記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和5年10月24日(火曜日)12時00分 於:本省会見室)

(動画)上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

(1)カイロ平和サミットへの出席

【上川外務大臣】私(上川大臣)から3点申し上げます。
 まず、1点目であります。21日、エジプトで開催されました「カイロ平和サミット」に、東アジア地域から唯一の閣僚として、私(上川大臣)が出席いたしました。刻一刻と緊張度が増すイスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、私(上川大臣)から、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放・一般市民の安全確保、第二に、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、そして、第三に、事態の早期沈静化、が極めて重要であるとの我が国の立場を明確に発信いたしました。
 また、目下の優先課題でありますガザ地区の人道状況への対応において、第一に、ガザ地区の人々に、一日も早く必要な支援を届けること、そして第二に、同地区に留め置かれている外国人の退避を実現すること、の重要性を訴えるとともに、中長期的な観点から、今般の事案が、中東和平の道を閉ざすことになってはならず、「二国家解決」を支持する日本の立場は、今後も変わらないことも強調いたしました。
 加えて、エルシーシ・エジプト大統領、アッバース・パレスチナ大統領、クレバリー英外相、コロンナ仏外相、ジョリー・カナダ外相等との間で個別に意見交換を実施し、情勢の沈静化の重要性及び現地の人道状況の改善に向け、緊密に意思疎通していくことで一致をいたしました。
 会合におきましては、イスラエル・パレスチナ情勢が各国、そして国際社会にとり、いかに喫緊の課題となっているか、改めて実感したところであります。今般の会合での議論も踏まえ、日本としても、引き続き、しっかりと取り組んでまいります。

(2)パレスチナ・ガザ地区における緊急無償資金協力

【上川外務大臣】2点目でありますが、パレスチナ・ガザ地区における人道状況の悪化を受け、17日の会見で、私(上川大臣)から、緊急人道支援を実施する考えを発表いたしました。
 本日の閣議において、1,000万ドルの緊急無償資金協力を行う旨を私(上川大臣)から発言をいたしました。具体的には、国連パレスチナ難民救済事業機関を通じて700万ドル、赤十字国際委員会を通じて300万ドルの支援を、食料、水、医療等の分野において実施します。
 21日に開催されたカイロ平和サミットにおいても、私(上川大臣)から訴えたとおり、ガザ地区の人々に、一日も早く必要な支援を届けることが目下の優先課題であり、各国・国際機関とも連携しつつ、関係者への働きかけなどに積極的に取り組むとともに、今後も現地のニーズに沿った支援を、スピード感をもって進めてまいります。

(3)日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議(カウントダウンボード点灯式)

【上川外務大臣】3点目であります。本日、カオ・キムホンASEAN事務総長が訪日された機会を捉えまして、12月の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議開催までの日数を示すカウントダウンボードの点灯式を行いました。
 特別首脳会議まであと53日であります。同会議におきまして、日・ASEAN間の新たな協力ビジョンを共同で打ち出すべく、引き続き、ASEAN諸国及びASEAN事務局と緊密に連携していきたいと考えております。
 私(上川大臣)からは以上であります。

イスラエル・パレスチナ関連(イスラエル・ハマス情勢)

【朝日新聞 松山記者】イスラエルとハマスの情勢について伺います。大臣は、これまで、G7外相とも電話協議を行い、事態の早期沈静化やガザ地区の人道状況の改善、自国民の退避等に向け、G7との緊密な連携を訴えてこられました。
 一方、23日、昨日には、日本以外の6か国が、共同でイスラエルへの支持と自衛権を認める声明を発出しました。日本以外の6か国が、このような共同声明を出したことについて、日本として、どう受け止めていらっしゃるか。イスラエルによる反撃が過激化する中で、イスラエルの自衛権を強調する今回の共同声明は妥当だと思われるか教えてください。
 また、米欧が、イスラエル寄りだとも指摘される中で、日本は、先ほど、「二国家解決」の支持をするとのことでしたが、中東地域の中で、どのように各国とバランスをとり、外交に取り組んでいくお考えか、教えてください。

