記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成28年6月10日(金曜日)8時46分 於:本省会見室)

中国海軍艦艇の接続水域入域事案

【テレビ東京 鵜飼記者】昨日の,中国軍とロシア軍の尖閣諸島への接続水域侵入の件なんですけれど,昨日政府はNSCも開きましたけれども,現状,両国の狙いについてどのように分析されているのか,昨日からは分析は始めていると思うのですけれど,現状,教えていただけることがあれば教えてください。

【岸田外務大臣】昨日,ご指摘のようにNSCを開き,この事案につきましては様々な情報を共有し,検討を行っております。ただ,こうした中国等の意図につきまして,公の場で何か申し上げる立場にはないと考えています。引き続き情報収集・分析には当たりたいと思いますし,いずれにせよ今回の事案につきましては,緊張を一方的に高める行為であるということで深刻に懸念をしております。引き続き続き注視していきたいと考えます。

【テレビ東京 鵜飼記者】昨日,この件で齋木次官は程永華(てい・えいか)大使に直接抗議しましたけれども,今後,岸田大臣が中国側に対して,何か直接この件について話すご予定というのはあるんでしょうか。

【岸田外務大臣】今具体的に,直接私(大臣)自身が何かするという予定はありません。引き続き情勢をしっかりと確認した上で,その状況に応じて適切に対応していきたいと考えます。

【テレビ朝日 千々岩記者】関連ですけれども,これまで尖閣諸島周辺では海上保安庁と中国の海警が対応するという,警察権の行使だったわけですけれども,艦船が出てきたということで,大臣は危機のレベルが上がったと見ていらっしゃいますか,それとも一時的なものと見ていらっしゃいますか。

【岸田外務大臣】先ほど申したように,中国側の意図について申し上げる立場にはないと思います。ただ,中国に関しましては,尖閣諸島に関して従来から独自の主張を行い,そして公船による領海侵入を行ってきました。その上でこの度,初めて海軍艦艇を接続水域に入域させたこと,このことは緊張を一方的に高める行為であると考えます。そうしたことから深刻に懸念をしている次第です。今後については,引き続き注視をしていきたいと考えます。

【朝日新聞 安倍記者】日中関係についてですけれども,大臣は4月末の講演でも,日中関係は改善の基調にあるというように話してこられました。その後,5月の訪中などもありましたけれども,こういった昨日のような事案が起きて,大臣は現在の日中関係は,やはり改善の基調にあるというふうにお考えでしょうか。現在の認識,お伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】今回の事案については,まず,尖閣諸島は我が国にとって歴史的にも,国際法上も固有の領土であり,政府として我が国の領土,領海,領空を守るため,断固として守り抜く考えの下に,毅然かつ冷静に対応していかなければならないと考えます。同時に,中国に対しては,米国を始めとする国際社会と連携しながら,このような緊張を一方的に高めるような行為,これを控えるよう,行わないよう,しっかり求めていかなければなりません。日中関係全体については,改善の方向にあると認識をしていますが,こうした個別の問題に関しましては,しっかりと対応していかなければならないと考えます。

【日経新聞 地曳記者】中国が尖閣諸島の領有権を主張している中で,これまでに海上自衛隊の自衛艦がですね,久場島と大正島との間の接続水域を通り抜けるような航路をとったことは,今まであるんでしょうか。

【岸田外務大臣】ご指摘のこのルートで自衛隊が航行したことがあるかどうか,私は詳細,今手元に持っておりませんので,ちょっとそれは確認した上でお答えさせていただきたいと思います。

【日経新聞 地曳記者】過去にですね,ロシアが尖閣周辺の接続水域を航行したということは承知しているんですけれども,その時に自衛艦が追尾したということは過去にあるんでしょうか。

【岸田外務大臣】まずですね,国際法上は一般論として,外国の軍艦が沿岸国の接続水域を通行すること,これ自体は禁止はされてはおりません。その上で,ロシアの艦船を自衛隊が追尾したことがあるかどうかということでありますが,国際法上の解釈は今申し上げたとおりですが,具体的に過去,どのような対応が行われたのか,これは今,手元で全てを把握しておりませんので,確認をいたします。

【香港フェニックステレビ 李記者】昨日のこの軍艦の件に関しては,中国国防部がですね,中国の軍艦が自国の管轄する海域を航行するのは合法的であり,他国が言うことではないといった反応がありました。これに関しては,大臣はどのように見ていますでしょうか。

【岸田外務大臣】まず尖閣諸島は,国際法上も歴史的にも,我が国固有の領土であります。中国側の独自の主張は,全く受け入れられません。中国が尖閣諸島に関して,独自の主張を行い,そしてこれまで公船による領海侵入等を行ってきた中で,今般,海軍艦艇を我が国尖閣諸島の接続水域に初めて入域させたこと,これは緊張を一方的に高める行為であると考え,我が国として深刻に懸念をしています。我が国としましては,我が国の領海,領空,領土を断固として守り抜く,こうした考えに下に,毅然かつ冷静に対処してまいります。併せて米国を始め,国際社会と連携して,このような緊張を一方的に高める行為,これを行わないよう中国側に求めていきたいと考えます。

【香港フェニックステレビ 李記者】日本側が抗議をした後に,中国の外交部から公式な返事はあったんでしょうか。もしあれば教えていただきたいと思います。

【岸田外務大臣】昨日の未明,午前2時に齋木次官から程永華大使に対して重大な懸念を伝え,そして抗議を行いました。その際に,大使の方から,中国の立場に基づいた反論があったと報告を受けております。

【NHK 栗原記者】今回はですね,これまで中国は漁船ですとか公船を尖閣諸島に接近させたりしたことはあるんですけど,今回は軍の艦船だということで,不測の衝突を回避するためにも,海上連絡メカニズムの早期の運用開始に向けた協議ということを急ぐというお考えはありますでしょうか。また,どのようにそういった枠組を再開させるために働きかけていくお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】まず今回の行為については,緊張を一方的に高める行為であり,我が国としまして深刻に懸念をしています。その中で,ご指摘の防衛当局間の海空連絡メカニズムですが,これは昨年の11月に行われました日中首脳会談において,安倍総理と李克強(り・こっきょう)総理との間で,早期の運用開始に向けて日中双方が努力をしていく,こういった点で一致をしております。このメカニズムについては,両国首脳で一致した内容に基づいて,早期運用開始に向けて努力をしなければならないと考えます。

【NHK 栗原記者】大臣の方から具体的に働きかけていくお考えはありますでしょうか。

【岸田外務大臣】ご指摘の点については首脳間で合意したことであります。これは事務レベルにおいても,早期運用開始に向けて努力していくべきものであると考えております。

日露関係(平和条約交渉)

【毎日新聞 前田記者】今月末に日露の平和条約交渉が予定されていると思いますが,昨日,ロシアの軍艦も通ったということもあり,あと北方領土,千島列島の方の軍事化も進められている中で,どのような成果を期待するか,お聞かせいただければと思います。

【岸田外務大臣】日露の平和条約交渉ですが,これは先月行われました,日露首脳会談におきまして,今までの発想にとらわれない新しいアプローチで交渉を進めていく。こういった点で両首脳間で一致をしております。この方針に従って,交渉・協議を進めていきたいと考えますが,今のところ,6月後半に平和条約交渉を行う方向で調整中であると承知をしています。是非,今申し上げた方針にのっとって,有意義な議論が行われることを期待したいと考えます。

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