記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成27年5月26日(火曜日)8時45分 於:官邸エントランスホール)
平和安全法制の議論について
【TBS 深井記者】今日から安保関連法案が国会で審議され,大臣も張り付きになっているかと思いますが,国民の理解も十分に進んでいない中,どういうような審議を進めていくお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】平和安全法制は,国民の命と暮らしを守るためのものです。そして国民の理解というものは大変重要だと考えます。是非,丁寧な,わかりやすい議論を心がけなければならないと思います。
そして,その際に基本的な考え方,我が国は,先ずは外交を通じて好ましい国際環境をつくる,万が一のために切れ目のない体制をつくる,こうした基本的な考え方に立っていますが,平和安全法制はあくまでも,万が一の場合の切れ目ない体制であるということ,こうした全体的な我が国の外交安全保障政策の考え方,こうした基本的な考え方をしっかりと説明しながら,丁寧に審議をすることが重要なのではないかと,このように考えます。
【TBS 深井記者】関連しますが,先日,防衛大臣が自衛隊員のリスクが増大することはないとおっしゃっていましたけれども,この点について岸田大臣どのようにお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】リスクにつきましては,外務委員会等で私も色々と説明をしていますが,この大きな枠組の中で,今申し上げたように外交努力を積み重ね,好ましい環境をつくる訳ですが,万が一のために,切れ目のない体制をつくる,こうした切れ目のない体制が出来ることによって,抑止力が高まって,そして全体のリスクが下がっていくという,こうした大きな枠組におけるリスクというものがあります。
その一方で,様々な現場・場面においては,対応が変わるわけですから,当然状況が変わることがあります。その際にリスクを如何にコントロールしていくのか,こうした議論が出てきます。そこに向けては,様々な法律の中に,リスクを抑えていく仕組みや仕掛けが用意されています。
こういった辺りを,リスクについては議論していくことになるんだと認識しております。中谷大臣の真意は,中谷大臣にお聞きするのが一番かと思いますが,リスクということについては,私はそのように見ています。
ストックホルム合意から一年
【TBS 深井記者】続きまして日朝ですけれども,今週,ストックホルム合意から一年になりますけれども,未だ北朝鮮から何らアクションがないということについて,大臣の受け止めと,それから今後,7月に一年という期限を迎えると思うんですけれど,一度解除した制裁等を,再び復活させることなど,どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
【岸田外務大臣】先ずストックホルム合意から,一年経ちます。昨年の5月26日から28日まで協議が行われたということでありました。そして今日に至るまで,全ての拉致被害者の帰国が実現していません。
是非,北朝鮮側に,この日朝協議が行われ,そして合意したことについて,誠実にしっかりと履行していくことを引き続き求めていかなければなりません。迅速に調査を行い,そして速やかに正直に通報を行うべく,働きかけていかなければならないと考えています。
そして,今後につきましては,今申し上げた,北朝鮮側にしっかりと働きかけを続けていく,この姿勢は現状変わってはおりませんが,やはり北朝鮮側から前向きな,具体的な対応を引き出すためには,何が有効なのか,そういった観点から不断の検討は続けなければならないと考えます。
NPT運用検討会議について
【読売新聞 仲川記者】NPTの運用検討会議の初日の演説で,大臣は,世界の指導者が被爆地を訪問することを呼びかけておられました。来年,G7の首脳会議・サミットが日本で開かれるということで,世界の指導者特にG7首脳の皆さんに,被爆地を訪問することを,呼びかけるお考えはございますか。
【岸田外務大臣】今回のNPT運用検討会議を振り返りましても,まず最終合意文書が合意に至らなかったことは大変残念に思っています。そしてその上で改めて核兵器のない世界を目指すためには,核兵器国と非核兵器国が協力をしなければ具体的な結果につながらない,これを痛感しました。そして核兵器国と非核兵器国がともに協力をする触媒になるのが核兵器の非人道性に対する認識であると考えていますし,今までのそのように申し上げてきました。そして核兵器の非人道性を認識するためには,被爆地を世界の指導者が訪問することによって被爆の実相に触れて頂く,これは大変意味あることだと思いますし,こうしたことを通じて核兵器のない世界を実現しようという機運,核兵器国と非核兵器国が協力していこうという機運を盛り上がることにつながる,こうしたことではないかと考えます。こうしたことから世界の政治指導者,さらには若い人々にも被爆地を訪問して頂くことは大変意義あることだと思っています。こういった考え方は引き続き唯一の戦争被爆国として,国際社会に訴えていかなければならないと思います。具体的にこれをどう受け止めて,どういった行動につながるのか,これは今予断をもって申し上げることは出来ませんが,今申し上げた思いで引き続き努力を続けたいとは思います。
【読売新聞 仲川記者】来年G7のサミットということに引き付けてG7の首脳の皆さんに,ということではいかがでしょうか。
【岸田外務大臣】G7の指導者も含めて世界の政治指導者にこうした,被爆の実相に触れて頂くことは有意義であると我々は思っています。