記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年12月24日(水曜日)22時51分 於:本省会見室)

冒頭発言

【岸田外務大臣】この度,第三次安倍内閣の下で改めて外務大臣の職を拝命いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。これまで約2年にわたり外務大臣として,延べ46カ国,地域を訪問し,各国との信頼関係の構築に努めてまいりました。外務大臣として,国際協調主義に基づく積極的平和主義の下,「地球儀を俯瞰する外交」を更に力強く推進していく決意です。
 これまでの2年間に引き続き,日本外交の三本柱,すなわち一つは,日米同盟の強化,ガイドライン見直しを始めとする一層の日米協力。
 二つ目として,近隣諸国との関係強化。
 三つ目として,日本経済の再生に資する経済外交の展開,この三本柱を中心として取り組んでいきたいと考えております。
 その上で,9月の留任の際に会見で申し上げました3つの重点課題への取組については一層発展・進化させたいと考えております。
 第一に掲げさせて頂きましたのが,近隣諸国との意思疎通の強化でありましたが,この点についてはようやく動き始めた中国との関係について,戦略的互恵関係再構築に努めるとともに,韓国との関係強化に努力をしたいと考えます。
 また,日露関係を国益に資するよう進めるとともにASEAN,豪州,インドとの協力も強化していきます。
 そして,北朝鮮については,拉致を始めとする諸懸案の解決に全力を尽くしていきたいと考えます。
 第二として,国際社会の課題への貢献を挙げさせて頂きましたが,来年は戦後70年,国連創設70年。そして,被爆70年でもあります。
 さらに,来年は気候変動の新たな枠組みが作成され,防災世界会議が開催されます。
 今後も,積極的平和主義の観点から,気候変動,安保理改革,核軍縮・不拡散,防災,女性,こういったグローバルな課題に取り組んでいきます。
 第三に掲げさせて頂いたのが,戦略的な対外発信の強化ですが,日本は,戦後一貫して,平和国家として,世界の平和と繁栄に貢献してきました。平和国家としての日本の歩みは今後も不変だと考えます。
 日本は,法の支配,民主主義,基本的人権を重視し,イノベーションを生み,そして文化を育ててきました。
 このような日本の真の姿や多様な魅力を知ってもらうため,ジャパンハウスの設置をはじめとする対外発信の強化に取り組んでいきたいと考えています。
 これらの3点を着実に実施するためにも,予算・機構・定員の要求を通じて外交実施体制の飛躍的な強化の実現を目指していきたいと考えています。
 この2年間,様々な外交成果があったのは,オールジャパンで取り組み,そして世界各国の外務大臣との信頼関係を一つ一つ積み重ねてきたからこそだと考えています。これからも国内でも海外でも,志をともに,絆を大切にしながら外交を進めていきたいと考えております。

戦後70周年

【共同通信 蒔田記者】大臣も冒頭の中でおっしゃっていましたけれども,来年は戦後70周年に当たるかと思うのですが,その中で中国や韓国なんかは歴史問題で日本への牽制を強めることも予想されます。
 こうした中で,来年発表予定の安倍総理の談話などを通じ,日本としてどのような歴史認識を打ち出すのか。あるいは外務省としては,70周年に向けてどういう方向性のメッセージを打ち出すのか,岸田大臣カラーというものをどのように発揮するのかというお考えがあったらお聞かせください。

【岸田外務大臣】まず戦後70周年ですが,この節目の年に当たりまして,先の大戦の反省ですとか戦後の歩みといったものを踏まえながら,平和国家としての歩みの決意を新たにし,国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から世界の平和と繁栄に貢献していく。こうした思いをしっかりと示し,そして前進していく。こうした年にしたいと考えています。
 歴史認識についてご質問いただきましたが,安倍内閣としては,これは再三申し上げていますように,歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく。この立場についても全く変わりはありません。ぜひ戦後70年に当たりまして,今,申し上げましたような姿勢と取り組みで臨んでいきたいと思っておりますし,こうした我が国の姿勢や取り組みについて,国際社会にしっかりと理解していただけるよう努力をしていきたいと考えています。

【毎日新聞 鈴木記者】今の70周年のメッセージの発信の件なのですけれども,大臣はどのようなタイミングで,どのような場面で発信することが望ましいとお考えでしょうか。国際会議やバイ会談などもこれから予定されると思うのですが,望ましい方向性というものをお考えであれば教えてください。

【岸田外務大臣】基本的な考え方は,今,申し上げたとおりですが,そうした考え方,取り組みについて発信する場はあらゆる機会を捉えていかなければならないと思います。
 年明けから様々な外交日程も予定されています。総理としまして,様々な会見の場も予想はされます。そうした様々な場をしっかりと活用して,我が国の考え方,取り組みを国際社会にしっかりとアピールしていかなければならないと考えます。
 どのような場を活用してというご質問ですが,このあらゆる場を活用して1年間しっかりと発信をしていきたいと考えています。

近隣諸国との関係

【NHK 栗原記者】大臣,今,外交の三本柱に加えて,3つの重点課題を更に発展させていくという中で,近隣諸国との意思疎通を,これを更に中国など発展させていくというお話を伺ったのですけれども,ようやくそういう対話というものが始まったと見られる一方で,韓国を中心に調整しているとされている日中韓の外相会談というものもまだ開かれる見通しが立っていないなど,具体的にはまだ,どういうような具体的な進め方をするのかというのは見えていないところだと思うのです。
 岸田大臣の中で,今後どういうように発展させていく具体的な方策があるのかという,念頭に置かれているものがあるのかということと,あと,スケジュール感についてもお伺いできますでしょうか。

