記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年6月24日(火曜日)9時48分 於:本省会見室)

冒頭発言-イラク情勢:エルビル臨時事務所の開設について

【岸田外務大臣】イラク情勢の悪化を踏まえ,邦人保護に一層遺漏なきを期するため,本24日よりイラク北部クルディスタン地域のエルビル市に,在イラク大使館の臨時事務所を設置いたします。また,外務本省内においても,外務省連絡室を立ち上げました。
 クルディスタン地域は引き続き安定していることを考慮し,在イラク大使館員数名がこの臨時事務所を拠点とし,邦人保護活動,あるいは日本企業支援等を行っていくことにしています。

イラク情勢:エルビル臨時事務所の開設について

【NHK 渡辺記者】今,発表のありました臨時事務所についてですが,イラク国内にもう一カ所開設するというのは狙いを教えてもらいたいのですが,これはバグダットの治安が悪いということで緊急避難的にこちらに移すと,そういう意味合いなのでしょうか。

【岸田外務大臣】今般のイラク情勢の悪化に伴って,イラク国内のバグダット等に滞在している邦人が比較的治安が安定しておりますエルビルに一時的に滞在しております。こうした状況ですので,これら邦人に対する情報提供,あるいは邦人保護活動,こうしたことに遺漏なきを期するためエルビルに臨時事務所を設置した,こういったことであります。
 バグダットの大使館の機能を補完するということが,この臨時事務所に期待されております。

東京都議会のセクハラやじ問題

【フリーランス 上出氏】大臣の所管とは違いますが,最近起きた東京都議会のやじ問題について所感をお伺いします。
 ご本人が名乗り出まして,まだ他にもいるらしいということで,完全に解決したわけではないようですが,自民党の石破幹事長なども,一応,ちゃんときちんとしなければならないと言っているのですが,ただ,それ以上何をするかという辺りがはっきり見えてきておりません。
 当然もう国際的に非常に報道されておりまして,日本の安倍内閣が女性重視ということで成長戦略に掲げても,これでは矛盾したことになるので,自民党としてはかなり厳しい措置がとられると普通は思われているのですが,まだそういうのは出ておりません。
政府としても,女性の問題としては関わりがあるかと思うのですが,特に外国との関係も含めまして,大臣として今回の問題,どういう措置がいいかということについて,お聞かせいただきたければと思うのですが。

【岸田外務大臣】まず,どんな場面であってもセクハラと取られるようなやじ,いわゆるセクハラやじと言われていますが,こうしたものはあってはならないと思います。
 特にご指摘のように,安倍内閣としましては,女性の輝く社会作りを推進するということで政策を進めております。
 安倍内閣の立場としても,こうした事態はきわめて遺憾なことであると考えます。ただ,ご質問は具体的にどう対応するべきなのかということですが,基本的に政治家の出処進退は自ら決めるべきものであると認識をいたします。そして,都議会,あるいは党において,これに対してどう対応するのか,こうした議論があると承知していますが,本人自身も不適切な発言であると認めておられるようであります。これは都議会,あるいは党におきまして,こうした状況を踏まえて適切に対応すべきものであると考えます。
 外務大臣の立場から,具体的にこれについてどうするべきだということは控えさせていただきます。

【共同通信 市ノ瀬記者】都議会の発言も含めて,閣僚からも失言が続いたということで,安定した支持を続けている安倍政権ですが,気の緩み,慢心がでているのではないかという指摘もありますが,どう受け止めていらっしゃいますか。

【岸田外務大臣】そうしたご指摘があるとしたならば,それは謙虚に受け止めなければならないと思います。今,今年の通常国会は閉幕いたしましたが,引き続き日本のおかれている立場,決して楽観できるものではありません,経済をはじめ様々な課題に直面しております。政府としましても,こうした様々な課題に大きな責任を担って立ち向かっていかなければなりません。改めて政府としましても,緊張感を持って,一体感を持って取り組んでいかなければならないと考えます。

