記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和5年10月3日(火曜日)11時12分 於:本省会見室)

(画像)上川大臣会見の様子

冒頭発言

国内で取り組む外交活動

【上川外務大臣】先週金曜日、9月29日、在京ポーランド大使が主催する「ブカレスト9」、すなわち、NATO東方の九つの加盟国であるエストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアに加え、米国、ウクライナ、モルドバの各国大使との昼食会に参加いたしました。これは、私(上川大臣)が国内で取り組む外交活動の第一弾であります。
 当日の会場となったポーランド大使館内の立派な音楽ホールは、ショパンを生んだ国の日本における広報文化発信の一翼を担っているとのことでありました。これは実際に、そこに行かなければ分からないことでありまして、私(上川大臣)自身が積極的に動いていくことの重要性を、身をもって実感したところであります。
 昼食会に参加した12か国の在京大使との間では、非常に良い雰囲気の中で、充実した意見交換を行うことができました。私(上川大臣)からは、日米、日中、日中韓などの外交政策、ALPS処理水の海洋放出等幅広いイシューに関する我が国の立場等につきまして説明するとともに、「女性・平和・安全保障」、いわゆるWPSの取組を含む先般の国連総会の成果につきましても、紹介することができました。
 国内にいながらも、我が国外交につきまして、積極的かつ効果的に広報発信していくことが重要であります。今後、第二弾、第三弾と、アウトリーチ型の取組を続けていきたいと考えております。
 私(上川大臣)からは以上です。

ウクライナ情勢(首脳テレビ会議)

【NHK 五十嵐記者】ウクライナ関連で伺います。日本と米国、欧州の有志国の首脳らが、ロシアによる軍事侵攻を受けるウクライナをめぐって、オンライン会合を今日にも開くと一部で報じられています。事実関係やウクライナ支援についての考えを、改めて伺います。

【上川外務大臣】御指摘の報道につきましては、承知しているところでございますが、お尋ねの会議の開催につきましては、何ら決まっておりません。
 なお、ウクライナ支援につきましては、日本はこれまで、ウクライナ関連支援として総額約76億ドルを表明し、実施してきております。引き続き、ウクライナの人々に寄り添った「日本ならでは」のきめの細かい支援を実施していく所存でございます。
 また、私(上川大臣)自身、昨年末に「ウクライナの人々に発電機を送る越冬支援イニシアティブJAPAN」ということで、発起人かつ有志議員グループの代表として取り組んだところでございます。個人的にもその重要性を十分に理解しております。引き続き、取り組んでまいりたいと考えております。

ウクライナ情勢(ウクライナ支援「疲れ」)

【ジャパンタイムズ ニニヴァッジ記者】大臣が先々週、米国でウクライナのクレーバ外相と会談され、今後も支援を継続していく考えを示されました。一方で、米議会で先日可決されたつなぎ予算には、ウクライナへの支援が除外され、先週末行われたスロバキアでの総選挙にはウクライナ支援に反対する政党が勝利しました。
 戦争が膠着化し、対露制裁によるインフラやエネルギーの高騰など様々な課題が山積する中、ウクライナに対する西側諸国の関心が薄れてきている証拠が現れています。大臣が、このいわゆるウクライナ支援疲れに対してはどのようにお考えなのか。また日本でも広がる可能性があるのか、併せて御見解を伺います。

【上川外務大臣】まず、ロシアによりますウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であると認識しております。欧州・大西洋と、このインド太平洋の安全保障は不可分でありまして、日本は、国際社会全体の平和と安全のため、自らの問題として、この問題に取り組んでまいりました。
 一日も早くロシアの侵略を止め、公正かつ永続的な平和をウクライナに実現するため、G7議長国としてリーダーシップを発揮しつつ、また、対露制裁とウクライナ支援を強力に推進していく所存であります。
 こうした日本の立場につきましては、先般国連のハイレベル・ウィークの機会に、日・ウクライナ外相会談を行いましたが、その場でも、私(上川大臣)から、クレーバ外相に直接伝達させていただきました。
 御指摘のような論点につきましては、政府の立場で評価を述べることは適切ではないと考えております。我が国は、今後とも、このような基本的な立場の下で、しっかりとウクライナに寄り添っていく、こうした姿勢で臨みたいと思っております。

鈴木宗男議員の訪露

【共同通信 桂田記者】鈴木宗男議員の訪露について伺います。ロシア外務省は、2日に、鈴木宗男議員とルデンコ次官が会談したと発表しましたが、外務省として把握されている事実関係と、今回の訪露への受け止めをお聞かせください。また、ロシア側は発表の中で、日本の対露制裁は遺憾であり、日本の国益や国民の意に沿わないと主張していますが、それに対しての受け止めも伺います。

【上川外務大臣】御指摘の報道、また、ロシア側の報道発表につきましては、承知しております。
 政府としては、基本的立場として、ロシア全土にレベル3、すなわち「渡航中止勧告」以上の危険情報を発出しておりまして、どのような目的であれ、ロシアへの渡航はやめていただくよう、国民の皆様に求めてきているところであります。
 その上で、鈴木宗男参議院議員のロシア訪問の目的や日程の詳細につきましては、政府として、お答えする立場にはございません。
 また、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。我が国は、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、ロシアに対して厳しい制裁を行う等の外交的取組を進めてきておりまして、今後もしっかりと進めてまいりたいと考えております。