【岸田外務大臣】まず中国との関係で申し上げるならば,北京での日中外相会談及び首脳会談。これは両国が戦略的互恵関係の原点に立ち戻り,関係を改善させていくための第一歩になったと受けとめています。これを踏まえて,今後様々なレベル・分野で対話,そして協力を積み重ね,大局的な観点から日中関係を発展させていきたいと考えています。
 そしてその中で,特に防衛当局間の海上連絡メカニズムの一日も早い運用開始が必要であると考えております。ぜひ中国側への働きかけを強化していきたいと考えています。この海上連絡メカニズムについては,日中首脳会談でのやりとりも踏まえて,中国側と鋭意連絡をとり合っているところでありますので,具体的な日程は最終的には確定しておりませんが,引き続き調整を進めていきたいと考えています。
 そして韓国との関係においては,難しい問題がありますが,だからこそ高いレベルでの対話が重要であると考えておりますし,外相レベルを含め,様々なレベルで緊密に意思疎通を図り,関係を前進させていくことが重要であると考えています。
 日中韓の外相会談については,我が国としましては,この三か国の関係を未来志向で前進させるために従来から重視してきたところであり,日中韓外相会談,議長国,韓国を中心にぜひ,この実現に向けて前進をする努力を続けていくことが重要だと考えています。その上で,ぜひよい雰囲気で来年の日韓国交正常化50周年を迎えられるよう,しっかりと努力をしていきたいとも考えています。
 いずれにせよ,具体的な日程はまだ今の段階では決まってはおりませんが,我が国としましては,対話のドアは絶えずオープンであるということを従来から申し上げてきましたが,こうしたハイレベルでの対話の実現に向けてしっかり取り組んでいきたいと考えています。

NPT運用検討会議

【中国新聞 藤村記者】被爆地選出の大臣として核軍縮にこれまでも力を入れてこられましたけれども,来年の4月には5年に一度のNPT再検討会議もございます。
 ただ,今回の会議,現在の世界情勢を見ると,なかなか合意文書をまとめるのは難しいのではないかという見方もありますけれども,この会議にかける大臣の思いを改めて教えてください。

【岸田外務大臣】まず,我が国として,唯一の戦争被爆国の立場から核軍縮・不拡散にしっかり取り組んでいかなければならない。これは当然のことでありますし,また,私(大臣)自身,被爆地出身の外務大臣としてこうした課題にしっかり取り組んでいかなければならないと強く思っております。
 その中にあって,来年,5年に一度のNPT運用検討会議が予定されています。我が国としましては,従来からもNPDIの枠組み等を中心に現実的な,そして実践的な取り組みを続けてきたわけでありますが,今年開催されました第8回NPDI外相会談は初めて日本で,そして広島で開催することとなりましたが,その際に発した広島宣言等をNPT運用検討会議の場においても各国にしっかり示し,理解を得,そして結果につなげていかなければならない。このように思っています。
 様々な課題がまだ存在はいたしますが,ぜひ来年は被爆70年という節目の年でもあります。その年に開かれるNPT運用検討会議において,我が国としてしっかり貢献するべく,全力で取り組んでいきたいと考えています。

【中国新聞 藤村記者】つけ加えてですけれども,大臣ご本人が出席される意向というのはお持ちなのでしょうか。

【岸田外務大臣】具体的な日程等についてはまだ私(大臣)自身確認しておりません。まだこれから会議の日程等もありますでしょうし,国会日程もあるでしょうし,よく確認してから判断したいと存じます。

翁長沖縄県知事の上京

【沖縄タイムス 宮城記者】翁長知事が明日,明後日と上京してくることとなっておるのですが,辺野古移設の反対を抱えて当選しているわけなのですけれども,大臣として要望があればお会いするような考えがあるのかどうかということと,あと,衆院選で自民党の議員は全敗しておりますが,民意はたびたび示されているという報道もありますけれども,どのように進められるのかということを改めてお伺いします。

【岸田外務大臣】まず,翁長知事のご上京については,外務大臣と直接会いたいというご要請があるのかどうか私(大臣)自身まだ承知をしておりません。一般的には,事務的に日程調整をした上での話だと思っております。
 普天間飛行場の危険除去については,一日も早く実現をしなければいけないということにおいて,政府としましても,沖縄の県民の皆様方と思いを共有していると思っております。
 そして,この普天間飛行場の危険除去に向けて,政府としては辺野古への移設が唯一の道であると考えておりますが,ぜひ,今後とも県民の皆様方にしっかりと説明をしながら丁寧に作業を進めていく,こういった姿勢は大事にしてかなければならないと考えております。
 とりあえず,以上です。

北朝鮮の拉致問題

【時事通信 松本記者】日朝関係についてお伺いします。
 拉致問題の再調査の初回報告,当初の予定した時期から比べると,大分ずれ込んでいるかと思います。膠着状態というか,この状態の原因はどこにあると,大臣としては分析されているのか。
 また,家族会の中には,事態の打開に向けて,例えば,解除した制裁の復活等を求める声もありますけれども,大臣としては,こうした声をどう受けとめられているか,その事態打開に向けた方策に何かお考えがあれば,お聞かせください。

【岸田外務大臣】特別調査委員会の調査については,先日,代表団を平壌に送って,我が国の立場,考え方をしっかり示させていただきました。
 政府としましては,北朝鮮が迅速に調査を行い,そして,その結果を速やかに,かつ正直に通報することを強く求めていく,こうした方針で臨んでいるわけですが,その後,北朝鮮との間においては,「大使館」ルートを通じまして,意思疎通を図っています。今,申し上げました,我が国の立場,思いをしっかり伝え続けているところです。
 現状においては,引き続きこうした考え方を北朝鮮に伝えながら,一日も早い,この調査結果,通報を促していきたいと考えております。

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