記者会見

上川外務大臣臨時会見記録

(令和5年11月3日(金曜日)18時45分 於:ヨルダン・アンマン)

冒頭発言

【上川外務大臣】先ほど、アレンビー橋を経由してヨルダンに到着しました。私からは2点あります。
 まず第一に、本日午前中はイスラエルを訪問し、コーヘン外相と会談を行い、またヘルツォグ大統領への表敬訪問を行いました。私からは今般のテロ攻撃をうけたイスラエルの人々との連帯の意を直接お伝えするとともに、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、イスラエルが国際法に従って自国及び自国民を守る権利を有することを再確認しました。同時に、日本としてガザ地区の人道状況の深刻化につき提起した上で、人道目的の一時的な戦闘休止の必要性、国際人道法を含む国際法遵守の必要性などを改めてお伝えしました。さらに、ハマス等により殺害、誘拐された方々のご家族と面会をいたしました。ある日突然大切な愛する家族を奪われた心情に触れ、胸のつぶれる思いをいたしました。このような卑劣な行為は、どのような理由であれ決して許されません。

 第二に、午後には、ラマッラを訪問し、パレスチナ自治政府のマーリキー外務・移民庁長官と会談を行いました。私からは、ガザ地区における極めて深刻な人道状況に対し、既に決定している1,000万ドルの緊急無償資金協力に加え、今後約6,500万ドルの追加的なパレスチナへの支援及びJICAを通じたガザ地区への物資供給をを実施する考えである旨伝達いたしました。マーリキー長官からは、日本の支援に深く感謝するとの発言があった上で、ガザ地区が極めて深刻な人道状況に置かれているとして、燃料、水、食料、医療の状態につき詳細な説明があり、厳しい人道状況を改めて確認を致しました。同時にテロの悲劇を繰り返さないためにも、イスラエルとパレスチナが平和裏に共存できるようにすることが必要であり、日本としてイスラエル、パレスチナの双方に対して、二国家解決を支持していくことを伝えました。日本としてはパレスチナが経済的自立を実現できるよう、「平和と繁栄の回廊」構想を引き続き推進する考えです。

 明日は、ここアンマンでサファディ副首相兼外務大臣とお会いする予定であります。中東和平のキープレーヤーとして重要な役割を果たしているヨルダンとの間で、中長期的な展望を含めしっかりと議論してまいります。刻一刻と動く現地情勢を踏まえて、在留邦人の安全確保に全力を期しながら、人道状況の改善及びそれに資する人道的休止、事態の早期沈静化に向けた外交努力を継続してまいります。私からは以上です。

質疑応答

【記者】一連の軍事衝突以降、大臣は日本の閣僚として初めて、イスラエル、パレスチナ双方を訪れましたが、まずどのような意義があったとお考えでしょうか。また、来週、東京でG7外相会合が開催されますが、議長国として、今回の訪問の成果をどう生かしていきたいかもあわせて伺います。

【上川外務大臣】今回の訪問におきましては、イスラエル・パレスチナ双方の要人とそれぞれ会談を行い、深刻化の一途を辿るガザ地区の人道状況の改善や、また、事態の早期沈静化について働きかけを行いました。各会談におきましては、先方からそれぞれの立場に基づく発言があった上で、人道状況の改善の必要性や、また、事態の早期沈静化に向けて連携していくことを確認したところであります。今回の会談を踏まえて、引き続き外交努力を粘り強く積み重ねてまいりたいと考えております。
 来週東京で開催いたしますG7外相会合では、先月のG7外相電話会合や今回の中東訪問も踏まえまして、G7外相間で改めて率直かつ突っ込んだ意見交換を行いたいと考えております。

【記者】日本は国際法の範囲内での自国を守る権利行使をイスラエル側に繰り返し求めてきました。イスラエルの地上作戦が拡大し、犠牲者は増加の一途を辿っていますが、大臣は現状、国際法が守られているというふうにお考えでしょうか。また、日本としてできることには限界があるという指摘もありますが、中東地域でイスラエル、パレスチナの双方のバランスに配慮した外交を行ってきました。そうした立場にある日本として、事態の沈静化、人道状況の改善に具体的にどういう役割が果たせるのかお聞かせください。

【上川外務大臣】まず、今般の事案についてでありますが、我が国として確定的な法的評価を行うことは控えさせていただきますが、一般論としてもうしあげれば、いかなる場合においても、国際人道法の基本的な規範は守られなければなりません。例えば、無辜の民間人を無用に巻き込む攻撃は国際人道法の基本的な原則に反するものであり、正当化できないことだと思います。こうしたことも踏まえまして、我が国は、全ての当事者が国際法に従って行動することを一貫して求めてきており、イスラエルに対しましても、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難する旨を伝えた上で、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請してきております。今回、私からもコーヘン外相に改めて直接お伝えしをいたしました。
 そして、目下の優先課題でありますが、ガザ地区の人道状況の改善であります。状況は深刻化の一途をたどっておりまして、一般市民、とりわけ未来ある子供や、また女性・高齢者が被害に遭っていることに大変心を痛めています。まずは同地区の一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道的休止、すなわち人道目的の戦闘休止、及び、人道支援活動が可能な環境の確保をイスラエル側に求めるなど、様々な外交努力を行っています。この点につきましても私からコーヘン外相に直接お伝えをいたしました。
 我が国はこれまで、中東各国と良好な関係を築いてきております。このような関係もしっかりと活用をし、引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえまして、関係国・国際機関等との間で意思疎通を行い、事態の早期沈静化や、人道状況の改善等に向けた外交努力を粘り強く、そして積極的に続けてまいります。また、ガザ地区における極めて深刻な人道状況を踏まえ、当面の措置として、既に決定している1,000万ドルの緊急無償資金協力に加えまして、パレスチナに対し今後約6,500万ドルの追加的な人道支援を行うべく取り組んでおります。このような支援も通じまして、今後も人道状況の改善に向けた外交努力に取り組んでまいります。