【上川外務大臣】まず、第一点目の御質問でありますが、今般の共同声明についてでありますが、従来、国際社会において、中東問題をめぐりましては、様々な枠組みで、議論や立場表明がなされてきております。今回もその一つとして、G7とは別の形で発出されたものと承知しております。このように、国際社会では、その時々の情勢や、また各国が抱える状況等に応じまして、様々な形で連携・協力が行われてきております。
 第二点目、首脳声明に対しての評価ということでありますが、また、我が国といたしまして、第三国が発出した共同声明を、具体的に評価をすることにつきましては、差し控えさせていただきますが、同声明におきましても、我が国がこれまで一貫して発信している人道支援活動が可能な環境の確保、また、人質の即時解放、国際法の遵守等のメッセージが含まれていると承知しております。
 三点目のご質問に係るところでありますが、我が国は、刻々と動く現地情勢を踏まえまして、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期沈静化や、また、人道状況の改善に向けた外交努力を続けております。
 こうした観点から、私(上川大臣)は、21日、エジプトのカイロ平和サミットに出席し、日本のプレゼンスをしっかりと示してきたところであります。
 また、岸田総理、そして、私(上川大臣)自身も、これまでアラブ諸国、欧州各国等と電話会談を実施いたしまして、ガザ地区の人道状況の改善や、また、事態の沈静化に向けた連携などを確認しております。
 中東情勢をめぐります問題は、宗教や、また、民俗、歴史が複雑に絡み合っており、その解決は容易ではないと。我が国は、これまで、全ての中東の国々との意思疎通を通じて、中東外交を進めてまいりました。こうした中で、今、大事なことは、こうした外交の大きな流れを踏まえつつ、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、先ほど申し上げました、一点目として、人質の即時解放、そして、一般市民の安全の確保、第二に、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、そして、第三に、事態の早期沈静化を図ることであります。
 我が国といたしましては、引き続き、G7議長国として各国と連携をしつつ、アラブ諸国を含む関係国とも意思疎通を行い、外交努力を一つ一つ積み重ねてまいりたいと考えております。

イスラエル・パレスチナ関連(人質解放)

【NHK 五十嵐記者】イスラエル・パレスチナ情勢をめぐって伺います。ガザ地区を実効支配するハマスは、23日、新たに2人の人質を解放したと発表しました。この受け止めを伺います。また、イスラエル軍とハマスの軍事衝突をめぐり国連総会では、26日に緊急特別会合が開かれることになりました。パレスチナ情勢をめぐって緊急特別会合が開かれるのは、2018年以来およそ5年ぶりですが、日本としての対応も併せてお聞きします。

【上川外務大臣】まず、1点目でありますが、20日の米国人の人質に2名の解放に続きまして、現地時間で23日でありますが、ハマスがイスラエル人女性2名を解放したと承知しております。一方、イスラエル軍の発表等によりますと、依然として多くの方が、ハマス等によって人質とされております。
 我が国は、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放・一般市民の安全確保、第二に、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること。そして、第三に、事態の早期沈静化を図ることが極めて重要との一貫した立場でありまして、改めて人質の即時解放を求めてまいります。また、我が国といたしましては、引き続き、各国と連携をし、事態沈静化に向けた外交努力を一つ一つ積み重ねてまいりたいと考えております。
 2点目の御質問でございますが、ニューヨーク時間の26日、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、国連総会緊急特別会合が再開される予定と承知しております。
 我が国といたしましては、国連などの場におきまして、ハマスなどによるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放・一般市民の安全確保、第二に全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、そして、第三に、事態の早期沈静化が、極めて重要であるとの立場を一貫して発信してきております。
 現在、我が国や、また、米国を始めとする各国が、バイや、また、マルチで、様々な外交努力を一つ一つ積み重ねているところであります。そのような中で、世界各国が集まって開催されます、今晩の国連総会の緊急特別会合は、重要なものとなると認識しております。同会合が、事態の沈静化に繋がるものとなるよう、我が国としても積極的に対応してまいる考えであります。

イスラエル・パレスチナ関連(シリアでの空港爆発)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 パンオリエントニュースのアズハリです。
 シリアの政府関係者や他のメディアの報道によると、イスラエルは、シリアの二つの主要な民間空港に対して、テロ的かつ犯罪的な爆撃攻撃を行い、民間人の犠牲者を出しました。報道によれば、アレッポと首都ダマスカスの二つの空港は破壊され、現在、使用不能となっています。
 日本は、空港と実直な主権国家に対する、このイスラエルのテロ、犯罪的攻撃を非難するつもりはありますか。

