記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和5年10月17日(火曜日)13時25分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)パレスチナ・ガザ地区における人道状況の悪化を受けた緊急人道支援
【上川外務大臣】 私(上川大臣)から2点、冒頭発言がございます。
一点目であります。パレスチナ・ガザ地区における人道状況が悪化していることを踏まえ、我が国は、ガザ地区の一般市民に対する支援として、国際機関を通じ、総額1,000万ドル規模の緊急人道支援を実施する考えです。
我が国として、今般のハマスを含むパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃を、改めて断固として非難するとともに、罪のない一般市民やパレスチナ難民に、食料、水、医療・保険等の必要な支援が行き届くよう、人道アクセス改善のための外交努力を続けてまいります。
引き続き、現地の情勢を深刻な懸念をもって注視していくとともに、事態の早期沈静化及びガザにおける人道状況の改善に向け、各国・国際機関とも連携しつつ、関係者への働きかけなどに積極的に取り組み、また現地のニーズを踏まえた必要な支援を進めてまいります。
(2)アフガニスタン西部地震被害に対する緊急無償資金協力等
【上川外務大臣】 二点目であります。10月7日以来、アフガニスタン西部におきまして、断続的に発生している地震により甚大な被害が生じております。これを受けまして、本日の閣議において、国際機関を通じて、食料、保健等の分野で、300万ドルの緊急無償資金協力を行うことを決定いたしました。
加えて、ジャパン・プラットフォームを通じた我が国のODAによる支援として、約146万ドルの支援を行います。
日本政府として、今回の支援を迅速に実施するとともに、アフガニスタンの人々に寄り添い、同国の人道状況の改善に向け、引き続き、取り組んでいく考えであります。
私(上川大臣)からは以上です。
イスラエル・パレスチナ情勢(ガザ地区への地上侵攻)
【朝日新聞 松山記者】 先ほど、パレスチナ・ガザ地区に対して、1,000万ドルの人道支援を行うということを表明されましたけれども、ガザ地区に対しては、イスラエルによる地上侵攻に向けての緊張感が高まっています。国連は、イスラエルの地上侵攻に向けた動きに対し、強く批判するなどしておりますが、日本として、この地上侵攻をやめるように、イスラエル側に働きかける、もしくは、強い言葉で非難するということは、されないのでしょうか。
【上川外務大臣】 ガザ地区及び周辺におきましては、既に多数の死傷者が発生しております。緊張度は、刻一刻と増しており、情勢は全く予断を許さない状況であり、深刻な懸念をもって注視しているところでございます。
このような情勢を踏まえまして、我が国は、事態の早期沈静化や、また、一般市民の安全の確保、人道状況の改善等のための外交努力を積極的に払ってきており、私(上川大臣)自身、イスラエルのほか、ヨルダン、UAE、エジプト、カタールに続き、13日には、パレスチナのマーリキー外務・移民庁長官と電話会談を行いました。翌16日は、サウジアラビアと外相電話会談を行ったところであります。また、本日、イランのアブドラヒアン外相と電話会談を行う方向で、最終調整しているところであります。
イスラエルとの関係では、12日の外相電話会談におきまして、私(上川大臣)からコーヘン・イスラエル外相に対して、事態の早期沈静化への期待を表明いたしました。
そして、翌16日には、辻外務副大臣が駐日イスラエル大使と会談し、一般市民に必要な支援が届くよう、人道支援活動が可能な環境確保のための協力を要請したところでございます。
さらに、このような外交努力の一環として、今晩から、中東和平担当特使である上村司(うえむら・つかさ)政府代表を、エジプト、ヨルダン、カタールに派遣し、各国政府関係者等との間で、情勢に係る協議を通じて、日本としてとるべき具体的方策を、可及的速やかに検討してまいりたいと考えております。
日本としては、引き続き、刻々と動く現地調整を踏まえつつ、関係国との間で、しっかりと意思疎通を行い、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期沈静化、そして人道状況の改善に向けた外交努力を続けてまいります。
【共同通信 桂田記者】今の質問に関連して伺います。仮に、イスラエル軍によるガザ地区への地上侵攻が行われた場合でも、日本政府として、これまで表明されてきたハマスのテロ行為を非難し、あと、イスラエルが国際法に従って、自国及び自国民を守る権利を有することは当然であるとの立場は変わらないのでしょうか。
【上川外務大臣】まず、お尋ねの地上侵攻につきましては、仮定の御質問でございますので、お答えにつきましては、差し控えさせていただきたいと思います。
