記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成25年5月31日(金曜日)9時20分 於:本省会見室)

冒頭発言

(1)第5回アフリカ開発会議への出席について

【岸田外務大臣】明日6月1日から6月3日まで、第5回アフリカ開発会議(TICADV)に私(大臣)も出席をいたします。TICADVには、アフリカ各国から39名の首脳級が出席し、総理は全ての首脳と会談されます。
 私(大臣)は国際機関の長や首脳以外の各国代表20名との二国間会談、16名の国際機関の長との昼食会を行うほか、閣僚級事前会合、ソマリア特別会合、人間の安全保障シンポジウムの議長をつとめ、TICADVのテーマ別会合にてスピーチを行う予定にしております。
 アフリカは将来の世界の成長センターとして存在感を増しております。TICADVでは、日本企業とアフリカ首脳との対話の機会を多く設けています。日本らしさを大切に、アフリカとの包括的かつ互恵的な関係を更に強化する取組を進めてまいります。

(2)アルジェリア・テロ事件後の政府の取組及び3本柱について

【岸田外務大臣】1月のアルジェリア・テロ事件を受けた「在留邦人及び在外企業の安全確保策」及び「国際テロ対策の強化」につきまして、外務省の具体策が取りまとまりましたので、ここに発表させていただきます。
 まず第1に「在留邦人・在外企業の安全確保策」についてですが、外務省では、一つは、官民集中セミナー等を通じた官民連携の強化、二つ目として、在留届制度の運用改善やショートメッセージサービス等の活用による情報発信の強化、そして、三つ目として、緊急時に現地に迅速に赴く海外緊急展開チームの編成などを進めていきます。なお、情報収集・分析体制の強化などの中長期的な課題につきましては、私(大臣)の下に設置した「海外における企業・邦人の安全対策の強化のための対策チーム」において、引き続き検討をしていくこととしております。 
 そして、もう一つ、「国際テロ対策の強化」の具体策ですが、まず、第1は米国との間では、国連薬物犯罪事務所を通じたリビアにおける共同プロジェクトを実施することとなりました。第2にアルジェリアとの間では、近くテロ対策等に関する協議を開催することで合意をいたしました。また、第3に、国連機関の協力を得て、サヘル及び北アフリカ各国に警察、国境管理能力向上訓練・研修を行う、更には司法制度強化を実施することを決定いたしました。今後、訓練研修や機材供与の形で具体化していく予定にしております。

在日米軍F-15の墜落事故

【琉球新報 松堂記者】沖縄で嘉手納基地所属のF-15が墜落しましたが、米軍は原因究明をしないまま飛行を再開しています。外務省、防衛省の方に沖縄から原因究明までの訓練中止の要請があったと思いますが、外務省の方で米軍に対して、原因を究明するまで訓練を中止する要請をすることはありますでしょうか。

【岸田外務大臣】御指摘のF-15の墜落事故ですが、米軍は29日終日、同機の飛行運用を停止し安全確認を行ったと承知をしております。米側の説明によれば、嘉手納飛行場の全てのF-15の安全点検を行い、安全性を確認したということであります。その上で30日からの運用が再開されたと承知をしております。そして、墜落事故を起こした米軍機につきましては、引き続き事故原因の究明を行うということになると承知しております。
 米軍機の運用に際しましては、公共安全に考慮していかなければいけないということは大前提であります。そのことについては、米側に既に申し入れており、また、米側からも、プレスリリース等を拝見いたしますと、基地住民と地元の皆様の安全は常に最優先事項であり続けるというコメントもあります。是非、原因究明、そして、今後の安全対策については米側に対してしっかり働きかけていかなければならないと思っています。
 いずれにせよ、安全確認、そして、原因究明、全体として今後こうした事故が再発しないように、万全の態勢で努力してもらわなければならない、これはしっかりと米側に働きかけていきたいと考えています。

日印原子力協定

【フリーランス 上出氏】前回5月28日の記者会見に私は出ていないのですが、記録を見まして質問します。日本とインドの原子力協定に絡んで、記者の質問に答えまして、実際に原子力協定について調整中という言葉を使ってお答えになっていました。要するに核不拡散の視点だとか、原発の安全性の問題だとか、いろいろな面で批判もあるのです。それでそういうことも含めて、まだ完全に決まっていないという意味で調整中というのを使われたのでしょうか。まだ検討する余地があるとしたら、どういうところでしょうか。

【岸田外務大臣】インドとの原子力協定については、先の首脳会談において両首脳間で、引き続き協議を進めていく、こうしたことが確認をされています。協定の中身については、引き続き両国間でしっかりと議論していく、検討していく、こうした状況にあります。ですから、そういったことを検討中という言葉で申し上げたのではないかと記憶しております。

