記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成28年1月26日(火曜日)12時05分 於:本省会見室)
慰安婦問題関連
【共同通信 斎藤記者】日韓関係と従軍慰安婦問題についてお伺いします。大臣がソウルで韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と慰安婦問題で最終解決の方針を確認してから,まもなく一か月が経過するわけですが,この間,合意の履行に向けて日韓間で何らかの前進があったのかどうか,大臣の認識をお聞かせください。
またですね,日本側が10億円を韓国の財団に拠出すると,韓国側が少女像を撤去すると,それぞれ宿題があるわけですが,今後この履行に向けたスケジュール感,大臣のスケジュール感,これについてご説明頂きたいと思います。よろしくお願いします。
【岸田外務大臣】まず,今回の合意によって慰安婦問題が最終的・不可逆的に解決されることを確認したわけですが,両国政府がこの合意を責任を持って実施すること,これが重要だと考えています。
そして合意から今日までの動きですが,まず年明け北朝鮮の核実験が行われました。その後,日韓の間で首脳間,あるいは外相間で大変スムーズに意思疎通を図ることができました。こうしたことも今回の合意によって二国間関係が進展したことの一つの現れではないかとは受け止めています。
いずれにせよ,引き続き両国政府は,合意の履行に向けてしっかり努力をしていかなければならないと考えています。そして合意の中身の履行のあり方についてですが,両国政府で合意した中身は,12月28日共同記者発表で両国外相が発言した中身に尽きています。この中身を両国政府が履行する,これがこの合意の全てでありまして,その具体的な日程等について何か取り決めたということはないわけですが,いずれにせよ誠実に責任を持ってこれからしっかり努力をしていきたいと考えています。
【共同通信 斎藤記者】大臣の方からですね,引き続き努力というお話がありましたが,やはりこれ両国民,非常に関心のある話題,話でして,合意の中身は出ているわけですから,これがいつ頃までに本当にきちっと形になるのかということが大変関心があると思うので,敢えてお伺いしますが,今年,今後の日程を考えるとですね,3月末に核セキュリティーサミットがあると,もちろん国会日程等もあって具体的な計画はつまってないとは思いますが,もし実現すれば韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領,安倍総理,オバマ大統領も出席する可能性はあると思うのですね。この辺が一つフィナーレとして相応しい場になるのかどうか,またそういうフィナーレの場として念頭にあるのかどうか,また,この慰安婦問題の合意は岸田大臣と尹炳世外相との間で合意したわけですから,この履行を確認するという意味でですね,もう一回,尹炳世外相とですね,会って確認をするというようなスケジュールは念頭にあるのかどうか,スケジュールといいますかプランですね,念頭にあるのかどうか,この辺の見通しをお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】日韓両国の関係,この二国間関係については,是非,今年もしっかり前進させていきたいと思ってっています。ですので両国の首脳間,外相間において意思疎通を図ることは大変重要だと思っています。ただ今ですね,この合意の履行を確認するとか,そういった意味合いで何か会談をする,こういったことは今は考えてはおりません。
【フリーランス 上出氏】今後,いろいろな問題が起きるかもしれません。それで,どういうように検証していくのかということなのですけれども,日本側のほうでも桜田元文部科学副大臣が,慰安婦は単なる職業だったのだということを言って反発を買っておりますね。これもやはり不可逆的解決については問題になりますし,向こうからはいろいろな反応があって,今,慰安婦の方が来日されたりしております。
こういう動きそのものについて個別に,これはよくない等,やりとりをしていたらまた蒸し返しになると思いますが,この蒸し返しをしないための何か措置といいますか,大臣なりのお考えといいますか,今,起きていることについての評価をお願いいたします。
【岸田外務大臣】この慰安婦問題,そして今回の合意について,様々な意見があるということは承知をしています。また,様々な発言がある,こういったことも承知はしております。しかし,両国政府においては,昨年末の合意を責任を持って履行する,これが何よりも重要だと考えています。様々な意見や発言はあるとしても,是非,政府の間においては,この履行に向けて誠実に努力をしていくことが重要だと考えます。
