記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成28年5月27日(金曜日)19時15分 於:広島市)

冒頭発言

【岸田外務大臣】原爆投下から71年,広島・長崎の多くの被爆者,市民,そして多くの日本国民が心から強く待ち望んでいた米国大統領の被爆地・広島訪問が実現をいたしました。1人の広島市民として,また広島・被爆地出身の大臣として,この歴史的訪問が実現したことを多くの国民とともに率直に喜びたいと思います。今回,オバマ大統領は大変厳しい時間的制約の中,献花,ステートメントに加え,被爆者と直接言葉を交わし,また,資料館を訪問し,原爆の像のモデルとなった佐々木禎子さんについて話を聞き,さらに大統領自らが思いをこめて折った折り鶴を子供たちに手渡していただきました。被爆の実相をご自身の目と心でしっかりと感じられたと思います。非常に歴史的な意義があったと考えています。核軍縮に向けた国際的な機運がしぼんでいると言われている中にあって,先般のG7外相広島宣言に加え,今回の訪問によって唯一の核兵器使用国と戦争被爆国の首脳がともに「核兵器のない世界」に向けた力強いメッセージを世界に向けて発信したことは,しぼんだ機運を再び盛り返す,まさに反転攻勢に転ずるきっかけになったものと考えています。私自身も「核兵器のない世界」に向けて思いを新たに努力していきたいと考えています。

質疑応答

【記者】先ほど市民として現職大臣として喜ばしいとおっしゃいました。今回の大統領の広島訪問とスピーチを聞いて率直なご所見を教えてください。

【岸田外務大臣】まず,オバマ大統領の広島訪問については,先ほど申し上げたように,日本と米国の両首脳が犠牲となった多くの人々に哀悼の意を捧げ,そして「核兵器のない世界」に向けて力強いメッセージを発する,こういった大きな意義を有していたと思いますし,歴史的な訪問であったと受け止めています。先ほど申しましたように,大統領は資料館において,自らこういった折り鶴を子供たちに手渡す,さらには,大変思いのこもった力強いメッセージを発してもいただきました。そして,被爆者代表の坪井さんとも言葉を交わし,思いを直接受け止めてもらいました。こういった点において,限られた時間ではありましたが,オバマ大統領の思い,そして未来に向けたメッセージ,これを効果的に伝えるものであったと受け止めています。また,日本とアメリカ,過去敵国同士であった2つの国が希望の同盟として力強い関係を象徴する,こうした訪問でもあったと受け止めています。スピーチそのものにつきましても,想定していた時間をはるかに超えて大変思いのこもった,そして熟慮された上でのスピーチであったと思います。そして,明日に向けて「核兵器のない世界」に向けて,明確なメッセージでもあったと受け止めています。意義のあるメッセージであったと考えます。

【記者】外務大臣として,指導者の広島訪問というのを前から働きかけてきたわけですが,それが実現したということで,目標達成というか,その辺はどういうお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】今回の現職の米国大統領が被爆地を訪問されたということ,これは大変意義のある歴史的な出来事であったと受け止めています。しかし,これは目標,ゴールではありません。こうした政治の指導者に被爆地を訪問してもらい,被爆の実相にふれる,このことによって国際的な「核兵器のない世界」を作ろうという機運をしっかり盛り上げていく,これが大切だと思います。そしてその上で,実際にこの「核兵器のない世界」という壮大な目標に向けて皆で努力をしていく,こうした具体的な結果につなげることが大切だと思います。今回の訪問は歴史的な訪問だと思いますが,今申し上げたような未来に向けて,そして具体的な「核兵器のない世界」に向けての結果・成果に向けてつながるような訪問であってもらいたいと強く思っています。

【記者】大臣自身が原爆ドームの説明などをされていたのをテレビで見たんですけれども,どういった説明をされて,それについてどういうやりとりがあって,どのような表情をされていたのかについて・・・。

