記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年5月9日(金曜日)8時25分 於:官邸エントランスホール)

冒頭発言-就任500日+武器貿易条約の受諾

【岸田外務大臣】本日で就任500日になりました。どうぞ引き続きよろしくお願いします。
 先ほどの閣議で,武器貿易条約の受諾を決定いたしました。本日,ニューヨークの国連本部でこの条約の受諾書を寄託いたします。
 この条約は通常兵器の国際貿易規制のための国際基準を確立するとともに不正な取引等を防止する有意義な条約だと考えています。
 我が国として条約に早期発効,及び効果的な実施のために,引き続き主導的な役割を果たしていきたいと考えております。

南シナ海における中越船舶の衝突事案

【テレビ東京 山口記者】南シナ海情勢ですけれども,西沙諸島で中国の石油採掘をきっかけに中国とベトナムが衝突しましたけれども,日本政府として情勢認識と日本も中国との間に東シナ海,尖閣を巡って問題がありますけれども,日本政府として,どのように認識しているのか,日本政府として中国とベトナムにどのように働きかけていきたいか,それについてお願いします。

【岸田外務大臣】中越の衝突につきましては,今,事実を確認中ではありますが,多数の船舶が損傷し,そして負傷者が出ているという情報があり,強い懸念を持って事態を注視しています。
 境界が未画定の海域において,中国による一方的な掘削活動の着手により地域における緊張が高まっている,このことにつきまして深く憂慮しております。そして,今回の事態は中国による一連の一方的かつ挑発的な海洋進出活動の一環であると受け止められます。中国側はベトナム側,及び国際社会に対して自らの活動の根拠,あるいはその詳細につき明確に説明するべきだと考えます。
 南シナ海の平和,そして安定は国際社会の関心事項です。これは対話により平和的に解決すべき問題であると考えます。
 そして,南シナ海を巡りましては,関係国によりましてCOC行動規範を作成しようという動きが進められており,是非,関係国に対しまして緊張を高める,こうした一方的な行動を慎むとともに国際法を遵守し自制的な行動を求めていきたいと考えています。

【テレビ東京 山口記者】東シナ海でも同じような事態が起きることは否定できないと思うのですけれども,そういった部分については,どうお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】東シナ海,尖閣を巡りましては,尖閣諸島は繰り返し申し上げてきているとおり,歴史的にも国際法的にも我が国固有の領土であり,我が国が事実実効支配をしています。領土問題は存在しない,これが我が国の基本的な立場であり,再三申し上げてきているとおりであり,これからもこれは変わることはないと考えています。
 是非,尖閣諸島におきましても,繰り返し領海侵犯が行われているわけですが,我が国としましては,引き続き毅然かつ冷静に対応していきたいと考えています。

集団的自衛権

【テレビ東京 山口記者】集団的自衛権ですけれども,来週にも政府の有識者懇談会の報告書が提出されるというような状況ですけれども,その後の政府方針に向けて,どういった形で政府方針を決めるのか,どういったスケジュール感で臨むのか,それについてお願いします。

【岸田外務大臣】集団的自衛権の議論につきましては,安保法制懇におきまして12日の週にも最終的な報告書が出されると承知をしています。その最終的な報告書が出された後に政府与党として議論を行う,こうした方針は従来から申し上げてきたとおりであります。そうして議論が行われ,もし,憲法解釈の変更が行われるとしたならば閣議決定を行う,こうした段取りで議論が進むと考えております。
 そして,それにつきましては期限ありきではないという方針であるとも考えています。

日中関係

【共同通信 鳥成記者】尖閣諸島を巡る問題に関連してですが,中国は日常的に公船による領海侵入を繰り返して領有権の既成事実化を図ろうとしているのではないかという見方もありますけれども,日本政府としては,これまで警告したり,あるいは抗議をしたりという対処をしていますが,それ以外に何か具体的にとり得る手段というのは何かあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】まずは尖閣諸島周辺において,我が国の領土,領海,領空を守るべく万全の態勢で臨んでいく,これは今までもその方針で臨んできましたし,これからもしっかりと態勢を整えていかなければならないと存じます。そして,こうした海洋の自由ですとか,航行の自由,こうしたものは国際社会にとって守られるべき基本的な価値観です。
 是非,こうした国際法に則って行動することの大切さ,こういったものを国際社会全体として中国に働きかけていく,こういったことも大切なのではないかと存じます。ですから,こうした自らの行動の法的な根拠等をしっかり明らかにする,こうした国際法を遵守する考え方,これも大切なことなのではないかと思います。

【フジテレビ 山崎記者】その中国ですけれども,国内的には天安門事件から間もなく25年となるのを前に,人権活動家等の身柄の拘束が今年もまた相次いでいるというような事態がありますけれども,これについての受け止めをまず伺いたいのと,それから連休中に高村自民党副総裁が訪中し,APECの際に日中首脳会談を呼びかけましたけれども,これの見通しについて大臣のお考えを聞かせください。

【岸田外務大臣】まず,中国・6月4日天安門事件を記念する日を巡って様々な動きがあるということは報道等で承知をしております。そして,自由とか基本的人権の尊重とか,それから法の支配,こうしたものは国際社会全体における普遍的な価値であると考えています。
ですから,報道の内容が事実であるとすれば,事態を憂慮せざるを得ないこのように考えます。
 そして,日中議連の訪中,この秋の首脳会談についての見通しですが,今回の日中議連の訪中については有意義な議論が行われたものと受け止めています。是非,今後こうした様々なレベルの対話を積み上げることによりまして,政治の高いレベルでの対話につなげていきたいと考えてはおります。まだ具体的な日程等は決まってはおりませんが,そうした方針で引き続き日本と中国,この二国間の関係を大局的な見地から戦略的互恵関係の原点に基づいて,しっかりとコントロールしていきたいと考えています。

集団的自衛権

【NHK 徳橋記者】集団的自衛権の行使容認の閣議決定の時期ですけれども,時期ありきではないと,先ほど大臣がおっしゃいましたが,大臣としてはいつ頃までに決定するのが望ましいというお考えなのかということと,年末に日米のガイドラインの見直しというのがありますが,それとの関連性についてはどうお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】この議論については様々な要素があり関連があると思います。しかし,何よりも大切なのは,こうした議論を丁寧に行い,そして,国民からしっかり理解を得ることが大事だと思っています。そのために丁寧にしっかりと議論を行うことが何よりも重要であり,だからこそ,期限ありきではないということだと理解をしております。
 ですから,今の時点で何か他の日程とからめて申し上げるのは適切ではないと考えます。

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