その上で申し上げれば、我が国としては、今般のハマス等のパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃を、断固として非難した上で、まず第一に、人質となっている人々の即時解放、及び一般市民の安全が確保されること。二点目として、全ての当事者が、国際法に従って行動すること。三点目として、事態が早期に沈静化することが極めて重要であるといったメッセージを、一貫して発信してきているところであり、こうした立場に変更はございません。
イスラエル・パレスチナ情勢(ガザ地区からの退避通告・空爆による被害)
【パンオリエントニュース アズハリ記者】 (以下は英語にて発言)
ありがとうございます。パン・オリエントニュースのアズハリです。
イスラエル占領軍がガザに住む数百万人のパレスチナ人に退避を通告したことについて、日本の立場を教えてください。この質問に関連して、ガザのJICA事務所が爆撃されたことを示す写真がありました。これはイスラエルによるテロ攻撃です。日本は、これをイスラエルによるテロ攻撃として非難し、イスラエルに補償を求める予定はありますか。
【上川外務大臣】 ガザ地区及びその周辺におきましては、既に多数の死傷者が発生しております。現在の緊張度は、刻一刻と増しておりまして、情勢は全く予断を許さない状況であります。我が国といたしましても、深刻な懸念をもって情勢を注視しているところでございます。
JICAのガザ出張所が入居するビルに被害が出たところでありますが、少なくとも人的被害はなかったと承知しております。出張所の具体的な被害状況の把握に努めているところでございます。また、UNRWAの施設や職員にも被害が生じていると承知しております。
ガザ地区におきまして、邦人を始めとする外国人等の出域でありますとか、また、ガザ地区の人道状況の改善が喫緊の課題と考えております。
イスラエルに対しましては、昨16日に、辻外務副大臣が、駐日イスラエル大使に対しまして、罪のない一般市民の保護が重要であり、全ての当事者が国際人道法に即した対応を行う必要があるとして、一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道支援活動が可能な環境確保のための協力を要請いたしました。
今後とも、刻一刻と変化する情勢に応じまして、その都度、様々な関係者の間で意思疎通を図ってまいりたいと考えております。
イスラエル・パレスチナ情勢(出国のためのチャーター機)
【読売新聞 依田記者】 イスラエルからの邦人退避の関係でお伺いします。日本政府が、14日に手配したチャーター機ですけれども、こちらには邦人8人しか搭乗しませんでした。事前の意向調査では、どれくらいの搭乗希望者がいらっしゃったのでしょうか。また、イスラエル発の商用便の運行が継続している中、チャーター機を飛ばすという対応は、妥当だったと考えますでしょうか。大臣のお考えをお願いします。
【上川外務大臣】 まず、今回のチャーター機の手配でございますが、手配に先立ちまして、在留邦人に対して、出国の意向調査を行ったところであります。その結果、チャーター機に対する邦人の方々の関心が、一定程度あったということで、確認をされたところであります。
イスラエルでは、現在、定期商用便が減便されつつも運行を続けているところでありますが、早期出国を希望される邦人に対しまして、最も迅速に提供できる商用便以外の一つの選択肢として、政府がチャーター機を手配したものでございます。
イスラエル・パレスチナ情勢(日本の対応)
【ロイター通信 ゲディ記者】 (以下は英語にて発言)
ロイター通信のジョン・ゲディです。イスラエル・パレスチナ危機に対する日本の対応は、他のG7諸国よりも抑制的だという見方があります。日本は、ハマスによる攻撃直後に声明を発表したG7の5か国には含まれておらず、少なくとも当初は、公式な声明では、より慎重な表現を用いていました。それはなぜでしょうか。
関連質問ですが、日本は石油の90%を中東から輸入していますが、同地域の不安定な情勢は、日本にとっての懸念材料になりますか。
【上川外務大臣】 我が国は、本年はG7議長国であります。議長国として、国際社会の諸課題につきまして、G7各国と緊密に連携してきているところでございます。今回の事案発生以降におきましても、このG7間で様々なやり取りを行いつつ、各国からそれぞれ発信をしてきている状況でございます。
御指摘の5か国の声明についてでありますが、従来、国際社会におきまして、中東問題をめぐっては、様々な枠組みで立場の表明がなされてきており、今回の声明につきましても、その一つとして発出されたものと承知をしております。
我が国としては、今般のハマス等のパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃を断固として非難をした上で、人質となっている人々の即時解放、及び一般市民の安全が確保されること、そして、全ての当事者が、国際法に従って行動をすること、また事態が早期に沈静化すること、これが極めて重要であるとの一貫した立場を表明してきております。
