記者会見

茂木外務大臣会見記録

(令和3年3月2日(火曜日)14時09分 於:本省会見室)

(画像)茂木大臣会見の様子

フランスによる瀬取り監視活動

【朝日新聞 佐藤記者】先月から、フランス軍の艦艇が、日本周辺の海域で北朝鮮の瀬取りの警戒監視に取り組んでおります。これは直接的には国連の安保理決議の履行ということになると思うんですけれど、「自由で開かれたインド太平洋」の実現についてどのような意義があるかということと、また欧州が最近インド太平洋に関する指針を作ったり、艦艇の派遣を決めたりとかしていますけれども、これはどのようなことが背景にあるのかということをお伺いしたいと思います。

【茂木外務大臣】北朝鮮によります完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄の実現に向けて、国際社会が一致団結して国連安保理決議の実効性確保に取り組んでいくことが重要だと考えております。まずそれが大前提であります。こういったことを進めていく上で、「瀬取り」を含む北朝鮮によります「制裁逃れ」の対応強化に取り組んでいくことは、国連安保理決議の実効性を一層高めるものでありまして、ご指摘のようにフランスが、現在、海軍のフリゲートを、東シナ海を含む我が国周辺海域に派遣し、警戒監視活動を行っていることを歓迎しております。
 また、FOIPについては、1月に私(大臣)がEU理事会に出席をした際に述べましたが、欧州でインド太平洋に関する関心が高まって、フランス、さらにはドイツ、オランダがインド太平洋のガイドラインを公表していることや、EUがインド太平洋に関する議論を開始したことを歓迎しております。
 「自由で開かれたインド太平洋」の実現、法の支配であったりとか、様々な価値観、考え方を共有する、こういった国の広がりを、今後進めていきたいと思っておりまして、様々な分野で欧州との協力も進めていきたいと考えております。

在日米軍駐留経費(国会審議)

【共同通信 中田記者】在日米軍の駐留経費について伺います。本日、現行特別協定の期限を延長する改正議定書に関して閣議決定が行われまして、国会提出の運びとなりました。
 現行協定は有効期間が今月末に迫っておりますけれども、大臣、国会審議にどのように臨んでいかれますでしょうか。

【茂木外務大臣】バイデン政権が発足して、極めて早いタイミングで日米間で合意に至りまして、24日には署名も行ったところであります。本日、国会提出、閣議決定をいたしましたので、年度末までの発効を目指して、国会での速やかな審議をお願いしたいと思っております。

東日本大震災10年(ALPS処理水の取扱い)

【香港アジアニュースウィークリー 毛記者】1問、質問させていただきます。
 東日本大震災、まもなく10年になります。被災地の復興、また福島第一原発の汚染水処理について、海への排出に対し、韓国や中国など周辺諸国から、依然高い関心が示されています。これに関して、大臣のお考えをお聞かせください。

【茂木外務大臣】東日本大震災、そして東電福島第一原発の事故から、3月11日で丸十年を迎えるというところであります。また、避難をされている方であったりとか、こういった状況の中で、福島そして東北の復興は道半ばでありまして、更にそういった対応を進めていきたいと思っております。
 そういった中で、我が国はこれまでも国際社会に対して、ご指摘がありましたALPS処理水の取扱いに関する検討状況を含みます東電福島第一原発の状況について、各国やIAEAを始めとする国際社会に、透明性をもって丁寧に説明をしてきたところであります。 ALPS処理水、この扱いをどうするかについては、適切な時期に政府として責任を持って結論を出していくことになります。引き続き、関係省庁が一体となって、国際社会に対して、透明性をもって丁寧に説明していきたいと思っております。

尖閣諸島(中国の国防省発表及び外交部報道官発言)

【産経新聞 石鍋記者】尖閣諸島周辺の情勢についてお伺いいたします。中国国防省が、昨日、ホームページ上で、中国当局による尖閣周辺での活動について、正当かつ合法であり、引き続き常態化していくとの見解を示しました。
 また、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は昨日の記者会見で、日本政府が海上保安庁の武器使用に関し、外国公船が尖閣諸島への上陸を強行しようとした場合、重大な凶悪犯罪として、危害射撃が可能になる場合があると説明したことについて、日本には情勢を複雑化させる危険な行為をやめるよう求めると述べました。こうした中国側の発信について、大臣の受け止めをお願いいたします。

【茂木外務大臣】まず、基本的な認識でありますけれど、尖閣諸島、これは歴史的にも国際法上も疑いのない我が国固有の領土でありまして、ご指摘の中国側の発言は、全く受け入れられないと、このように考えております。
 中国海警局に所属する船舶が、尖閣諸島周辺の我が国領海に侵入を繰り返していることは、誠に遺憾でありまして断じて容認できません 。このような活動は、そもそも国際法違反でありまして、そのたびごとに外交ルートにおいて、東京と北京双方で中国側に厳重に対抗し、冷静かつ毅然と対応しているところであります。
 今後とも、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの決意の下、海上保安庁を始めとする国内法、また国際法に則って、冷静かつ毅然と対処していきたいと思います。

