記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和5年10月6日(金曜日)11時17分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)上川外務大臣の東南アジア諸国訪問
【上川外務大臣】10月8日から10月13日まで、外務大臣就任後、最初の二国間訪問として、ブルネイ、ベトナム、ラオス、及びタイを訪問する予定であります。
ブルネイではエルワン第二外務大臣、ベトナムではソン外務大臣、ラオスではサルムサイ副首相兼外務大臣、タイではパーンプリー副首相兼外務大臣を始めとする、各国政府要人との会談等を予定しております。
今回の訪問を通じまして、重要なパートナーである各国との間で、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた連携を改めて確認するとともに、経済、政治・安全保障、人的交流といった幅広い分野での二国間協力の深化や、地域及び国際社会の諸課題や地球規模の課題への対応について、議論する予定であります。
また、本年12月の日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の成功に向け、引き続き、緊密に連携していくことを確認する考えであります。
(2)アルメニア及びアゼルバイジャンにおける避難民等並びにリビア東部における洪水被害に対する緊急無償資金協力
【上川外務大臣】本日、アルメニア及びアゼルバイジャンにおける避難民等及びリビア東部における洪水被害に対する緊急無償資金協力として、合計500万ドルの支援を行うことを決定しました。
アルメニアとアゼルバイジャンにつきましては、9月19日にアゼルバイジャンにより実施された軍事活動の結果、10万人以上の避難民が発生していることを踏まえ、国際機関を通じて、生活必需品や保健等の分野で、200万ドルの支援を行います。
リビアについては、9月10日から11日にかけて、同国東部において発生した洪水により甚大な被害が発生していることを踏まえ、国際機関を通じて、保健や水等の分野で、300万ドルの支援を行います。
日本政府として、今回の支援を迅速に実施するとともに、引き続き、これらの地域の人々に寄り添い、現地のニーズを踏まえ、必要に応じて更なる支援も検討してまいります。
(3)国内で取り組む外交活動(第二弾)
【上川外務大臣】既に報道発表はいたしましたけれども、先日お話し申し上げた、私(上川大臣)が国内で取り組むアウトリーチ型外交活動の第二弾として、10月4日、アラブ20か国・地域で構成される在京アラブ外交団が主催する昼食会に参加いたしました。
私(上川大臣)が外務大臣就任以前から親交のあるワリード・シアム駐日パレスチナ常駐総代表部大使を始め、旧知の大使の方々とも再びお会いすることができ、有意義な意見交換ができました。
また、昨日5日でありますが、高円宮妃殿下ご臨席の下、開催されました「にっぽん-大使たちの視線2023」写真展のオープニングセレモニーに出席しました。この写真展は、日本駐在の各国大使や外交官が日本で撮影した写真を展示するもので、昨年25周年を迎えた、外交団のイニシアティブによる由緒あるイベントであります。
写真の出来栄えの素晴らしさはもちろんのこと、外交官の皆様の視点には感嘆させられるものが多く、ふだん日本人には気づかない日本の魅力を存分に収めた作品の数々に、大変感銘を受けました。9日まで東京、その後、神戸と横浜等でも展示されますので、ぜひ多くの方々に写真展を訪問していただき、日本の魅力や世界とのつながりなどを感じていただければと思っております。
今後も、このようなアウトリーチ型の取組を続けてまいりたいと考えております。
私(上川大臣)からは以上です。
上川外務大臣の東南アジア諸国訪問
【読売新聞 依田記者】冒頭ご発言ありました今回の外遊に関してですが、訪問される4か国のうち、タイとベトナムはいずれも昨年総理が訪問していて、タイは林前大臣も訪問しています。今回、大臣が訪問することにより、どのような成果が期待されるでしょうか、お願いします。
【上川外務大臣】10月8日から10月13日まで、外務大臣就任後、最初の二国間訪問として、ブルネイ、ベトナム、ラオス及びタイ、これを訪問する予定でございます。この機会に、それぞれの大臣を始めとして、要人と会談を予定しているところであります。
