記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和3年11月10日(水曜日)14時32分 於:本省会見室)

新外務大臣への期待

【朝日新聞 安倍記者】次の外務大臣に林芳正さんが内定されたということで、ご本人のご経歴などから、どういった点を期待されておられるでしょうか。

【吉田外務報道官】各種の報道やこれまでの関係者のご発言から、次の外務大臣にどういう方がということは、種々巷間流れていることは重々承知していますけれども、現段階では、まだ組閣本部も設置されたかされていないかぐらいで、任命をされておりませんので、官僚組織としてそういった総理の任命に関わることについて、立ち入って申し上げるのは控えなければいけないと思っています。
 その上で申し上げると、どのような方が任命されて外務大臣に就かれるにせよ、これまでのご経験であるとか、人脈であるとか、幅広い見識でもって、現在、厳しい国際環境にある日本外交が直面する課題は山積していますので、我々を導いていって欲しいなと、このように思いますし、当然のことながら、日本の外交の基軸は、日米同盟であると、加えてその価値観を共有する国々と、パートナーと連携をして、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を目指していくと、こういった考え方には変わりはない、外交は継続性・一貫性が重要であると、このように考えますので、そのような方針に基づいて力強くご指導いただけるものと、このように期待しています。

【朝日新聞 安倍記者】もう1点伺います。茂木大臣は2年にわたって外務大臣を務められましたけれども、改めて外務省としては、どういった大臣だったというふうに考えておられるのでしょうか。

【吉田外務報道官】茂木大臣は、2年間にわたって、政権を三つ跨いで、安倍政権、菅政権、それから短期間でしたけれども岸田政権と、非常に課題山積する日本外交の舵取りで、指導力を発揮していただいたと、このように思っていますし、私ども外務省の人間、大臣のご指導の下で、例えば「自由で開かれたインド太平洋」であるとか、それから昨年以来のコロナ禍における、様々な、まずは邦人保護であるとか、ワクチンをはじめとするコロナ関係の国際協力の推進、それからコロナ禍にあって、非常に対面外交が難しい中でも、幅広い国々と電話会談、それから昨年夏からは、対面外交を再開されて、日本の存在感をお示しいただくのに先頭に立っていただいた、このようなことで、私ども外務省員としては、非常にありがたい2年間であったと、このように思っています。
 新しい幹事長のポストで、更に一層難しい課題に直面されると認識していますし、既にもう始動されてご活躍ですが、引き続き、日本外交、安全保障にも様々ご指導・ご尽力いただけるものと期待しています。

核の先制不使用

【産経新聞 杉本記者】核の先制不使用についてお伺いしたいと思います。最近いくつかのメディアで、バイデン政権に対して、日本含む米国の同盟国が、核の先制使用を見直すということはやめてくれ、といったような要望を、米国側に行っていたという報道があったかと思うのですが、その事実関係の確認と、あと改めて日本政府として、核の先制不使用に対するその立場というのを教えていただいてもよろしいでしょうか。

【吉田外務報道官】様々、報道が出ているというのは存じ上げています。平素より、唯一の同盟国である米国政府との間では、安全保障、防衛協力、様々な事柄について、緊密に、しかも幅広く、深い意見交換を行ってきています。
 事柄の性質上、お尋ねのあった核の先制不使用というコンセプトについては、安全保障に直結する内容でありますから、これはこのトピックに関わらず、基本的には、そういったやり取りについては、途中段階ではお答えはしていないと、このように認識しています。
 その上で、一般論として申し上げますけれども、核兵器、核の先制不使用という宣言政策、これは仮にそれが成立するのであるとすれば、すべての核兵器国が検証可能な形で、しかも同時に行うということでなければ、意義あるものとはならないのではないかと、このように考えます。
 他方で、現下の安全保障環境におきましては、当該核兵器保有国、核兵器国の意図が、何ら検証される方法がないという状況の下で、核の先制不使用に依存して、一国の安全保障を委ねるというのはいかがなものかと、こういったことについては、安全保障に十全を期すことは難しいというのが、一般的な考え方として持っておるものであります。
 何れにしましても、お尋ねのあったような、どういうやり取りをしているのか、あるいはやり取りがあるのかないのかも含めて、こういったことについては安全保障に関わることということで、お答えは差し控えさせていただきたいと、このように思います。

ニカラグア情勢(大統領選挙の実施)

【読売新聞 阿部記者】中米のニカラグアで、先日行われた大統領選についてお尋ねします。現職のオルテガ氏が当選しましたけれども、オルテガ氏は事前に有力な対抗馬を拘束するなどして、米国やEUが相次いでオルテガ氏を批判する声明を出しています。このことについて日本政府としての見解をお尋ねします。