【上川外務大臣】シリア側の発表につきましては承知しておりますが、イスラエルは、これまでのところ、攻撃を実施したか否かを含めまして、コメントしていないものと承知しております。
 いずれにせよ、予断を許さない状況が続いているイスラエル・パレスチナ情勢を含め、我が国としては、中東情勢全体を引き続き注視してまいりたいと考えております。また、関係国と緊密に連携をしつつ、事態の早期沈静化に向けました外交努力につきましては、引き続き、継続してまいりたいと考えております。

イスラエル・パレスチナ関連(国連機関やガザ地区での救援活動に対する攻撃)

【アナドル通信社 フルカン記者】
(以下は英語にて発言)
 トルコのアナドル通信、フルカンです。
 カイロ会議での声明でも、イスラエルとハマスに対する日本政府の意見を表明していますね。
 もちろん、他方で殺害された民間人の数は把握しておりません。声明の中で、日本政府は、危機の当事者達を非難しています。
 声明の中で、日本政府は、ハマスなどによる民間人への攻撃を非難しており、また同様の表現も用いられています。
 日本政府は、イスラエルの民間人を攻撃するハマスを直接非難しましたが、日本政府は、パレスチナの民間人を攻撃するイスラエル軍を非難していません。それについてどう思われますか。ありがとうございました。

【上川外務大臣】我が国は、今般のハマス等による攻撃発生以降、一貫して、特に罪のない一般市民に対する攻撃や誘拐は、どのような理由であれ、正当化し得ないことを明確に表明してまいりました。我が国といたしましては、今般のハマス等によるテロ攻撃を断固として非難しているところであります。
 その上で申し上げるところでありますが、我が国におきまして、テロ組織を法的に認定する法制度はございませんが、我が国は、平成15年の9月30日付閣議了解をもちまして、ハマスについて、テロリスト等に対する資産凍結等の措置の対象としているところであります。

外務省人事

【読売新聞 依田記者】大使人事についてお伺いします。本日の閣議で、中国、米国、ロシアの大使の人事が決まりましたが、起用の狙いをお聞かせください。

【上川外務大臣】まず、個別の人事につきまして、逐一コメントすることは控えさせていただきますが、人事は能力・実績を踏まえまして、適材適所で考えで行っているところでございます。
 引き続き、新大使も含めまして、組織一丸となって、幅広い外交課題に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

【毎日新聞 川口記者】大使人事に関連してなんですけれども、今回、駐ロシア大使が交代するのは8年ぶりとなりますが、ロシアによるウクライナ侵攻などで膠着する対露外交について、どのような手腕を発揮されることを期待されるかというのを改めてお願いいたします。

【上川外務大臣】個別の人事について逐一コメントすることは、控えさせていただきますが、人事は、能力・実績を踏まえまして、適材適所の考え方で行っているところでございます。
 その上で、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、断じて認めることはできません。
 ロシアによるウクライナ侵略を一日も早く止めさせるため、我が国は、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、ロシアに対して、厳しい制裁を行うなどの取組を進めていきます。
 同時に、例えば、漁業などの経済活動や海洋における安全に係る問題のように、日露が隣国として対処する必要のある事項につきましては、我が国外交全体において、何が我が国の国益に資するかという観点から、適切に対応してまいります。
 また、北方領土問題に関しましても、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針を堅持してまいりたいと考えております。

【インドネシアトリビューン スシロ記者】おはようございます、大臣よろしくお願いします。金杉大使なんですけれども、これから中国に行きますので、いつ頃行くかなと思いますけれども、それから、新しい在インドネシア日本大使なんですけれども、決まったような感じですが、そこも含めて教えていただけないでしょうか。

【上川外務大臣】本日の閣議におきまして、次期駐インドネシア大使に正木靖(まさき・やすし)現EU代表部大使が決定いたしました。その意味で、正式に決定したことをお伝えさせていただきます。

記者会見へ戻る