記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成27年7月21日(火曜日)10時13分 於:本省会見室)

日露関係

【北海道新聞 原田記者】北海道の漁船がロシア側に拿捕されたことがあったのですけれども,これについて現状,政府として事実関係をどう認識されているかというところと,受けとめ,それから,今後の対応についてよろしくお願いいたします。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘の点ですが,7月17日,根室沖において,ロシアの国境警備局所属の警備艇により,漁獲量超過の嫌疑で日本漁船第10邦晃丸が拿捕されました。その後,同漁船は国後島古釜布に連行され,現在はこの古釜布沖に停泊中と承知をしております。
 こうした事態を受けて,18日,東京及びモスクワの双方で,外交ルートを通じて,北方四島周辺での我が国漁船の拿捕については受け入れられるものではなく,また,人道的観点からも乗組員及び船体の早期解放を申し入れました。引き続き,ロシア側に対しまして乗組員及び船体の早期解放を求めてまいります。
 今のところは以上です。

【北海道新聞 原田記者】拿捕されたことについての受けとめという意味ではどのように,遺憾といいますか,そのあたりをお願いします。

【岸田外務大臣】今,申し上げましたように,我が国としては,この北方四島周辺での我が国漁船の拿捕については受け入れられるものではないと考えております。そうした観点,更には人道的観点から強く申し入れを行ったということであります。

【時事通信 石井記者】その関連なのですけれども,ロシアのプーチン大統領は昨日,日本の流し網漁業は伝統的漁場に甚大な損害を与えてきたという発言をしたと聞いております。こうした主張に対して,日本政府としてはどう答えますでしょうか。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘のような発言があったということにつきましては報道等で承知をしております。そしてその上で,このロシア水域における流し網漁禁止の法案が成立したことは極めて残念でありますが,日露さけ・ます協定に基づく我が国200海里水域内におけるロシア系さけ・ますの漁獲はこれまでと同様に継続されることをロシア側に確認済みであります。日本政府としましては引き続き,同協定に基づく協力を含め,日露の漁業分野の協力に適切に対応してまいりたいと考えております。

平和安全法制関連

【フリーランス 上出氏】一連の安保法制の論議に絡むことですが,国会でも既に取り上げていることなので,徴兵制のことについてお伺いします。
 現実に徴兵制が発動されるということはほとんど考えにくいのですけれども,最近,世論調査で安保法制反対の中で,特に子供さんのいる若いお母さんたちなんかはやはり漠然とそういうものを感じているようです。
 それで,これまで政府は憲法第18条の苦役の禁止を根拠に、安倍総理は絶対にこれはない、憲法違反だということをはっきり申し上げています。ところが,本当の憲法違反の根拠になるのは本来第9条であって,ただ,第9条は自衛隊を認めているわけですから,これを論拠にするわけにはいかない。大変苦し紛れで第18条の苦役が出てきている。これについては,石破さんなんかはちょっとおかしいということは前からおっしゃっていて,岸田大臣もこの苦役が今後とも徴兵制をしないことの根拠になるのかどうか。
 今回,集団的自衛権も憲法違反という声もありながら,現実には解釈でなった。各国の例を考えても,徴兵制にはいろいろなやり方があって,志願制と結びつけたようなやり方もありますし,これは自民党もご自身の素案の中では国防の重要性に対しては述べているわけですが,ここら辺は将来についても変わらないのかどうか,あるいはこの安倍政権だけの説明になるのかどうか。ここら辺をもう一度,改めて整理していただければと思うのですが,よろしくお願いします。

【岸田外務大臣】ご指摘の点,徴兵制につきましては,政府として説明をさせていただいているように,憲法の関係において許されないと考えています。
 そして,その説明の仕方,理由についてご質問をいただきましたが,これは再三,国会の委員会等において,総理を初め関係閣僚から説明させていただいておりますように,第18条,苦役との関係において,これは許されないという説明をさせていただいております。
 この政府としての説明については,各閣僚,一致をしております。政府内で一致して,同じ説明をさせていただいていると認識をしております。私(大臣)も同じ認識であります。

【毎日新聞 小田中記者】弊社の週末の世論調査なのですけれども,内閣支持率について35%と下落し,不支持については過半数の51%を占めることになりました。
 それで,安保法制に関してなのですが,国会の法案審議を通じて,更に反対といいますか,今国会成立について反対する声が増えている状況なのですけれども,現状の受けとめについて一言お願いできますか。