とりあえず,申し上げることはそこまでです。
国際テロ情報収集ユニット
【朝日新聞 安倍記者】テロ対策ユニットができてから間もなく2カ月近くになります。発足の訓示の中で大臣は,外務大臣への報告もしっかりお願いしたいと強調されておられましたが,これまでのところの現在の運用と,あと,これまで大臣のところに,今まではどのような種類の報告が上がっているのか,現在の運用状況について教えてください。
【岸田外務大臣】国際テロ情報収集ユニットにつきましては,発足してから既にそれぞれの担当が担当地域に足を運び,既に活動を始めています。様々な関係者の意思疎通ですとか情報収集の活動を精力的に行っております。
具体的な中身については,これはインテリジェンスにかかわりますので詳細を明らかにすることは控えなければならないと思いますが,先日もインドネシアのジャカルタでテロ事件も発生しました。こうした状況を見るにつけましても,このテロに対する取り組みは大変重要であると思いますし,その中にあっても情報の大切さを痛感するところです。
是非,こうした状況も念頭に置きながら,この国際テロ情報収集ユニット,引き続き精力的に取り組んでもらわなければならないと思いますし,私(大臣)としても,この重要性を強く認識しているところです。
伊勢志摩サミット
【共同通信 吉浦記者】伊勢志摩サミットについてお伺いします。今回のサミットでは中東情勢,テロ対策,経済対応など,様々な課題が議論されることが想定されますけれども,そうした中で日本政府として日本らしさをアピールするために特にアピールしたい議題というものがあるのかどうかお聞かせください。
【岸田外務大臣】日本としましても,今年は国連非常任理事国入りですとか,アフリカで開催するTICADVIですとか,日中韓サミットの議長国ですとか,国際的な議論をリードする大変重要な年だと思っています。そして,伊勢志摩サミットはそのハイライトになる会議であると考えます。
G7の議長国として,地域や世界の平和や安定や繁栄のために,更にはグローバルな課題についてもしっかりと議論を行っていかなければならないと思いますが,この具体的な議題としては,まずは4月にG7の外相会談が行われます。そこでは外交・安全保障を中心に,国際的な喫緊の課題,中東,あるいはテロ対策,そして軍縮不拡散,こういったものが議論されると思いますが,あわせて,やはり日本で開催される会合ですので,アジアの問題はしっかり取り上げて,良いメッセージを発出していかなければならないと思います。こういった議論を経て,5月の伊勢志摩サミットの首脳会談にしっかりつなげていきたいと考えています。
いずれにせよ,まだ準備の段階ですし,首脳会談ですので,具体的に当日どんな議論が行われるか,まだ確定的に申し上げることはできませんが,今年,日本として国際的な議論をリードする立場にあるということ,あるいはG7の外相での議論等を踏まえた上で,最終的にサミットでの議論を確定していきたいと考えます。
トルトネフ露副首相発言
【ロイター通信 竹中記者】北方領土関連のことで1つお伺いしたいのですが,昨日,ロシアの極東地域を担当する副首相のトルトネフさんがダボスで北方領土に関しての発言をされておりまして,極東開発の一環として北方領土海域での漁業とか養殖事業を日本企業と一緒にやりたいということで,日本企業を招致・誘致,インバイトしている,日本企業に優先権を与える用意があるということをおっしゃっていらっしゃいます。それで,日本企業が受けないのだったらほかの国のパートナーを探すという旨の発言だったのですが,改めてになるかもしれませんが,こういった提案に関しての日本の立場をお伺いできますでしょうか。
【岸田外務大臣】そうした発言があったことは承知をしています。ただ,ロシアの閣僚の一つ一つの発言について逐次反応するのは適切ではないと考えます。ただ,そういった発言について引き続き注視はしていきたいと存じます。
その上で,一般論として申し上げるならば,この北方四島において第三国の企業等が経済活動を行うこと,これは,この北方領土問題に関する我が国の立場とは相入れないと考えます,受け入れることはできない,一般論としては,そのように考えております。
こうした経済活動等における発言を見ましても,改めて北方領土問題それ自体を解決すること,これが何よりも重要であると考えます。是非政府としましては,北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する,この基本方針の下,ロシアと粘り強く交渉を行っていきたいと思います。今年,是非日露関係を進めたいと考えます。