記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年6月27日(金曜日)10時49分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)岸田大臣のカンボジア訪問

【岸田外務大臣】6月29日(日曜日)から7月1日(火曜日)まで,ASEANの対日調整国であるカンボジアを公式訪問いたします。
 フン・セン首相,ハオ・ナムホン外相と会談を予定しております。近年日本企業のカンボジア進出は約3倍に増加するなど経済関係も深まっております。昨年の首脳往来を踏まえ,「戦略的パートナーシップ」をさらに強化していきたいと考えております。

(2)イラク情勢:国内避難民に対する緊急無償資金協力

【岸田外務大臣】先ほどの閣議で,イラク北部の国内避難民の支援のため,国際機関を通じて,600万ドル,約5億8,200万円の緊急無償資金協力の実施を決定いたしました。また,昨26日,日本のNGOによるイラク北部避難民キャンプ等での緊急人道支援活動への約5,000万円の供与も決定いたしました。
 我が国は,武装勢力による攻撃を強く非難いたします。イラク政府と国民への支援を継続していきたいと考えております。

イラク情勢:国内避難民に対する緊急無償資金協力

【NHK 渡辺記者】今,お話のありましたイラクへの支援の件ですけれども,改めてですが,今こうした支援をイラクにする日本として考えている意義,それから狙い,どういったことを期待しているか,改めてお願いします。

【岸田外務大臣】まず,我が国はイラク政府のテロとの戦いを支持しております。そして,今回の戦闘によって,イラク国内において多くの国内避難民が発生しています。こうした国内避難民に対しまして人道的見地から,我が国としまして支援を決定した次第です。
 今後とも,我が国としましては,国際機関等とも連携しながらイラク国内の安定のためにしっかりと貢献をしていきたいと考えております。

集団的自衛権

【共同通信 斎藤記者】集団的自衛権に関する閣議決定に向けた取り組みについてお伺いしたいと思います。
 一つが集団的自衛権に関する議論の中で,安倍総理はこれまで,記者会見や国会答弁で,南シナ海での力による一方的な現状変更,力による現状変更,南シナ海ですね,これに何度か言及しておられるわけです。それに合わせて総理は,そうした中で私は総理として,また,政府として,国民の命と平和な暮らしに責任を持っている,あらゆる状況にしっかり対応できるようにすることが大切だと何度か繰り返されております。
 そこでお伺いしたいのが,集団的自衛権の行使を可能とした場合,我が国が,総理が指摘されている南シナ海情勢に何らかの形でコミットできるような法的枠組みが作れるようになるのかどうか,あるいは,南シナ海情勢には結論としてコミットできないのかどうか。やはり,国民からすれば南シナ海という固有名詞を総理が挙げている以上,そこに何らかの関与ができるのかどうかということは,一つのポイントになると思います。そこで総理の発言を補完する観点から,集団的自衛権の議論,そして,南シナ海,関係があるのかないのか,外務大臣の立場からご説明していただければと思います。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘のように我が国は,力による一方的な現状変更は許容しないという法の支配を重視するということ,これは再三申し上げてきたところです。
 しかしながら,集団的自衛権との関係ということになりますと,集団的自衛権の問題も含めて,我が国の安全保障の法的基盤について議論が行われ,そして,今,与党において協議が続けられている最中です。ですから,この時点で集団的自衛権の行使を前提として,私(大臣)の立場から,何かそれについて申し上げるというのは適切ではないと考えます。
 協議の行方をしっかり見極めた上で,政府としての方針を確定していくことになると思いますが,こうした議論の行方を見守っていきたいと考えています。

