記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和3年6月30日(水曜日)15時14分 於:本省会見室)

G20外相会合,外務・開発大臣合同会合及び開発大臣会合

【読売新聞 大薮記者】イタリアで開かれておりました一連のG20の会合についてお伺いいたします。食料安全保障ですとか、途上国への持続可能な開発資金の投入などについての成果文書も出されましたけれども、一連の会合についての評価について、まずお聞かせください。

【吉田外務報道官】イタリアで行われておりましたG20、三つの大きな塊がありまして、外務大臣会合、それから外務大臣と開発大臣との合同セッション、それから開発大臣会合と、外務・開発大臣合同会合と、それから開発大臣会合については、それぞれコミュニケも合意して発出されています。 まず、この全体を通しての今回のG20の外相会合等の評価についてですが、まず外務大臣会合で多国間主義とグローバル・ガバナンスというテーマで活発な議論が行われました。このセッションにおいて、保健や気候変動、それから持続可能な開発、貿易投資、こういったテーマで、その多国間主義の在り方、グローバル・ガバナンスの在り方について議論が行われまして、G20のメンバーに加えて、招待国や国際機関も参加をしたと承知しています。
 コロナの感染症の危機からの、より良い回復と、これを実現するために、多国間主義のもとでG20の協調の必要性、こういったことが強調されて、茂木外務大臣の方からもその最重要課題として、新型コロナ対策、気候変動についての日本の取組、それからG20のメンバーへの取組の強化を呼びかけたところであります。 このセッションにおいて、更にグローバル・ガバナンスの在り方の一環として、開発金融の透明性の強化、こういったものについて具体的な議論を進めていく必要性、それから自由で公正な貿易に関する高い水準、多国間のルール作り、日本がホストいたしました2019年のG20大阪サミットで立ち上げた、デジタル経済についての大阪トラックの下での電子商取引等の交渉の推進、こういったことについて茂木外務大臣から提起いたしましたけれども、こういった議論については、後ほどのセッションでも、併せて議論されて、それぞれコミュニケの中に、G20のメンバーで一致した点が記載されているとこういうことです。
 今回G20そのものは、世界の主要経済国でありますけれども、同時に非常に多様な立場の国々が参加しているという特性を持っているフォーラムでありまして、こういったところで意見の一致を見ることというのは、なかなか容易ではない。そういった点では、G7みたいな枠組みとは違った特性を持っているかと思います。 そういった中で、今申し上げたようなテーマについてG20の中で協調することで、一致点が見出せて、具体的な取組についてコミュニケに盛り込まれていると、こういったことは大変大きな成果ではだったのではないかなと、このように認識しています。
 10月にローマで首脳会合サミットが行われるということですので、引き続きこういったテーマで、日本としても関係各国と連携をして議論をリードしていきたいと、このように考えています。

【読売新聞 大薮記者】今、報道官もおっしゃっていましたように、G7と違って必ずしも政治的な価値観が一緒ではない国も混じっている、そういう集まりで、気候変動ですとか、コロナ対策を今回議論したということに意義があるわけですが、そういう価値観の違う国もいる場で、今回気候変動ですとか、コロナなどの地球規模課題に、どの程度一致点を見いだせたというふうに感じてらっしゃいますでしょうか。

【吉田外務報道官】G20というのは、多様な立場の国々が参加していると。いろいろな政治体制の国がありますし、今おっしゃったようなその価値観についても、アプローチ、様々違う国が参加しているかと思います。
 ただ同時に、このG20は、そもそもリーマンショックを契機に立ち上がったグループですから、その世界経済の運営に責任を有している国々であるということが言えるかと思います。今、意見の一致があった部分について、いくつか申し上げましたけれども、気候変動やコロナ対策、貿易、それから日本の方からも取り上げさせていただいた開発金融への透明性といった、こういったことについて、議論を深めていくことについては、コミュニケなどにも記述されていると思います。
 具体的に、どういった形で取り組んでいくかというのは、更に今後の議論を見ていく必要があろうかと思いますけれども、そういった原則的な出発点についての取組について、対外的に発表できた、アナウンスできた一致点が見出せたということは、非常に有意義なことであったのではないかなと、このように考えます。

第9回太平洋・島サミット

【朝日新聞 安倍記者】2日に太平洋・島サミットが行われまして、外務省のホームページを見ましても、太平洋の島嶼国は親日的で国際社会において、日本の立場を支持するなど、日本にとって重要な国々という説明があります。
 改めてなんですけど、なぜ日本にとって、こうした島嶼国が重要だというふうに考えたのでしょうか。また、こうした島国との関係を強化するということは、日本外交にとってどういった利点があるんでしょうか。