河野談話作成過程等の検証

【共同通信 斎藤記者】先に出ました,河野洋平官房長官の談話に関する検証結果報告についてお伺いします。
 ご案内のとおり,昨日,韓国側は別所大使に対して申し入れを行いました。これに対して,菅官房長官は記者会見で,日本の立場を説明することに尽きると。こうおっしゃられたわけですけれども,では,その日本の立場をどのように説明していくのか。検証結果報告書は二十数ページにわたっております。様々なことが書いてあります。ただ,韓国世論,韓国側に端的に,的確に伝えるためには,ある程度,言葉を絞ってわかりやすく説明する必要もあるかと思います。
 大臣,どのような言葉で,どのように説明をしていくお考えか,ご認識をお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】まず,今回のこの検証作業ですが,予算委員会で議論になり,国会における求めに応じる形で検討チームを立ち上げ,そして,河野談話の作成過程について客観的に実態を把握する。こういったことを目的として行われたものであります。作成過程の事実関係を確認するということで行われた作業であります。
 韓国側には,まず日本政府としましても,今後とも河野談話を見直すことはなく,これを継承するという立場は変わらないということ。これは明確に説明しておりますし,これをしっかりと説明していかなければならないと思っています。
 報告書は,河野談話の信頼性を一切傷つけるものではなく,その目的・意図は,国内にあった河野談話に対する疑念に対し客観的事実をもって答えるものであったと考えます。その結果,河野談話は歴史的事実に基づき,未来志向の日韓関係を築くため,両国政府が努力した結果であったということがこの検証によって示されていると考えています。
 こうした点につきまして,丁寧に引き続き韓国側に説明していきたいと考えます。

【共同通信 斎藤記者】今後,日本としていわゆる従軍慰安婦問題にどう取り組んでいくかについて一点お伺いしたいのです。
 今後も日韓局長級協議を両国の合意に基づき続けていくと思われますが,その中で日本政府として丁寧に立場を説明することに加えて,何らかの措置を講じる余地はあるのかどうか。その点についての大臣のご認識をお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】今後とも,日韓局長級協議を初め,様々な場を通じまして対話は続けていきたいと考えています。こうした対話を積み重ねることによって,未来志向の日韓関係をつくっていきたい。このように思っています。そして,その対話においては,様々な課題,双方とも率直に考え方,立場を述べ合い,対話をしていくことが重要であると考えています。
 まずは,我が国のこうした歴史認識等につきましても,今日までの立場,さらには今日までの取り組み等についてもしっかり理解を得るべく説明をしていくことが重要だと考えております。対話・協議で,そうしたことから一つ一つ積み上げていきたいと考えています。

【フリーランス 西中氏】今の関連なのですが,河野談話の検証ということですが,1つは強制性を,強制動員というものをぼやかすために重点が置かれているような報告書のような気がします。その点についてどう思われるか。
 あと,ことし7月に自由権規約委員会があり,日本審査がございます。その中で,今までも国連人権機関からも再三にわたり,この従軍慰安婦問題の早期の解決をということを日本政府に対して勧告が出ているわけですが,これは韓国政府と二国間だけの関係ではなく,中国やインドネシア,フィリピンといった国に対する日本政府の対応も求められているわけです。
日韓請求権の協定で既に解決済みというのが日本政府のこの間の一貫した立場ですが,こうした国際機関からの,国際社会からのこの問題の解決を求める声に対して,どのように外務大臣として取り組んでいかれたいかということを,河野談話の今回の検証との関係も踏まえて,お考えをお伺いしたいのです。

【岸田外務大臣】まず,今回の河野談話の検証作業ですが,これは国会の要請に基づき,河野談話の作成過程等について事実関係を明らかにする。こういったことを行うために進められたものであります。あくまでも,この事実の確認であります。
 よって,我が国としましては,従来の歴史認識は全く変わっておりませんし,立場も変わっておりません。河野談話を見直すことは全く考えておりません。そして,国際社会に対する説明ですが,こうした河野談話の検討作業の内容についても,ぜひ米国はじめ他の国々にも丁寧に説明をしていきたいと考えています。
 日韓請求権協定に対する我が国の立場は,従来から一貫しております。この立場は全く変わりませんが,こういったことも含めて,これは引き続き丁寧に説明していくことが重要であると考えております。
 いずれにしましても,こうしたお互いの,日韓間の理解を丁寧に進めることによって,我が国としましては未来志向で日韓関係を進めていきたい。こういった思いであることを国際社会にしっかり説明していくことが重要であると考えます。

安保法制

【朝日新聞 村松記者】安全保障の法整備に関する与党協議が現在も続いておりますが,その中で国連決議に基づく集団安全保障についての議論も,今,進められています。
その中で,外務大臣として,こうした国際環境の中で集団安全保障という,これまで日本政府は武力行使との一体化というところで非常に慎重な姿勢をとってきたのですが,こうした部分について,国際協力という観点から積極的に参加すべきと考えるかどうか,ご見解をお伺いできますでしょうか。

【岸田外務大臣】今,与党協議が進められ,その中において集団安全保障についても議論が行われていることは当然,私(大臣)も承知しています。こういった点も含めて,我が国のこの安全保障の法的基盤について議論が行われているところであります。
 まだ与党として議論が続いている最中でありますので,この時点で何か私(大臣)の方から個別の課題について断定的に申し上げるのは適切でないと思っております。
 是非,こうした点,重要な点につきましても,与党におきましてしっかりと議論をしていただき,そして,それも踏まえて政府として結論を出していきたいと考えます。

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