記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成28年2月23日(火曜日)9時15分 於:本省会見室)

日中関係

【香港フェニックステレビ 李記者】大臣は1月に,春にでも中国を訪問し,両国の関係を改善したいと,発言がありました。一部の報道ではですね,中国が消極的な態度を示しているそうで,大臣は今のところ中国を訪問する予定はありますでしょうか。そして,もしこの訪中が実現できなければ,日中両国の関係にどういった影響を与えるとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】日中関係については,全体として改善傾向にあると受け止めていますが,一方で様々な課題が存在します。対話を続けていくことは重要であると考えます。今般も参議院の議員団が訪中しまして,4年ぶりですか,日中議員会議が行われたということも聞いております。私(大臣)の訪中についてのご質問ですが,1月19日ですか,私(大臣)は講演をさせていただきまして,春にも訪中を考えているということを申し上げたと記憶をしております。今,まだ春は始まっておりません。私(大臣)の訪中については,今現在,何も決まっておりません。ただ,引き続き様々なレベルで対話をしていくことは重要であると考えています。以上です。

【香港フェニックステレビ 李記者】関連ですけれども,じゃあ報道の中で中国が難色を示したということは,事実ではないということでしょうか。

【岸田外務大臣】中国とは様々なレベルで様々なやり取りをしています。その一つ一つについて申し上げるのは控えます。ただ,対話の重要性については今申し上げたとおりですし,少なくとも我が国の対話のドアは,いつもオープンです。

【朝日新聞 安倍記者】関連してお伺いします。大臣はいつも対話の重要性というのを訴えておられますけれども,王毅(おう・き)外相とは電話会談もできない状態が続いていて,今の訪中の見通しというのも,見通しはまだ立っていないということですけれども,このように対話のドアは日本側はオープンだと言いながらも,それが実現していない,こういう状況が続いているわけですが,この原因が何であるかと分析されているのでしょうか。

【岸田外務大臣】対話のドアはオープンだと申し上げています。そして,様々なレベルにおいては対話は行われています。先ほど紹介させていただきました4年ぶりの日中議員会議ですか,こうした議員交流も行われています。それ以外にも様々な分野,あるいは様々なレベルでの対話は行われていると認識をしています。引き続き,こうした様々なレベルでの対話は重要であると考えますし,我が国としては重視していきたいと考えています。

日韓関係

【テレビ東京 鵜飼記者】先週末なんですけれども,ソウルの城東区で行われる予定だった外務省主催の復興関連のですね,イベントが韓国側の自治体の要請で中止になったと,外務省としては韓国政府にも働きかけて,自治体に許可を出すように求めたということなんですけど,結果的に中止になったわけですけれども,年末の慰安婦問題の合意から2か月ぐらいたちますけれども,新しい時代であると表現されていたと思いますけれども,日韓のですね。これまでの日韓関係の2016年に入ってですね,進捗状況というのを大臣どのようにご覧になっていらっしゃいますか,今回のキャンセルの件も含めて。

【岸田外務大臣】昨年12月の慰安婦問題に対する日韓合意は,これは大変重要な合意であり,歴史的,画期的な合意であると考えています。是非,この合意の中身を誠実に履行し,そして未来志向で両国関係を考えていく,こうした取り組みにつなげていきたいと思っています。ただ一方で,日韓の間には様々な課題が存在します。ご指摘のイベント,要は食料品の輸入規制に関わる問題ですが,それを始め様々な課題が存在するのも現実です。是非,未来志向で二国間関係を前進させたいと思っていますが,具体的な一つ一つの課題については,粘り強く丁寧に取り組んでいかなければならないと思います。いずれにせよ,両国が努力することによって大切な二国間関係,隣国関係を前進させるように努めていきたいと考えます。

【テレビ東京 鵜飼記者】今回の中止ということが,前進という意味で水を差すようなものになり得るとお感じになりますか。

【岸田外務大臣】なかなか,それぞれの課題,難しさが存在します。しかし,二国間関係全体を進める上で,一つ一つ,辛抱強く,粘り強く取り組んでいかなければならないと考えます。

【NHK 栗原記者】関連で,今の韓国との関係で,ソウルのイベントが中止されたりとか,竹島の日に対する反応とかも韓国政府側からありました。こうした一つ一つのイベントに対する韓国側の今回の反応というのは,毎年行われていることであったりするのですけれども,例年に比べてどうであったりするのか,大臣からご覧になられて,どういう方向を向いた,いつもより和らいだ対応なのか,それとも,向こう側の努力が見える対応なのか,どういったふうに印象をお持ちになられますでしょうか。

【岸田外務大臣】今の反応というのは,竹島の日の式典に対する韓国側の反応についてのご質問かと思いますが,反応一つ一つについてコメントをすることは控えたいと思います。
 韓国側は,この竹島の日の式典に対して,韓国外交部がスポークスマン声明を発表した,このことは承知をしております。我が国は,こうした抗議に対しまして,竹島問題に関する我が国政府の立場に鑑み,韓国側の抗議は受け入れられない,この旨,回答した次第であります。
 我が国は,この問題に関しまして,引き続き法にのっとり,冷静かつ平和的に解決する考えであります。
 具体的な反応については,先ほど申し上げました,一つ一つについてコメントは控えます。以上です。

王毅外相の訪米,安保理決議の見通し

【毎日新聞 小田中記者】別件になりますけれども,きょうから中国の王毅外相が訪米されまして,ケリー国務長官と会談予定であります。安保理での北朝鮮に対する制裁決議の議論がまだ続いているところですが,その詰めの協議をするとの見方もありますが,米中外相会談でどのような議論を期待されるのかという点をお伺いしたいのと,もう一点,安保理の制裁決議について,現状の見通しは,どのように持っていらっしゃるのか,お伺いできますか。

