記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成27年7月17日(金曜日)10時11分 於:本省会見室)

冒頭発言

地球温暖化対策推進本部:約束草案の決定

【岸田外務大臣】本日の地球温暖化対策推進室本部において,日本の約束草案が決定されました。本日中にも,この約束草案を,気候変動に関する国連枠組条約(UNFCCC)事務局に提出する予定です。
 本年末にフランス・パリで開催されますCOP21は,気候変動に関する新たな国際枠組みが採択される重要な会合です。COP21に向け,気候変動は本年後半の国際社会の最重要課題の一つであると認識をしております。
 日本としては,本日決定されました約束草案をもって,すべての国が参加する,公平かつ実効的な枠組みに向けて,より一層積極的に国際交渉に臨んでいきたいと考えております。

平和安全法案の衆議院本会議可決

【共同通信社 蒔田記者】昨日衆院の本会議を通過した安全保障関連法案について,その通過の受け止めと,国民の理解がまだ十分でないと指摘がありますが,その辺の受け止めをお願いします。

【岸田外務大臣】平和安全法制ですが,我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中にあって,まずは,外交を通じまして好ましい国際環境を作っていく,これが基本でありますが,そのうえで万が一の場合に備えて切れ目のない体制を作っていく,こういった趣旨の法制であります。
 加えて,どの国も一国のみでは自らの平和や安定を守ることができない,これが国際常識になる中にあって,日本としましても国際社会の平和と安定にもしっかりと貢献をしていく,そして,そのことがひいては我が国の平和や安全を守ることにつながっていく,こういった考えに基づいて様々な法律を考えております。
 このように,我が国の国民の命,平和や安定を守るということは政治にとって大変重要な課題であると認識をしております。
 こうした法案について,衆議院におきまして116時間審議をお願いしてまいりました。その間,丁寧な説明を心掛けてきたわけですが,法案は衆議院において可決はされましたが,この法案の成立には引き続き参議院での審議のお願いをしなければなりません。
 これから,参議院の審議が始まるわけですので,引き続き,丁寧に,そして謙虚に,そして,わかりやすい説明を心掛けて,多くの皆様に理解が得られるよう努力を続けていきたいと考えております。

【朝日新聞 村松記者】関連ですが,結果的に委員会採決,本会議採決が与党単独,強行採決という形になってしまったことについて,外務大臣は外務委員会等で,抑制的な権力行使であったり,丁寧な合意形成の大切さというものを説かれていたと思うのですが,そういう政治のありように照らしてみて,今回の採決のあり方はいかがなものだったかというところについてのご見解をお願いします。

【岸田外務大臣】採決のあり方,そして委員会の持ち運びについては,これは立法府,国会において協議をされ,決定されることであると認識をしています。私(大臣)の立場から,そのことについて具体的に何か申し上げるのは控えなければならないと考えています。
 私(大臣)の立場からは,この審議を通じて,しっかりと理解を得られるように,丁寧に,そして謙虚に説明を続けていく。このことが重要であるということだと考えています。

【東京新聞 上野記者】関連ですが,採決に当たって,各種世論調査ですとか,あと,国会周辺で活動されている方々で反対の声が依然多いと思うのですけれども,大臣として現時点で国民の理解を得られているかどうかの認識をお願いいたします。

【岸田外務大臣】衆議院において116時間,審議をお願いし,説明を続けてきました。これから参議院の審議が始まります。引き続き,丁寧な説明を続けていきたいと存じます。そして,謙虚でわかりやすい説明を心がけることによって理解を得るべく努力を続けていきたいと思っています。

来年開催予定のアフリカ開発会議(TICAD)について

【読売新聞 佐藤記者】別件なのですけれども,来年開催予定のアフリカ開発会議(TICAD)について,日本時間で昨日,開催候補国となっていたガンビアとケニアの間で協議が行われて,ケニアで開催されることで合意になったと聞いているのですが,最終的な調整状況と,あと,割と春の早い時期に開催されることがあると思うのですけれども,準備期間について,不安ですとか懸念というのはございますでしょうか。

【岸田外務大臣】TICAD開催国としては,次回,アフリカにおいてという議論が進んできたわけですが,15日,日本時間では16日ですが,この次回TICAD開催候補国として立候補していたケニアとガンビアの間の協議を通じて,ケニアがTICAD首脳会議の開催候補国となることで合意に至ったと聞いています。
 今後,速やかにTICADの共催国,我が国ももちろんですが,アフリカ連合ですとか,あるいは世界銀行,更には国連開発計画ですとか,共催者が存在します。こうしたTICAD共催者の間で協議をして,共催者の合意が得られれば正式に開催国が決定されることになると考えます。
 こうした手続を経た上で開催国が決定したならば,より具体的に次回の開催に向けて準備を進めていくことになると考えます。是非,この正式決定に向けての議論の行方を注視していきたいと考えています。

長崎県文化財盗難事件:韓国による仏像の返還

【読売新聞 仲川記者】韓国最高検が例の対馬の仏像1体をこちらに戻すという発表をしたのですけれども,こちらに戻される返還の手続は現状いかがかということをお伺いしたいのです。

【岸田外務大臣】まずもってご指摘のこの仏像の返還につきましては,我が国の立場からして返還は当然のことであると考えております。そして,具体的な返還手続でありますが,これは今,調整中ですので,今の段階で詳細に触れることは控えたいと考えております。
 そして,残り1体の仏像があります。これについても速やかに返還がされるように,引き続き韓国政府に求めていきたいと考えます。

【読売新聞 仲川記者】手短に1点,関連なのですけれども,世界遺産をめぐって6月21日の外相会談で合意をしながら,最終局面で韓国というのは非常に日本の立場からすると不義理な対応を見せたというのがあって,これは返すと言っているけれども,本当に返ってくるのか。また何かやってくるのではないかという不安もあるのですが,大臣ご自身,どのように考えていらっしゃいますか。

【岸田外務大臣】この返還については,韓国側から正式な発表がありました。そして,返還手続については,今,調整中であります。
 この日本と韓国の間においては,さまざまな課題が存在いたします。隣国ゆえに難しい問題も存在いたしますが,だからこそ対話を積み重ね,この高い政治のレベルも含めて,しっかりとした意思疎通を図ることによって,大局的な観点から未来志向で,そして重層的な関係を築いていかなければならないと思います。
 引き続き,日韓国交正常化50周年という,この年を意義ある年にするべく,努力を続けていきたいと考えます。

新国立競技場の計画について

【共同通信 蒔田記者】別件で,2020東京五輪の新国立競技場の計画について,いろいろ賛否が出ていますが,この是非についてご感想をお願いします。

【岸田外務大臣】2020年五輪の国立競技場についてですが,そのデザインについて,あるいは予算について,更には完成までの工期について,いろいろな議論があるということは承知をしております。そして,国民の大きな関心事になっていると受けとめています。
 政府としましては,こうした国民の大きな関心をしっかり受けとめて,遠藤大臣,あるいは下村大臣を中心に,適切に対応していくものだと考えています。

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