【中国新聞 藤村記者】先ほどの原子力協定交渉再開で合意したということですけれども、これに対してはNPT体制を空洞化させるのではないかという指摘もあって、その点については核軍縮に積極的に取り組むスタンスの外務大臣としてどういうようにお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】インドとの原子力協力を行うにあたりましては、インド側がこれまでに約束した事柄、核実験モラトリアムの継続ですとか、原子力施設の軍民分離ですとか、こうした約束を堅持すること、これは当然前提であります。そして、これによって、NPTの外側にインドはいるわけですが、国際的な核不拡散体制に関与させ、実態的に取り組む契機となり得るのではないかと我が国は認識をしております。いずれにせよ、この交渉を進めるに際しましては、核軍縮、あるいは不拡散、こうした点には十分配慮していかなければならないと考えています。

【中国新聞 藤村記者】そうすると、NPT体制に入るようにインドに日本政府としては求めていくのでしょうか。それともそうではないのですか。

【岸田外務大臣】その点につきましては、我が国はNPTの普遍性を重視する立場は不変であるという我が国の立場については、シン首相に対しても総理から申し上げさせていただいております。我が国の立場は、シン首相にも申し上げておりますし、伝わっているものと考えています。

【中国新聞 藤村記者】そうすると、日本としては今回の交渉再開の合意については、今までの日本が進めようとしている核不拡散の路線がこのまま交渉の中でも維持できるというか、このまま進めていけるということを総合判断して交渉再開という合意に至ったと考えてよろしいですか。

【岸田外務大臣】NTPの普遍性を重視するということについては、我が国の立場は全く変わっておりませんし、インドとの原子力協力についても、先ほど申し上げた過去の様々なインド側が行った約束を堅持することによって、実態的にインドをNTP体制に取り込む契機になり得るのではないか、こうしたことを我が国としては考えております。軍縮・不拡散について、是非、現実的、実質的な成果を上げていきたいと考えています。

歴史認識問題

【フリーランス 上出氏】何回か繰り返していることですけれども、歴史認識の問題のその後のことですけれども、岸田外務大臣は非常にきちんと過去のそういう日本のいろいろな問題について丁寧に説明していくということを非常に強調されております。ただ、残念ながら、橋下大阪市長などがまた違う発言をされて、大阪市議会では問責決議は否決になりました。ただ、この動きというのは 政府の動きと合わせて海外では捉えられている。前の質問でも出ております。その後、実際にこの問題で交渉で支障が出たことがあるのかどうかということと、内閣として気をつけるというのは具体的にどんなようなことを皆さん気をつけたらいいのか。どうも勝手に発言されている方も相変わらずいるようですが、その辺を内閣全体の取り組みについて大臣の目からごらんになってどうでしょうか。

【岸田外務大臣】橋下大阪市長の発言については、他党の共同代表の発言でもありますので、政府の立場から何か申し上げることは控えたいとは思いますが、再三申し上げておりますように、政府の認識、立場とは異なっております。そして、海外から様々な発言があり、また海外において議論が行われていることは承知しております。その中で、ぜひ政府の認識、立場はしっかりと説明していかなければならないと思っています。各国政府間における意思疎通においてはもちろんでありますが、議会ですとかメディアですとか、こうしたさまざまなルートを通じて我が国の認識、立場をしっかりと正確に伝えていく努力はしていかなければならないと思っています。そして、そのことによって、実質的な影響があったのかという御質問ですが、こうした努力を続けることによって外交的にも政治的にも影響が出ないようにしっかりと努めていかければならないというのが外務省、そして我が国外交の立場だと思っています。

北朝鮮情勢

【毎日新聞 吉永記者】昨日から韓国のメディアで、ラオスから強制送還された脱北者の中に日本人拉致被害者の関係者がいると複数の報道があるのですけれども、これについての事実確認が現時点ではどうなっているのか教えていただけますか。

【岸田外務大臣】まず、様々な報道につきましては、承知をしております。拉致被害者の安否に関わる情報については、普段から情報収集に努めており、本件におきましても関係者と直ちに連絡をとるなど、事実関係について鋭意確認中であります。また、事柄の性質上、ここで何かお答えすることは控えさせていただきたいと思っています。

【毎日新聞 吉永記者】もし確認がとれた場合には、何らかの形で公表するとかそういうことはあり得るのでしょうか。

【岸田外務大臣】今、確認中でありますので、具体的に申し上げるのは控えたいと思いますが、いずれにしましても、政府としましてはすべての拉致被害者の生存を前提に情報収集・分析その他の取り組みを行ってきているところであり、引き続き、今後とも1日も早いすべての拉致被害者の帰国を目指し、あらゆる努力を行っていきたいと考えています。

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