【岸田外務大臣】対北朝鮮の安保理における決議については,現在,関係国で様々なやり取りが行われております。活発にやり取りが続けられていると承知をしています。その中にあって,ご指摘の王毅外交部長の訪米ですが,こうした動きについても注目をしています。
 我が国としましても,非常任理事国の一国として,引き続き関係国と連携しながら,この強い措置を含む決議の迅速な採択に向けて,できるだけ努力をしていきたいと考えます。引き続き,注目します。

シリア情勢

【時事通信 石井記者】米国とロシアがシリア内戦の停戦条件に合意して,アサド政権と反体制派に停戦受け入れを呼びかけたそうです。これに対する大臣の受けとめと,日本政府として今後,これをどう支援していくか,お考えがあればお聞かせください。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘の米露による敵対行為の停止に関する合意については,歓迎をしたいと思います。こうした合意を踏まえて,全ての当事者が安保理決議2254を遵守すること,これを期待したいと思います。
 そして,我が国としましては,我が国の強みであります人道支援を中心に各国と緊密に連携していきたいと思いますし,シリア情勢の改善あるいは安定のために尽力をしていきたいと考えています。

普天間基地移設関連

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 佐々木記者】済みません。別件で基地問題についてなのですけれども,2009年に鳩山元総理が普天間基地の県外移設を断念するきっかけとなったと言われている外務省のペーパーが昨年解禁されました。これは2009年4月に外務省の役人が鳩山元総理のもとに持ってきたもので,普天間移設問題に関する米側からの説明という極秘扱いのペーパーなのですが,ここに移設先については65海里,約120キロが望ましく,この基準が米軍のマニュアルに書いてあるというふうに明記されています。これは当時,鳩山元総理が模索していた徳之島案を否定する内容となっています。  しかし最近,米国大使館は公式に,この65海里の基準について米軍のマニュアルに存在しないと回答しています。これがもし事実であれば大変な問題だと思うのですけれども,外務省は現在,このペーパーについて調査中というふうにしています。これが事実なのか,虚偽なのか,ミスなのかも含めて,早期の真相解明・確認が必要かと思うのですけれども,岸田大臣のこの件に関するご所見をお聞かせいただけますでしょうか。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘の点の中で,内容についての部分ですが,海兵隊の航空部隊がそれを支援あるいは連携する陸上部隊から一定の距離以上離れると運用に(支障を)来す。こういったことについては,平成22年当時から米軍から説明を受けており,それを踏まえて普天間飛行場のこの徳之島移設案については課題が多いことが判明した,このように承知をしています。そして,その距離等の具体的な詳細については,米軍は,運用に関するものであるから,対外的に今でも明らかにしていないというのが現実であると認識をしております。
 内容については,そのように思っておりますし,このご指摘の文書そのものにつきましては,この起案先も不明であり,そもそも,これが外務省の行政文書なのかどうか,そういったことも今のところ,確認をされていないと認識をしております。
 現状については,今,申し上げたような認識でおります。

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 佐々木記者】早期の調査についてはいかがでしょうか。

【岸田外務大臣】ご指摘を受けて,どのような対応をしているのか。今,手元にありませんので,それは確認をいたします。

シリア情勢

【共同通信 下江記者】先ほどのシリア支援の関係なのですけれども,先日補正が通ったばかりなのですが,サミットでもこのシリア問題は大きなテーマになると思うのですけれども,先ほど大臣は人道支援を中心にということなのですが,更なる措置を今後検討していくということもあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】今後,シリア情勢につきましては,まだ様々な動きがあることは十分想定されます。そして,今,現状,シリアをめぐりましては,難民問題にしましても,国外難民のみならず,国内においても多くの難民の方々が存在いたします。
 そして,こうした状況を考えますときに,我が国として行う人道支援というものは大変重要なものであると考えております。是非,我が国として,この強みであります分野,こうした人道支援を中心とする分野について,引き続きしっかり貢献することは国際社会において責任を果たす上で大変重要であると考えています。よって,この状況をしっかり見ながら,必要とされる我が国の貢献については,引き続き検討は続けていかなければならないと思います。
 よって,今後,今,具体的に更なる貢献について決まっているものではありませんが,今,申し上げましたような姿勢は大事なのではないか,そういった姿勢を持つことによって,国際社会において関係国と連携し,責任を果たしていくことにつながるのではないか,こういった認識は持っております。

国連女性差別撤廃委員会

【産経新聞 田北記者】先週の国連女子差別撤廃委員会で日本政府代表が慰安婦問題に関して委員会に対する回答を述べたのですけれども,それに対して朝日新聞が申し入れをしています。これに対する外務省の受けとめとその対応について教えてください。
 また,その女子差別撤廃委員会で政府が,杉山外審が語ったこと,この内容を今後,政府として,いろいろな国際会議とか,そういう場で説明していくのか,また,外務省のホームページの,歴史問題Q&Aというものがありますけれども,そういうところにでも掲載して周知していく考えはあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】ご指摘の,あれは2月16日ですか,女子差別撤廃委員会における我が国,杉山外審の発言ですが,これは委員会におきまして質問を受けたことからお答えしたものですが,このお答えの中身は,従来,我が国が様々な場で表明し,説明してきた立場ですとか内容であります。全く新しいことは含まれておりません。よって,まず,この発言については,問題はなかったと認識をしております。
 従来から申し上げてきたことを改めて,質問を受けたので,発言したということでありますので,こうした立場,中身については,全く変化はありませんので,今後ともそういった内容については,変わりはないと考えております。

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