記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成26年9月2日(火曜日)10時50分 於:省内会見室)
日印首脳会談
【NHK 栗原記者】昨日行われました日印の協議に関連して,日本政府が当初目指していた日印の2+2の開催が見送られることになったということですけれども,その受けとめをお伺いしたいのと,あと,岸田大臣は今後どのような日印関係を目指していかれるのか,お考えについて,その見通しについてお伺いできますでしょうか。
【岸田外務大臣】先ず,インドは我が国とは自由民主主義をはじめとする基本的な価値観を共有する国であり,日本とインドはアジアにおける2つの大きな民主主義国家であると認識しております。そして,経済をはじめさまざまな分野を考えましても日本にとって大変重要な国であり,今後とも戦略的グローバルパートナーシップをしっかりと強化していかなければならない大切な国であると認識しています。
このたび,モディ首相が訪日されましたが,インドの周辺国以外において初めての訪問先として日本を選ばれたということで,モディ首相,インド側も日本との関係を重視しておられるというように認識しております。こういった国との関係を是非,私(大臣)自身も外交の責任者としてしっかりと進めていきたいと考えております。
そして,先ほどの質問の中で2+2の見送り等の指摘がありました。しかし今回,経済をはじめさまざまな分野で両国間の関係強化で一致したわけですが,安全保障の分野におきましても,このたび防衛協力の覚書に署名いたしましたし,そしてモディ首相自身も,安全保障分野での協力は成果であったということを発言されておられます。
その中にあって,2+2についての指摘ですが,現在,日本とインドの間においては次官級の2+2が開催されています。そしてインド側から見てみますと,我が国はさまざまな国と閣僚級の2+2を行っていますが,インドは現在,どの国とも閣僚級2+2は行っておりません。逆に,次官級の2+2も日本とだけインドは行っている。これが現実であります。
この日本とだけ行っている次官級の2+2を,今回も極めて有益であるということを確認し,そして,さらに強化していく方策を検討していく。こういった点では一致をしているわけですから,この安全保障の分野,この日本とインドの2+2という枠組みにおいても,この枠組みは評価され,そして進めていくことが確認できたということでありますので,これは大きな前進であったと捉えていいのではないか。このように考えております。
このように,今回の首脳会談等を通じまして,両国間の関係,さまざまな分野において,この重要性を確認し,進展させようということで一致した。戦略的グローバルパートナーシップの進展に向けて大変重要な,首脳会談等,両国間のやりとりがあったと認識しています。
日中関係
【共同通信 斎藤記者】日中関係についてお伺いします。大臣がミャンマーで王毅外交部長と会談してから20日近くたったと思いますが,その後,非公式外相会談を受けて,日中間で今後のハイレベル対話,例えば外相レベルであるとか,首脳レベルであるとか,そうしたハイレベル対話に向けての環境整備を進められているのかどうか。中国側の今のところの反応はどうか。大臣の感触をお聞かせいただきたいと思います。
【岸田外務大臣】先般,ミャンマーにおきましては中国の王毅外交部長との間におきまして率直な意見交換ができたと感じています。そして,その際にも申し上げましたが,是非こうした外相間の対話をきっかけとしまして,日中両国の関係改善にしっかりつなげていきたいと考えております。そうした考えに基づいて,両国関係の進展を考えていかなければならないと思っています。
現在も事務レベルをはじめ,さまざまなレベルにおいて意思疎通を積み重ねています。是非,こうした積み重ねを続けながら,政治の高いレベルでの意思疎通につなげていきたいと思っています。引き続き,努力を続けたいと考えます。
【共同通信 斎藤記者】中国関連で,補足でお伺いします。中国は最近,新たな国際金融機関として,アジアインフラ投資銀行という構想を提唱しています。中国側の報道によりますと,現在来日中のインドのモディ首相も,このアジアインフラ投資銀行に参加する意欲を示したと伝えられています。
我が国ですけれども,我が国から見て,この中国のアジアインフラ投資銀行構想をどのように受けとめているのか。そして今後,参加する余地があるのか否か。この点についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】このAIIB構想についてのご質問ですが,我が国としましては,まずはADBを初めとする既存の国際開発金融機関に加えて新たな国際機関を設立する付加価値があるのかどうかという点。更には,一国が非常に大きな出資割合を占める機関が国際機関と名乗るに値する公正なガバナンスを確立できるのかという点。更には,債務の持続可能性を無視した貸し付けを行うことにより他の債権者にも損害を与えることにならないかといった点。
こういった点を含めて慎重な検討が必要であると考えております。このAIIB構想についての我が国の立場・考え方は以上です。