刻々と動く、この現地情勢でございます。そうした時々の情勢に応じて、こうした我が国としての立場を発信してきているところであります。引き続き、G7各国と、様々なレベルで意思疎通を図ると同時に、国際社会の諸課題につきましても、緊密に連携して、対応していくところでございます。
中東地域でありますが、大変大きな潜在性を有しておりまして、エネルギー資源の宝庫であるとともに、シーレーンの要衝であります。日本は、原油輸入の約9割を中東地域に依存している状況がございます。その意味では、この地域の平和と、そして安定は、エネルギー安全保障においても極めて重要と考えております。
このような観点からも、我が国は、今回の事態を深刻な懸念を持って注視しており、我が国としては、引き続き、G7を含む国際社会と連携しつつ、先ほど申し上げました3点をしっかりと踏まえた上で、時々刻々の情勢の中で、迅速に判断をし、そして行動して参りたいと思っております。
イスラエル・パレスチナ情勢(フランスにおけるテロに関する注意喚起)
【ラジオフランス 西村記者】 イスラエルとハマスの戦争の背景には、欧州、特にフランスでのテロのリスクが高くなりました。先週の金曜日に、既にフランスの中学校で、テロ行為による教員1人が殺害され、3人がけがをしました。それを踏まえて、フランスの政府は、テロの警報を最高のレベルに引き上げました。そんな状況に対して、日本の政府は、フランスに滞在している、もしくは滞在する予定がある日本人に注意報又は警報を出すこと検討しているのでしょうか。
【上川外務大臣】 10月13日、フランス北部で、高校に侵入した男が教師ら数名を死傷させる事案が発生したものと承知しております。
日本国政府及び日本国民を代表し、犠牲者となられた方及びそのご家族の方々に深い哀悼の意を表しますとともに、負傷者の方々の一日も早いご回復を心からお祈り申し上げます。
このような卑劣なテロは、いかなる理由でも許されず、断固として非難を申し上げます。
本事案を受けまして、フランス政府が、国内のテロ対策行動計画を最高水準に引き上げたと承知しております。
外務省といたしましては、フランス政府の対応及び現地におけるテロ情勢、これを踏まえまして、スポット情報及び領事メールを発出をし、在留邦人及びフランスに渡航する邦人に対しまして、注意喚起を行っている状況でございます。
引き続き、テロ対策を含む国際社会の諸課題に対しまして、フランスと緊密に連携していくとともに、在外邦人に対しまして、適宜適切な情報提供を行いながら、安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。
イスラエル・パレスチナ情勢(上村司政府代表)
【アナドル通信 フルカン記者】 日本政府は、緊張緩和の一環として、和平特別代表をこの地域に派遣することを決定しました。私達は、中東和平に対する日本のアプローチを注意深く見守っています。緊張緩和の呼びかけを超えて、日本和平特別代表は、地域歴訪の中に、当事者のどのような具体的な計画を提案しようとしているのでしょうか。今月、日本が、他にどのような革新的な措置を講じることが期待できるのでしょうか。
【上川外務大臣】 これまで、日本政府といたしましては、事態の早期沈静化や、また、ガザ地区の人道状況の改善等に向けまして、外交努力を積極的に払ってきているところでございます。
このような外交努力の一環として、今般、中東和平担当特使であります上村政府代表を、今晩から、エジプト、ヨルダン、カタールに派遣をする予定であります。
上村政府代表は、これらの訪問国におきまして、各国政府関係者等との間で、情勢に係る協議を行う予定でございます。そうした協議を通じまして、日本として、とるべき具体的な方策を、可及的速やかに検討してまいりたいと考えているところでございます。
我が国といたしましては、今般の上村代表の訪問も含めました外交努力を通じて、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の沈静化、そして、ガザにおける人道状況の改善に向けて、引き続き積極的に取り組んでまいる所存でございます。
イスラエル・パレスチナ情勢(邦人保護)
【NHK 五十嵐記者】 邦人の安全確保について伺います。現時点でイスラエル、パレスチナには、何人の邦人が残っていて、その安否はどうなっていますか。とりわけ、ガザ地区における、邦人の安全が懸念されていますが、最新の対応状況について伺います。
【上川外務大臣】 まず、一点目でありますが、イスラエル、パレスチナにおきましては、現在、約900人の在留邦人が滞在しており、現時点で、生命・身体に被害があったとの報告は受けておりません。
また、ガザ区には、少数の邦人が滞在しておりまして、緊密に連絡を取り合っているところでございます。
引き続き、関係国、関係機関と密接に連携しつつ、邦人の安全確保に全力を挙げて対応してまいりたいと考えております。