記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成25年8月2日(金曜日)10時30分 於:本省会見室)

冒頭発言-広島及び長崎訪問

【岸田外務大臣】8月6日に広島市で開催される「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」、また9日に長崎市で開催される「被爆68周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」にそれぞれ出席をいたします。
 長崎では、長崎出身の高校生平和大使への「ユース非核特使」の委嘱式を行う予定です。
 広島、長崎双方の式典に外務大臣が出席するのは初めてと聞いております。被爆地出身の外務大臣として広島・長崎の惨禍を世代と国境を越えて語り継ぐという我が国の使命にしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

麻生副総理兼財務大臣のナチス政権に関する発言

【朝日新聞 山岸記者】麻生副総理のナチスに関連する発言に関してお伺いします。大臣は、そもそもこの麻生副総理の発言をどういうようにお聞きになったか、どこが問題だというようにお感じになったかということと、今後、この発言が撤回をされましたけれども、国際社会へ与える影響、また、とりわけ日米関係に対してどういう影響を与えるか、その点に関しての大臣のお考えをお伺いします。

【岸田外務大臣】まず麻生副総理の発言につきましては、御自身が真意を明確に説明され、そして自ら発言を撤回されておられます。内容については、発言された御自身がしっかり説明されるものと思っております。そして、私(大臣)の立場からは、是非、こうした発言が外交問題化、あるいは政治問題化しないようにしっかりと努力しなければいけないと思っています。
 我が国は戦後一貫して平和と人権を徹底的に擁護する社会を築き上げ、そして国際社会に貢献してきたと自負をしております。今後ともこの方針は全く変わりません。こうした我が国の姿勢をしっかりと説明していきたいと考えております。米国についても同様でございます。

靖国神社参拝

【フリーランス 上出記者】今の質問に関連しまして、個人的な行いだということでは済まない問題が現実に今、あると思うのです。特に具体的にお聞きしたいのは、8月15日の靖国参拝を閣僚のどなたかがもし参加したら、麻生さんは行かないと思いますけれども、それはかなり大きな政治問題になるかと心配されている向きもあります。
 これは総理への質問かもしれませんけれど、岸田大臣が先ほど言われた我が国のそういう今までの姿勢をしっかり各国に説明する、特に米国にもという場合に、単に韓国、中国だけではなくて、もし閣僚が1人でも参拝したとしたら結構、大きな問題になるのではないかという懸念があります。これについて、岸田大臣としてはどのように今、お考えでございましょうか。あるべき姿として。単なる個人の問題で済まされるかどうか。政治判断が必要なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

【岸田外務大臣】まず国のために尊い命を捧げられた方々に対して崇敬の念を示すということ、これは大変重要なことだと考えております。そして、我が国が平和国家を戦後一貫して築くべく努力をしてきた、そして国際社会の中で平和と繁栄に貢献してきた、こうした我が国の姿勢についてはしっかりと説明をしていかなければならないと思います。我が国のこうした考え方、姿勢というものを今後とも国際社会、各国に対して丁寧に説明をしていく、こういった努力はしっかり続けていきたいと考えています。個別の話、仮定の話について、私(大臣)から今の時点で申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。

広島及び長崎訪問

【中国新聞 藤村記者】先ほど、8月6日、9日のそれぞれの広島、長崎の式典に参加されるということでした。総理も式典に参加されるということですけれども、式典の後に例年、被爆者団体と総理が懇談するという会が設けられていますけれども、この会に非核外交について聞きたいということで今年、岸田大臣の出席を地元の被爆者団体が要請されていますけれども、この会に出られる意向はございますでしょうか。

【岸田外務大臣】式典後の意見交換というか、意見を承る場に私(大臣)が出席するかどうか。

【中国新聞 藤村記者】はい。

【岸田外務大臣】具体的な8月6日の式典に出席することは今、公にさせていただいたとおり確定しておりますが、その前後の日程については今、調整中です。

オスプレイの追加配備

【琉球新報 問山記者】在沖縄米海兵隊は、オスプレイ4機を明日、沖縄に飛行させるという内容を午後に発表するというように聞いています。そのことが防衛局のほうから県と宜野湾市に伝えられているのですが、沖縄では依然、この間の知事の要請のように配備中止を強く求めています。配備を強行することについての大臣のお考えと、もし配備された場合、沖縄県に今後どのように理解を得ていきたいと考えているのかということと、もう一点、先日、防衛省のほうが県が日米合同委員会で決まった運用ルールに318件違反するということを国に検証するような求めがあったのですが、その検証結果が発表されました。その中で防衛省のほうの説明では検証結果が事実上、検証できない部分もあるというようなコメントもありました。現在、県では今後オスプレイの違反事項について再度国のほうに検証を求められると思います。その場合、今の状況では結論がいつも同じように合意違反の確証を得られないというような結果になるというように予想されるのですが、今後、国として調査箇所を増やすとか、国の責任でこういった合意違反があるかないかを検証するようなお考えがあるのかどうか、この2点をお聞かせください。

