記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成28年2月26日(金曜日)9時18分 於:本省会見室)

冒頭発言

ジカウィルス感染症被害への我が国支援と今後の対応

【岸田外務大臣】昨晩,国内でも感染者が確認されたジカウイルス感染症の被害拡大を受け,今年,ブラジル・リオデジャネイロでオリンピック・パラリンピックが予定されていることも踏まえ,本日,世界保健機関(WHO)を含む四機関に対し,100万ドルの緊急無償資金協力の実施を決定いたしました。
 我が国としては,これら機関と協力しつつ,中南米において,感染状況に関する情報収集,妊産婦へのケア,感染予防啓発活動,水・衛生環境改善等の分野で,早急に支援を実施する予定です。こうした国際支援を通じ,流行地における感染の拡大を食い止め,終息させることが,我が国への更なる流入防止にもつながると考えます。
 外務省としては,これまでも中南米地域等を対象に在留邦人,海外渡航者に対し,注意喚起を行ってきましたが,今般の感染者発生を踏まえ,改めて,妊婦及び妊娠予定の方にこの地域への渡航を可能な限り控えていただくよう呼びかけたいと思います。また,よりきめ細かく情報提供・注意喚起を行っていく観点から,新たに以下の3つの措置をとることといたしました。
 まず第一に,3月中旬,在外邦人を対象とした,ジカウイルス感染症の専門家による健康安全講話をブラジルで行います。
 第二に,3月上旬のリオ・オリンピック・パラリンピック関係者に対する本邦における説明会においても,外務省から注意喚起を行います。
 第三に,国内の水際対策徹底のため,各県のパスポートセンターに,検疫所の作成したリーフレットを置くことといたします。 今後も,引き続き,関係省庁と連携しながら,しっかりと対処していく考えです。

普天間基地の移設問題

【テレビ東京 鵜飼記者】沖縄県の在日米軍の普天間基地の移設問題についてお伺いしたいんですけれども,先日,米軍のハリス太平洋軍司令官がアメリカ議会で普天間基地の代替基地としてキャンプシュワブの辺野古の基地のですね,完成時期を2025年だというふうに議会で話したわけなんですけれども,今,日本政府としては2022年の普天間基地返還を目指していると思うのですけれども,3点教えていただきたいんですけれども,今,2022年というものを目指すという方針にお変わりないのかというのと,先日,ハリス司令官と大臣がお会いになられた際に,この件についての何かやり取りがあったのかというのと,最後に,もし2025年でないと言うのであれば,外務省として米側,米の政府,若しくは米軍に対して訂正なり,何か求めるようなものなのでしょうか。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘の発言については,承知はしております。米軍再編につきましては,米側とも協議をしながら進めており,我が国側からは計画をしっかり進めていく,こうした固い決意は伝えているところです。ご指摘の発言について申し上げるならば,辺野古移設に係る工事については,昨年10月,埋め立て本体工事に着手したばかりです。この段階でですね,遅れについて具体的に申し上げる,そういった段階ではないと考えます。
 そして,先日,私(大臣)がハリス司令官にお会いしたときにこの話が出たかという質問につきましては,こういった内容については発言,やり取りはありません。そしていずれにせよ,我が国のご指摘の件に関する考え方は変わっておりませんので,引き続きアメリカ側とは,しっかり意思疎通を続けていきたいと考えます。

多国間核軍縮交渉の前進に関するオープン・エンド作業部会関連

【フリーランス 上出氏】ちょっと話題変わります。先般,ジュネーブで国連軍縮作業部会が開かれました。それに関した質問をします。佐野軍縮代表部大使ですね,核保有国は欠席する中で,出席されて発言されています。ただ,これについては時期尚早というような慎重な態度を表明しています。これで,橋渡し,核保有国と非核保有国の橋渡しをしていくんだということを会見後に報道陣に表明しております。それで2つお伺いしたいんですが,日本の立場からいくとやっぱり核軍縮は多くの方の願いだと思います。特に,岸田大臣は広島にゆかりが深いということで強い思いがあると思います。
 それで大変困難かとは思いますが,この核軍縮の交渉前進のポイントとなるものは何なのか,そして見通しはいかがか,そして特に大臣ご自身のそういう橋渡しとしての決意なり思いなりがあれば,お伺いしたい。これが1点。
 もう1つはこの背景なんですが,一応法的禁止に向けた即時交渉開始に慎重な姿勢を日本が示しているというのは,やはり日米同盟を日本外交の基軸にしていること,つまり米国への配慮が最大の理由かとは思うんですが,それでよろしいのかどうか,この2点についてお伺いいたします。

