記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成26年5月23日(金曜日)9時52分 於:本省会見室)
冒頭発言-タイにおける政変
【岸田外務大臣】22日,タイにおきまして,プラユット陸軍司令官を中心とする国家平和秩序維持委員会が国家の全権を掌握することを発表したと承知しております。昨日夜,私(大臣)のほうから,このような事態が発生したことは遺憾であり,我が国は民主的な政治体制が速やかに回復されることを強く求める旨の談話を発表させていただきました。
また,これまでのところ,在留邦人に被害等が出たとの情報はありませんが,引き続き,在留邦人に対して情報提供・注意喚起を発出するなど,邦人の安全に最大限の注意を払っていく考えです。
現地の情勢を的確に把握し,邦人の安全確保に万全を期するため,官邸においては,国家安全保障局及び内閣官房事態室が中心になって,関係省庁と対応を随時協議する体制をとっております。また,外務省におきましても昨日夜,石川南部アジア部長をヘッドとする連絡室を立ち上げました。なお,現地大使館には既に20日付で緊急対策本部を設け,引き続き対応に当たっております。
日朝政府間協議
【共同通信 鳥成記者】来週の日朝協議についてお伺いしたいのですが,古屋担当大臣が昨日談話を発表されまして,その中で,北朝鮮が前向きな措置をとるのであれば,日本が独自にとっている措置を段階的に解除することは排除しないという談話を発表されました。その中で,前向きな措置というのはいわゆる拉致問題の再調査の始まりを指すのか。あるいは開始だけではなくて,実際に再調査が進展した後の状況を指しているのか。この前向きな措置というのは何を指すのかを教えていただけますでしょうか。
【岸田外務大臣】来週開催されます日朝政府間協議ですが,現時点では協議の前でありますので,協議の内容について予断をするようなことを申し上げるのは適切ではないと考えております。
ただ,今次協議でも,この拉致問題について日本政府の基本的な立場に基づいて,そして,前回の協議も踏まえつつ,北朝鮮から前向きな対応を引き出す,こうした協議にしたいと考えております。
集団的自衛権
【フリーランス 上出氏】集団的自衛権のことに関して,簡単に2点。
私は残念ながら参加しておりませんが,前回,前々回のぶら下がり会見で日米ガイドラインのこと,それから,丁寧に説明することについて言っておられるので,そのことについて,日米ガイドラインは,今の予定でいきますと,現在の憲法解釈の枠内でされるということなのですね。それがそうだということが,やった後で何らかの形で公開されるのでしょうか。要するにほとんど固まった場合,先取りをしてやるということも考えられなくはないのですけれども,そういったことはないのかどうかということが第一点。
もう一点は,国民や近隣諸国に丁寧に説明するということを大臣は繰り返し言っておられます。一方,公明党などは国民的議論が必要であるということを強調されています。 どんな形で丁寧な説明という,例えばパブリックコメントとか公聴会とか,いろいろなやり方があるかと思うのですが,本当に国民の議論にしていくようなやり方というイメージを大臣はどういうようにお持ちでございましょうか。この二点についてお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】まず日米ガイドラインの見直しについては,昨年10月の日米2プラス2において,本年の年末に向けて,この見直しを行うといったことで合意をしております。そして,集団的自衛権を初めとする我が国の安全保障の法的基盤の議論については,先日,この安保法制懇の報告書が出され,今,政府としては与党の協議も見守りつつ,この議論を進めているところであります。よって,このガイドラインの見直しそのものについては,現時点では現在の我が国の法的基盤,憲法解釈に基づいて検討を進めていくことになります。
そして,先取りしてというお話もありましたが,この集団的自衛権を初めとする法的基盤の議論自体,これは政府・与党の議論を開始したところでありますので,まだ先行きは全く予断できない,結論は何も決まっていないわけですので,今の段階で先取りも何もできる状況ではないと思っております。
丁寧な議論,国民にわかりやすい議論という部分につきましては,議論自体は政府として与党ともしっかり議論を行い,そして,その上で政府の方針を確定するということをこれから考えているわけでありますが,既に国会におきまして,この課題につきまして議論は行われております。今後とも国会においての議論は行われることになると思いますし,政府の方針が確定してから後も国会で議論が行われ,さらに必要であるならば,さまざまな具体的な法案も国会に提出されることになります。そこでまた国会の審議が行われることになります。
等々,国民の代表であります国会においてしっかり議論をされる,このことがまず国民の中でしっかり議論が行われる際に基本であると思っております。そして,こうした国会の議論を国民の皆様方にもしっかり見ていただき,この問題に対する理解を深めていただく,こういったことも大切であると考えます。いずれにしましても,この国民の代表である国会での議論を丁寧に進めることが基本であると考えております。
【フリーランス 上出氏】例えば特定秘密法案のときなんかは一応,パブリックコメントとかがありました。そういう形で,何らかの形で国民が直接,議論に参加できるような方法はお考えではないですか。いわゆる政策の大転換と一方で言われておりますので,この問題について,そういう可能性があるのかどうかというあたりのイメージはいかがでしょうか。
【岸田外務大臣】今,そういった具体的なものは,政府として何か決めているものはないと思っていますが,ただ,これから政府の方針を決定した上で,結論自体もまだどうなるかはわかりません。そうした内容を踏まえて,国民の皆様方にしっかりと説明責任を果たすべく,最適な方法を考えていくべきであるとは思っております。
タイ情勢