【岸田外務大臣】まずはこのオスプレイにつきましては依然、地元において大変厳しい声があるということ、これはしっかり承知しておりますし、受け止めなければならないと思っています。そして、まずこのオスプレイの安全性、そして安全保障上の意義、こうしたことについては今後ともしっかりと、そして丁寧に説明をしていかなければならないと考えております。今後の動きにおいて、こうした姿勢、そして取組はしっかりと大事にしていきたいと考えております。
 そして、このオスプレイに対する調査のほうの話でありますが、こうした日米合同委員会の合意に違反しているのではないかという指摘が地元から出ている。この状況に鑑みますときに、引き続きこうした実態の把握については国としても真剣に取り組んでいかなければいけないと考えております。そして今後、こうした実態を把握する上で様々な工夫が必要であるという指摘についてはしっかりと我々も受け止めて、そうした具体的な工夫につきましても、必要であれば対応していく、こうした姿勢は大事にしていきたいと考えております。
 いずれにせよ、地元沖縄とのしっかりとした意思疎通を図っていかなければならないと思っていますし、そして信頼関係をしっかりとしたものにするべく、これからも努力していきたいと考えています。

内閣法制局長官人事

【テレビ朝日 藤川記者】政府は内閣法制局長官にフランス大使の小松氏の起用を固めたということですけれども、外務省出身者が内閣法制局長官になるというのは異例のことだというように受け止めているのですが、どういった役割を期待していらっしゃいますでしょうか。

【岸田外務大臣】今、御指摘の点につきまして報道が大きく出ていることについては当然、承知をしておりますが、これは人事にかかわることでありますので、現時点では私(大臣)のほうからコメントさせていただくことは控えさせていただきたいと思っています。

靖国神社参拝

【朝日新聞 山岸記者】先ほどの靖国に関する質問に関連しまして、大臣御自身は8月15日の終戦の日、ないしはその前後に靖国神社を参拝する御意向があるかどうかお伺いします。

【岸田外務大臣】私(大臣)は安倍内閣の一員として、そして外務大臣として適切に対応したいと思っております。

核兵器の人道的影響に関する共同ステートメント

【西日本新聞 中西記者】原爆忌の平和式典に大臣が出席されるということで、長崎でも広島でも今年4月に政府が核拡散防止条約の再検討会議の準備委員会で共同声明に署名をしなかったと。核兵器を再び使わないという内容の声明でしたけれども、これに対して被爆地では場合によっては使うのかと、それが許されるのかと。あるいは国際社会への誤ったメッセージになるといった懸念や批判が出ています。実際には長崎市議では平和宣言にそのことが盛り込まれていくということになりますけれど、改めて大臣として共同声明に署名しなかった理由と、個人的な考えでもいいですけれども、お考えをお願いします。