【岸田外務大臣】まずですね,ご指摘の多国間核軍縮交渉の前進に関するオープンエンド作業部会,この作業部会での議論ですが,我が国としては核兵器国,そして非核兵器国の協力の下に,現実的そして実践的な取り組みを着実に進めていく必要があるという考えに基づいて,作業部会に参加をしています。
 この作業部会の中身ですが,取り上げられるテーマは法的措置だけではなくして,核軍縮の透明性,あるいは核兵器の非人道性,こういったものもテーマになると承知をしています。そして法的措置の中にもですね,CTBTも入れば,FMCTも入るということで,様々な議論が行われると承知をしています。我が国としましては,是非,公平かつバランスのとれた建設的な議論が行われることを期待しておりますし,是非,貢献したいと思っています。
 そして後半の質問ですけれど,核兵器のない世界を実現するためには,核兵器国と非核兵器国が協力しなければ結果が出ないということ,これは昨年5年に1度開催されましたNPT運用検討会議において最終文書が発出できなかった,ああいった経験を経て,改めて強く感じているところです。この核兵器国と非核兵器国が協力をするためには,やはり現実的,実践的な取り組みを積み重ねることが重要であると思いますし,そうしたことは,一見遠回りのように見えますが,これが実は近道であると考えています。そういった観点から見ますと,核兵器の法的禁止ということについては,要は核兵器禁止条約の交渉開始については,現時点ではまだ協力関係は整っていないのではないか,このように思っています。是非,今申し上げたように具体的な結果につなげるために,核兵器国と非核兵器国の協力を促し,そして結果につなげるように,具体的な前進が図られるように,我が国としはしっかり貢献をしていきたい,このように考えます。

【フリーランス 上出氏】すいません,これは日米同盟との関係では,この辺の判断というのは影響何かあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】私(大臣)は,今申し上げたような点を重視して,この議論を考えています。核兵器国と非核兵器国の協力関係が整っているかどうか,こういった点をよく見ながら結果につなげるべく,どのように対応するべきなのか,どのような取り組みをするべきなのか,考えていきたいと考えます。

国連女性差別撤廃委員会

【フリーランス 安積氏】今月の中旬にジュネーブで行われました女子差別撤廃条約の委員会についてお伺いいたします。
 慰安婦問題に関してなのですが,これに関しての日本政府が提出した書類・文書というものは,当初作成したものよりもかなり簡略されたものが提出されたというふうに聞いております。その理由としましては,日韓合意の4項目なのですけれども,日韓両国が国連などの国際的な場においてお互いに批判し合わないというところがネックになっているのではないかというふうに言われていますが,これについて,本当なのかどうなのか,教えていただきたい。
 あとは,文書化されていない内容については杉山外務審議官の方から口頭で説明があるということで説明されたということなのですけれども,この内容については非常に重要だと思うのですが,例えば文書については,国連に対して提出された文書についてはすぐに国連のホームページでアップされると聞いておりますけれども,日本政府の言い分としての口頭の内容については口頭で言われただけで,例えば英文化して日本の外務省のホームページでアップするとか,いろいろな方法があるのですが,それについても何もされていない状況ということなのですけれども,日本の主張として,こういうふうなところで何で主張されないのかという理由についてお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】まず,提出した文書を作成する過程について,でき上がった文書に至るまで,どのような過程をたどったかということについて申し上げることは,普通はしないでしょうし,控えたいと思いますが,いずれにせよ,この文書提出に至るまで様々な動きがあったとしたならば,それを踏まえて文書をつくる,これは当然のことだと思っています。
 それから,委員会における口頭によるやり取りですが,これは委員会において質問が出たことに対して答えていくというやり取りであります。ですから,どのような質問が出るか,これは委員会に出てみませんと分かりませんから,これはその場に応じてお答えする,そういった性質のものであります。そういったやり取りについて,どのように記録するかということについては,これはそもそも女子差別撤廃委員会でのやり取りですので,委員会側でご判断されることなのではないか,このように思います。

国連安保理の決議案関連

【読売新聞 森藤記者】国連の安保理の決議の関係でお伺いしたいのですけれども,日本時間の本日未明に米国が安保理の決議案を提出したかと思います。北朝鮮への航空燃料の供給禁止など,かなり厳しい,過去にない措置も盛り込まれたかと思うのですけれども,この安保理決議案について,どのように評価されているかということと,1月6日の核実験から2か月近くかかったわけですけれども,これだけ時間がかかった理由について,どのようにお考えになっているかをお願いします。

【岸田外務大臣】ご指摘の決議案につきましては,本日26日の未明,安保理の非公式会合が開催されまして,今も最終的な協議が行われていると承知をしています。まだ協議が続いておりますので,採択のタイミングは予断できませんが,引き続き議論に貢献をしていきたいと思います。強い内容を含む決議の採択に貢献をしていきたいと考えています。
 そして,内容については,具体的な内容一つ一つについて申し述べることは控えますが,我が国の主張も相当程度盛り込まれているものになっていると受けとめています。
 そして,遅れたことについてどう思うかですが,決議については,明確な,そして強い内容の決議であるべきだということを申し上げてきました。明確なメッセージを北朝鮮側に伝えることが大事だということは申し上げてきました。そういった観点から,安保理におきまして関係国がぎりぎりまで調整を行い,議論を行ってきた結果であると思います。
 いずれにせよ,できるだけ早い時期に決議が採択されることを期待したいと思います。

