記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年4月8日(火曜日)9時21分 於:本省会見室)

世論調査/NPDI外相会議

【フリーランス 上出氏】最近の報道などで世論調査が行われて,その結果が出ております。朝日新聞の昨日付けとか一連のもので,集団的自衛権に対して,この行使に対してはやはり反対,批判的なニュアンスが強い世論になっております。63%とか,毎日新聞が64%ということ。あと,秘密保全法についても全国180議会から反対声明が出るとか,そういう積極的平和主義に関しては批判的ではないかという論調があるのですが,まず,これに対してどのように思われているかということが1点。
 もう一つは,今度11日に広島で外相自ら核廃絶のメッセージをされる一方で,先般トルコとアラブ首長国連合と原発の輸出に関する協定が結ばれました。これに対しては前から,事故の当事国であることと,プルトニウムが核に転用されるという問題がございまして,こういった核廃絶のアピールと矛盾するのではないか。ちょっと長くなりましたが,この2点について,よろしくお願いいたします。

【岸田外務大臣】まず1点目ですが,集団的自衛権をはじめとする様々な議論について世論調査が行われ,様々な意見があることについては謙虚に耳を傾けなければならないと思っています。そして,政府におきましては集団的自衛権のみならず,集団的安全保障ですとか,PKO,さらには海外におけるテロにおける邦人救出など,様々な課題について,この安保法制懇においての議論をお願いしているわけですが,この有識者会議の最終報告を待って,そして,政府として与党ともしっかり議論を行い,政府の方針を確定する。こういった道筋を想定しています。
是非,こうしたこの議論の過程において,できるだけ丁寧に議論を進めなければならないと思っていますし,その際にできるだけ具体的な例を挙げ,国民の皆様方からもわかりやすい,理解されやすい議論を進めていくことが大事なのではないかと考えています。是非多くの国民の皆さんの声に謙虚に耳を傾けながら,丁寧に議論を進めていくことを心がけていきたいと考えております。
 2点目ですが,今週4月11日から12日に第8回NPDI外相会議を広島で開催いたします。こうしたことと,先日の原子力協定の承認の動きが矛盾するのではないかというご質問をいただきました。
 私(大臣)自身は矛盾するものであるとは考えておりません。NPDI外相会議は,核兵器の非人道性等を議論する場であります。原子力協定は,原子力の平和利用につきまして日本が貢献する,その大前提として,この核兵器は平和利用でなければならない。あるいは核の不拡散をしっかりと確認しなければならない。こうしたことを法的に確認するのが原子力協定であると考えております。
 この原子力の平和利用と,核兵器の使用とを混同するような議論はあってはならないと思っています。そして,今回,国会におきまして2本の原子力協定をご議論いただいております。衆議院におきましてご承認をいただいたわけでありますが,その内容においても,それぞれの国において濃縮・再処理を行うことを我が国は認めないという内容になっております。この原子力協定の議論においても,こうした核の不拡散に反するような内容にはなっていないと私(大臣)は承知をしております。

【中国新聞 藤村記者】核軍縮について,世界各国の取り組みを採点する広島県のレポートが毎年出ているのですけれども,昨日,最新版が出まして,日本は,昨年は非核保有国では1位だったのですが,5位に順位が下がりました。その理由については,昨年春の核兵器の非人道性に関する共同声明に賛同しなかったことや核の傘に依存していることなどが減点の対象になったのですけれども,1位から5位に下がったことについて大臣の受けとめを教えてください。

【岸田外務大臣】その報道は本日見ましたが,内容についてはよく分析をしてみたいと思います。今,藤村さんのご質問の中にあった理由だけだとしたら,順位が下がったことはよくわかりません。共同声明については,春,賛同しなかったのですけれども,秋には賛同したわけでありますし,そして,我が国の安全保障政策については,去年も一昨年も基本は変わっていないわけですから,そのことだけをもって順位が下がったというのはどうも理屈がよく理解できない部分がありますので,いま一度よく検討したいと思っております。

【中国新聞 藤村記者】ちょっと言い方が足りなかったかもしれませんけれども,核兵器の非人道性というものが注目されている中でも,新たに評価項目に加わって,日本の姿勢は,確かに秋には賛同しましたが,どちらかというと消極的だというようにとられた。そこが評価を下げたことになっているのですけれども,いかがでしょうか。

【岸田外務大臣】最終的には,ご案内のとおりの方針をとりました。そして,核兵器の非人道性につきましては,この国際社会の中に核保有国もあれば,核を保有していない国もあれば,核兵器のない世界に向けて様々なアプローチをとろうとしている国がある。そうした国々を結束させる触媒としての大きな役割を果たしていくと我々は認識をしており,NPDI外相会議におきましても,この議論はしっかり行っていきたいと考えております。
 核兵器の非人道性につきまして,是非国境や世代を超えて広げていくこと,あるいは科学的な見地を深めていくこと,こうした広がりにおいても傘においても,この核兵器の非人道性の議論をしっかりやっていこう。我が国はこういった方針であります。是非,こうした我が国の考え方をしっかり理解していただくべく努力をしていきたいと思いますし,そのことによって国際的な軍縮不拡散の議論をリードしていきたいと考えています。

日朝協議

【NHK 渡辺記者】日朝の局長級協議のことをお伺いしたいと思うのですけれども,今後継続していくということで一致していると思うのですが,次回のめどとか,今後どういったテーマをさらに追加で議論していくのかとか,そういった方向性で現時点でわかっているものはあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】日朝の政府間協議ですが,3月30日と31日の2日間,協議を行いました。1年4カ月ぶりの再開となりましたが,今回の協議におきましては,日朝双方がそれぞれの関心事について,この考えを述べ合った。そういった内容であったと報告を受けております。そして,今後協議を継続するということで一致した次第です。  協議が継続されることは一定の評価をしたいと思いますが,この議論につきましてはまだこれからだと考えております。次回の日程についても,現時点でははっきりしたものは確定しておりません。是非次回以降の協議において,我が国として粘り強く交渉に臨み,拉致問題はもちろんでありますが,ミサイル開発,核開発等,諸懸案を包括的に解決するべく,我が国の基本方針にのっとって議論を進めていきたいと考えています。

