記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成25年12月10日(火曜日)11時33分 於:本省会見室)
特定秘密保護法の成立
【朝日新聞 菊地記者】特定秘密保護法案についてお伺いします。この法律が成立しましたけれども,各報道機関の内閣支持率等は急落しておりますけれども,大臣は,この急落の原因についてどのようにお考えになっているかお願いします。
【岸田外務大臣】今回の秘密保護法案ですが,我が国を取りまく安全保障環境は大変厳しくなる中にあって,我が国の情報保全体制の信頼性を確立し,そして,同盟国等と情報を共有することを強化していく,そして,質の高い情報を得る,こういったことは大変重要だと認識をしておりますし,この点で今回の法律は大事な法律であると認識をしております。この法律の成立によって,NSC法案とあわせて,我が国の外交安全保障環境は強化されるものと考えています。
ただ,世論調査,支持率のご指摘がありました。国民の皆様の中に今回の法律に対して懸念の声があるということは承知をしております。ただ,今回の法律は,内容において,例えば今ある秘密の範囲が広がることはありませんし,また,今回の法律によって情報管理の責任の所在を明らかにするとか,それから,情報の指定のルールを明確にするとか,こうした内容を含むものであります。是非,こうした法律の中身について,しっかりと今後も丁寧に説明をしていかなければならないと感じております。是非,引き続き努力をしていきたいと思います。
【朝日新聞 菊地記者】今後も丁寧にというお話でしたけれども,昨日,安倍総理の会見で,丁寧に時間を取って説明をするべきだったと反省しているというように述べておられましたけれども,大臣は,今回の国会審議の時間が少し短すぎたですとか,もっと審議に時間をかけるべきであったと思われますでしょうか。
【岸田外務大臣】私(大臣)の立場は政府の一員として,法律の審議を国会にお願いする立場です。ですから,その法律の審議における取り扱いですとか,時間数については国会のご判断,現場の理事をはじめ皆さま方,議運や国対,こういった関係者のご判断に委ねるしかないと思っています。その中で,どこまで国民の皆さま方にしっかり説明できたのかということですが,引き続き,先ほども申し上げたように,懸念があるとしたならば,丁寧な努力は続けていかなければならない,このように思っています。
中国における防空識別圏設定
【共同通信 斎藤記者】中国の防空識別圏の問題についてお伺いします。これまで中国はメディアや,あるいは当局者が,識別圏を設定したその上で,日本側と危機管理について話し合いをしたいと,中国側が日本側に呼びかけるかのような発言,あるいは論調・論評を繰り返しております。まずそういう認識を大臣がお持ちかということと,中国がそういうように呼びかけているという認識をお持ちかということと,それに応じて,中国の呼びかけに応じて対話を進めていくのが適切かどうか,前向きに臨むべきなのかどうか,その点について大臣の率直なお考えをお伺いしたいと思います。
【岸田外務大臣】今回の中国の防空識別圏設定につきましては,一方的な現状変更であり,国際法上の一般原則であります公海上の飛行の自由を侵害するというものであり,まず認めることはできません。あわせて我が国の固有の領土であります尖閣諸島の上空をあたかも中国の領空であるというかのごとく表示を行っております。こういった点でも我が国としては全く受け入れることはできないと考えております。ですからこうした,今回の措置を前提とした話し合いということは我々日本としては考えられない,受け入れることはできないと考えています。
ただ,日中間の意思疎通は大事だと思っています。不測の事態を回避することは重要だと思っておりますので,従来から日中戦略対話ですとか,日中安保対話ですとか,あるいは,日中高級事務レベル海洋協議等ささまざまな枠組みがあります。これを早期に再開することは重要だと思っておりますし,また,日中間では,防衛当局間の海洋連絡メカニズム,こうした運用を早期に開始するという課題もあります。こうした枠組みを通じて日中間で意思疎通を図ること,これは重要ではないかと認識をしています。
特定秘密保護法の成立
【西日本新聞 中西記者】秘密保護法案に戻りたいのですけれども,大臣としての,審議が十分かどうかは国会に任せていたと。ただ,大臣は宏池会の会長でもあられるので,宏池会の会長としてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
