記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成26年1月14日(火曜日)11時03分 於:本省会見室)
【岸田外務大臣】おはようございます。平成26年,今年に入りまして初めての記者会見です。霞クラブ,または会見ご出席の皆様方におかれましては新しい年を健やかに迎えられましたことをおよろこび申し上げます。旧年中は大変お世話になりましたが,本年もどうぞよろしくお願いを申し上げます。
本日の会見ですが,冒頭発言は私(大臣)の方からはありません。どうぞよろしくお願いします。
日中,日韓関係
【共同通信 斎藤記者】総論的な質問をお伺いしたいのですが,日中関係,総理の靖国参拝を受けて中国は連日様々な形で日本に対する,日本の歴史認識を問うような言動を政府そしてメディアが繰り返しているというのはご案内のとおりだと思います。そこでお伺いしたいのは,中国が繰り返し発言している安倍政権は侵略戦争を美化していると,このワーデイングを何度も繰り返していますが,これに対して大臣はどう受け止め,またどう主張を反論していくのかこの点についてお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】まず中国が我が国の歴史認識に対して様々な動きをしていること,報道等を通じましてこれは当然のことながら承知をしております。そして,我が国の歴史認識ですが,これはもう度々繰り返しておりますように,まず安倍内閣は歴代内閣の歴史認識全体をしっかりと引き継いでおります。こうした我が国の歴史認識に対する考え方,中国に対しても度々,様々な場を通じて説明をしてきているところでありますが,引き続きこうした現状を見るに,しっかりとそして丁寧に根気よく説明をしていかなければならないと考えています。そして,こうした様々な議論があり,様々な問題があるからこそ政治の高いレベルでの対話が重要なのではないかと強く感じております。是非,この我が国の歴史認識についてはこれからも丁寧に説明したいと思いますが,それにつけても是非,高い政治のレベルでの対話を早期に実現したいと思います。対話のドアはオープンであるということ,これは従来から繰り返させていただいております。是非,これに中国側にも応じていただきたいと思っています。
【共同通信 斎藤記者】今の点で補足してお伺いしたいのですが,安倍内閣は歴代政権の歴史認識を引き継いでいるというお話がありましたが,そこをもうちょっとかみくだいて,中国が言っている安倍内閣は侵略戦争を美化しているという発言に対して,そもそも過去に起きた日中戦争が侵略戦争なのかどうか,そして安倍内閣がそれを美化しているのかどうかというところをもう一つ踏み込んでお話ししていただけますでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,先ほど申したように歴代内閣の歴史認識を安倍内閣はしっかり引き継いでいます。そして河野談話,あるいは村山談話等,過去の内閣において発せられたこうした談話についても否定したことは一度もありません。このように安倍内閣の歴史認識は,従来の内閣と変わっていないということ,これは様々な場で繰り返し説明をさせていただいています。この点について中国が疑念を持っておられるということであるならば,これは引き続きしっかり丁寧に説明していくしかないと考えています。
【朝日新聞 菊地記者】対話のドアは常にオープンという今の発言なのですけれども,昨年来,この発言をずっと安倍総理も繰り返し言われていましたが,日本側から対話のドアはオープンだと言うだけで,言い続けるだけで何ら動きがなかったのですけれども,今年はオープンということに加えてこちらからもう少し呼びかける姿勢を見せるですとか,もしくは安倍総理の靖国参拝で開いているドアが少し閉じているんじゃないかという気も私はするのですけれども,大臣としてはどうお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】こうした個別の問題があるからこそ対話が重要であるということ,これは再三繰り返し申し上げてきていますが,これは中国をはじめ相手の国にのみ発するだけではなくして,我が国のこうした考え方や姿勢というものは,周辺関係国に対してもしっかり説明していかなければならないということで,これも昨年来努力をしてきました。当事者だけではなくして地域,あるいは国際社会全体に我が国が対話を重視している,こうした姿勢をしっかり説明し,対話が実現するための環境整備に是非協力していただきたい,こういった努力も続けてきました。こうした努力も併せて続けることによって中国或いは韓国,こういった大切な近隣諸国との対話が具体的に実現するように,そして対話も高い政治のレベルでの対話,首脳会談こうしたレベルでの対話が実現するように努力をしていかなければならないと思っています。
【朝日新聞 菊地記者】安倍総理の靖国参拝でオープンなドアが少し閉じているということを大臣はお考えにならないでしょうか。
