただきたいと思うんですが,よろしくお願いします。
【岸田外務大臣】核軍縮・不拡散に関しましては,世界各国,様々な国があり,それぞれの立場は様々であると考えます。しかしその中にあって,従来から申し上げてきたように,核兵器の非人道性に対する正確な認識と,そして厳しい安全保障に関する冷静な認識,この二つが重要であり,こうした認識をしっかり持つことが,核兵器国と非核兵器国の協力にもつながっていくと認識をしています。
今,国際社会において,核軍縮・不拡散の機運がしぼんでいるのではないか,あるいは北朝鮮の核実験に見られるような,軍縮・不拡散体制に対する重大な挑戦が行われているのではないか,こういった時に,先般のオバマ大統領の広島訪問は,それに先立って外相会談で発出されました「広島宣言」と相まって,こうしたしぼんでいると言われている国際的な機運を,再び盛り上げる重要な機会になるということを期待しています。
我が国としましては,この核兵器国と非核兵器国の協力なくして,具体的な結果,成果をあげることはできないという認識の下に,この「広島宣言」,まさに核兵器国の主要国と非核兵器国の主要国が共に一致をし,まとめたこの文書,これを基礎としながら,更にはNPDI,非核兵器国の枠組みでありますNPDIを重視しながら,引き続き国際社会に対して働きかけを行っていきたいと考えます。
こうした取組あるいは立場に基づいて,是非,オバマ大統領の広島訪問,そして「広島宣言」の発出が実現した今,国際社会に対して核兵器国,非核兵器国の協力をしっかり呼びかけていきたい,このように考えます。
【フリー 上出氏】簡単な関連質問ですが,現実に4月の再検討会議の段階でですね,107か国が賛成の文書に署名しているんです。それ以降,そういう,今,岸田大臣がおっしゃったような成果が出て,実際にいるのか,そしてそういう日本の立場について,理解されているのかどうか,この辺の認識はいかがでございましょうか。
【岸田外務大臣】大切なことは,核兵器国と非核兵器国が協力する環境を作るということであると思います。こうした一方的な動きに組することによって,協力が実現できないということになったならば,結果として核軍縮・不拡散への前進が滞ってしまうということになりかねません。様々な場面,様々な課題において,核兵器国と非核兵器国が協力をして具体的な結果を得る,そのためにはどうあるべきなのか,こういった考え方が重要であると考えます。そういった考え方に基づいて,日本は現実的,実践的に態度を示し,取り組んでいかなければならない,このように考えます。
舛添都知事関連
【NHK 栗原記者】今,話題になっている東京都の舛添知事についてお伺いしますけれども,舛添知事は都市外交というものを積極的に行っていくという立場でですね,これまで世界各国をそうした観点で訪問してきました。ある意味これは,政府の専管事項である外交というものをですね,政府と都市の二元的にやっていくということにも,進めていくという形にもなると思うんですけども,そうした都市外交のあり方についてはどうお考えでしょうか。あと今回の舛添知事ご自身のですね,公私混同の,こうした疑惑を受けた一連の対応ですとか,その釈明についてはどうお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,都市外交についてどう考えるかということですが,外交につきましては,最終的には国,政府がしっかり責任を負わなければならないと考えます。ただ,ご指摘の都市外交を始めですね,文化外交もあればですね,スポーツ外交もあれば,科学技術外交もあります。様々なテーマに,具体的なテーマに関しましては,政府のみならず,地方自治体あるいは民間などオールジャパンで取り組んでいく,こういった姿勢は重要なのではないかと思います。オールジャパンで外交に取り組んでいく,こうした中で最終的には政府が責任を持つ,これが外交のあるべき姿ではないか,このように考えます。
そして舛添知事の都議会における様々な指摘につきましては,政府の立場から何か申し上げるべできではないと思いますが,政治家一般として申し上げるならば,様々な疑惑,指摘に対しては,しっかりと本人が説明責任を果たすべきであると考えます。今後の舛添知事の対応を注目していきたいと考えます。
沖縄における女性遺体遺棄事件
【朝日新聞 安倍記者】沖縄で米軍属が逮捕された事件ですけれども,日米間で再発防止策,交渉があっているかと思いますが,その進捗状況はどうでしょうか。とりまとめの目処についてもお伺いできたらと思います。
【岸田外務大臣】これは先般の日米の防衛相会談におきまして,3つの点において一致をしています。1つは軍属を含む日米地位協定上の地位を有する米国人の扱いの見直し,更にはモニタリング,そして教育・訓練,この3点について日米で協議をしていくということで一致をしています。そうした両国の一致を受けて,今,事務レベルでの協議が現在も行われています。協議中であります。できるだけ早期に協議をまとめるべく,努力をしていかなければならないとは思いますが,今現在,協議中であり,相手のある話でありますので,この詳細については控えなければならないと思います。いずれにしましても,両国の防衛相間で一致した3点について速やかに協議を行い,結論を出すべく努力をしていきたい,このように考えます。
南シナ海情勢(中ASEAN特別外相会合の開催)
【日経新聞 地曳記者】今日,中国の雲南省で中国とASEANの特別外相会合が開かれます。南シナ海問題をめぐる仲裁裁判の判断を控えて,中国がASEANの分断を図っているという見方もあるんですけれども,日本政府としてこの会合,どのようにご覧になっていますでしょうか。
【岸田外務大臣】ご指摘の会議,中ASEANの特別外相会合ですが,開催されること,承知をしております。ただこれは,第三国間のやり取りですので,日本政府としてコメントすることは控えます。ただ,南シナ海をめぐる問題については,国際社会の平和と安定に直結する問題であり,我が国を含む国際社会の関心事項であると認識をしています。我が国は従来からも,海における法の支配の重要性を強調してきました。法の支配に基づく平和的な解決,この重要性をこれからもしっかり強調していきたい,このように考えます。