【毎日新聞 鈴木記者】今の質問に関連してご質問します。公式協議が順調に行われている一方で,5日,6日に非公式協議があったという一部報道がございます。この辺りの事実関係,あるいは非公式,公式,それぞれの進める意味というものがあると思うのですが,その点について大臣はどうお考えか,お聞かせください。

【岸田外務大臣】4日,5日に協議があったのではないかという,この報道はいくつも拝見いたしましたが,そういった事実は全くありません。

【日本テレビ 中村記者】それに関連してなのですけれども,この間,北京の公式協議が5日と6日に行われたという報道であったと思うのですが,北京以外の国で北朝鮮と伊原局長の間で話し合いが持たれた事実はあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】いえ,私(大臣)は承知しておりませんし,事実はありません。

ウクライナ情勢

【NHK 渡辺記者】ウクライナ情勢について伺いたいと思いますけれども,ウクライナ東部のロシア系の住民が多い地域で共和国宣言とか,ロシア寄りの動きが加速してきておりますけれども,今の現状,この情勢をどう評価されているかということと,それとともにそういった情勢,ロシアの対応もこれから出てくると思いますが,どのタイミングで,改めて大臣のロシア訪問を見極めることにされているのか,ウクライナ東部の状況がどうなったらどういった判断をするのかとか,その辺り,もしわかっている段階でかまいませんので教えていただけますでしょうか。

【岸田外務大臣】ウクライナ東部におきまして,様々な動きがあるという報道については把握しており,そして,情勢は注視しております。我が国としては,全ての当事者が自制と責任をもって慎重に行動することを求めたいと思いますし,何よりもウクライナの領土の一体性,更には主権,こういったものが尊重されることを強く求めていかなければならないと思っています。
 そして,私(大臣)の露訪問につきましては,現状,予定の変更もなければ,具体的なものも決まってはおりませんが,是非,こうしたウクライナ情勢,あるいは関係各国の動き等も注視しながら,総合的に判断していくべきものだと考えております。

北朝鮮人権問題

【共同通信 鳥成記者】北朝鮮の人権問題について伺いしたいのですが,本日,大臣はマルズキさんとこの後お会いになる予定になっているかと思いますけれども,先日の国連の人権理事会で決議が採択されましたが,安保理に対して北朝鮮の人権問題に関わった個人の刑事メカニズムへの付託,あるいは制裁といったものを検討するようにと安保理に勧告をしているわけですけれども,ただ,現実問題として安保理の中で反対する国もおそらく出るであろうという見方が強い中で,現実問題としては勧告通りになるのは難しいというのが客観的な情勢だと思いますが,そうした中で日本として,今回の決議,今後どのようにフォローアップをして活かしていく方針なのか,その辺りのお考えを聞かせていただけますでしょうか。

【岸田外務大臣】今回の決議につきましては,それに先だって発出された報告書に基づいた強い内容のものであり,この決議自体,北朝鮮に対して強い国際的なメッセージになったと考えています。
 この決議を今後どう活用するのか,具体的なものについては様々な観点を検討しなければならないとは思いますが,是非,こうした強いメッセージを国際社会とも共有しながら連携を図り北朝鮮に具体的な前向きな行動を促すことにつなげていきたいと考えています。そのために,どういった行動が可能なのか,あるいは有効なのか,是非検討していきたいと考えています。

胡徳平氏の訪日

【TBS 法亢記者】中国の胡燿邦氏のご長男が今来日していて,大臣との面会も今週調整されているというように聞いていますけれども,これはどちらからのアプローチのものなのか,また,面会されることの意義について大臣のお考えを教えてください。

【岸田外務大臣】胡徳平元人民政治協商会議全国委員会常任委員は,外務省の招聘によりまして4月6日から13日の予定で訪日をしておられます。
 訪日中は,政府関係者を含む幅広い関係者と意見交換を行うことを予定しております。日中間の様々な対話の一環として,日中関係に長年携わってこられた胡徳平氏との間で意見交換を行うということは,大変有意義なことである,こういった観点から招聘を行った次第ですが,私(大臣)自身も短時間でもお会いしたいと考えております。ただ,具体的な面会先とか日時等につきましては,静かな環境で意見交換をしたいという先方の意向もありますので,具体的なものは控えさせていただきたいと考えています。

日朝協議

【時事通信 小松記者】日朝協議の話ですけれども,少し古い話,遡って恐縮ですけれども,今年の1月にハノイで日朝の当局者の接触があったという報道もあったのですが,その時期に,第三国で日朝の政府間当局者の接触があったのかどうかというのを,改めて確認させてください。

【岸田外務大臣】1月にそのような報道があったかどうか,それ自体について記憶が定かでありませんが,1月にあったかどうかということについては,私(大臣)は承知をしておりません。

内政

【朝日新聞 村松記者】昨日,みんなの党の渡辺喜美さんが代表を辞任されましたけれども,これについての受け止めをお願いします。

【岸田外務大臣】渡辺代表の具体的な言動について,政府の立場から何か評価することは控えたいとは思いますが,やはり政治家たるもの,政治資金をはじめ自らの行動については,しっかり透明性を確保し,国民に対してしっかりと説明責任を果たす,こういったことは大変重要なことであると私(大臣)は思っております。
 そういった観点から,渡辺代表として自らの行動について判断されたのではないかと考えます。

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