【吉田外務報道官】中米のニカラグアですが、現地時間11月7日に選挙が実施されたということでありまして、現時点では、まだ開票が完全に終了しているということではありませんけれども、ほぼ97ー98%の開票が進んでいる段階で、現職大統領のオルテガ候補が、75.92%の票を獲得していると、2位のエスピノサ候補14.15%を大きく引き離して、ほぼ当選が確実な状況だと、このように言い伝えられていると承知をしています。
 オルテガ候補は、一度、大統領を務めて辞められた後、最近は連続して、今3期目でしたので、今回、仮にこれが当選すると、4選になるという状況だと伝えられています。
 他方、今ご指摘ありましたように、ニカラグアのこの大統領選挙を巡っては、多数の野党候補、これが政治犯として拘禁をされるという状況の中で実施をされましたし、米州機構(OAS)が、透明性、それから自由公正な選挙を行うために、選挙監視団の受け入れを要請しておりましたけれども、これも派遣されることなく実施されたという経緯があります。
 こういった状況を踏まえて、国際社会において、今回の大統領選挙に対しては疑義が呈されているという状況だと、私どもは認識をしています。日本政府としても、このような形で国際社会から強い疑念を持たれているということに対しては、懸念を表明したいと考えています。
 ニカラグアに対しては、既にこういった国際社会の懸念があることに対して、しかるべき対応をするべきであるということを求めてきていますし、相手国政府にも申し入れをしています。今後とも、そのような立場に従って対応していきたいと、このように考えます。

日韓関係

【韓国YTN 李記者】岸田内閣発足後、韓国との間で、外交当局の会話は、まだ進んでない状況ですが、いつ頃になったら再開するとお思いですか。
 それと二点目目は、終戦宣言に関しまして、日本政府は、まだ時期尚早だという認識を示したという報道があるのですが、これは日本人拉致問題が解決しない限りは賛成しがたい、そういう姿勢なのでしょうか。この2点、お願いします。

【吉田外務報道官】今お尋ねいただきました、日韓関係に関わるご認識でありますけれども、まず日本としての日韓関係に対する認識を申し上げたいと思いますし、これ新政権、岸田政権の下でも、そのような立場ということでありますが、まず、我々両国にとっての極めて喫緊の課題、地域の安全保障の課題は、北朝鮮への対応になります。このような対応には、日本と韓国、それから米国、日韓、日米韓の連携は不可欠、このように考えています。これらの観点から、既に外相レベルでは、何度か会談が行われていますし、日米韓の外交当局者の間では、北朝鮮に関する三者間、六者代表者間の協議というものも、ほぼ定期的に行われているということです。外交当局間での連携は継続しているというのが我々の認識であります。
 その上で、日韓関係そのものは、旧朝鮮半島出身労働者問題、慰安婦問題等々、非常に厳しい状況にあると認識はしていますけれども、これをこのまま放置することはできないというふうに考えています。
 岸田総理が就任されて、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との間でも、就任後、電話首脳会談が行われて、日韓間の現状、それから日韓間での取組について、意見交換がなされたと、このように認識しています。
 これら、今申し上げたような懸案がありますが、これは基本的には、国と国との間の約束事に関わるものだということでありまして、この国家間の関係の基本であると思います。従いまして、日韓関係、これは双方が希望しておるように、健全な関係に戻していきたいと、こうした観点から、我々日本としては、今申し上げたような国と国との基本である約束事については、きちっと守ってほしいと、そのために、今、韓国側に適切な対応をとっていただきたい、ということを求めてきています。このような立場に関して、我々の認識は変わりませんし、岸田政権の下においても、基本的にはそういう立場で臨んでいくことになります。
 他方、外交当局間における意思疎通、これは重要であると、冒頭に申し上げたようなこともありますし、日韓関係を健全な関係に戻していく上でも必要なことだと考えていますので、そういった外交当局間の意思疎通、これは現状継続していると認識していますし、そのような考え方に変わりがないと思います。
 それから、もう一点お尋ねのあった終戦宣言ですか、北朝鮮との間の、様々な報道がされているのは認識していますけれども、我々は、先ほど申し上げたような日米韓、3か国の間での北朝鮮に関する協議、直近は10月19日にワシントンで実施しましたけれども、この地域の平和と安定のために、北朝鮮の完全な非核化を実現する、国連安全保障理事会の決議の履行が重要であると、こういった観点から、従来から緊密にやり取りをしています。
 この場で行われている意見交換においては、我々が要するに一致して、北朝鮮情勢に対して対応していくという考え方では一致をしていますし、そのために、忌憚のない意見交換を行っています。従いまして、そのやり取りについては、つまびらかにしないという立場ですが、従来からの日本側の立場を踏まえて、やり取りを行ってきておりますし、引き続き、日米韓で緊密に連携をしていきたい、このように考えています。

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