【共同通信 斎藤記者】総理は,これまでの国会答弁,記者会見で集団的自衛権についてお話しされるとき,北朝鮮という国名を何度か挙げられています。
 例えば,この前パネルを示されてお話をされたときも北朝鮮という名前を総理は触れられています。一方で中国という名前は触れないで,南シナ海とか,あと,力による現状変更は認められないという言葉をちりばめながら,集団的自衛権の必要性について示唆されるようなご発言を繰り返されていることはご案内のとおりだと思いますが,そこでお伺いしたいのは,集団的自衛権というものと,集団的自衛権を含む安全保障政策の見直しと,それから,中国の軍事的台頭というものは,結論として関係があるのかないのか,つまり関係があるならば,北朝鮮と同じように中国という名称に言及しても良いと思うのですが,しかし,中国という名詞を総理を含めて担当閣僚,明言しておりません。
 そうすると,安全保障政策の見直しに,中国のいわゆる最近の台頭というものが関係しているのか,あるいはしていないのか,国民からすると見づらいところがあると思いますので,その点を大臣の方から因果関係があるのかないのか,ご指摘いただければと思います。

【岸田外務大臣】ご質問は,中国の軍事的拡大,台頭と集団的自衛権の議論の関係についての質問でありましたが,そもそも,集団的自衛権の議論については様々な議論が行われていますが,議論そのものは特定の国とか,特定の事態,こういったものを想定して行うというものではないと認識をしております。
 我が国の基本的な安全保障の法的基盤,これについて議論を行うということでありますので,ご指摘のような関係はないと私(大臣)は認識をしております。

米中関係

【フリーランス 上出氏】米中関係についてご質問いたします。最近,米国の議会等の国務省の幹部の発言を聞いていますと,これまでは非常に革新的利益とかという中国の新しい大国関係について,それを否定しないような,そういう米国側の対応がありましたが,最近,南シナ海を含めたいろいろな中国の進出を意識した発言で,これまでよりトーンが強く,中国に対して批判的になっております。
 これは本質的なものなのか,それとも,ケースバイケースによる言葉なのか,その辺のとらえ方,今言ったような米中関係,更には日米関係にもつながってくる問題でもありますので,その辺りのご見解がございましたら,お示しいただければと思います。

【岸田外務大臣】米国のこうした地域情勢に対する見方とか立場について,何か申し上げるような立場に私(大臣)はありませんが,米国としましても,地域情勢,刻々と変化をしている,あるいは,緊張を感じるような事態も発生している,様々な事態に対して様々な見方をされているのではないかと想像はいたします。
 いずれにしましても,私(大臣)の立場から米国の立場,考え方,見方,これを解説する立場にはないと考えます。

日中・日韓関係

【産経新聞 山本記者】日中と日韓関係について伺います。来週,中国の習近平国家主席が韓国を訪問されますが,反日の姿勢を両国がまた強めてくることも予想されますが,現状の日中関係と日韓関係についての大臣のお考えと,まだいずれも首脳会談が実現していない中,今後どういうように両国の外交を進めていくのか,見通しについてお願いします。

【岸田外務大臣】日中関係,日韓関係についてご質問をいただきました。中国も韓国も我が国にとりまして大切な隣国であります。その両国との間においては,難しい課題が存在し,難しい局面も存在するわけですが,是非この大局的な観点から,未来志向で両国との関係を考えていかなければならないと思っております。
 そのためには,やはり対話を積み重ねていく,意思疎通を積み重ねていくことが重要だと考え,従来から対話のドアはオープンであるということを再三申し上げてきました。この難しい課題が存在するからこそ,その難しい局面にあるからこそ,特に高い政治のレベルでの対話,意思疎通が重要であるという認識をしております。ぜひこうした我が国の考え方,あるいは働きかけにしっかり両国にも応じていただきたいと強く願っております。

ODA大綱の見直しに関する有識者懇談会の報告書提出

【朝日新聞 広島記者】昨日ですが,ODA大綱の見直しに関する有識者懇談会の報告書,大臣お受け取りになられました。その中で,軍に対してODAを直接供与できる,それを容認するような提言がございましたけれども,それに関しまして大臣のお考えと,それから,今後まとめられる外務省の案に,それについてのことを反映されるのかどうか,これをお聞かせください。