【岸田外務大臣】安倍総理の靖国神社参拝につきましては,まずはその真意につきましては安倍総理自身が声明等で明らかにさせていただいております。こうした真意,考え方についてしっかりと説明をさせていただいているところです。外務省,外務大臣としましては,こうした総理の真意がしっかりと中国,韓国をはじめ関係国に伝わるようにしっかり努力をしていかなければならないと思います。政治問題や外交問題にすべきではないということを伝え,そうした影響が出ないように努力をしております。
【フリーランス 上出氏】今の質問に関連してですが,侵略戦争という言葉を使うか使わないかはともかくとして,歴代内閣の歴史認識は引き継いでいるというようにおっしゃいました。ただ色々な言い方があるのでしょうけれども,総理自身は侵略戦争ではないということを明確には言っていないような私は気がするのですが,外務大臣として過去の戦争を侵略戦争だったというようにここではっきり繰り返して言っていただくことはできるのでしょうか。
【岸田外務大臣】総理の発言は具体的な言葉遣いはそれぞれの場面によって色々な言葉を使われたと思いますが,基本的な部分において,先ほど来,申し上げていますように歴代の内閣の歴史認識をしっかりと引き継いでおります。そして河野談話,あるいは村山談話をはじめとする様々な内閣の発出した談話についても否定したことがありません。具体的な言葉遣いはともかくとして,内容において歴代の内閣と全く変わりはない,認識において考え方において全く変わりがないということは間違いないと考えています。
【フリーランス 上出氏】岸田大臣の考えはわかるんですけれども,今,例えば,この場で侵略戦争ではなかったということを言うことはできるのかどうかというのが1点と,あと米国からもその後も厳しい報道などがされているんですが,この辺の問題もそういったあいまいだというあたりとひっかかると思うのですがいかがでございましょうか。
【岸田外務大臣】言葉を一つ一つ取り上げて,一部分だけ取り上げて申し上げますと,またその言葉が一人歩きいたします。やはり歴代内閣の考え方,そして安倍内閣の考え方は今日までの様々な国会答弁ですとか,様々な公の場で明らかにしてきた発言とか講演ですとか,こういったものを全体として説明をしてきております。この全体をしっかりと捉えていただきたいと考えます。その中で歴代内閣と歴史認識は変わっていないということをしっかり説明してまいりましたし,それをしっかり受け止めていただき,安倍内閣の姿勢をしっかりと考えていただきたいと思っています。そしてもう一つ何か仰いましたか。
【フリーランス 上出氏】米国の。
【岸田外務大臣】米国からも様々な意見,発言があることは承知をしております。ただ昨年初めから安倍内閣が発足してから外交における三本柱の1つとして,日米同盟の強化を掲げて外交に取り組んでまいりました。昨年の日米首脳会談をはじめ様々な取り組みを通じまして,日米同盟は大変強固なものだということを改めて再確認されていると認識をしております。現状,日米同盟は大変強固であると認識をしております。今後とも日米同盟は我が国の外交の柱であります。この2つの国の大切な関係につきましてしっかりと確認すると同時に,強化するべく努力をしていきたいと考えております。現状ゆらぎはないと認識をしております。
名護市長選挙
【産経新聞 水内記者】名護市長選のことについてお伺いしたいのですけれども,今,選挙戦が始まっていますけれども,それとは別に,仲井真知事の方は昨年,埋め立て申請をされたということが事実としてあります。
今,選挙では辺野古の移設というのが大きな争点にはなっていますけれども,政府としては選挙結果とかに関係なく,辺野古の埋め立て,着工などは粛々と進めていくという方針に変わりはないということでよろしいでしょうか。
【岸田外務大臣】名護市長選挙につきましては,個別の地方公共団体の選挙ですので,政府の立場からコメントするのは控えたいと存じます。いずれにしましても,政府としては普天間飛行場の固定化は絶対避けなければならないと考えておりますし,この点につきましては,沖縄県の皆さまと同じ認識に立っていると考えています。
昨年末,仲井真知事から代替施設の公有水面の埋め立ての承認をいただいたことにつきましては,大変重く受け止めておりますし,普天間飛行場の返還については一日も早く実現するよう全力で取り組んでいかなければならないと考えております。
南スーダンPKO
【テレビ朝日 藤川記者】南スーダンのPKOの関連ですけれども,国連からパキスタンやバングラデシュ,ネパールの軍事要員や武器の輸送を自衛隊が行うように要請をされたが断ったという一部報道について事実関係をお願いします。
【岸田外務大臣】我が国は,積極的平和主義の考えもと国連PKOへの様々な貢献を行い,そして,今後とも積極的に貢献をすることを検討しています。そして,今のご指摘の点ですが,国連から,国連南スーダン共和国ミッションへの航空輸送支援の打診があったということ,このことについては事実であります。それにつきまして,今,総合的に検討を行った結果,慎重に対応することとさせていただいております。