【岸田外務大臣】まず核軍縮、「核兵器のない世界」に向けて努力をする基本的な考え方につきましては、先日29日、広島県が主催しました「ひろしまラウンドテーブル」という円卓会議におきまして、私(大臣)はスピーチをさせていただき、申し述べさせていただきました。要約しますと、2つの認識が大切であるということを申し上げました。1つは、我が国は唯一の戦争被爆国であり、核兵器使用の悲惨さ、実相を最もよく知る立場にあります。こうした核兵器使用による影響・惨禍について国際社会にしっかりと発信していかなければいけない、正確な認識が大切であるということが1つ目の認識。そして、もう一つの認識は、現実、我が国は東アジアにおいて北朝鮮をはじめ、拡大する核リスクの中にあります。不透明な多様化する核リスクの中にあるわけですが、その中にあって、我が国の国民の生命、財産、そして自由を守るべく政府として努力をしなければいけない、こうした安全保障上の冷静な認識がもう一つの認識であります。
 正確な認識と冷静な認識、この2つをしっかり考えていかなければならない。そして、この2つは決して二律背反、どちらかだけをとるというものではなくして、しっかりとこの2つを追求しなければならない。我が国はこの2つをしっかり追求するために現実的かつ実践的なアプローチをしていかなければならない。そして、そのための具体的な取組がNPTでありNPDIであり、こうした国際的な枠組みであります。そして、その中で更に具体的には、核の問題について透明性を向上する。こういったあたりから取り組んでいる。これが我が国の現状の取組のありようです。
 そうした我が国の対応と共同ステートメントの関係において、先日、我が国も最後まで共同ステートメントに参加するべく努力をいたしました。核兵器の人道上の問題、直後の被害だけではなくして、世代を超えて、そして経済・社会的にも大きな影響をもたらす核兵器の非人道性についての認識については、この共同ステートメントに参加した国と我が国としっかり共有をしております。ただ、今回は時間切れということで我が国は参加することができませんでしたが、このことは大変残念に思っておりますし、参加した国と我が国も「核兵器のない世界」を目指すという大きな目標においては全く一致しているわけですから、今後とも共同ステートメント参加についてはしっかり努力をしていきたいと思っています。そして、そういった意向は、今回の共同ステートメント取りまとめの中心になった国々、例えば、南アフリカと一緒にこうした中心になったニュージーランド、マレーシア、こういった国々に対して、私(大臣)は先日、ニュージーランドを訪問したときも、ニュージーランド外相に我が国の思いを共同ステートメントについて敢えて私(大臣)のほうから取り上げさせていただきまして、我が国の立場を説明し、今後とも参加に向けて努力をしたい、協力をお願いしたいといったことは申し上げてきました。マレーシアのアマン外相との会談においても、同じくそうしたことを申し上げてきました。
 今後ともこうした「核兵器のない世界」を目指す大きな目標においては一致している我が国、是非、国際社会、多くの国々としっかり協力しながら大きな目標に向けて努力をしていきたいと考えております。こういった点について、国内においても度々説明をさせていただいているところですが、是非、こういった現状におけるこの我が国の対応についてもしっかり理解をいただくと同時に、これから我が国の進むべき方向についてもしっかりと理解をいただくべく、今後とも努力していきたいと思っています。

日中関係

【産経新聞 水内記者】数日前の斎木次官の訪中について、改めて伺いたいのですけれども、大臣、御報告を受けたと思うのですけれども、それを聞いて率直に中国側の態度を今どのようにお考えというか、御感想をどのように持たれたかというのと、それを聞いた上で、よりハイレベルな対話の可能性について現時点でどういうようにお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】斎木次官が先日、中国を訪問させていただきました。王毅部長はじめ関係者と会談の場を持ったということですが、様々な意見交換が行われ、大変意義ある機会であったと認識しております。そして、今後とも意思疎通をしっかり図っていこうということについて一致したと報告を受けています。
 今後とも、様々なレベルにおいて、また、様々な分野において意思疎通はしっかりと積み重ねていきたいと考えています。そして、高い政治レベルでの意思疎通につなげるべく、今後とも努力をしていきたいと思っています。

日韓関係

【共同通信 斎藤記者】間もなく、韓国の李明博前大統領が竹島に上陸してから、もう少しで1年経つことになります。
 これに関連してお伺いしたいのですが、この李明博前大統領の竹島訪問以降、日韓関係はぎくしゃくしているというのは承知のとおりですが、その後、日本政府のいろいろな働きかけにもかかわらず、日韓関係が良くなっているという印象はちょっとありません。これは政治面、それから一般大衆、国民世論の面でも良くなっているとは思いません。なぜ今、日韓関係は悪いのか、そして、この日韓関係を良くするために、大臣は今後、どのように対応していこうと考えているのか、この点についてお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】まず韓国は、言うまでもなく我が国にとりまして基本的な利益、基本的な価値を共有する大切な隣国だと思っています。そして、竹島問題につきましては、一朝一夕に解決できる問題ではありませんが、政府としましては、この問題を平和的に解決するため、今後とも粘り強く外交努力を続けていきたいと考えております。
 こうした日韓間には難しい問題は存在いたしますが、年間550万人の人が行き来する活発な人的交流も存在いたします。また、7月には日米韓外相会談を行わせていただいた。また、日韓外相会談も行わせていただきました。また、その後、2度にわたって日韓の外務次官が協議を行う等、ここへ来て意見交換、意思疎通についても活発化はさせております。
 是非、今後とも大局的な見地から未来志向で大切な二国間関係を進めるために努力をしていきたいと思っています。
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