【吉田外務報道官】7月2日に行われます第9回太平洋・島サミットでございます。
 この太平洋・島サミットというのは、1997年以来、3年ごとに日本で開催をしてきておりまして、今回の第9回、元々は、三重県志摩市で開催することを予定しておったのですが、現下のコロナ感染の状況を踏まえまして、テレビ会議方式で実施するものとなりました。
 参加国は、太平洋諸島フォーラムPIFに加盟している18の国・地域でありまして、このあたりは、フランス領の二つの地域、それからオーストラリア、ニュージーランドといった先進国も入っています。
 こういったある一つの地域の塊を対象として、日本が取り組んでいるものとしては、他にTICADというアフリカ開発会議ということがあろうかと思いますけれども、日本がそれぞれの地域に対していかに関わっていくか、あるいはそれを重要視しているか、ということを象徴的に示す枠組みだと思って、大事にしてきています。 今のご質問の中でも言及されておりましたけれども、太平洋島嶼国、戦略的に重要な地域であると。日本とは安全保障や、それから経済、その他の価値観を共有する重要なパートナーであるオーストラリアと日本との間に存在するシーレーン、この上に、この太平洋島嶼国は所在しているということであります。更に、これらの国々においては、自由や民主主義、法の支配、人権の尊重、共通の価値で結ばれているパートナーだとういう側面もございます。
 当然のことながら、日本とは歴史上も、これらの国・地域とは重要な結びつき・繋がりがあったということでありまして、中には日系のリーダーが国家元首を務めておられたような国もあろうかと思います。そういった意味では、我々日本から大変近しく感じる国々の集まりであろうかと、このように思っています。
 従いまして、太平洋・島サミット、これをきっちりと3年ごとに開催していく、日本にとっては重要な外交アセットとして、更にこの取組を強化していきたい、このように考えています。

【朝日新聞 安倍記者】昨日から、こうした島嶼国首脳との菅総理とのテレビ会談が始まっていますけれども、菅総理は各国の首脳に対して、東京五輪を安心安全な形で開催するために、万全な感染対策を講じて準備を進めているという説明をされておられます。
 これについて、双方で協力することで一致している国と、そうではない国というのがあります。一致していない国というのは、こうした菅総理の説明に対して、賛同が得られなかったということなのでしょうか。

【吉田外務報道官】菅総理が、昨日来、マラソンでテレビ形式の首脳会談を随時実施されているということでありまして、それぞれの首脳会談の中では、今ご指摘のあった東京オリンピック・パラリンピック大会に関するやり取り以外にも、様々な重要なテーマ、議論されています。マラソン形式でやっていますので、それぞれその会談の時間はそんなに長くは取れないということもあろうかと思いますけれども、その中で当然のことながら、まずこの島サミットに向けた取組についてのやり取り、それからこの地域、インド太平洋をめぐるFOIPや、そういった価値観についての日本の取組と各国の考え方についてのやり取り、それからこの地域情勢、それぞれの二国間関係といった議題が、併せて議論されているかと思います。
 当然、やり取りの中身は、個々の国々、相手に、貼り出しでは同じような表現になっているかもしれませんけれども、当然バリエーションがあって、それぞれの国ごとに添った会談をしていただいているかと思います。
 その中で、東京オリンピック・パラリンピック大会についてのやり取りについて、その結果を貼り出しでお示ししているものについては、表現・記述の仕方に違いがあるということはあろうかと思いますけれども、安全で安心な大会を行うと、日本側のその考え方を説明をして、そういったものに対して、どういうやり取りがあったかということを踏まえつつも、当然その話の流れや、会談時間や、相手国の反応についても、完全にその中に反映できているものと、そうでないものがあろうかとは思います。
 必ずしもそれが、賛同が得られなかったとか、何か懸念が示されたとか、そういったことを意味するものではありませんので、日本側からきちんとそういった説明をさせていただいて、各国の首脳はそれをきちんと理解して聞いていただいている、ということを前提として、貼り出しの方には掲載させていただいていると、このように認識しています。

【朝日新聞 安倍記者】確かに報道官がおっしゃるように、貼り出しというのは同じような表現というのが多いんですけど、微妙な違いっていうのはやっぱり気になるところでして、例えば菅総理は各国に拉致問題について理解と協力を求めていますが、例えばバヌアツのボブ・ロウマン首相に対しては、拉致問題について理解と協力を求めていない。他の国と同様に、このバヌアツについては、北朝鮮を含む地域の諸課題について意見交換をしたということになっていますけれども、この国だけ拉致問題について触れてないというのは不自然にも感じました。これはどういった理由なんでしょうか。

