記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年5月30日(金曜日)8時23分 於:官邸エントランスホール)

日朝政府間協議

【TBS 山本記者】ストックホルムでの日朝協議において,全面的な拉致問題に関する再調査をスタートさせることを発表されましたが,外務大臣として評価をお願いします。

【岸田外務大臣】今時,日朝政府間協議におきましては,北朝鮮側は1945年前後の北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び,墓地,残留日本人,いわゆる日本人配偶者,拉致被害者,及び拉致の疑いが排除されない行方不明の方々を含む全ての日本人に関する包括的,かつ全面的な調査を実施することを約束いたしました。
 こうした調査のために,特別調査委委員会の立ち上げも文書において確認されたところでありますが,こうした具体的な措置も含めて,取るべき行動措置について,文書の形で互いの意思を確認することができたことの意義は大変大きいと考えています。
 日朝間の諸懸案解決の向けた重要な一歩であると認識をしております。

【TBS 山本記者】安倍政権は拉致問題の解決を最優先課題としていますが,一方で今回は全ての日本人を含む包括的な解決ということを言っています。その包括的に行うという形がむしろ,再調査に時間がかるということに影響するのではないかという懸念がありますが,それについてはどのようにお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】ミサイル開発,核開発,そして拉致問題,こうした諸懸案を包括的に解決していく,こうした基本的な我が国の方針については全く変わりはありません。しかし,その中にあって,拉致問題は我が国が主体的に取り組んでいかなければならない課題であります。
 その拉致問題を中心とする全ての日本人の関わる問題について,今回日朝間で一つの合意を得ることができたわけですから,是非,この合意を重要な一歩として,しっかりとした成果につなげていきたいと考えています。

【NHK 渡辺記者】北朝鮮が再調査実施を開始した段階で制裁を解除するということになっていると思うのですが,調査の結果がある程度展望があるから,そういうような調査開始時点での制裁解除という,かなり歩み寄っているというか,そういう印象を受けるのですけれども,調査の見通し,それから特別調査委員会の信頼性というのは,そういったものは確証は得られているのでしょうか。

【岸田外務大臣】こうした調査のための特別調査委員会ですが,これにつきましては調査を開始するまでに,北朝鮮側が特別調査委員会の組織,構成,あるいは責任者,こういったものをしっかりと確認し通知をすることで一致をしています。
 そして,文書の中にも書かれていますが,調査にあたりましては,その内容について,しっかりと日本側に通知をする,日本側に対して,内容について,まず立ち上げ調査を開始するまでに組織,構成,責任者,こういったものをしっかり通知するということになっている。そして,調査にあたっても,随時日本側に通報していく,そして,それを確認できるよう,日本側関係者による北朝鮮滞在,あるいは関係者との面談,関係場所の訪問を実現させる,そして関連資料を日本側と共有して適切な措置をとる,これは文書の中で明記されていますし,これを確認しています。
 こういった具体的な措置を文書でしっかり確認をした,こういった点が,今回重要なポイントであると認識をしています。こういった仕掛けを通じて特別調査委員会においてしっかりとした結果を出してくることを期待しています。

【日本テレビ 中村記者】今回,制裁解除ということですけれども,実質な再調査をした後に,本当にしっかりした結果が担保できない中で解除すると,開始時点でと,それは時期尚早ではないかというような見方もありますけれども,いかがですか。

【岸田外務大臣】お答えは今の答えと重なるわけですが,この調査を行うことによってしっかりとした成果に結びつけていかなければなりません。
 今回,特別調査委員会に関しましては,開始までにしっかりとした組織,構成,責任者を明らかにする,そして,調査内容についても日本側としっかり共有する,そういった点を両国の間で確認をしたということであります。
 こういった具体的な措置を文書で確認したということを受けて,我が国としての措置も考えたということであります。
 いずれにせよ,北朝鮮から前向きな対応,そして,具体的な成果が上がることが重要だと思っております。そのために我が国としましても,最大限の検討を行い,交渉を行い,そして,それが今回の結果に至ったと認識をしています。

【日本テレビ 中村記者】最終的に,今回合意受け入れを決断したのは,昨日の関係閣僚会議と理解してよろしいでしょうか。

【岸田外務大臣】関係閣僚会議,四大臣会合を行いました。政府としてはそこで確認をしております。

【NHK 渡辺記者】そうしますと,今後スケジュール,いろいろやっていく中で北朝鮮との接触,やり取りというのは増えてくると思いますけれども,日本側としては,この一連のやり取りをしていく中で,何か外務省内で例えば特別のチームを作るとか,そういう対北朝鮮で態勢を変えるということはあるのでしょうか,今回のことで。

【岸田外務大臣】まだ,今の時点で具体的なものは何も決まってはいませんが,まず北朝鮮側とは,これからも北京の大使館ルートを通じて,しっかりと意思疎通を図り連絡を取り合っていくことになると存じます。まずは,合意した点,一致した点に基づいて,しっかりと作業が進んでいくことを見守っていきたいと存じます。
 その上での対応については,進み具合をしっかり見極めた上でということになると思っています。

領土に関する対外発信

【読売新聞 横山記者】領土問題でお伺いしたいのですが,今,南シナ海で中国とベトナムが対立していて,ベトナム側が中国の酷さを伝えるために,海外のメディアを現場に連れて行ったりして,こういう現状を伝えようとしているのですけれども,日本側も対外発信の一環として,尖閣とか,そういうところに連れていくというのは,日本として検討をしたりとか,参考になるというお考えはありますか。

【岸田外務大臣】中国とベトナムとの南シナ海における対立については,国際社会共通の関心事項であり,我が国としましても,この推移について注視をしています。その上で尖閣においてどう対応するかという話ですが,尖閣における我が国の立場,対応につきましてはこれまでも対外発信に努めてきました。今後とも国際社会に対して,また,国民に対しても,分かりやすい対外発信をしていかなければならない,これは当然のことだと思っています。様々な工夫は今後とも,続けていきたいと思っています。

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