記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和5年11月17日(金曜日)14時30分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)イスラエル・パレスチナ情勢に関する国連安全保障理事会
【上川外務大臣】私から2件ございます。
まず、イスラエル・パレスチナ情勢に関する安保理決議についてであります。
国連安保理におきましては、16日に、ガザ地区における児童の保護に焦点を当て、人道的休止やハマス等による人質の即時・無条件の解放の要請、全ての当事者による国際法の遵守を含む内容の決議が、我が国を含む12か国の賛成により採択をされました。
本決議は、4本の決議案が、理事国間の対立により否決された後、ガザ地区の現状に鑑み、早急に児童を含む人道状況の更なる悪化を防ぐために、安保理の「児童と武力紛争作業部会」の議長を務めるマルタが提案したものであります。我が国も理事国の一員として、その採択に向けて様々な外交努力を行い、賛成票を投じたところであり、本決議の採択を歓迎いたします。
全ての当事者が、本決議に基づき誠実に行動することを求めるとともに、引き続き、関係国・関係機関との間で意思疎通を行い、人道状況の改善と、事態の沈静化等に向けた外交努力を、粘り強く、積極的に進めてまいります。
(2)バングラデシュとOSA交換公文署名
【上川外務大臣】続きまして、バングラデシュとのOSA交換公文署名についてであります。
外務省は、本年4月、政府安全保障能力強化支援、OSAを創設いたしました。 OSAは、同志国に対して、資機材を供与し、その安全保障能力や抑止力を向上させることで、地域の平和と安定を確保し、望ましい安全保障環境を創出するための新たな支援枠組みであります。
このOSAに関しまして、11月3日のフィリピンに対する案件の決定に続き、15日、第2号案件となるバングラデシュ海軍に対して、警備艇を供与する案件につき、交換公文の署名を行いました。
バングラデシュは、我が国の戦略的パートナーであるとともに、我が国にとって重要なシーレーンに面するベンガル湾を擁しています。本支援により、バングラデシュ海軍の警戒監視能力や災害対処能力を強化をし、ベンガル湾、ひいてはインド太平洋地域における海洋安全保障の維持・強化に寄与することが期待されます。
今年度の残る候補国であるマレーシア、フィジーについても、本年末までを目処に決定できるよう進めてまいります。
私からは以上です。
日中首脳会談
【読売新聞 谷川記者】 日中首脳会談では、戦略的互恵関係を包括的に推進することで一致しましたけれども、この言葉を、外務省として、どのように定義されているか伺います。また、日中外相会談に向けた調整状況と、山積する日中の課題に、今後どのように対応していくお考えか、見解をお願いします。
【上川外務大臣】まず、1点目の御質問でありますが、この「戦略的互恵関係」とは、国際社会の平和、安定及び発展に対して責任を負う日中両国が、「将来にわたり、二国間、地域、国際社会等、様々なレベルにおける互恵協力を全面的に発展させ、両国、アジア及び世界のためにともに貢献し、その中でお互いに利益を得て共通利益を拡大」し、「そのことにより、両国関係を新たな高みへと発展させていく」という考え方であります。
日中両国は、2008年5月の日中共同声明におきまして、これを「包括的に推進」することで一致しております。
日中両国は、昨年の日中国交正常化50周年に続きまして、本年は日中平和友好条約45周年という節目を迎えました。これらに当たり、両首脳の間で、日中間のこれまでの歩みを振り返り、今後を展望する中で、日中間の4つの基本文書の諸原則と共通認識を堅持し、「戦略的互恵関係」を包括的に推進することを再確認したことは、極めて有意義であったと考えております。
2点目のご質問でありますが、日中外相会談の調整状況等も含めましてということでありました。
日中韓の外相会議を含めまして、私(上川大臣)と王毅(おう・き)外交部長の会談につきましては、現時点で何ら決まっておりませんが、引き続き、中国との間では、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を図ってまいりたいと考えております。
そして、今後の日中課題ということでありますが、日中両国間には、様々な可能性とともに、数多くの課題や懸案がありますが、引き続き、日本としては、主張すべきは主張し、中国に対し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案も含め、対話をしっかりと重ね、共通の課題につきましては協力をする、「建設的かつ安定的な関係」の構築を双方の努力で進めていくことが、重要であると考えております。
日中韓外相会議
【NHK 五十嵐記者】日中韓の関係で伺います。日本時間の本日、日中や日韓の、それぞれのバイの首脳会談が行われましたが、今月末に調整されている日中韓の外相会談に向けて、大臣はどのように臨むお考えでしょうか。会談の意義と併せて伺います。