【岸田外務大臣】さまざまな世論調査の結果については,政府としてもしっかり受けとめなければならないとは思いますが,ただ,今,我が国をめぐる安全保障環境は大変厳しい中にあって,我が国として,まずは外交によって好ましい国際環境をつくるべく努力をしなければなりませんが,万が一の場合に備えて切れ目のない安全保障体制をつくっていくということ。これは重要な取り組みであると考えています。
 加えて,どの国も一国のみでは自らの平和や安定を守ることができない。これが国際社会の常識になっている中にあって,我が国として国際社会の平和や安定にしっかり貢献していかなければならない。そして,そのことが我が国の平和や安定にもつながっていく。こうした考えに基づいて国際貢献を行っていくことも大変重要であると考えています。
 政府にとりまして,国民の命や暮らしを守るということ。これは大変重要な責務であると思いますし,平和安全法制はそのための法制であると考えています。衆議院におきまして116時間の議論を行いましたが,これから参議院の議論が始まります。ぜひ丁寧に,謙虚に,そして分かりやすく説明をする努力を引き続き続けていきたいと考えております。

日露関係

【NHK 栗原記者】先ほどの北海道のさけ・ます漁船が拿捕されたということに加えて,今週末ロシアの保健相が色丹島に上陸して病院の視察などをしました。こうした日本政府の立場と相容れないことが続いているわけですけれども,一方で日露両国ではプーチン大統領の年内の訪日,あるいは,それに先だって岸田大臣のロシア訪問などを目指して調整は続けておられると思うのですが,こうした両国間のハイレベルの往来に,こうした出来事がどのような影響を与えるものだとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】まず一般論として申し上げれば,ロシア政府要人による北方四島の訪問は領土問題に関する我が国の立場とは相容れないと考えます。そして,プーチン大統領の訪日につきましては,今後準備状況を勘案しつつ,また種々の要素を総合的に考慮して検討していくという方針に変わりはありません。
 そして,その準備過程として外相訪露も検討されていますが,今のところ何も決まってはおりません。現状はそういった状況です。

次回アフリカ開発会議(TICAD)のアフリカ開催

【日経新聞 黒沼記者】アフリカ開発会議(TICAD)のことで伺いしたいのですけれども,来年の開催に向けて開催地としてはケニアが決まりました。まあアフリカというのは今後成長性が見込めるということで,引き続き日本との連携というのはさらに加速するかと思いますけれども,来年のTICADに向けてどのような会議になることを期待するのか岸田外務大臣の見解をお願いします。

【岸田外務大臣】まずTICADの開催国につきましては先般一度お答えはさせて頂いたと思いますが,15日,日本時間16日ですが,次回TICAD開催候補国として立候補していたケニアとガンビア,この2つの国の間の協議を通じましてケニアがTICAD首脳会議の開催国になることで合意に至ったと承知をしております。今後速やかにTICAD共催国間で協議をして,共催者の合意が得られれば正式に開催国が決定されることになります。
 そして,アフリカですが,豊富な資源,さらには拡大する市場を背景に高い経済成長を今遂げています。ただ一方で,依然多くの課題も存在いたします。次回TICADは初めてのアフリカでの開催となります。質の高い成長,あるいは人間の安全保障,さらには高い技術の活用,また人材委育成,こういった日本ならではの貢献,これを幅広くアフリカの方々に発信をしていく,こうした機会にしていきたいと考えます。

平和安全法制関連

【フリーランス 上出氏】国会で出てた問題ですが,安保法制にからんで、前のイラク戦争の時に何があったかということが黒塗りだったのが出てきました。それでかなりサマワなどでも危険なことがあったといわれています。このイラク検証,イラク戦争の検証は,オランダ,イギリスなどはちゃんとやっていますが,日本はまだちゃんとやっていません。これは大変重要な問題だと思うのですが,今後,こういうことについてきちんとやるというようなお考えはございますでしょうか。

【岸田外務大臣】イラクにおける検証については,まず外務省としては既に政策決定過程について検証をおこない,そして概要を発表しています。そしてご指摘の点は自衛隊の活動についての資料だと思います。
 これにつきましては,委員会の審議を通じて防衛省の方で適切に対応されるものであると考えます。委員会の,理事会等の指示に従うということであったと記憶しております。そのように執り行われるものだと考えます。

記者会見へ戻る