【記者】冒頭ご発言いただきました二国家解決について伺います。今回の事態はイスラエル社会を一層右傾化させ、また、アラブ・パレスチナ側からすればイスラエルとの冷静な議論をするのは難しくさせたように思います。今日、大臣ご自身、人質家族との面会、また明日にはパレスチナ難民の方々との面会を予定されると伺っています。そうした中で、実際にこの対話というのを一層難しくなるというのを感じられたと推察するのですが、日本として2国家解決を支持する立場は変わらないと思いますが、今回の事態が二国家解決の実現、2国家共存に向けて、どういう影響を与えるとみておられるかお聞かせください。また、国際社会はテロ攻撃を受けたイスラエルへの連帯を示す国々、また、イスラエルの反撃に懸念を示す国々と分かれているように思われます。イスラエルとアラブ双方との良好な関係を伝統的に築いてきた日本として、今後どのような立ち位置におられるのか伺います。

【上川外務大臣】本日、私自身、ハマス等により殺害、誘拐された方々の御家族、御遺族との面談をいたしましたけれど、テロ攻撃の悲惨さに直接触れることになりまして、そうした状況の厳しさをを改めて実感したところであります。中東情勢をめぐる問題は、今始まった問題ではないと、この間、宗教や民族や歴史が大変複雑に絡まっており、その解決は容易ではないと、そして、今般の事案が中東の平和と安定に影響を与えていることは否定はできません。
 地域の平和と安定のためには、イスラエルとパレスチナが平和に共存する以外の解決策はありません。その意味で、今般の事案が中東和平の道を閉ざすことになってはならず、「二国家解決」を支持する日本の立場は変わらないものであります。
 今回の会談のようなイスラエル・パレスチナ双方への直接の働きかけなどによりまして、今次事態の早期沈静化や、人道状況の改善に向けた外交努力を積極的に続けていく、粘り強く働きかけていくということが重要と考えております。「平和と繁栄の回廊」構想など、日本独自の取組をこの間進めてきておりますので、引き続きこうした事を通じて当事者間の信頼醸成に働きかけるということも極めて重要だということを感じた次第です。

【記者】大臣はこれまで、イスラエル軍事行動について、国際法に従っているかについて、法的評価を控えられて来られました。その根拠としては、「我が国は直接の当事者ではなく、具体的な事情を十分把握しているわけではない」ということをこれまでおっしゃってこられましたけれど、今回、実際に訪問され、おそらく具体的な事情を十分把握されたかと思います。今回、大臣として把握された具体的な事情はどういった点があるか、その上でイスラエルの軍事行動について大臣はどう考えるか、もしくはコーヘン外相、パレスチナ外相に対して何か先方に伝えられたことがあれば教えてください。
 また、大臣は人道的な休止の必要性について、今回、コーヘン外相に伝えられたとのことですが、大臣として一時的な休止というのは、現場を見てどれぐらいの期間や規模が必要だと感じたか併せてて教えてください。

【上川外務大臣】今般の事案につきまして我が国として確定的な法的強化を行うことにつきましては、控えさせていただきます。いかなる場合においても、国際人道法の基本的な規範は守られなければならないと考えております。例えば、民間人を無用に巻き込む攻撃は国際人道法の基本的な原則に反するものであり、正当化できないと考えております。
 こうしたことも踏まえまして、我が国は、全ての当事者が国際法に従って行動することを一貫して求め続けて参りました。イスラエルに対しましても、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難する旨を伝えた上で、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を要請して参りました。今回、私(大臣)からも改めてコーヘン外相に直接お伝えをしたところであります。
 そして、目下の最優先課題でありますが、ガザ地区の人道状況の改善であります。状況は深刻化の一途をたどっており、一般市民、とりわけ未来ある子供、また、女性・高齢者が被害に遭っていることに大変心を痛めております。まずは同地区の一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道的休止、すなわち人道目的の戦闘休止、及び、人道支援活動が可能な環境の確保をイスラエル側に求めるなど、様々な外交努力を行っております。この点につきましても私(大臣)からコーヘン外相に直接お伝えをいたしました。
 引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえまして、関係国・国際機関等との間で意思疎通を行い、事態の早期沈静化や、人道状況の改善等に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けて参ります。
 2点目のご質問でありますが、「人道的休止」で想定される戦闘休止の期間、また、スコープにつきましては、予断することについては差し控えさせていただきますが、現在、人道支援活動が可能な環境の確保に向け、関係国や国連等で精力的なやり取りが行われていると承知しております。日本も国際社会の各方面と連携しつつ、関係者に働きかけを行っているところでございます。


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