本年は、日ASEAN友好協力50周年の大変歴史的な節目でございます。その意味で、今回の状況の中での訪問となりました。
日本は、この日ASEAN友好協力50周年の、この歴史的な節目であるということの十分なる認識の上で、私(上川大臣)自身、先月、国連総会ハイレベル・ウィークに参加いたしまして、東南アジアをめぐる状況の中で、ASEANへの高い期待感を感じたところであります。日・ASEAN関係を更に高めるために、今般、東南アジアを訪問することといたしました。
冒頭で申し上げた内容につきましては、そのとおりでありますが、まさに今年は日ベトナム外交関係樹立50周年。また、今回の訪問を通じまして、経済、政治、安全保障、人的交流といった幅広い分野での二国間協力の推進を確認し、地域及び国際社会の諸課題への対応について、議論してまいりたいと考えております。
タイでありますが、タイは約8万人の在留邦人が居住しており、約6,000社の日本企業が進出する、我が国にとりましては、東南アジア最大級の拠点でございます。また、現在、ASEANの対日調整国をタイが務めているということであります。今回、発足直後の新政権との関係を構築し、緊密な経済関係での協力の強化、また、国際社会の諸課題への対応等につきまして、議論してまいりたいと考えております。
【毎日新聞 川口記者】関連して外遊についてお伺いします。今回の大臣の国際会議でない外国訪問としては初めてですが、個別の訪問先として、ASEAN諸国を選んだのはどういった理由からでしょうか。また、少し言及がありましたけれども、12月の日・ASEAN特別首脳会合を踏まえて、今回の外遊をどのような位置づけで行うか、期待する成果と併せて、お願いいたします。
【上川外務大臣】ASEAN諸国でありますが、近年目覚しい経済成長を遂げております。今や約6.7億人の人口を抱える活力に溢れた世界の成長の中心となっております。ASEANは、我が国にとりましても緊密なビジネスパートナーでありますが、それのみならず、「心と心」のつながる真の友人として、地域の平和と安定、繁栄のために協力してきたところであります。
また、本年は日ASEAN友好協力50周年の歴史的な節目でもあります。12月の特別首脳会議は、これまでの取組の進展と積み上げを基礎に、両者が共有する課題を見据えた将来の日・ASEAN関係の方向性と新たな協力のビジョンを共同で打ち出す、極めて重要な機会であります。その意味で、年内に予定される外交行事の中でも、最重要なものの一つと捉えております。こうした観点から、首脳外交の準備の総仕上げを統括する外務大臣といたしましては、今般の4か国を最初の二国間の訪問の目的地に選んだところであります。
加えて、私(上川大臣)といたしましては、日本との経済面でのつながりを更に強化していくこと、そして、「法の支配」を促進すること、また、「女性・平和・安全保障(WPS)」を力強く推進していくこと、日本とASEANが手を携えて、地球規模課題に対するレジリエンスを高め、解決に導いていくことを、自らの課題として重視しているところでございますので、今回訪問するASEANの4か国との間におきましても、これらの点に関しましても、協力が進み、成果が得られるよう、自らの役割を果たしてまいりたいと考えております。
日韓関係(日韓次官戦略対話)
【NHK 五十嵐記者】日韓関係について伺います。日本と韓国の外務次官が協議する戦略対話が昨日、9年ぶりに行われました。受け止めを伺います。また、日中韓外相会談を含めて、大臣ご自身が訪韓するお考えはあるか、時期も含めて伺います。
【上川外務大臣】まず、1点目のご質問でありますが、10月5日に韓国ソウルにおきまして、9年ぶりに日韓次官戦略対話が開催されたことにつきましては、本年3月の日韓首脳会談における合意を受けたものでありまして、非常に有意義なことと受け止めております。強いリーダーシップによって、二国間関係を牽引する日韓両首脳の下で、外交当局間の意思疎通を更に積み重ねてまいりたいと考えております。
2点目でありますが、私(上川大臣)の訪韓を含めまして、政府として、今後の外交日程等につきましては、予断をもってお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思いますが、今後の訪韓の機会を次に繋げるものとして、大事にしてまいりたいと思っております。