【NHK 栗原記者】関連して,今の安保理の決議案に関してなのですが,まだ採択のタイミングが予断できないということですけれども,一方で大臣がおっしゃっているように,我が国の主張も相当程度盛り込まれているということで,まだ採択はされていないのですけれども,現時点での決議案についても相当,日本としては満足のいくものなのでしょうか。その受け止めについて,お伺いできますでしょうか。

【岸田外務大臣】今,まだ採択に向けて協議が行われておりますので,今,具体的な内容について何か申し上げるのは適切ではないと思います。まだ議論が続いている最中ですので,その一つ一つについて,具体的な内容について日本として何か申し上げるのは控えます。
 先ほど申し上げたのは,全体として我が国の主張も相当盛り込まれていると感じているという感想だけ申し上げさせていただきました。

【時事通信 石垣記者】関連しまして,安保理の決議が採択されるのは,それはそれとして,北朝鮮の非核化に向けて,今後,日本政府として,それをどういうふうに求めていくか。韓国なんかからは北朝鮮を除く5か国の協議を開催すべきだという声も出ていますけれども,日本として非核化への道筋というのはどういうふうに考えているのでしょうか。

【岸田外務大臣】今後の道筋については,我が国として先日,独自の措置を発表しました。韓国も独自の措置を発表しました。米国も独自の制裁に関する法案を成立させました。そして,今,安保理において,この強い内容の決議を採択するべく,ぎりぎりの調整が,議論が行われています。
 こうした決議の内容を受けて,北朝鮮がどう反応するのか,これはしっかり見ていかなければなりません。そして,その上で関係国と連携しながら,具体的な次の対応について協議をし,そして,対策を進めていかなければならない,このように考えます。
 いずれにせよ,この北朝鮮に非核化に向けて建設的な行動を促すためには,関係国との連携が重要であると考えます。まずは,今,発表された措置,そして,安保理決議,これに対する北朝鮮の対応・反応をしっかり見守りたいと考えます。

日豪印次官協議

【共同通信 河内記者】ちょっと話題が変わるのですけれども,今日,今,日本とオーストラリアとインドの次官級協議が開催されていると思います。この3か国の協力強化の必要性について,大臣はどう考えるか。
 あと,協力・連携することによって,どういった3か国の戦略的な意義がどういったところにあるかという点について,大臣のお考えをお聞かせください。

【岸田外務大臣】まず,インド洋と太平洋を見渡す日本とオーストラリアとインドの協力は,こうした地域の平和や安定に大変資するものであると考えます。こうした考えに基づいて,日豪印,この3か国の連携は一層深めていきたいと考えています。
 この点については,今月の15日ですか。日豪外相会談が行われましたが,この日豪の外相会談においても,日豪印の協力を推進していくということで一致したと記憶しています。
 今日,開催される日豪印次官級協議は第2回目になると思いますが,是非,有意義な意見交換が行われることを期待したいと思います。

普天間基地の移設問題

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 佐々木記者】普天間基地の移設問題について,火曜日に会見でお聞きしましたけれども,鳩山元総理が指摘している外務省のペーパーの件なのですが,こちらの会見で大臣は,2010年当時から米軍より,一定の距離以上離れると運用に支障を来すという説明を受け,それを踏まえて徳之島案の課題が浮き彫りになったというふうにおっしゃられていました。
 確認なのですけれども,この米軍の説明というのが口頭だったのか,それとも,文書だったのか,もしくは,その両方で行われるものなのか,この具体的な部分を確認させていただきたい。
 もう1点,この件について,鳩山元総理と調査をしている川内博史前衆院議員が外務省の北米局を通じて正式な外交ルートで確認したところ,そういったマニュアル,65海里ということが明記されたマニュアルは確認できないというふうな正式な回答があったということなのですけれども,これは外務省が確認したということですので,この点の詳細についても確認をさせていただければと思います。

【岸田外務大臣】まず,基準についてのご質問ですが,米軍としては,これは対外的にこうした基準は明らかにしていないというのが実態だと聞いております。ですから,ご指摘の点,文書なのか,口頭なのかという質問がありましたが,最初のご指摘,前回お答えしたのは米軍の考え方の部分なのでしょうから,文書なのか,口頭なのか,ちょっと私(大臣)はわかりませんが,いずれにせよ,具体的なこの基準について米軍が明らかにしていない,あるともないとも明らかにしていない,これが我々の受け止め方であります。そういったことで前回もお答えさせていただいたと思います。

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 佐々木記者】その件で,川内博史議員が外務省を通じてマニュアルの有無を確認したところ,そのマニュアルは確認できないというふうに回答があったということなのですけれども,この詳細をお伺いしたかったのですけれども…。

【岸田外務大臣】確認できないというのは,要は明らかにしていないから確認できないということなのではないかなと理解いたします。

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