記者会見
林外務大臣会見記録
(令和4年3月8日(火曜日)17時07分 於:本省会見室)
冒頭発言
ウクライナ情勢(ロシア及びベラルーシに対する制裁措置/ウクライナへの防衛装備品供与)
【林外務大臣】まず、私(林大臣)から、ウクライナ情勢について申し上げます。
ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法に深刻に違反するとともに、力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであります。国際社会からの強い非難にもかかわらず、ロシアがウクライナへの侵略を拡大し続けていることは、断じて容認できません。我が国は最も強い言葉でこれを非難します。
3月4日に行われたザポリッジャ原子力発電所に対する攻撃に続き、6日には、ハルキウ物理技術研究所に対する攻撃も行われました。東電福島第一原子力発電所事故を経験した日本として、このようなロシアの蛮行は決して認められません。
また、ベラルーシは、ロシアによるウクライナ侵略を、自国領域の使用を認めること等により支援をしています。今回の侵略に対するベラルーシの明白な関与を、我が国として、看過することはできません。
このようなウクライナをめぐる現下の情勢を踏まえ、我が国として、追加的な制裁措置について、本日閣議了解を行いました。具体的には、ロシア及びベラルーシ関係者に対する資産凍結、ロシア向け石油精製用の装置等の輸出禁止、ベラルーシの軍事関連団体への輸出禁止、ベラルーシの軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品の輸出等の禁止、を決定をいたしました。
ウクライナとの連帯を示すことも重要であります。この観点から、本日、自衛隊法や防衛装備移転三原則の範囲内で、非殺傷の物資、具体的には、防弾チョッキ・鉄帽・防寒服・天幕・カメラの他、衛生資材・非常用糧食・発電機等をウクライナ政府に提供するための交換公文への署名を、この後、コルスンスキー駐日ウクライナ大使との間で行います。
国難に直面するウクライナの皆さんを支えるために、一日も早く必要な物資を届けたいと考えます。我が国は、主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナ国民と共にあります。
今後も、我が国として、事態の改善に向けてG7を始めとする国際社会と連携して取り組んでまいります。私(林大臣)からは以上です。
ウクライナ情勢(ロシアによる国際法違反)
【日本経済新聞 三木記者】ウクライナの情勢についてお伺いします。今も、大臣の方から原発への攻撃など言及ありましたけれども、今回、ロシアの行動が国際法違反だという指摘が相次いでおりまして、こういう原発への攻撃や民間施設への攻撃、あとは燃料気化爆弾の使用などが、明確にジュネーブ条約などに違反するというふうに言われていますけれども、この点について、日本政府の見解と、またICCが捜査に乗り出すなどの報道も出ていますけれども、一定の時間がかかったりすることが想像されて、すぐにロシアに対して、戦争犯罪として裁けないというような問題点もあるんですけど、その点についてどのようにお考えでしょうか。
【林外務大臣】まず、ロシアがウクライナの同意なく、ウクライナの領域内に軍隊を派遣し、軍事行動を行ったことは、国連憲章第2条4が禁じる違法な武力の行使に当たります。
また、国際人道法上、軍事行動は軍事目標に限定すべきであるとされております。個別の事実関係の詳細は必ずしも定かではございませんが、仮に、この軍事目標主義に反する攻撃が行われたとすると、国連憲章の第2条4に加えて、国際人道法にも違反することになるわけでございます。
3月4日のG7外相共同声明においては、ウクライナの諸都市の一般市民に対するロシアによる継続的な攻撃が甚大な人道上の被害をもたらしていることを深く懸念し、無差別攻撃は国際人道法により禁止されているということを改めて強調をしております。
我が国として、ウクライナにおいて多くの市民が犠牲になっていることを極めて深刻に受け止めております。 国際刑事裁判所について触れていただきましたが、国際人道法違反を処罰するシステムとして、このICCがありまして、このICCの検察官が、ウクライナの事態について、既に捜査を始めているというふうに承知をしております。
いずれにしても、今回のロシアによるウクライナに対する侵略は、力による一方的な現状変更の試みであって、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。
北方領土問題
【朝日新聞 相原記者】ロシアの関係で、北方四島の件について伺います。昨日、参院予算委員会で、岸田首相は北方四島について「我が国固有の領土」とおっしゃいました。今日の参外防でも、大臣、同じ趣旨のことをおっしゃっていて、外交的な観点から、「我が国が主権を有する島々」とこれまで表現を用いてきたとおっしゃっているんですが、それについて2点お尋ねなんですけれども、今回、この「固有の領土」という表現が久しぶりに復活したわけですが、その理由と、いわゆるその理由については、その外交的な観点というのは、いわゆる今の日露関係についてかなり厳しいという、そういう現状というのを背景としているんでしょうか。その2点を教えてください。
