記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和3年7月7日(水曜日)15時47分 於:本省会見室)

東京オリンピック・パラリンピック(文在寅韓国大統領の訪日)

【朝日新聞 安倍記者】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が東京五輪に合わせて来日するというような報道ありました。
 昨日の加藤官房長官の発言を聞いても、正式に決まっているということはないと思うんですが、韓国側から来日したいという意欲というのは、伝えられているのでしょうか。

【吉田外務報道官】今ご質問の中でも言及ございました、官房長官の方からも、その文在寅大統領に関する報道については、お答えをしたとおりですが、念のためポイントを申し上げると、東京オリンピックへの各国要人の参加につきましては、これはどの国と限らず全ての国共通ですが、国際オリンピック委員会のIOC、それからそれぞれの国のオリンピック委員会NOCとの間で調整をするということでありまして、日本政府が招待者ではありませんので、まだ我々の方としては、その結果については承知をしていないということであります。ですので、まだ調整中の段階であるということであります。
 その上で、韓国側からということですが、通報があったのかということについては、現時点でそういった通報があったということではないということです。

【朝日新聞 安倍記者】例えばなんですけれども、韓国側に対して日本政府は、慰安婦問題等をめぐる国際法違反、その是正を再三求めてきているわけですが、ここで改めてになりますが、日韓首脳会談を実現させるためには、今、何が必要だというふうに、日本政府としては考えているのでしょうか。

【吉田外務報道官】日韓首脳会談の実現と、それから日韓間の懸案について、何か条件付けてとのお尋ねだったかと思いますけれども、まず、日韓関係そのものは、ご指摘ご案内のように、旧朝鮮半島出身労働者問題、慰安婦問題等々、非常に厳しい状況にあって、両国間の懸案の解決のため、韓国が責任を持って対応して欲しいということを再三再四申し上げてきています。こういった懸案解決のための韓国側の提案を、お待ちしているという状況にあるかと思います。
 その上で、日韓関係を健全な関係に戻すということは重要なことであって、そのために、外交当局間の意思疎通は継続していこうということで、日韓外相会談等においても一致しているというところです。これが今のその日韓関係を取り巻く現状認識ということであります。
 従いまして、韓国の側においては、日韓の間で様々なやり取りをする中で、あるいはそういったやり取りを今後するにあたっては、今言ったことをよく念頭に置いていただきたいというのが日本側の考え方であります。

新型コロナウイルス(インドネシアの在留邦人保護)

【NHK 渡辺記者】インドネシアにおける感染状況に関連してですが、今朝の時点でジャカルタからのニュースを見ると、日本人の方、6人の方がコロナで亡くなったということですが、在外邦人の方が亡くなる状況というのは、かなり深刻な状況だと思うんですが、現時点での日本政府としての、何らかの特別な対応をする用意があるのか。それから、出国できるようになったと思うんですが、その辺の現状のオペレーションとして、必ずしもそういう国際空港のあるところにいない、そういう邦人の人たちのジャカルタへの移動とかは今どうなっているのかと。その辺の今の状況と、それからワクチン含めて何らかの支援というのが、特別な枠として考えてらっしゃるのか、その辺のことをお願いします。

【吉田外務報道官】インドネシアの状況について、何点かご質問をいただきました。現在、インドネシアにおける新型コロナの感染状況ですが、特に5月以降、イスラム教の国でありますけれども、断食明けの祝祭の休暇等に際して人の移動が増大した。こういったことを背景に、6月以降、新規感染者が増大して2万人を超えるような水準になっていると言われています。また、その中で、昨今、世界的に懸念されているデルタ株、こういったものの感染ケースも増えてきているということです。
 日本政府としては、在留邦人の方々に対して、新型コロナを取り巻く状況について、累次ホームページ、あるいは領事メール等でお知らせをするとともに、在留邦人の方々の中で、非常に不安を感じておられる困っておられる、ということに対しては、領事館の窓口で対応して、ご相談を承るという支援を継続しています。
 邦人の方で亡くなった方がおられるということですので、そういった方々、あるいはそのご家族の方々に対して、できる限りの支援を引き続き行っていきたいと思っています。
 その上で、インドネシアにおける出入国の状況についてですが、これは昨日、確か外務大臣の会見でもお尋ねがあって、茂木大臣の方からご説明ありましたけれども、インドネシア政府が、7月4日付の通達で、外国人による出入国規制を強化すると発表されました。
 特にインドネシア国内に滞在中の外国人が、国内外に移動する場合に、ワクチン接種を受けなければならない規制ということでありまして、これは、そういった状況で出国をしたいと考えられている邦人の方々の状況に、重大な影響が及びうるということでありまして、インドネシア政府に対して照会を行って、在留邦人の移動が過度に制限されないよう申入れを行いました。
 その結果として、滞在中の外国人が直接国外に移動される場合、ワクチン接種証明書の提示は不要であるということを確認をして、これをその領事メール等で在留邦人の方々にも周知をしています。
 ただ、今、ご質問にございましたように、インドネシア国内を移動しなければいけないという方々については、引き続き、ワクチン接種証明書が必要になるという状況にありますので、引き続きインドネシア側に対して、そういった移動が不必要に制限されないという働きかけを行っているところです。
 それに伴う様々なご不安とか疑問とか、そういったことに対しては、丁寧に大使館、総領事館の方で対応していきたいと思っています。
 あとはワクチンについて、ご質問がございました。基本的には、現地でワクチンを接種できるということであれば、そういったことをされるにあたっての情報提供は、やっていますけれども、当然様々な事情で、海外の在留邦人、これはインドネシアに限りませんけれども、ワクチン接種を現地で、居住国で行うことに非常に不安があるという方は多くいらっしゃいます。
 これは以前にも、やり取りがあったかと思いますけれども、海外在留邦人の方々、全世界的に一度アンケートを行いまして、そういうご希望があるということが多数寄せられましたので、8月1日から日本に一時帰国する形で、お越しになる方には、戻られる場合は、成田空港もしくは羽田空港の中で、設置する会場でワクチンの接種を受けることが可能になるように準備をして、在留邦人の方々にも周知をしているというところです。