【岸田外務大臣】これは宏池会の会長であれ,外務大臣であれ,この法案の中身,あるいは法案の評価自体は変わらないと思っています。その中身について,国民の皆さんの中に懸念がある,あるいは十分ご理解いただいていない部分がある。これについては,丁寧に説明をしていかなければいけない。これは,この点についても,外務大臣としても,宏池会の会長としても,変わらないのではないかと思っています。
【西日本新聞 中西記者】審議不十分だと言われている点については。
【岸田外務大臣】これは,先ほど申し上げましたように,重要な法律であり,しっかり説明をする努力はしてきましたが,まだ不十分であるという声があるのであるならば,引き続き努力はしていかなければならない,このように思っております。
中国における防空識別圏設定
【NHK 渡辺記者】防空識別圏の件でお伺いしたいと思います。 中国との今後の対話というのでしょうか,偶発的な事態を避けるための対話のルートというものを何か具体的につくるというお考えはあるのでしょうか。
【岸田外務大臣】先ほども申し上げたように,不測の事態は回避しなければならない。そして,これまでもさまざまなこうした対話の枠組みが存在いたしますし,これをスタートさせることで合意している,そういった枠組みも存在いたします。これをしっかり機能させることがまず大切であると考えています。
中国における邦人逮捕(麻薬運搬容疑)
【東京新聞 五味記者】中国で愛知県の稲沢市議が拘束されて,6日に逮捕されたと中国側が発表しました。共犯も2人捕まったというような発表もあったようですが,これまで日本側が把握している状況と,まだ刑が確定するまでには時間がありそうですけれども,今後の対応をお聞かせいただけますか。
【岸田外務大臣】ご指摘の件につきましては,12月9日に中国の公安局より在広州総領事館に対しまして,6日に同市議を逮捕した旨の領事通報がありました。本件につきましては,中国の司法プロセスに従い手続が進められていると承知をしております。 ですから,日本政府として,この内容についてお答えするのは控えなければならないと思っていますが,外務省としましては,邦人擁護の観点から,必要に応じ領事面会を行う,あるいはさまざまな助言を行う等,必要かつ可能な支援は行っていかなければならないと思っています。そういった方針で今後の状況の推移を見守っていきたいと思っています。
張成澤国防副委員長の失脚
【産経新聞 水内記者】北朝鮮の張成澤氏の失脚の件なのですけれども,昨日,連行される様子がテレビに映ったりとかして,北朝鮮の中でいろいろな体制の変化があるのではないかと注目も集まっていますけれども,大臣としてこの現状をどのように分析して,東アジアの環境,もしくは日本人の拉致事件に対する影響なども含めて,今,どういうことを考えていらっしゃいますでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,ご指摘の点につきましては,北朝鮮が9日の朝,この張成澤国防副委員長につきまして,全ての職務からの解任及び党からの除名,これを発表したことを承知しております。我が国としましては,この北朝鮮の内部の動向につきまして,冷静に情勢を注視しつつ,引き続き情報収集に努めております。特に,こうした内部での動向が対外政策にどんな影響を与えるのか,この点については関心を持って見ていかなければならないと認識をしています。ただ,具体的な内容についてはここで申し上げることは控えたいと思います。
いずれにしましても,我が国としましては,従来からこの対話と圧力の方針のもとに,日朝平壌宣言に基づいて,拉致,核,ミサイル,こうした諸懸案を包括的に解決していく,こうした方針は全く変わらないと考えています。北朝鮮内部の動向については,引き続き関心を持って情報収集に努めますが,我が国の方針はしっかり守っていきたいと考えています。
【TBSテレビ 井本記者】今の張成澤氏に関連した質問です。
引き続き,国際情勢に与える影響を注視するということだったのですけれども,これは六カ国協議の再開に向けてどのような影響を与えると大臣としてお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】今,申し上げましたように,北朝鮮内部での動向,さらには対外政策への影響は関心を持って見ていきたいと思いますが,現状,まだ引き続き情報収集を行って,そして,分析を行っている段階です。具体的にどういった影響が出るのか,これは現時点でまだ明らかなことを申し上げることは控えなければならないと思っています。引き続き,こうした関心を持って情報収集をする,分析に努めていきたい,このように思っています。