記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成26年7月8日(火曜日)10時41分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)日豪EPA及び日豪防衛装備品・技術移転協定の署名
【岸田外務大臣】本日の閣議におきまして,日豪EPA,そして日豪防衛装備品技術移転協定の署名に関する決定を行いました。
本日午後,キャンベラにて,安倍総理とアボット首相との間で署名が行われる予定になっております。豪州は普遍的価値と戦略的利益を共有する戦略的パートナーです。これらの協定によって経済や安保分野をはじめ,幅広い分野で両国関係が一層強化されることを通じて,両国の経済が一段と活性化され,さらには地域の平和と安定が進展することが期待されると考えております。
(2)中国地方紙のきのこ雲報道
【岸田外務大臣】2点目ですが,中国の地方紙「重慶青年報」が,日本は再び戦争をしたがっているとして,日本地図を掲載した上で,その広島と長崎の箇所に原爆きのこ雲とみられるイラストを描いて報じていますが,極めて遺憾に思っております。本件が7月1日の閣議決定を念頭に置いているのであるならば,安倍総理は記者会見におきまして,日本が再び戦争をする国になるということは断じてあり得ない。このように明言をしております。
先般の閣議決定は,国民の命と平和な暮らしを守り抜くためのものであり,万全の備えをすることにより抑止力を高めるものであります。日本の平和国家としての歩みに一切変わりはありません。日本の安全保障政策が正確に理解されるように,引き続き各国に丁寧に説明していきたいと考えております。
また,その報道が原爆のきのこ雲を描いているということは,まことに不見識であると考えます。唯一の戦争被爆国の外務大臣として,また,被爆地広島出身の政治家として容認はできないと考えます。現地の重慶総領事館を通じて,速やかに当該紙に事実関係を確認するとともに,事実であるならば厳重に抗議するよう指示をいたしました。
中国地方紙のきのこ雲報道・「盧溝橋事件」77年における習近平国家主席の演説
【産経新聞 山本記者】「重慶青年報」の件で伺います。抗議を指示したとのことですが,具体的には近く,例えば今日とか明日とかに抗議をされるのかというところと,きのこ雲という非常に被爆者の感情を逆なでる,非常に極めて日本に対してあからさまな嫌がらせというか,非常に失礼な「重慶青年報」の最新号なのですが,改めてこういった一連の,昨日,習近平国家主席も盧溝橋事件で日本批判をしているとか,中国のエスカレートする対日批判についての受けとめと,2点お願いします。
【岸田外務大臣】まず,抗議を指示いたしました。できる限り速やかに現地でも対応するものと考えております。そして,中国のさまざまな動きについては,それぞれ内容が異なりますので一概に申し上げることはできませんが,今回の中国の地方紙のこの報道につきましては,日本を批判する記事の中で原爆のきのこ雲をイラストとして使う,これは被爆者の感情も逆なでするものではないかとも考えております。
そして,それとあわせて質問の中で,盧溝橋事件77周年での習近平国家主席の演説についても触れられました。この演説につきましては,7日の午前,盧溝橋事件77周年記念式典において演説が行われたということ,承知をしております。
政府としましては,中国がいたずらに歴史認識を国際問題化するということは,この地域の平和と協力の構築に資するものではないと考えております。第二次世界大戦を含む歴史問題に関する日本政府の立場に変更はありません。また,平和国家としての戦後の我が国の歩み,これは国際社会から高く評価されていると考えております。現在,アジア太平洋地域や国際社会が直面する共通の課題に対して,未来志向の協力を発展させていく,こういった姿勢こそが国家の指導者として求められる姿勢ではないかと考えます。本件を含む歴史問題に係る最近の中国の動向については,引き続き関心を持って注視をしていきたいと考えています。
日朝政府間協議
【日本経済新聞 山口記者】北朝鮮の拉致問題の再調査に関してなのですが,北朝鮮はかつてない体制で今回の調査に臨む一方で,10年前の同じ調査に関してはずさんな調査でつじつまを合わせたような動きもありました。それを受けて,今回の調査に今後実効性と透明性を確保していく上で,日本政府として,これからどういった手立てができるのか,お聞かせください。