米中関係(キッシンジャー米国務長官訪中50周年)

【共同通信 浅田記者】米中関係と日本の対応についてお伺いします。米中関係正常化の道筋をつけたキッシンジャー米国務長官の極秘訪中から、今月9日で50年になります。米中が日本の頭越しに接近したキッシンジャー訪中は、当時の日本政府に大きな衝撃を与えるとともに、日中国交正常化に向けた日本の動きに繋がったと伝えられています。現在、国際社会は、米中新冷戦と呼ばれる新たな局面に入っています。
 そうした中で、外務省として、キッシンジャー極秘訪中をきっかけとした50年前の米中和解に向けた動きをどう受け止めているか、また教訓とすべきものがあるかどうか、ご見解をお願いします。

【吉田外務報道官】ご質問いただきましたキッシンジャー、当時補佐官による極秘訪中、それに続きまして、ニクソン大統領が1972年2月に訪中したと、いわゆる一連のものを「ニクソン・ショック」と言われているかと思います。当然のことながら国際社会において大きな驚きを持って受け止められましたし、その後の国際情勢にも大きな影響を与えたと、このように認識をしています。
 基本的には、それぞれの過去の事象については、政府として特定の価値判断を下すよりは、歴史家の検証に委ねたいというのが、公式な政府としての考え方ですが、その上で、申し上げれば、ニクソン大統領の訪中が1972年2月に行われて、同じ年の9月25日に田中総理の訪中がございました。「ニクソン・ショック」が日中国交正常化に大きく影響したということは、おそらく歴史的には自明の評価だろうと思います。
 他方、海を隔てた隣国である日本と中国ということですから、戦後のそういった不正常な関係がいつまでも続いたと考えられませんし、早晩、国交正常化という道筋には行ったのであろうと、その中で「ニクソン・ショック」が後押しをしたということはあろうかと思います。
 他方、そういった「ニクソン・ショック」の背景、当時非常に東西冷戦の真っ只中であったということ、それから、特に米国からするとベトナム戦争という事情もございました。米中両国を取り巻く国際環境が背景にあっただろうと言わざるを得ないと思います。
 その後、現在に至ります米国、中国、それから日本、その他関係国の間の関係、取り巻く国際環境は劇的にこの50年で変化をしたのではないか。今や中国は世界第2位の経済大国でありますし、世界各国に支援をし、経済的にも進出をしていると。対外的な活動、行動、対応も大きく変化をしたと考えられます。そういった中で、米国のバイデン政権は、中国を最大の競争相手とみなすという状況にあり、この50年間、大変隔世の感があると思います。
 こういった現状ですが、新型コロナの世界的な感染拡大が続く中で、国際協調の必要性は以前にも増して一層高まっているという状況にありますから、世界第一、第二の経済大国であります米中両国、安定的な関係を築いていくということは、米中両国にとどまらず、国際社会にとって極めて重要なことであろうと考えます。
 こうやって、日中の間におきましても、日本と中国は、世界第3・第2の経済大国であります。日中関係も日中両国にとどまらず、地域や国際社会にとって、非常に重要な存在になってきている。同時に、尖閣諸島や東シナ海等をめぐる諸懸案、人権、香港といった国際社会の懸念事項が存在するのも事実であります。中国が国際社会のルールに則り、その責任を果たすべく、国際社会の期待に応えるよう、日本としても、中国の政府、指導者、直接日本の考え方・立場を伝えて、主張すべきは主張し、中国側に具体的行動を求めていきたい。このような立場が現状ということです。

中国情勢(中国共産党100周年式典における習近平国家主席発言)

【朝日新聞 安倍記者】今の中国に対して国際社会の期待に応えるよう求めていくというようなお話しですが、先日、中国の共産党の創立100周年の習近平主席の演説の中で、傲慢な態度の説教は絶対に受け入れないのだと、国際社会の批判を受け入れないという姿勢をはっきりさせています。党の式典の発言ではありますが、こうした中国の指導者の姿勢というのは、どのようにご覧なっているんでしょうか。

【吉田外務報道官】お尋ねのあった中国共産党100周年祝賀式典、習近平国家主席が演説をされたと、7月1日ですが、この中で様々、習近平主席の方から発言があったというのは承知をしています。基本的には、これは国内に向けた中国共産党という、政党の中での内政に関わる講話ですので、日本政府としてコメントするということは控えたいと思います。
 その上で申し上げると、先ほど申し上げたように、中国は世界第2位の経済大国ですし、その一挙手一投足、国際社会に大変な影響を与えるということであります。国際社会が、中国をどう見ているのか。国際社会がどういうことに懸念を持っているのか。国際社会が中国にどういうことを期待しているのかということについては、中国の政府、指導者に十分ご認識をいただきたいと思いますし、日本としても、そういった観点から、直接申し上げることは申し上げるという姿勢で臨みたいと思います。

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