【岸田外務大臣】ご質問の中で,昨日提出された報告書の中で,ODAを軍に提供できるという対応があるという御質問がありましたが,まずその点,全く事実と異なっているのではないかと認識をしております。
 あの報告書の中,是非しっかりと見ていただきたいと存じますが,この報告書の中におきまして,まず基本方針として,非軍事的手段による平和の希求,これを基本方針にするべきである,こういった方針がまずしっかりと明記をされています。そして,その報告書の中で,例えば災害援助等の非軍事目的の支援であれば軍が関係しているがゆえに一律に排除すべきではない,こういった記載があるわけですが,この点につきましても,例えば昨年のフィリピンの大規模な台風被害に際しまして,JICAチームと,あるいは自衛隊の間で緊密な連携が図られた。こういった例は存在いたします。ですから,こういった災害援助等においてODAをどう活用していくかということについて,いろいろと工夫をし,そして検討し,判断をしていく,こういったことは当然重要なことではあると認識しております。
 いずれにしましても,私(大臣)自身,国会答弁等で再三申し上げておりますように,ODAを軍事目的に利用すること,これは全く考えておりません。こうした基本的な考え方につきましては,今後,年末に向けてODA大綱の見直しの作業を行うわけですが,その作業においても全く変えるつもりはないということは申し上げておきたいと存じます。

【日経新聞 宮坂記者】今の件に関連してなのですけれども,今までと自衛隊のほか,他国軍との関係でODAによる支援のあり方という,できることというのを変えていく必要があるというように,大臣はお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】他国軍との関係,他国軍といってもいろいろなケースがありますが,今,申し上げたように災害,あるいは民生目的等において,こういった非軍事的な目的であるならば,軍が関与しているから全くだめだという考え方については,どうであろうかという問題提起が報告書の中で行われているということであります。こういった指摘はしっかり受けとめて,これから議論はしていきたいと思います。
 これからODA大綱見直しに向けては,従来から申し上げておりますように,パブリックコメントに諮るとか,あるいはNGO,経済界を初め,多くの関係者の皆様方のご意見を承っていきたいと考えております。
 そういったご意見を聞きながら,今回の報告書をしっかり受けとめて,政府としての方針を決めていきたいと考えています。しかし,その際に先ほど申し上げましたように,軍事目的にODAを利用するということ。このことは全く考えておりませんし,基本的な考え方は全く変わりないということ。これは強調しておきたいと思っております。

集団的自衛権

【フリーランス 上出記者】集団的自衛権に戻ります。最近の与党協議の中で,高村さんあたりが,一度安倍首相がはっきり否定しておられました,いわゆる集団安全保障の可能性についても踏み込んで,将来そういうことはあるかもしれないという言い方はしませんけれども,そういうニュアンスの,そこはまだこれからの議論だと言っております。
 外務大臣の立場として,1回,安倍首相がはっきり集団安全保障,国連なんかのそういうものには参加しない。多国籍軍とか,そういう問題について外務大臣としてはこの辺の議論,今の議論を受け,どのように,これだけはだめなのか,あるいは可能性があるのか,その辺のことをお示しいただければと思うのですが。

【岸田外務大臣】与党協議におきましては,ご指摘のように集団的安全保障についても議論が行われたということは承知をしております。しかし,議論が行われ,そして今も議論が行われている最中でありますので,この段階でそれについて何か確定的なことを申し上げるのは適切ではないと思っています。
 与党としてしっかりとした議論を行っていただき,この結論を出していただき,政府としてもしっかり方針をこれから決定したいと考えています。

日朝政府間協議

【NHK 渡辺記者】来週,日朝の局長級政府間協議が開かれますけれども,改めてなのですが,北朝鮮から特別調査委員会の内容を示された上で,日本として制裁を解除する,その判断をするまでの時間というのは,大体どのぐらい考えていらっしゃるのでしょうか。

【岸田外務大臣】今回行われる協議ですが,これは先般の日朝における合意をフォローアップするためのものです。北朝鮮側からこの特別調査委員会の組織,構成あるいは責任者といったものに関する説明を受ける予定にしております。
 政府としましては,こうした説明,情報を政府全体としてしっかり見極め,適切に判断することが重要であると考えています。その説明を受けた後のタイミング等については,これはまたこれから説明を受けるわけですし,説明の内容についてもまだ今の段階ではわからないわけですから,今の段階でタイミング等について何か申し上げるのは適切ではないと思います。何よりも説明をしっかりと見極め,判断する。このことが重要だと考えています。

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