尖閣諸島(米国防総省報道官発言)

【テレビ朝日 佐藤記者】尖閣に関連してもう一問お願いします。米国防総省の報道官が、尖閣諸島の主権について明確に日本を支持すると述べた3日後に、尖閣諸島の主権に関する米国の政策に変更はないと発言を訂正しました。また、中国に対しては、米国は現状を変えようとする一方的な行動に反対していると牽制をしています。こうした米国の対応について、大臣のお考えをお聞かせください。

【茂木外務大臣】発言は承知をいたしております。米国政府は、尖閣諸島に関する日本の立場を十分に理解をし、尖閣諸島を巡る情勢について、我が国の側に立って緊密に連携していくとの立場でありまして、こうした、これまで同様の立場に何ら変更はないものと理解をしております。

中東情勢

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 中東地域においていくつかの対立的な動きが見られます。米国はシリア及びイラクへの爆撃を行い、また、バイデン政権はサウジアラビアに対して新たな外交姿勢をとっています。同時に、イランがイスラエルのタンカーを攻撃したことや、イエメンのホーシー派がサウジアラビアに対して攻撃を行ったとの報道もあります。このような新たな対立が見られる中東情勢に関し、日本政府の立場をお聞かせください。特に、同地域は先月、日本の原油の93%を供給したと承知しますが、日本は懸念を有していますでしょうか。

【茂木外務大臣】確かに、日本は原油輸入の9割以上を中東地域に依存しておりまして、中東地域の平和と安定、極めて重要だと思っておりますし、また、中東地域からの石油の安定供給は、我が国を含む世界経済の安定と成長にとっても不可欠であると考えております。
 そういった中で、中東地域においては高い緊張状態が継続しておりまして、米国によるシリアへの空爆が及ぼす影響を含めて、引き続き情勢を注視しておりますし、またご指摘のように、ホーシー派によりますサウジアラビアへの越境攻撃、これについて我が国として強く非難をいたします。
 我が国は米国と同盟関係にあり、同時に中東諸国とも、中東各国とも、良好な関係を築いております。これらを生かして、引き続き、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向け、関係国に対する様々なレベルでの働きかけを行っていく考えであります。
 私(大臣)自身、昨年も中東訪問いたしましたし、また、中東各国の外相とも電話会談等々を行ってきておりますが、今後、しかるべきタイミングで、そんなに遅くないタイミングで、アラブ連盟加盟国の外相とも意見交換を行い、緊密な連携を確認したいと思っております。

香港情勢(民主派の一斉起訴)

【産経新聞 石鍋記者】香港情勢についてお伺いします。国家安全維持法違反で逮捕されていた民主派関係者47人が一斉起訴され、昨日、初公判が開かれました。これに関連して米国のブリンケン国務長官が「即時釈放を求める」と批判するなど、国際社会からの非難の声も上がっていますが、これに関する大臣の受け止めをお願いいたします。

【茂木外務大臣】昨今の香港情勢に対して日本の認識は、繰り返しお話をこの会見の場でもしてきているとおりでありますが、今回の民主派に対する一斉起訴を含めて、これまでの一連の事案が、香港が享受してきた民主的、安定的な発展の基礎となる言論の自由や報道の自由にもたらす影響等について、重大な懸念を強めております。
 香港は、日本にとって緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーでありまして、「一国二制度」の下に、自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展していくことが重要であるというのが日本の一貫した立場です。
 このような日本の懸念と考えについては、昨年、王毅(おう・き)外相が訪日した際も、直接私から話をしておりますし、これまでも中国側に様々な機会に伝達をしてきております。引き続き、関係国とも連携しつつ、適切に対応していきたいと思います。

日韓関係(3・1独立運動記念日式典における大統領演説)

【産経新聞 石鍋記者】日韓関係についてお伺いします。昨日ですね、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、演説で「いつでも日本と対話をする準備ができている」と述べました。一方で、慰安婦問題やいわゆる徴用工の問題を解決するための具体的な提案などはありませんでした。この演説に対する大臣の評価、受け止めをお願いいたします。

【茂木外務大臣】前回も同じような質問が出たと思いますし、これまでの状況については何度も繰り返しております。日韓両国はお互いにとって重要な隣国でありますが、韓国によって、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題等に関する国際約束が破られ、二国間合意が実施されておらず、日韓関係はかつてなく厳しい状況にあります。
 両国間の懸案解決のため、韓国が責任をもって対応することが重要であって、現状では問題を解決したいという韓国側の姿勢の表明だけで評価を行うことは難しいと、そのように考えております。
 政府としては、日韓関係を健全な関係に戻すためにも、外交当局間の意思疎通を維持しつつ、日本の一貫した立場に基づき、引き続き、韓国側に適切な対応を強く求めていく、こういった立場に変わりありません。

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