【岸田外務大臣】今回,拉致問題を含む全ての日本人に関する問題について,特別調査委員会が立ち上げられ,調査が開始されたわけですが,その調査の行方について,我々は決して楽観しているものではなく,今後も慎重に見極めていかなければならないと考えています。
日本,そして北朝鮮,両国の間においては,最初の報告は夏の終わりから秋のはじめごろである,こういった点において認識を共有しているわけですが,こうした報告に向けて調査が進む中にあっても,まずは北京の「大使館」ルート等,この外交ルートを通じまして,しっかりと北朝鮮の対応や考え方は確認していかなければならないと考えております。
その中で,必要であるならば,さまざまな対応を考えていかなければならないと思っています。5月の両国の合意の中にあっても,日本関係者の北朝鮮滞在ですとか関係箇所の訪問ですとか,あるいは関係者の面談ですとか,あるいは資料の共有,こういったものを行う,こういった点を文書で確認をしているところですので,こうした合意された方法等もしっかりと活用していくことになると考えています。
【NHK 渡辺記者】最初の報告が来る時期までの間の日本と北朝鮮のやり取りについてなのですけれども,現時点で調査は開始されているという理解だと思うのですが,これまでのところ,そういった日本側に対して,何らかの協力,調査において求めてくるとか,日本側から何か要求,注文をつけるとか,そういったそのやり取りは,現時点で行われているのでしょうか。
【岸田外務大臣】特別調査委員会での調査は開始されたものと承知をしていますが,まず今の段階では開始をしっかりと確認することが重要であると考えています。
開始を確認した上で,一つ一つその調査の状況を確認し積み重ねていく,これが重要ではないかと考えています。まだ,これからだと思っております。
【NHK 渡辺記者】そうしますと,まだ調査が始まったということは確認がとれていないという理解でよろしいでしょうか。
【岸田外務大臣】先ほど申し上げましたように,北朝鮮との間においては北京の「大使館」ルートを通じまして,しっかり意思疎通を行っております。確認をしております。
沖縄県知事選
【共同通信 市ノ瀬記者】沖縄県知事選ですけれども,昨日,自民党沖縄県連が仲井真現知事の擁立を確認しまして,仲井真知事も重く受け止めるということで前向きな意向を示しています。その一方で,自民党本部は,まだ仲井真さんの支持ということではなくて,慎重な姿勢である,態度をはっきりと明確にしていませんし,昨日,官房長官が会見で党本部と調整がこれから行われるというようにおっしゃっておりまして,沖縄は那覇市長が立候補するのではないかという動きがありまして,かつ,外務省としましても米軍普天間基地飛行場とか,外交上の懸案を多く抱える地域ですので,昨日の県連の決定と仲井真氏が意欲を示していること,それから,こういう首長選を巡る動きの状況について,大臣はどうお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】今年の秋に予定されている沖縄県知事選挙,言うまでもなく沖縄県民の皆様方に取りまして大変重要な選挙であります。
あわせて沖縄の負担軽減等,様々な課題においても,大変重要な選挙になると認識をしております。こうした大切な選挙に向けて,現在多くの関係者が,様々な努力を積み重ねておられること,これは承知しております。ただ,そうした動きにつきましても今様々な議論が行われている最中でありますので,私の立場から,その動きの一つ一つに具体的なコメント,評価をすることは控えなければならないと考えています。
引き続き関心を持って注視をしていきたいと考えています。
日朝政府間協議
【TBS 法亢記者】日朝協議に戻るのですけれども,先ほどおっしゃった確認ということでいくと,実際北朝鮮のどのような行動について,調査が開始されたというように確認したと言えるのでしょうか。
【岸田外務大臣】外交ルート,「大使館」ルートでのやり取り,具体的なものについては,こういった場で公にするのは控えなければならないと思っています。
我が国として,我が国政府として責任を持って調査の開始を確認し,何よりも具体的な結果に結びつけるよう,これからしっかり努力をしていきたいと考えています。