記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年2月18日(火曜日)9時17分 於:本省記者会見室)

冒頭発言-北朝鮮人権国連調査委員会,COIの最終報告書の公表

【岸田外務大臣】北朝鮮人権国連調査委員会,COIの最終報告書の公表について,日本時間の昨夜公表されました北朝鮮人権における国連調査委員会,最終報告書を歓迎いたします。
 今後は関係国や国連とも連携し,アジア等への拠点設置を含め,この報告書の勧告が適切にフォローアップされ,我が国がEU等とともに人権理事会に提出する予定の北朝鮮人権決議に盛り込まれるよう取り組んでいきたいと考えております。

いわゆる「密約」問題

【フリーランス 上出氏】14日の国会での民主党の前の外務大臣岡田さんとのやり取りについてご質問します。この時に核持ち込みについて,当時の岡田さんが外務大臣をやっていた民主党政権は,将来の政権の手を縛るようなことはしないということで決めてなっかったと思います。岸田大臣のご答弁は,民主党の政権をそのまま引き継ぐという答弁をなさっていると思うのですが,これは具体的な言葉で言うと,「有事の際は核持ち込みを認めるのだ」ということになるのですけれども,非核三原則との関係で,このあたりきちんとご所見を伺いたいと思っているのですが。

【岸田外務大臣】まず,我が国は非核三原則については大変重要な原則だと思っておりますし,これをしっかり守っていく方針です。これは,昨年末,国家安全保障戦略を我が国として初めて発表いたしましたが,国家安全保障戦略の中にも明記されているところです。そして,予算委員会での議論は一般論として,岡田外相時代に核の持ち込みについて議論をされた,そのことについての質問であったと承知していますが,岡田外相の発言,そして,当時の政府の対応,方針について否定するものではありませんが,現状,我が国においては,非核三原則を守る,今申し上げたとおりが方針でありますので,現状は全く変わらない,こういった趣旨であります。
 あのときのやり取りは,そのように承知しております。

ロイス米下院外交委員長の発言

【テレビ朝日 藤川記者】昨日,米国のロイス下院外交委員長が日米議連のメンバーと会談をしまして,その中で安倍総理の靖国参拝について,中国を利するのではないかという懸念を伝えました。この発言について,岸田大臣の受け止めをお願いします。

【岸田外務大臣】ロイス外交委員長一行とは私(大臣)も会談をさせていただきましたし,各関係者とも様々な意見交換をされたと承知しております。日米間の協力ですとか,あるいは地域情勢ですとか,各議員の選挙区事情ですとか,いろいろな幅広い分野について意見交換を行ったと承知しております。
 私(大臣)がお会いした際には靖国神社の参拝についてのやり取りはありませんでした。安倍総理の靖国参拝については,総理自身が談話等で表明されたとおりであります。是非,こうした総理の思いは,しっかりと国際社会に理解していただくよう説明努力は続けていかなければならないとは思いますが,今回のロイス外交委員長一行の訪日については,全体として日米同盟が揺るぎないものであるということを確認する一つの有意義な訪日であったと受け止めています。

【テレビ朝日 藤川記者】外務省としては,年末から年明けにかけてずっと総理の靖国参拝に理解が得られるように米国側に対しても説明の努力を行ってこられたと思うのですけれども,現時点でもこういった懸念の発言が米国から出るということについてはどのようにお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】様々な意見が米国においても,また国際社会にもあるのは事実かと思いますが,たとえば,先般,私(大臣)が訪米させていただきましたが,その際の日米外相会談の場においても,靖国問題そのものは取り上げられることはありませんでした。
 是非,こうした歴史問題等については,全体として理解を得るべく努力は続けていきたいとは考えています。

日韓関係

【産経新聞 水内記者】本日,伊原アジア大洋州局長が韓国を訪れて,先方の東北アジア局長と会談するという話を伺っています。これに関して,例えばケリー国務長官が以前韓国を訪れたときに,オバマ大統領が日韓を歴訪するまで日韓関係の改善というのを待ってはいられないという趣旨を共同記者会見の中でも話されていたと思います。伊原局長の今回の訪韓というのは日韓関係改善の糸口としたいという思いがおありなのかどうかということと,政府として4月にオバマ大統領が来るときまでに日韓関係で何らかの成果を得たいというお考えは持っていらっしゃるのでしょうか。

