記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成27年3月17日(火曜日)8時42分 於:官邸エントランスホール)
冒頭発言
(1)NPDIによるNPT運用検討会議への文書提出
【岸田外務大臣】あと1ヶ月あまりに迫ったNPT運用検討会議について申し上げます。
被爆70年の本年,被爆地出身の外務大臣として,私(大臣)は,被爆地の思いを胸に,4月末から開催されるNPT運用検討会議で具体的成果をあげ,「核兵器のない世界」に向けた取組を一歩でも二歩でも前進させる強い決意を持っております。
その観点から,12の非核兵器国からなる軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)は,昨年広島で発出した広島宣言に基づき,NPT運用検討会議に既に18本の文書を国連事務局に提出しております。
NPDIの提案は,広範な内容で,核兵器国と非核兵器国双方に具体的な行動を求めていくものです。我が国としては,特に核軍縮について次の3点を重視しております。
まず一点は,核兵器国は,核軍縮の前提として,核戦力の透明性を確保すべきであります。
第二に,核兵器国はあらゆる核兵器を削減すべきです。いずれすべての核兵器国が削減交渉を行うべきであります。
第三に,核兵器の非人道性に関する議論の下,核兵器国及び非核兵器国双方は「核兵器のない世界」に向けて結束すべきであります。
NPT運用検討会議でNPDIの文書を基に,具体的成果を上げることができるよう,私(大臣)は,全ての会議参加国に対し,在外大使に指示を出し,NPDI文書への支持を求めます。なお,NPDIはこれまで発出した文書18本全てをとりまとめた文書を近日中に国連事務局に提出する予定になっております。
「核兵器のない世界」は,核兵器国と非核兵器国が協力していくことなしには実現いたしません。遠回りのように見えても現実的かつ実践的な取組こそが近道であり,これを推進してまいります。
(2)日中韓外相会議
日中韓外相会議が3月21日(土曜日)に韓国・ソウルにて開催予定であります。諸般の事情が許せば,日本側から私(大臣)が出席し,韓国側からは尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官,中国側からは王毅(おう・き)外交部長が出席する予定になっております。
約3年ぶりに開催される今回の外相会議では,幅広い分野にわたる日中韓3か国の協力案件を総括し,その現状と今後の取組について議論するとともに,様々な地域・国際情勢について中韓両国の外相と意見交換を行います。
また,この機会に,日韓外相会談及び日中外相会談を開催する予定にしております。
日中韓外相会議関連
【TBS 深井記者】日中韓外相会談に併せて日中,日韓のバイというのは土曜日に行われるのですか。
【岸田外務大臣】開催する予定にはしておりますが,具体的な日程等については引き続き調整中です。
【TBS 深井記者】昨日,中国側が日中韓首脳会談について戦後70年談話の内容を見極めた上で検討するというような趣旨のことを日本政府に伝えてきたという報道がありましたが,これについて今政府としてはどのような内容を伝えられてきていると把握されているのでしょうか。
【岸田外務大臣】日本としましては,この日中韓外相会談,あるいは首脳会談,こうした対話のプロセスは三カ国の関係を未来志向で発展させるために重要である,ということで一貫して重視をしてきました。
よってこのサミットについても重視をしていますが,現状日程あるいは場所,こういったものについては何ら決まってはおりません。そして,個々の具体的なやり取りについては申し上げることは控えます。
【TBS 深井記者】今度の日中韓外相会談の中で,日本としての戦後70年談話の考え方等についても大臣からどのようなご説明をされるお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】もともと日中韓の三カ国の会議は,三カ国の協力案件を推進すること,これを主たる課題として始められた会議です。その性格は,今回の外相会談においても変わらないと思っています。いずれにせよ,地域あるいは国際情勢を含めてそれぞれの関心事について議論することになるとは思っていますが,現状においては具体的な内容を予断することは控えたいと思います。
中国側の尖閣諸島地図
【TBS 深井記者】昨日,外務省のホームページに「尖閣群島」と中国側が示していた地図を掲載されましたけれども,改めましてこの狙いについてお聞かせいただけますでしょうか。
【岸田外務大臣】1950年代,および60年代には尖閣諸島が日本の領土であることを前提として作成された中国側の資料があるということ,これは確認をされています。日本政府としては,それらの資料を既に外務省のホームページに掲載する等,尖閣諸島に関する国際的な情報発信する上で積極的に活動してきております。
ご指摘の資料についても,尖閣諸島が日本の領土であることを前提として作成されたものであると考えられ,外務省としては中国側によるこの独自の主張には全く根拠がないことを示す観点から,尖閣諸島に関するホームページ上の資料を改訂し,昨日この新たな資料をホームページに掲載したという次第です。
ウクライナ政変の際のロシア軍による核兵器使用準備
【TBS 深井記者】ロシアのプーチン大統領が,クリミア編入の際に核を準備していたという発言をされていますけれども,日本政府としてこの発言にはどのようにお考えですか。
【岸田外務大臣】報道は承知していますが,力による現状変更,これは決して認めることはできません。我が国としましてはG7の連携を重視しつつ,ウクライナの平和的,外交的な解決に向けて努力していきたいと考えています。ロシアを含む関係国が,建設的な努力をすることを期待いたします。
いずれにしましても,核兵器の使用はあってはならないと思っています。我が国としては,核兵器のない世界に向けて引き続き努力をしていきたいと考えています。
中国側の尖閣諸島地図
【香港フェニックスTV 李記者】中国海洋局は,尖閣諸島については中国が最も早く発見をし,命名をしたと言っていますけれども,今回の日本側の発表は特に新しいことはないというように言っていますが,いかがですか。
【岸田外務大臣】今回,新たに掲載した地図において中国が使用していない尖閣諸島という名称が用いられていること自体が現在の中国の主張が矛盾していることを示していると考えています。
中国は,尖閣諸島が古くから自国の領土であったとの根拠のない主張を行っていますが,そうした主張の中で尖閣諸島という名称は用いられていないというように承知をしております。