記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成26年7月25日(金曜日)11時02分 於:本省会見室)
冒頭発言-岸田外務大臣のベトナム公式訪問
【岸田外務大臣】7月31日(木曜日)から8月2日(土曜日)まで,ベトナムを公式訪問します。ミン副首相兼外務大臣他ベトナム政府要人と会談するほか,関係省庁も参加する日越協力委員会第6回会合を開催する予定にしております。
私(大臣)自身,長年ベトナム議連幹事長,事務局長等を務め,ベトナムとは様々なご縁を戴いてきましたが,外務大臣としては初めてベトナムを訪問させていただきます。
海洋安全保障分野での連携強化をはじめ,政治・安全保障,経済,人的交流等幅広い分野での具体的協力を進め,ベトナムとの「広範な戦略的パートナーシップ」を更に強化する訪問としたいと考えております。
中国における邦人麻薬密輸犯に対する死刑の執行
【NHK 渡辺記者】中国で日本に覚醒剤を密輸しようとした日本人の死刑が執行されましたが,これについての受け止めをお伺いしたいのですが。
【岸田外務大臣】在大連出張駐在館事務所からの報告によりますと,25日午前,これは日本時間ですが,大連市中級人民法院から,同出張駐在官事務所に対しまして,同日,邦人受刑者に対する死刑を施行したとの通報がありました。
各国がいかなる犯罪にいかなる刑を科するかは,基本的には各国において,当該国の犯罪情勢ですとか刑事政策等を踏まえて決められるべき国内事項に属する問題であると考えます。
しかしながら,政府としましては,我が国の国民感情や邦人保護の観点から,本件を含む中国における日本人に対する死刑判決につき,我が国として高い関心を有している旨,中国側に伝達はしてきております。
麻薬犯罪は,我が国のみならず国際社会にとって極めて重大な犯罪であり,その対策のため,死刑を含め非常に重い量刑を科している国が多いことを理解し,今後,国民がこうした犯罪に関わらない,または巻き込まれないよう引き続き啓発をしていきたいと考えております。
マレーシア航空機の撃墜とロシア対応
【共同通信 斎藤記者】マレーシア航空機とロシア対応についてお伺いしたいと思います。
カナダは,昨日新たな追加制裁を発動すると正式に発表しました。また,EUも追加制裁に向けた動きを本格化させていると伝えられています。こうした中で,日本政府は秋に予定されている,プーチン大統領訪日,これを予定通り進める方針に変わりがないのかどうか,また,進めるとすれば,どういう観点から進めていくのか,大臣のご認識をお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】追加制裁についてですが,我が国の対応については,ウクライナ東部の情勢,あるいは米国,EUの動向等を踏まえG7の連携を重視しつつ適切に対応していきたいと考えております。まずは,マレーシア航空機事件の真相究明が重要であると認識をしています。
そして,プーチン大統領の訪日ですが,これは今年の2月に行われました日露首脳会談におきまして,今年の秋プーチン大統領が訪日することで一致をしております。そして,その後,これについては何も決まっていないというのが現状であります。以上です。
岸田外務大臣のベトナム公式訪問
【共同通信 市ノ瀬記者】ベトナム訪問に関してですけれども,ベトナムは南シナ海の領有権問題で中国と今年の春に船が相次いで衝突するなど海洋安全保障の面で課題を抱えておりますけれども,これまで岸田大臣を含め安倍総理も力による現状変更は許さないという基本方針で各国で会談されて,いろいろ表明をされていますけれども,今回,ベトナム訪問に関して海洋安全保障の面でどのような意見交換をして,どのような成果を期待されているのか,お願いします。
【岸田外務大臣】力による現状変更は認めないという考え方,これにつきましては,今後ともしっかりと国際社会と思いを共有していかなければならないと考えております。
そして,ベトナムとの海洋安全保障分野での連携ですが,従来から,例えば巡視船艇の供与等につきまして,必要な調査及び協議を進めてまいりました。今回の訪問では,そうした点につきましても具体的な協力の進め方について意見交換等を行っていきたいとは考えております。
こうした点等を中心に,是非ベトナム側と率直な意見交換をしたいと考えています。
舛添都知事の訪韓
【読売新聞 中川記者】舛添都知事の訪韓,そして朴槿恵大統領への表敬についてお伺いします。
時間帯的にもう行われているのか,予定されている状況なのか,今,記者会見中なのでわかりませんが,このことについて,非常に最近,日韓関係は膠着状態から少し光明が差してきたかなという印象を受けているのですけれども,大臣は今後の日韓関係の改善について,この舛添都知事の訪韓を受けて,どのような見通しを持っていらっしゃるか,お聞かせいただけますでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,日韓両国の間においては難しい問題があるからこそ,様々なレベルで緊密な意思疎通を図ることが重要であると考えます。そのような観点から,今回の舛添知事による朴槿恵大統領への表敬は歓迎すべきことであると考えます。両者の間で有意義な意見交換が行われることを期待したいと思います。
我が国としましては,今後とも大局的観点から重層的で,そして未来志向の日韓関係を構築すべく,引き続き粘り強く努力をしていきたいと考えております。
集団的自衛権
【フリーランス 上出氏】集団的自衛権に関連して,また質問させてください。