【上川外務大臣】まず、我が国といたしましては、様々な課題につきまして、この3つの隣国が、ハイレベルで議論する場である日中韓プロセス、これを引き続き重視しており、先日の日韓外相会談におきましても、私(上川大臣)から朴(パク)長官に対し、議長国である韓国の取組を支持する考えを表明し、緊密に連携していくことを確認をいたしました。
日中韓の外相会議の日程や課題等は最終調整中でありますが、次回の外相会議では、3か国のこれまでの議論・協力の積み上げを基礎に、現下の国際情勢を踏まえた具体的な協力の方向性、地球規模課題への対応、地域情勢などについて議論することとなると考えております。
いずれにいたしましても、外相会議が開催されれば、私(上川大臣)としても、日中韓の会合・協力が有する、こうした戦略的意義を踏まえまして、積極的に議論に参加してまいりたいと考えております。
第2回核兵器禁止条約締約国会議
【中国新聞 樋口記者】核兵器禁止条約について伺います。10日後に、第2回の締約国会議というのが迫ってきました。各地から、昨日も被爆者団体とかオブザーバー参加をという要請に来られましたけれども、各地からそういった声が上がっております。昨日、担当の方は、慎重な姿勢というのを示したのですけれども、参加するかどうかの明言をされませんでした。改めて、政府としてオブザーバー参加をする考えがあるのかどうか伺います。
【上川外務大臣】この核兵器禁止条約は、「核兵器のない世界」への出口とも言える重要な条約でありますが、同条約には核兵器国は一か国も参加しておらず、未だその「出口」に至る道筋は立っていないのが現状であります。
こうした中におきまして、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければならないと考えております。
我が国といたしましては、引き続き、5月のG7広島サミットで発出しました、この「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」、これを強固なステップ台としつつ、昨年8月のNPT運用検討会議で岸田総理が表明した「ヒロシマ・アクション・プラン」の下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的かつ実践的な取組を継続・強化してまいります。
【中国新聞 樋口記者】ありがとうございます。もう一点だけ伺います。日本と同じような立場にある、例えばドイツとか、米国の核の傘の中にある国でも、オブザーバー参加をした国があります。日本も、かねてから核保有国と非保有国の橋渡しをするのが大事なのだと言ってらっしゃるんであれば、オブザーバー参加をドイツなんかもしているし、という声もあるんですけれども、この点について大臣のお考えをお願いします。
【上川外務大臣】他国の対応ぶりにつきまして、我が国として、コメントすることにつきましては差し控えさせていただきますが、本締約国会合へのオブザーバー参加に関する日本政府の立場は、今申し上げたとおりでございます。
いずれにせよ、引き続き、「G7首脳広島ビジョン」これを強固なステップ台としつつ、「ヒロシマ・アクション・プラン」の下での取組を、一つ一つ実行していくことで、現実的かつ実践的な取組を継続・強化してまいりたいと考えております。
中東情勢
【アナドル通信社 メルジャン・フルカン記者】世界保健機関は、イスラエルのガザ 攻撃により、これまで20以上の病院が機能停止になったと発表しました。今週の中で、国連は、「イスラエルは、国際法上、自衛の権利を主張できない、ガザは、イスラエルが占領する地域です」と発表しました。イスラエルによる6週間にわたるガザ攻撃で、1万2,000人近くの罪のない民間人が殺害されました。カナダやフランスなど西側諸国は、イスラエルに対し、攻撃を中止するよう求めました。日本政府は、イスラエルに対して、攻撃を中止するという同じ呼びかけをすることができるのでしょうか。お願いします。
【上川外務大臣】ガザ地区及び周辺におきましては、既に多数の死傷者が発生しておりまして、このような人道状況の悪化を深刻に懸念しているところであります。また、多数の人質は即時に解放されなければならないと考えております。
全ての当事者は、国際人道法を含む国際法を遵守しなければなりません。また、実際の軍事行動におきまして、民間人の被害を防ぐべく、人道目的の戦闘休止を含めまして、実施可能なあらゆる措置を講じる必要があると考えております。
これまでも、私(上川大臣)自身、イスラエルに対しまして、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきているところであります。
引き続き、全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の遵守を求めつつ、関係国・国際機関との間で、しっかりと意思疎通を図りながら、人道状況の改善と事態の沈静化等に向けました外交努力を、粘り強く積極的に続けてまいる考えであります。