ジャニーズ問題

【朝日新聞 松山記者】ジャニーズ事務所の問題について伺います。上川大臣はこれまで性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟を立ち上げられ、会長として活動するなど、性犯罪・性暴力根絶に向けても尽力してこられました。今回の問題は、英BBCが今年3月に報じたことをきっかけに社会問題となり、その後、国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会も来日し調査を行うなど、国際的にも大きな注目を浴びました。まず、性暴力根絶に向けて取り組んでこられた一議員として、今回の一連の問題をどのようにご覧になられていたのか、また、今回のジャニーズ事務所の判断・対応は妥当だったと思うか、お考えをお聞かせください。また、先月の内閣改造では、人権担当補佐官のポストがなくなりましたが、こういった問題が国内で起こっている中で、このポストをなくしたことについて、岸田首相の判断は妥当だったと思われるか教えてください。

【上川外務大臣】まず、この場でありますが、一議員としてお答えすることや、また個別企業の対応及び経営判断、そしてまた内閣改造の人事に関してコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で申し上げれば、性別に関わらず、またどのような状況に置かれた子供、若者であっても、性犯罪・性暴力の被害に遭うことは絶対にあってはならないことと考えております。私(上川大臣)自身、性犯罪・性暴力の被害者支援にこれまで取り組んでまいりました。被害者の方々が、勇気をもって声を上げつつあり、政府としては、こうした犯罪や暴力が根絶される社会、この実現を目指して取り組んできたものの、まだ道は半ばであると考えております。
 先般、関係府省が取りまとめました「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」などに基づきまして、全ての子供、若者が安心して過ごせる社会の実現に向けまして、着実に施策を実施し、その成果を上げていくことが重要でありまして、こうした方向に向けて、岸田内閣の方針の下、私(上川大臣)自身も、内閣の一員としてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
 外務省といたしましては、人権担当大使を個別にお願いしているわけでありますが、そのほかに、辻󠄀副大臣及び深澤大臣政務官を担当政務二役とし、私(上川大臣)の下で一丸となって、外交問題としての人権問題にしっかりと取り組んでまいる所存でございます。

中東外交

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 戦略について質問します。特に日本のエネルギー源の半分を占める中東との関係について、第2次岸田内閣における日本外交の柱は何でしょうか。日本はエネルギーのほとんどを中東から輸入しています。中東には、特にイスラエルによるパレスチナ占領やイランについて挙げるアラブ人もいるように、不安定な地帯が多数あり、国際社会の基盤をも揺るがしています。中東地域に対する突破口となるようなイニシアティブはありますか。

【上川外務大臣】Thank you very much.
 今、中東につきましての施策ということでご質問がございました。中東地域は大きな潜在性を有しております。エネルギー資源の宝庫であるとともに、シーレーンの要衝でもあります。日本は原油輸入の約9割を中東地域に依存しており、中東地域の平和と安定は、エネルギー安全保障の観点からも極めて重要と考えております。
 一方、中東地域におきましては、シリアやイエメン等における過酷な人道状況、またイスラエル・パレスチナ間の緊張関係、またイランの核問題等、依然として懸念すべき状況が継続しているわけであります。
 先月、エジプト・カイロで開催されました第3回日・アラブ政治対話におきましては、今後の中東地域との協力の方針として、まず、長期的・多角的な経済関係の強化、第2に、平和の定着、そして第3には、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序の維持・強化、この3本を柱とし、打ち出したところであります。
 私(上川大臣)としてもこの3本柱を引き継ぎまして、幅広い分野で日本と同地域との間の協力を進めていく所存でございます。
 先日来日されました、スルタン・ジャーベルUAE日本担当特使との間でも、脱炭素を始めとする様々な分野での協力を、議論したところでございます。今後とも、様々な新しい分野を含む政策協力を重ねてまいりたいと考えております。
 明日は、アラブ諸国在京大使との昼食会に出席する予定でございまして、こうした観点から、対話を進めてまいりたいと考えております。
 また、中東和平問題につきましては、イスラエル・パレスチナ間で高い緊張状態にございます。こうした動向を懸念を持って注視しているところであります。双方が一方的行為・措置を自制するということが何より重要と考えます。日本は、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する「二国家解決」を支持しておりまして、「平和と繁栄の回廊」構想などの独自の取組を通じまして、当事者間の信頼醸成に取り組んでまいりたいと考えております。

ナゴルノ・カラバフ情勢

【共同通信 桂田記者】ナゴルノ・カラバフ情勢についてお伺いします。アゼルバイジャンの軍事行動の後、ナゴルノ・カラバフからアルメニアへの避難民は10万人を超えまして、UNHCRも国際社会に支援を呼びかけていますけれども、日本政府として、支援のお考えはありますでしょうか。

【上川外務大臣】ただ今のご質問でございますが、9月19日にアゼルバイジャンにより実施されました軍事活動の結果、現地時間2日時点におきまして、10万人以上の避難民が発生したとされており、グランディ国連難民高等弁務官が国際社会への支援を呼びかけていることにつきましては承知しているところでございます。
 日本政府といたしましては、現地情勢の情報収集に努めるとともに、現地のニーズを踏まえまして、必要な支援について、現在検討しているところでございます。

鈴木宗男議員の訪露

【NHK 五十嵐記者】先ほどの鈴木宗男議員の訪露関連で伺います。ウクライナ侵攻後、日本の国会議員のロシア訪問が明らかにされたのは初めてですが、鈴木議員の今回の訪露について、事前に外務省として把握していましたか。また日本はG7として対露制裁を取る立場ですが、大臣としてはこの鈴木議員の行動を容認する考えでしょうか。

【上川外務大臣】ただ今のご質問でありますが、政府として、鈴木議員側から今回のロシア訪問に関し、事前あるいは事後に連絡等は受けておりません。

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