【岸田外務大臣】まず,今回の伊原局長の訪韓ですが,18日から19日にかけて在韓公館長会議に出席するためソウルを訪問するという趣旨の訪韓であります。そして,その会議に出席するのとあわせて,韓国の東北アジア局長あるいは韓半島平和交渉本部長,こうしたカウンターパートとも意見交換を行う予定であると聞いております。
 こうした様々な機会を通じて,様々なレベルで意思疎通を図っていくことは大変重要なことだと思っています。言うまでもなく,韓国は大切な隣国でありますし,北朝鮮情勢を初め東アジアの地域情勢を考えますときに,日米韓,こうした三国の連携は大変重要だと認識をしております。
 是非,引き続き様々な,具体的な意思疎通や協力案件を積み上げることによって,この大切な二国間関係を前進させるべく努力はしていきたいと考えております。

【TBS 井本記者】関連して質問なのですけれども,その意思疎通を行っていく中には日韓外相会談というものは含まれるのでしょうか。また,日韓外相会談をやるために,岸田大臣としてどのような努力が必要だとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】様々な意思疎通に日韓外相会談も当然含まれると考えています。昨年2回,日韓外相会談を行っております。ぜひ,今後とも外相会談の機会をつくりたいと我々は思っています。
 まずは様々な協力案件を積み上げていくことが大事だと思いますが,そうした様々なレベルの意思疎通の一つとして,日韓外相会談についてもぜひ実現したいと我々は思っていますし,ぜひ韓国側にもこうした我々の考え方を受け入れていただければと考えています。

いわゆる「密約」問題

【朝日新聞 菊地記者】先ほどの核密約の質問について追加でお伺いしたいのですけれども,岸田大臣は先ほど,予算委員会でのやりとりは一般論でのやりとりであったということだったのですが,同じ予算委員会で安倍総理がこれまでの核密約の存在を否定してきたことは間違いであったという認識を示して,近く政府の見解を示したいというお考えを示されていましたけれども,岸田大臣の予算委員会の発言は,安倍総理の発言を受けて政府の見解を示したということなのか,それとも,単に一般論でおっしゃったということなのか,どちらなのでしょうか。

【岸田外務大臣】先ほどの質問の,予算委員会における岡田議員からの質問のやりとりにつきましては,「密約」問題全体についてのやりとりではなくして,当時の岡田外相が発言されたことについてどう考えるかという,その部分に対する質問であったと受けとめています。

【朝日新聞 菊地記者】そうなると,安倍総理がおっしゃった,政府の見解を示したいということについては,これはいずれ何らかのタイミングで示されるということなのでしょうか。

【岸田外務大臣】このいわゆる「密約」問題につきましては,かつて外務省において様々な調査を行い,そして報告書を公表しております。その報告書とあわせて公表されました有識者による報告書というものがありますが,外交には一定の秘密が存在する。このことについては,国益ですとか国民の安全や安心,こういったものを考えた上で判断するべきであるという趣旨の内容が盛り込まれております。ですから,このいわゆる「密約」問題についての取り扱いについては,有識者の会議においても判断はなかなかそう簡単ではないという趣旨の報告がなされています。
 ただ,一方でこの長きにわたってこうした事実が明らかにされていなかったことについては遺憾であるという,この考え方が政府のこの問題に対する基本的な考え方であると思っております。政府の考え方について問われるとしたならば,今,申し上げたとおりだと考えています。

日韓関係

【共同通信 林記者】先ほどの日韓外相会談の件で続きの質問がありまして,本日行かれている伊原局長の訪韓で,相手のカウンターパートとお話しされたときに,この日韓外相会談の時期を含めてセットをも議題になるといいますか,こちらからそういう打診をするといいますか,そういうこともあり得るのでしょうか。

【岸田外務大臣】いいえ,そういった個別の特別な議題について議論するとは聞いてはおりませんが,おそらく様々な問題,あらゆる問題について意見交換をするのではないかと想像はいたします。

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