【岸田外務大臣】原爆ドームについて説明した,要するに献花が終わった後の説明ですが,あれはまず原爆ドームについて,これがかつて産業奨励館として建てられた,1915年に建てられた,かつては3階建ての建物であり,ヨーロッパ風の建物ということで,広島においても大変有名な建物であった,そして1945年8月6日,上空,ヤードで説明しましたが,175ヤード,南東において核兵器が炸裂をした,しかし,骨格は奇跡的に残ったということ,そして1996年において世界遺産に登録されたということ,こういったことを説明し,あわせて,ちょうど立った位置,原爆ドームに向かって立ったすぐ左手に佐々木禎子さんの原爆の像がありました。あれについてもあわせて説明をさせていただきました。佐々木禎子さんについては,資料館において,私の方から説明をさせていただき,そして折り鶴をいただいたのですが,その佐々木禎子さんの像であるということ,そしてかつて全国の子供のたちの寄付によってこの像が作られた,子供たちの思いがこもった像であるというようなこと,こういったことについてオバマ大統領に説明をしました。そしてオバマ大統領からは,大変神妙な面持ちで話を聞いていただきました。そして,この一帯は平和にとって大変重要な場所なんだという発言があったと記憶しております。

【記者】オバマ大統領はプラハ演説で核なき世界を目指すとおっしゃって,その後今回,任期最後の方になって広島を訪れました。ここで発せられたメッセージを今後日本としてもどのように引き継いで核なき世界の実現のために努力されていくお考えかということと,坪井さんなど被爆者の方とのやりとりが印象的だったんですけれども,広島ご出身の議員の方としてご覧になっていてどういう思いがあったのでしょうか。

【岸田外務大臣】まず,従来から私は,「核兵器のない世界」を実現するためには,具体的な結果を出すためには,核兵器国と非核兵器国が協力をしなければ結果につながっていかないということを申し上げてきました。そのために現実的な実践的な取組みが重要であるということを訴えてきました。今回,まさに核兵器国,非核兵器国,この2つの国の首脳がともに被爆地を訪問し,そしてすべての犠牲者に慰霊の思いを捧げ,そして「核兵器のない世界」に向けて強いメッセージを発しました。このことは,やはり,先のG7での広島宣言の発出等とも合わさって国際社会に向けて大変重要なメッセージを発するということになると思います。ぜひ,こうしたこのメッセージに力を入れて,引き続き「核兵器のない世界」に向けて現実的な実践的な取組みを続けていかなければならないと思います。たちまちはこの間のG7外相会合のときに広島宣言という具体的な文書をまさにG7の枠組み,核兵器国と非核兵器のそれぞれの主要国の参加する枠組みの中でまとめた具体的な文書であります。こうしたものをしっかりアピールすることによって,この具体的な動きを進めるきっかけにできればと思っております。坪井さんとのお話は大変,坪井さんとのやりとり,大変熱心なやりとりを聞いておりまして,我々の未来に向けて元気を与えていただくようなやりとりではなかったかと,少し離れた位置で見ておりました。私の隣にケネディー大使がおられましたが,そういった受け止めをしていたと思います。そして坪井さんのやりとりですが,今メモが来ましたので要点だけ紹介いたしますが,まず,坪井さんの方から,大統領の広島訪問,これを心から歓迎するそして感謝するということ,そして,91歳になって,自分は今日の大統領の演説の中で人類の幸せとは何かを語られるのを耳にして心がずいぶん若返った,こういった発言があったと聞いています。そして,プラハで語られた核なき世界の実現に向け一緒に取り組みましょう,そういった発言があったということでありました。一応,今メモによると,そういったやりとりがあったということです。大変,坪井さんのお元気な姿を見て我々も勇気づけられる思いがいたします。ぜひ,こうした思いを我々も大事にしながら,未来に向けて具体的な結果に向けて努力をしていかなければならないと感じます。

【記者】多少目頭も熱くなっているように見えるのですけれども,今回,現職の大統領として初めての被爆地訪問ということで,広島出身の外務大臣として大きな成果をあげられたと思うのですが,今後,岸田大臣が政治家人生の中で,どういったところを目指していかれるのかという,大きなターニングポイントになったと思うのですけれども・・・。

【岸田外務大臣】確かに今回の訪問は歴史的な訪問だったと思います。それは思いますが,先ほど申し上げたように,この訪問がゴールではありません。これから「核兵器のない世界」に向けて私の立場から政治家の立場から,現実的な現実的・実践的な取組みを進めていかなければならないと思います。先ほど紹介させていただいた坪井さんの言葉の中にも,大統領に対してぜひ一緒に乗り切りましょうという,91歳の坪井さんから力強い言葉がありました。我々もぜひ一緒にがんばらなければならないと強く思います。ぜひ,これからがより大事だと思って努力を続けなければいけないと思います。今回の訪問は本当に歴史的でありうれしく思いますが,ぜひ,だからこそ未来に向けてがんばっていきたいと思います。

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