【林外務大臣】この北方領土は、我が国が主権を有する島々であり、我が国固有の領土であります。この我が国の立場には、変わりはないわけでございます。今まで使っていなかったということについては、外交的な観点から、「我が国が主権を有する島々」との表現を用いてきているものでございます。
今のこの状況に鑑みますと、平和条約交渉の展望について申し上げる状況にないわけでございまして、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの、我が国の立場は変わっておりませんけれども、先ほど申し上げたように、この展望について申し上げる状況にはないということでございまして、そういったことも踏まえて、先ほどの「我が国固有の領土」であり、「我が国を主権国が主権を有する島々」であるということを申し上げているということでございます。
【産経新聞 杉本記者】先ほどの関連でお伺いしたいんですけれども、「固有の領土」という言葉も、しばらく使われておりませんでしたが、以前政府は、北方領土について「不法占拠」という言葉を使っていたかと思います。現在でも外務省のホームページ等では「不法占拠」という言葉がありますけれども、大臣の認識として、現在北方領土はロシアによる不法占拠のもとにあるという認識ということでよろしいでしょうか。
【林外務大臣】ロシアによる北方領土の占拠は、法的根拠のない占拠という認識でありまして、法的根拠を何ら有していないという意味で、不法なものであると考えております。
王毅・中国国務委員の発言(ウクライナ情勢、日中関係)
【読売新聞 阿部記者】昨日、中国の王毅(おう・き)外相が記者会見した点について、まとめて二つ質問させてください。王毅外相、昨日の記者会見で、ロシアとウクライナの今の情勢について、仲裁に対する意欲を示しました。これに対する受け止めと、もう一つ日中関係について「依然として課題に直面している、挑戦に直面している日中関係は」という趣旨の発言ありましたけれども、それに対する所感と、今後の対中外交についてお考えをお聞かせください。
【林外務大臣】まず仲裁についてのご発言ですが、王毅国務委員の発言は承知をしておるところでございます。 ウクライナ情勢に関する各国の発信の一つひとつにコメントすることは差し控えたいと思いますが、いずれにしても、今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的現状変更の試みであって、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をするところであります。
今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くために、国際社会が結束して、毅然と対応することが重要であります。関係国と連携しながら、中国に対しても、責任ある行動を呼びかけていく所存でございます。
それから、日中関係についての王毅国務委員の発言についても承知をしております。
日中両国間には、隣国であるが故に様々な懸案も存在いたしますけれども、同時に、日中関係は、日中双方にとってのみならず、地域及び国際社会の平和と繁栄にとって重要でございます。
主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、共通の諸課題については協力するという「建設的かつ安定的な日中関係」、これを双方の努力で構築していくことが重要だと考えております。
ロシアにおける報道規制
【朝日新聞 相原記者】ロシアに戻るんですけれども、話題変わりまして、ロシアで情報統制を強める法律が成立しました。これは当局は虚偽と判断すれば、記者らに禁錮最大15年を課すというもので、日本も含めて国内外のメディアが、ロシアでの報道を一時的に中断する事態になっています。これについて、大臣の受け止めをお願いします。
【林外務大臣】今回のロシアによるウクライナへの侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為でありまして、明白な国際法違反であり、厳しく非難をいたします。
そうした中で、ロシアにおいて、報道の自由を制約する法律が成立をしたこと、また、それを受けて、外国メディアがロシアでの活動を停止せざるを得ない状況となっていることを強く懸念をしております。4日に発出いたしましたG7の外相声明でも、ロシア政府や政府系のメディア等が、ウクライナに対する軍事侵略を支援するために、偽情報、広範に使用していることを非難したところでございます。
ロシアにおける天然ガスプロジェクト(サハリン1・2)
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】松野官房長官は、7日の記者会見で、ロシアの原油液化天然ガスプロジェクトのサハリン1・2について、エネルギーの安定供給上重要なプロジェクトであり、撤退について慎重に判断する姿勢を示されました。この撤退について、林大臣のご意見をお聞きかせください。また、米国政府、米国資源エネルギー関係者などから、日本政府又は外務省に対して、撤退についての働きかけ又は要請などが来ているのでしょうか。ご教示ください。
【林外務大臣】米国が、ロシア産石油の禁輸の導入を検討しているという報道については、承知をしております。 我が国としては、引き続き、今後の状況を踏まえながら、G7始めとする国際社会と連携して、有効と考えられる取組を、適切に検討・対応してまいりたいと、そういうふうに考えております。