【吉田外務報道官】お尋ねのあった特定の国とのやり取りについて、私、リードアウトを拝見してないものですから、詳細について申し上げられるような材料を持ち合わせておりませんけれども、それぞれの会談の中身、総理の発言、こういったものは、当然、話題の展開の順番であるとか、あるいは相手側とのやり取りの仕方といいましょうか、いくつかのテーマをまとめて話すような形で会談を行う場合、あるいはその特定のテーマごとに切ってやり取りをするような場合、これは様々です。
 この会談がどうであったか承知しておりませんけれども、これまでの経験からすれば、そういったやり方の違いによって、当然のことながら展開の仕方が変わってくるもの、こういったこともあろうかと思います。 他方、日本側が重視するそれぞれのテーマについて、きちんと相手国との間で取り上げる、あるいは別途の機会にそういったことについては確認がとれている、あるいはそういう反応が得られているので、会談の時間の観点から省略するといったような場合もございます。
 ですから、今回の会談がどうであったか、これは説明する材料はありませんけれども、表現の記述は当然、なるべく正確に会談の概要を表そうとしているものではありますけれども、だからといって、それぞれのテーマに重要性に違いがあるとか、あるいは取り上げることができなかったとか、あるいは何か異論があったとか、そういったことを背景に、そういう違いが出ているというものではない、ということは申し上げられるかと思います。

香港情勢

【共同通信 中田記者】香港について伺います。香港の国家安全維持法の施行がされて本日で1年になるわけですが、この間、表現の自由ですとか、報道の自由ですとか、そういった基本的価値に悖るような行動も散見されたわけで、こういった、1年のその香港の動きについて、乃至は国安法の運用状況について、日本政府としてどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

【吉田外務報道官】香港国家安全維持法、昨年の5月から6月にかけて、中国の全人代で審議をされて、最終的には6月30日ですか、制定・施行されたということで、ちょうど1年を迎えるというのはご指摘のとおりです。
 昨年来、この1年の間、我々も非常になじみ深くそのお名前を耳にしているような香港の民主活動のリーダーの方々、その中には「リンゴ日報」の社主を務められたジミー・ライ氏や、日本ともゆかりのあるアグネス・チョウさん、そういった方、メディア関係者の方々、それから立法会議員の方々、大勢が逮捕されるといったような事態もございました。つい直近は、この5月から6月、この近日にかけてもですが、「リンゴ日報」の関係者、関連会社の資産凍結、あるいは指導者の逮捕、結果として「リンゴ日報」が廃刊に追い込まれるということになったと。振り返れば、そういう1年だったかなと認識をしています。
 こういった香港を巡る情勢ですが、節目の毎に、日本政府からは外務大臣の談話や、私自身の談話を出させていただくことありますし、それから重要な首脳会談、外相会談、最近のものでは日米首脳会談、それからG7サミット、我々が共通の懸念を持っているパートナーの国々と共に、声を上げてきたわけです。
 国連の人権理事会、昨年の10月に続きまして、直近のセッションでも中国の人権状況に関する共同ステートメント、アジアから唯一、日本は参加をして、香港情勢に対する深い懸念を表明、輪に加わってまいりました。 それから、中国そのものとの間では、日中首脳会談、日中外相会談、ことあるごとに様々な機会を捉えて、日本のこういった考え方や懸念を、直接中国の指導者に伝達をしてきたというところです。
 こうした日本側の一連の対応、それから国際社会の強い懸念、こういったものにも関わらず、冒頭に申し上げたような一連の動向が繰り返されてきた。これらは香港の繁栄を支えてきた香港基本法や、1984年の英国と中国の共同声明に基づいた「一国二制度」、こういったものに対する信頼を損なわせて、香港の高度の自治、報道や言論の自由を大きく後退させるものであって、日本政府として、重大な懸念を一層強めてきているという状況にございます。
 日本としては、香港が「一国二制度」の下に、自由で開かれた体制、これが維持されて民主的・安定的に発展していくことが重要であると、こういった立場で一貫しています。国際社会と緊密に連携をして、粘り強く中国側に強く働きかけを継続していく、このような考えでございます。