【日本経済新聞 根本記者】日韓関係の関連でお伺いします。日韓共同宣言からまもなく25年の節目となります。岸田政権下での関係改善を踏まえて、今後の日韓関係の発展がどうあるべきか、外務大臣の御見解をお伺いします。関連して、韓国の尹(ユン)駐日大使が岸田首相と尹(ユン)大統領による新たな宣言策定に期待を示しています。これに関する大臣のご見解も、併せてお願いいたします。
【上川外務大臣】ちょっともう一度、重ねていただけますでしょうか。
【日経新聞 根本記者】日韓共同宣言からまもなく25年の節目です。今後の日韓関係の発展に向けての大臣の見解をお願いします。また韓国の駐日大使が、岸田首相と尹大統領による新たな宣言策定に期待の認識を示していますが、これについてのご見解をお願いします。
【上川外務大臣】先ほどもちょっと申し上げたところでございますけれども、10月5日に韓国ソウルにおきまして、9年ぶりの日韓次官戦略対話が開催されたということにつきましては、大変重要視しているところであります。外交当局間の意思疎通を更に積み重ねて、しっかりとした対応をしてまいりたいと思っております。
私(上川大臣)の訪韓も含めまして先ほど質問がございましたけれども、今後の日程につきましては、予断をもってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますし、またその内容につきまして申し上げるというレベルではございませんが、ニューヨークにおきまして、朴振(パク・チン)外交部長官と非常に良い会談を行ってきたところでありますので、こうした流れをしっかりと維持しながら様々なテーマにつきましても、率直に意見交換をし、そして成果を上げてまいりたいと考えております。
ロシア情勢(プーチン大統領の発言等)
【共同通信 林記者】ロシアのことについてお伺いいたします。プーチン大統領が日本の対ロ制裁を批判した上で、日本が対話する時期だと考えるのであれば応じる準備があると発言しました。このことへの受け止めと、改めて今後の北方領土問題を含めたロシア外交の方針についてお伺いいたします。あと、あわせまして、ウクライナの発表で、ロシア軍のミサイル攻撃によって、50人の犠牲者が出たということを発表しておりますけれども、併せて、そのことについても受け止めをお願いいたします。
【上川外務大臣】御指摘のプーチン大統領の発言につきましては、承知しているところでございます。
ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。まずは、一刻も早くロシアによる侵略を止めさせることが必要と考えております。我が国は、G7を始めとすると国際社会と連携しつつ、今後も厳しい制裁等の外交的取組をしっかりと進めてまいります。
同時に、日露が隣国として対処する必要のある事項につきましては、我が国外交全体において何が我が国の国益に資するかという観点から、適切に対応してまいりたいと考えております。
また、北方領土問題につきましては、この問題を解決して平和条約を締結するという方針を堅持してまいりたいと考えております。
2点目のご質問でございますが、昨日5日でありますけれども、ウクライナ東部のハルキウへの攻撃が行われまして、ウクライナ政府の発表によりますと、民間人に多数の死傷者が出ているものと承知しております。
我が国といたしましては、ロシアの攻撃によりウクライナ各地において多くの市民が犠牲になっていることを極めて深刻に受け止めております。民間人や民間施設への攻撃は、国際法違反であります。断じて正当化できないものであり、強く非難いたします。
今なお侵略が続く中、公正かつ永続的な平和をウクライナに実現するため、我が国として、対露制裁とウクライナ支援を強力に推進してきております。今後とも、国際社会と緊密に連携しながら、この取組を継続してまいりたいと考えております。
鈴木参院議員の訪露
【タス通信 アガフォノフ記者】日露関係の関連で日本維新の会、鈴木参議院議員のロシア訪問について伺います。鈴木議員はモスクワでルデンコ外務次官と会談し、元島民の墓参りの再開と日本漁船の安全操業の交渉開始を求めたということです。外務省は、帰国した鈴木議員から会談の内容、ロシア側が示された立場について説明を受ける予定はありますでしょうか。