閣議決定が行われた後,若い人たちに話を聞いて,変化があります。どういうことかといいますと,閣議決定のタイミングで自衛隊から今年18歳になる高校生たちにメールとか郵送で自衛隊の勧誘文書が来たと。それで,ネットなんかでも話題になっていまして,若い人たちが,これが徴兵制につながるのではないかという懸念が,閣議決定のときに比べるとそういう声が強くなっています。
それに対して安倍首相は,徴兵制は憲法上ないということを言っていますが,その論拠,今の常識になっていることが結構覆って,一般の人は集団的自衛権も行使されると思っていますので,徴兵制についても憲法で定めがないからないと短絡的には思わない方もいるので,何が論拠で徴兵制ができないのか。いわゆる明治憲法のような兵役義務がないからなのか。あるいは苦役を強いられないという条項が法律にございますね。それなのか。その辺,大臣としてのお考えがあればお示しくださいますでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,今回の閣議決定につきましては,我が国の国民の命と平和な暮らしを守るために,隙間のない安全保障の法的基盤を構築していかなければならない。こういった問題意識で,あるべき基本的方針を閣議決定したということであります。
そして,徴兵制についてご質問がありましたが,これは再三,委員会等でお答えしておりますように,徴兵制は日本国憲法に反するものであり,全く考えていないということ。これは再三,説明をさせていただいております。
国民の命や,そして平和な暮らしを守るために必要な安全保障の法的基盤の基本方針を閣議決定したものであり,そこからいきなり徴兵制と,憲法に反するような議論が出てくることについては大変疑問に思っております。
いずれにしましても,こうした徴兵制は全く考えていないということをしっかりと説明をしていきたいと考えております。
マレーシア航空機の撃墜とロシア対応
【NHK 渡辺記者】マレーシア航空の撃墜のことでお伺いしたいと思います。
今のところ,米国,ロシア,それぞれがいろいろ情報を出して,実際のところ,どこが撃墜したのかというのはまだはっきり確定していないと思いますけれども,日本政府としての対ロシアの対応,制裁という話がよく出ていますが,そうしたことを決定するに当たって,何らかの事故の原因,それから,どこが撃墜したのかということをはっきりする必要があると思うのです。
これまでのところ,日本としてはそうした真相究明,そういった情報というのは,何をもって日本として認定しようとしているのか。あるいは関係国との情報交換というものは,今はどうなっているのでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,国際的な調査団等によって,いかなる者が関与したのかを含めて,この撃墜の真相が判明しなければならないと考えます。国連の安保理決議にも述べられておりますように,そのためにはこの調査団に対し,撃墜現場への完全かつ無制約のアクセスを即時に提供すること及び撃墜現場の保全を危険にさらす活動を差し控えること。こうしたことが重要であると認識をしています。
そして,この分離派武装勢力の妨害によって撃墜現場での検証活動が円滑に進んでいないことを懸念しております。同勢力の協力を強く促すとともに,ロシアが同事件に関する国際的調査に協力するよう,同勢力に対して影響力を行使することを求めたいと思っています。
そして,我が国としましても,こうした真相究明のための調査に協力する用意があるということ。これは昨日のウクライナのクリムキン外相との電話会談においても申し上げたところであります。
現状,調査につきましては,最も多くの犠牲者を出されたオランダが中心になって調査が進んでいるという話が電話会談の中でも出ておりました。オランダの調査ともしっかりとすり合わせをしなければならないということで,電話会談後,早速オランダと連絡をとり合い,調査について調整を行っているというのが現状であります。
ガザ情勢
【フリーランス 西中氏】パレスチナ情勢のことで質問したいのです。
23日に国連人権理事会で,イスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を直ちにやめるようにという,それと,国際調査団を編成して今のガザ状況について調査するという決議をしました。ただ,米国が反対して,日本政府は欧州と一緒に棄権したのですけれども,その棄権した理由についてお伺いしたい。
それと,今の緊急事態の中でもっと強力にイスラエル政府に対して,ガザへの攻撃をやめるように,特に人道的な見地から,一般市民への攻撃をやめるようにといった働きかけというのは日本政府からできないのでしょうか。
2点お願いします。
【岸田外務大臣】まず,一刻も早くこうした暴力の悪循環を断ち切るために,改めて我が国は関係する全ての当事者に対しまして最大限の自制を求めたいと思います。また,無辜の一般市民に傷ましい犠牲が出ないよう,過剰な力の行使を控え,早急に停戦をすること。これを強く求めなければならないと思います。
そして,先ほどの日本の対応についてのご質問ですが,まずはこの現状についてしっかりと把握した上で我が国の対応を考えなければならない。こういった考えに基づいての対応であります。
いずれにしましても,これは今後しっかりと事態を把握するとともに,今,申し上げましたような我が国の考え方はしっかりと明らかにして,国際社会に訴えていかなければならない。このように考えます。