黒海・クリミア半島情勢

【NHK 渡辺記者】テーマ変わりますけれども、黒海で、米国とウクライナ、それからNATOの加盟国が、大規模な軍事演習を行っていると、クリミア併合を認めないという立場からやっていることだと思いますけれども、これに関連してロシアはロシアで、クリミア半島で軍事演習を行っています。そういう状況、直接な軍事衝突じゃないにしても、お互いにそうした形で、対抗姿勢を示して訓練を行っているという。こういう状況について、日本政府としてはどう見ているのか、そうした対立関係の欧米とロシア、ロシアの喉元とも言うべき黒海でのそうした争い、そういったものに対して、今、現時点でどう見てらっしゃるのか、日本のスタンスを聞かせてください。

【吉田外務報道官】お尋ねの事案は、ウクライナ近傍の黒海において、通航していた英国の軍艦艦船に対して、ロシア側が警告の行動をとったということに端を発して、欧州、特に英国、それからロシア、それから当事者であるウクライナとの間で、軍事演習等をめぐって、様々なやり取りがなされているという状況について、お尋ねかと認識します。
 こういった状況については、欧州における平和と安定の観点から、我が国としても、関心を持ってフォローするという状況ですし、各国とは、様々な意思疎通はさせていただいています。
 この状況が、緊張が高まるというような形になるのは、おそらく双方とも望んでいることではないだろうと考えますけれども、現時点において、それぞれの主張、あるいは発言、若干食い違っている部分もございますので、第三国である我が国から、それについて確定的なコメントをするのは控えなければいけないかなと考えています。
 引き続き、この地域を巡る情勢そのものは、国際社会の大きな関心であるということに相違はありませんので、日本政府としてもそういった立場から、状況を引き続きフォローしていきたいと思います。

北朝鮮情勢

【NHK 渡辺記者】北朝鮮に関係する質問ですが、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の容態を何か心配するような声が現地のメディアを通じて報じられたりとか、それからコロナの対策をめぐって重大な事件が発生したということで幹部が処分されたとか、いろいろそういった情報が今北朝鮮から漏れ聞こえてきますけれども、拉致問題含めて、日本としては北朝鮮、非常に重要な対象国だと思いますが、現時点で日本としてそして北朝鮮の国内の状況について、どこまでつかんで把握されているのか。その辺をお願いします。

【吉田外務報道官】お尋ねいただいたのは、金正恩委員長がやつれられたということで、そういったことについて、北朝鮮の中で公式報道がなされたということ、それから、もう一点は、今日ですかね、昨日ですかね、朝鮮中央通信が、朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会合において、おそらくコロナを念頭に置いたものかと思いますけれども、世界的な保健危機に対応しようとしている対策について、国家、人民の安全に大きな危険をもたらすような重大事件が発生したということで、関係者の処分を行うといったことが報じられている、こういったことについてのお尋ねかと承知しました。
 言うまでもありませんけれども、北朝鮮における動向は詳細にフォローしており、重大な関心を持って、いつも情報収集・分析を行っています。他方、評価・分析については、それぞれの事案ごとに明らかにするといったことは、従来からしてきておりませんので、この場において、正式な日本政府としての見方や、あるいは、どういう情報を把握しているかということを申し上げるのは控えさせていただきますけれども、北朝鮮をめぐる動向については、引き続き、感度高く注目していく必要があろう、このように考えています。

COVAXファシリティ(北朝鮮へのワクチン供与の可能性)

【共同通信 中田記者】今のご質問の関連ですが、先ほど北朝鮮の重大な事案の中で、コロナという言葉を挙げられましたが、北朝鮮というのはCOVAXに入っているんですよね。北朝鮮が仮に、コロナで感染が広がった場合に、日本としてCOVAXを通じた北朝鮮へのワクチン供与というのは、どのようにお考えなのでしょうか。

【吉田外務報道官】まず原則論としてと言うか、一般論として申し上げますけれども、日本政府の新型コロナ対策に、特に世界におけるワクチンの供給調達については、COVAXファシリティを通じるような、多国間主義に基づいて、公平で効果的安全なワクチンに世界中の人がアクセスできることが不可欠であるというのが日本政府の基本的な考え方です。
 その際に、COVAXファシリティが、どういったニーズを把握して、どういう国に供与していくのかというのは、世界全体それからそれぞれの加盟する国々・地域の感染状況、そこにおけるワクチンのニーズや、調達の可能性や、そういったことを総合的に判断しながら、COVAXの中で検討されていくべき話だろうと、このように考えます。
 その中において、いずれの国がといったことが特に念頭にあるとか、あるいはいずれかがその対象であるべきではないとか、そういった議論がこの中でなされているということではないと認識をしています。現時点で、COVAXファシリティが、どの国、どの地域に、どういう形でワクチンを出していくのかということは、まだ明確には決まってないと認識をしていますので、引き続きその状況を注視していきたいと、このように思います。

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