記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成27年9月4日(金曜日)8時44分 於:官邸エントランスホール)
中国主催「抗日戦勝70周年記念式典」
【フジテレビ 藤田記者】昨日,抗日という看板を掲げて,盛大に軍事パレードが行われたのですけれども,岸田大臣としての受け止めがありましたら教えて頂きたいのと,その後のレセプションでですね,侵略戦争以降に生まれた人も,歴史の教訓を心に刻まなければいけないと習近平国家主席が発言されたのですけれども,これは日本が求めてきた未来志向という考え方とちょっとかけ離れているという気がするのですけれど,どのような受け止めでいらっしゃいますでしょうか。
【岸田外務大臣】ご指摘の式典についてですね,この発言についてどうかとか,この部分についてどうだとか,1つ1つ申し上げるのは控えたいと思いますが,日本政府としましては 戦後70年経って,不幸な過去に過度に焦点を当てるのではなくして,国際社会が直面する共通な課題に未来志向で取り組んでいく,こうした姿勢が重要であるという観点から,式典についても注視してきました。
日中間には国交正常化以来の日中友好の歴史もあります。また安倍総理と習近平主席の間においては2度首脳会談が行われるなど,日中関係は改善の基調にあると思っています。こうしたことを念頭に,中国側にはこうした行事がいわゆる反日的なものではなくして,日中間の和解の要素を含むものにしてほしい,こうしたことを伝えてきましたが,今回の行事全体を見る限り,そうした要素は見ることはできなかったと受け止めています。
【フジテレビ 藤田記者】その日本の要請というのは,くみ取ってもらえなかったという部分があると思うのですけれど,その友好基調というものは,今後の日本としての対応は変わらないということでしょうか。
【岸田外務大臣】我が国としては日中関係,大切な隣国関係と思っています。引き続き対話は続けていきたいと思っています。
【フジテレビ 藤田記者】注目されていましたパレードで,演説の中で解放軍の兵士を30万人削減するというふうに明言されていたのですけれども,こちらに関してはどのような受け止めでしょうか。
【岸田外務大臣】日本政府としましては,従来から中国の軍事力について透明性の向上を求めてきました。こういった観点から,今般,発表されました人民解放軍の定員削減についても高い透明性をもって進められることを期待いたします。
インドネシア高速鉄道計画
【フジテレビ 藤田記者】インドネシアでの高速鉄道の受注ですが,日本と中国が競っていたのですが,計画自体の見直しということが発表されました。これについて,今後,日本はどのような対応をしていくのか,また東南アジアでそういった日本と中国の受注競争というのが過熱している,こういう状況をどのように見ていらっしゃいますでしょうか。
【岸田外務大臣】そのインドネシアのご指摘の件については,色々な報道が出ています。この報道の中身も様々なような気がしています。
まずは,今日にもインドネシア政府から正式に説明があると聞いています。インドネシア政府の正式な説明をしっかり聞いた上で,我が国としての対応を考えていくべきであると考えます。
【フジテレビ 藤田記者】ではまだチャンスはあるということなのでしょうか。
【岸田外務大臣】報道は承知しておりますし,それから色々な報道機関が色々な報道をしています。実際に,インドネシア政府から正式に説明を受けてから発言もしなければならないし,対応も考えなければいけないと思います。
北方領土に関するモルグロフ露外務次官の発言
【NHK 渡辺記者】日露関係のことについてお伺いしたいと思いますけれども,日露の次官級協議で杉山外務審議官のカウンターパートであるモルグロフ次官がインタファクス通信のインタビューの中で,日本との北方領土問題については,対話はしないという発言をされていますけれども,これについての受け止め,それから,それを受けて今後の日露間の関係の打開に向けて,どういうことを考えていらっしゃるのか,直近のニューヨークの国連総会がありますけれど,どういった機会をとらえていくのか,その辺を含めてお願いします。
【岸田外務大臣】ご指摘のモルグロフ次官の発言ですが,これは非建設的であり,事実に反するのみならず,安倍総理とプーチン大統領との間においての合意にも反すると思います。受け入れることはできないと考えていますし,私(大臣)からはロシア側に抗議をするように指示をいたしました。
戦後,サンフランシスコ平和条約に参加しなかったソ連ないしロシアとの間においては,70年経た今に至っても北方領土問題が未解決であり,このために平和条約交渉が行われている,これが歴史上の事実であると考えています。
そして,安倍総理とプーチン大統領の間においては,2013年の4月の共同声明において,これまでに採択された全ての諸文書および諸合意に基づいて,双方に受入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化する,こういった点で一致をしていると承知をしています。領土問題について対話を行っていないという発言は両首脳間の合意,そして,これまでの交渉経緯と照らしても明らかに事実に反するものであると考えます。
これが我が国の考え方ですが,同時に日本側としてはロシアとの政治的な対話,これは重視をしております。北方領土問題解決のため,ロシアとはこうした公開論争ではなくして,是非,建設的な対話を望んでおります。ロシア側には,今後の日露関係の前進のために,建設的な対応を強く求めていきたいと考えます。
【NHK 渡辺記者】関連でよろしいでしょうか。具体的にそうしますと,抗議するように指示というのは,どういったレベルで,どういうルートで行われるのかというのは現時点で決まっているのでしょうか。
【岸田外務大臣】抗議につきましては,林局長よりアファナシエフ在京ロシア大使に抗議を行う予定にしております。
中国主催「抗日戦勝70周年記念式典」
【フェニックスTV リー記者】今回の中国の軍事パレード,日中関係の関係悪化につながるのでしょうか。
【岸田外務大臣】日中関係,我が国にとりまして大切な関係です。先ほど申し上げましたように日中関係は改善の基調にあると受け止めていますが,引き続き政治対話はしっかり行っていきたいと考えます。
【フェニックスTV リー記者】悪化につながらないということでしょうか。
【岸田外務大臣】引き続き政治対話に努めていきます。