【AFP通信 長谷川記者】タイ情勢についてお尋ねします。昨日の談話で,民主的な政治体制が速やかに回復されることを強く求めるということがありましたけれども,具体的に誰に対して,どのような形で日本政府としてはそれを求めていくかということを,今の時点で何か方針がありましたら,よろしくお願いします。
【岸田外務大臣】これはタイの国の将来,そして政治体制は,タイの国民の皆様方が決めていかれるものであると承知をしております。そして,その中にあって,是非,民主的な政治体制が回復されることを期待するということでありますので,タイの国の誰にというよりも,タイの国民の皆様方が将来を決めていく際に,民主的な体制が回復されることを期待する,そういった趣旨で申し上げた次第です。
ナルィシュキン・露国家院議長の訪日
【共同通信 斎藤記者】ロシアのナルィシュキン議長の来日でお伺いいたします。
ナルィシュキン議長を迎えるにあたって,我が国政府としてどのような形で対応するのか,どなたが表敬を受けるのか,総理が表敬を受けるのかどうか。ウクライナ情勢がある中で,議長を日本が受け入れることが,何か国際社会に誤ったメッセージとして伝わる懸念があるのかないのか。
すみません,今,二問重なりましたけれども,一つ目は政府としてどう対応するのか,誰が表敬を受けるのが望ましいのか,これが一点目です。二点目は,こうした情勢の中で議長が来られることが,国際社会に,特に欧米に対して誤ったメッセージとして伝わる懸念がないのかどうか,大臣としてのご認識をお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】ナルィシュキン議長は,6月はじめの日本におけるロシア文化フェスティバル,こうした行事の開会式の出席のために訪日の意向を示されているということを承知をしております。ただ,訪日の詳細ですとか,あるいは誰に会うとか,そういったことについては,全く決まっていないと承知をしております。そして,このことが誤ったメッセージを伝えることになるのではないか,影響があるのではないか,この質問につきましては,ナルィシュキン議長,今申し上げました日本におけるロシア文化フェスティバル,こうした文化的な会合に出席する意向を示しております。こうした性格の行事に出席することなど,様々な要素,これは総合的に判断しなければならないと思います。
いずれにせよ,我が国としては誤ったメッセージを発することにならないように,しっかりと注意をしていかなければならないとは考えます。
日朝政府間協議
【共同通信 鳥成記者】先ほど,質問した日朝政府間協議の関係で,もう一点お伺いします。古屋大臣は,昨日談話を発表された際の記者会見で,いわゆる制裁解除のタイミングに関して,前は再調査開始と同時だったけれども,現実にはそういう段階にはないという発言をされまして,要は再調査を始めただけでは制裁解除の条件にはならないという考えを示されているのですけれども,これは日本政府の方針というように理解してよろしいのでしょうか。
【岸田外務大臣】古屋大臣の発言内容について,私(大臣)がコメントするのは適切ではないとは思いますが,北朝鮮に対する措置のあり方については政府内で不断の検討を行ってきております。ただ,現時点では今後の方針について,何ら具体的に決まったものはないと承知をしております。
我が国としましては,引き続き北朝鮮に具体的な諸懸案解決に向けた,具体的な行動を引き出すために,最も効果的な方法は何なのか,これをしっかり検討し,最も効果的な方法をとるという方針で従来から臨んできました。今後とも,そういった考え方に基づいてしっかり検討していきたいと考えています。
ウクライナ大統領選挙
【NHK 渡辺記者】今度のウクライナの選挙の関係ですけれども,現地の方で,やはり親ロシア派と,それからウクライナの軍との間の衝突で亡くなられた方がかなり増えているという数字が出ていますけれども,その選挙が週末に行われますけれども,選挙の前にこうした混乱が出てきていることについて,日本としてはどういうように,何を求めていくのか,その辺も含めてお願いできますでしょうか。
【岸田外務大臣】5月25日に予定されておりますウクライナの大統領選挙ですが,ウクライナの将来にとって,そして,今の事態を平和的に解決する上において大変重要な選挙であると考えています。この大統領選挙,世界中から注目を集めていると承知をしています。
こうした大統領選挙については,平和裡に選挙が行われ,そして,しっかり,正当性が確保されるために我が国としましても,しっかり貢献をしていかなければならないと考えています。よって我が国としましてはOSCEの選挙監視団に10名の要員を派遣すること,これを既に決定をしております。
是非,この大統領選挙が平和裡に,そしてしっかりと行われるために我が国としましては貢献していかなければならないと考えています。
日朝政府間協議
【テレビ朝日 藤川記者】北朝鮮の関係について,もう一つお尋ねしたいのですが,北朝鮮は日本との協議に応じるという姿勢を示す一方で,韓国に対しては砲撃を行うという挑発的な行動を続けていますが,こうした二面的な行動について,どのようにお考えになるかということと,こうした挑発行動についても,週明けの協議で先方に対して話をしていくのかどうかということについてお願いします。
【岸田外務大臣】ご指摘のように報道等によりますと,北朝鮮軍が砲撃を行う,そして,韓国軍が対応射撃を行った,こういったこと,報道等を通じまして承知をしております。まず,こういった事態につきましては,引き続き関係省庁と連携しながら,更には関係国ともしっかり連携をしながら情報収集に務めていきたいと考えております。
そして,日朝政府間協議におきましては,双方の関心事をしっかりと話し合うということで臨んでいきたいと考えています。こうした,地域の緊張を高めるような,いかなる行動も控えるよう北朝鮮に求めていくことは大事だと考えております。そして,その上で諸懸案解決に向けた具体的な行動を引き出すべく,しっかり協議に臨んでいきたいと考えています。