【上川外務大臣】御指摘の鈴木宗男参議院議員の発言に関する報道や、またロシア側の報道発表については承知しております。
現時点におきまして、外務省として、お尋ねのように、鈴木議員のロシア訪問の詳細について説明を受ける予定はありません。
いずれにせよ、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、我が国は、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、ロシアに対して厳しい制裁を行う等の外交的取組を進めてきており、今後もしっかりと進めてまいりたいと考えております。
ALPS処理水
【NHK 五十嵐記者】ALPS処理水の関連で伺います。福島第一原子力発電所にたまる処理水について、昨日、東京電力は2回目の海洋放出を行いました。これを受けて、中国外務省は声明で、一方的な放出に断固として反対すると非難し、中国側の禁輸措置はまだ維持されています。この問題について、日本として中国にどう理解を求めていくのか、大臣のお考えを伺います。
【上川外務大臣】ALPS処理水の海洋放出につきましては、8月24日から実施していた第1回の放出におきましては、モニタリングの結果からも、計画どおり安全に進められていることが確認されており、その後、設備点検の結果等におきましても、特に異常はないことが確認されております。
昨日から第2回の放出が開始されたと承知しておりますが、引き続き、モニタリングの結果など、IAEAとの緊密な連携の下、透明性高く、また、国内外に日本の取組を丁寧に説明し、適切な理解が更に深まるよう努力してまいりたいと考えております。
中国との関係につきましては、これまで様々なレベル・機会に、様々な形で表明されました先方の関心に対しまして、丁寧に回答し、また説明を重ねるなど、日本として真摯に対応してきております。引き続き、こうした取組を重ね、日本産食品の輸入規制の即時撤廃を含め、科学的根拠に基づく対応を求めていきたいと考えております。
【読売新聞 依田記者】関連でお伺いしますが、その処理水の関係で、現在調整中の日中韓外相会談に合わせた日中外相会談、またAPECに合わせた日中首脳会談を開催し、中国に対して措置の撤廃を働きかける考えがあるかお願いします。
【上川外務大臣】中国との会談につきましては、現時点で決まっていることはありません。いずれにせよ、我が国としては、今後とも科学的根拠に基づき、高い透明性をもって、中国を含む国際社会に対して、日本の立場を丁寧に説明し、理解が深まるよう努めてまいります。引き続きこうした取組を重ね、日本産食品の輸入規制の即時撤廃を含め、科学的根拠に基づく対応を求めてまいりたいと考えております。
マッカーシー米国下院議長の解任
【朝日新聞 松山記者】米国議会の混乱について伺います。3日に米国下院議会のマッカーシー議長が解任されました。その影響で、米国が主導してきたウクライナの軍事支援が停滞する可能性が指摘されていますが、米国と同盟国である日本に、この軍事支援をめぐって何かしらの影響が出るとお考えでしょうか。
【上川外務大臣】ウクライナ支援に係る米国の議会での議論を含め、他国の内政に関わる事項につきましては、コメントすることは差し控えさせていただきますが、我が国としては関心をもって注視しているところでございます。
その上で申し上げれば、日米同盟は揺るぎなく、その重要性につきましては、米国でも党派を超えて共通の認識が存在しているものと考えております。
在京韓国大使館違反車両
【フジテレビ 宮司記者】弊社の取材で、韓国大使館の外交ナンバーの車がフルスモークで走行していることが分かりました。外交官ナンバー車の違反に対して、今後、外務省としてどのように御対応をされるかお伺いいたします。
【上川外務大臣】御指摘の事案でございますが、外務省から在京韓国大使館に確認をいたしましたところ、同大使館から、保有車両の一部に、日本の法令に適合していないフィルムの貼り付けがあったということを確認したとして、法令に適合するよう、既に対応したと報告を受けているところでございます。
外交関係に関するウィーン条約上、外交団には、接受国の法令を尊重する義務がございます。外務省では、引き続き、外交団、在京の外交団全てに対しまして、日本の交通法令の遵守につき注意喚起を行ってまいりたいと考えております。