日印首脳会談
【共同通信 市ノ瀬記者】昨日の首脳会談で,原子力協定,少人数会合を設けて別途話し合いが行われたということで,その中でこの数ヶ月間で大きな進展があったということを確認して,それから協議加速という内容で聞いているわけですけれども,かなり原子力協定,以前からやっていますけれども,大きな進展があったとは言え,なかなか妥結には至ってないのですが,今後の見通し,いつ頃までにどのような進展といいますか,締結できるかという見通しと,なかなかセンシティブであったので少人数会合をされたのだと思いますが,大きな進展,どのような点で進展がみられたのか,お願いします。
【岸田外務大臣】インドとの原子力協定の議論は,従来から事務レベル等で議論が行われてきたところであります。そして,今日までの議論の有りよう,そして,今回の首脳会談等におけるやり取りにつきましては,昨日,安倍総理,そしてモディ首相の共同記者会見で申し上げさせていただいた通りです。そして,今後の見通しにつきましては,昨日の共同記者会見の中でもありましたように,協議を加速するべく指示を出すということでありますので,是非,引き続き精力的に議論は続けていきたいと存じます。
しかし,これは相手のある議論であります。丁寧に議論は行わなければなりません。いつまで等,具体的な見通し等について,今の段階で申し上げることは控えなければならないと思っています。
【フリーランス 上出氏】センシティブな問題というのは,多分これだと思うのですが,インドは,いわゆる核不拡散条約に加盟しておりません。プルトニウムの生産につながる原発ということについては,いろいろそれこそセンシティブな問題がある。これについて,どこまで日本政府は,その辺のことを押さえている基準というのがあるのか,やはりパキスタンとの関係とかいろいろ見ますと,そういうもとを作るという平和ということと,日頃,岸田大臣が強調されているような核の問題について相反する部分があるので,この辺,どこまで認められるのかという辺りの基準等,説明していただければと思うのですけれども。難しいかもしれませんが,よろしくお願いします。
【岸田外務大臣】インドに対しましては,我が国は唯一の戦争被爆国であり,核の不拡散,また,あるいは厳格な管理につきましては,大変重視しているということ,更にはNPT体制を重視しているということ,こういった点につきましては再三にわたりインド側に伝えてきております。
こうした我が国の基本的な立場,考え方,これはインド側も理解していただけるものと思っております。こうした基本的な考え方について,しっかり理解していただいた上で具体的な協議を進めていかなければならないと思っていますし,そのような思いで協議を続けてきました。
是非,そうした基本的な立場をしっかり守りながら協議を進めてきたいと考えています。
岸田外交の成果
【読売新聞 仲川記者】本日火曜日でして,通常ですと次の閣議後記者会見は金曜日になるのですが,定例ですと,改造内閣発足前の最後の閣議後記者会見になります。
岸田大臣におかれましては,第二次安倍内閣が発足後,1年8ヶ月外務大臣を務められてこられまして,これまでで感慨深い出来事ですとか,仕事の成果ですとか,そういったものがございましたら,一言お願いできますでしょうか。
【岸田外務大臣】一昨年12月,外務大臣に就任しましてから1年8ヶ月,やはり対話を重視し信頼関係を構築することの重要性を意識しながら外交の仕事を続けてきました。
地球を13.4周し33カ国の国・地域を周り,77の国・地域の大臣と会談を行いました。こうしたネットワークを拡大すること,あるいは日本の存在感を高めることを考えて仕事をしてきました。
結果として,例えば日米同盟の強化ということについても,米国ケリー国務長官とは,電話会談も含めますと20回会談をさせていただきました。また,アベノミクス推進のための経済外交,こうしたものも進めることができました。
また,積極的平和主義の具体的な展開,こういったことも成果として挙げることができるのではないかと思っています。そして,その中で個人的に印象深い事柄としては,今年4月広島で私(大臣)自身議長をさせていただきました軍縮不拡散イニシアティブ・NPDI外相会合を開催することができました。
NPDI外相会合,今回で8回目ですが,初めて日本で,そして被爆地で開催することができ広島宣言を発出することができました。
核のない世界に向けた取り組みを強化するという意味で大変印象的な出来事であります。とりあえず,そのくらいでしょうか。
日朝関係
【テレビ朝日 藤川記者】一部報道で,伊原アジア大洋州局長が先月,北朝鮮の国家安全保衛部の幹部と会談をしたという報道がありますが,事実関係についてお願いします。
【岸田外務大臣】さまざまな報道はありますが,報道のいちいちについてコメントすることは控えます。北朝鮮との関係においては,これから立ち上がった特別調査委員会から第1回目の通報が行われる予定になっております。まずは,この北朝鮮が行う第1回目の通報,調査の進捗状況を慎重に見きわめていきたいと考えております。