記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年4月28日(水曜日)15時46分 於:本省会見室)
【吉田外務報道官】長らくおいとましておりましたけれども、ご迷惑をかけました。また従前どおり、よろしくお願いします。そのことだけ申し上げまして、特にこちらの方からの発表等はありません。
菅総理のニューズウィーク誌表紙掲載
【朝日新聞 安倍記者】菅総理が、30日に発売されるニューズウィークの表紙を飾ることになったということで、日本の首相が海外でこうした知名度のある雑誌の表紙を飾るというのは、いつ以来のことなんでしょうか。また、外務省としてこうしたことはどういった意義があるというふうに考えておられますか。
【吉田外務報道官】今、ご質問がありましたのは、ニューズウィーク4月30日販売予定の英語版、日本語版もございますけれども、ご指摘のように菅総理、先日訪米されまして、その後にインタビューを受けて、これが掲載されるものと承知をしています。
日本の総理がこのような、世界的に影響力のある雑誌の表紙を飾るのが、いつ以来かというのは確認してこなかったので、具体的に承知しておりませんけれども、いずれにしましても、なかなか一国のリーダーが、このニューズウィークのような雑誌の表紙を飾って、主要なインタビューを掲載されるということは、私、あまり記憶がないなと思います。
今回のニューズウィーク誌の単独取材におきましては、日米関係、それから近隣国との関係等々について、やり取りがなされているかと承知しています。まさにバイデン政権が発足して、初めて首都ワシントンで対面する外国人の首脳ということで、菅総理が訪米されて、その会談の直後に行われたインタビューで、日米の首脳の間で確認をされた、いくつかの重要なことについて発信をする、そういう極めて貴重な機会になっているのかなと、このように認識をいたします。
特に、総理はその中で、自由や民主主義、基本的人権といった普遍的価値観、これを共有する日米同盟が、インド太平洋地域の平和と繁栄の重要な基盤であること、それがまさにその「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを広める上での、様々な機会を提供しているということ。更にそれが、日米同盟は今やその世界の平和と繁栄に貢献ができるといったようなことを、強調しておられると思います。
また、インタビューの中では、バイデン大統領と、ビデオ会議で2度対面されておられましたけれども、直接対面されて、個人レベルでの関係を構築されたということについてもご紹介をされており、今回のその首脳会談の雰囲気であるとか、成果であるとかをふんだんに発信していただいた、そのように認識しています。
【朝日新聞 安倍記者】今の点ですが、総理がこうした海外の主要な雑誌の表紙を飾るというので、これはどういった経緯だったのでしょうか、外務省としても何らかの働きかけをした、そういった成果なんでしょうか。
【吉田外務報道官】個別のインタビューについて、どういう経緯であったかというのは、メディアに属しておられる方なので、そういうことはあまりつまびらかにされないだろうということは、ご認識いただけるかなと思います。
私どもが承知するところでは、ニューズウィーク誌の方から、インタビューのご依頼があって、ニューズウィーク側と日程等含めて調整した結果、ちょうど総理が行かれる機会に行うという段取りが整ったというふうに認識しています。
東電福島第一原発ALPS処理水(中国外交部報道官のツイート)
【NHK 渡辺記者】中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官が、ツイッターで福島の東京電力福島第一原発から出た処理水を葛飾北斎の浮世絵を使いながら、もし北斎が生きていたら、彼が非常に心配しているであろうということを、英語で書いて発信しております。恐らく、日本の国内的にも物議を醸して問題だと思います。この件の中国の外務報道官の対応につきまして、日本の外務報道官としてどう考えていらっしゃるのでしょうか。外交ルートで対応はしていると思いますけれども、この点についてコメントありますでしょうか。
【吉田外務報道官】ご質問のあった葛飾北斎の浮世絵を模した風刺画というのでしょうか、昨日もこの場で茂木大臣にご質問があったかと思います。そこで大臣の方からご説明がありましたように、今回の件につきましては、外交ルートで直ちに厳重に抗議を行って、削除するように求めたということです。
これまでALPS処理水につきましては、IAEAに対する、要するに最も世界で権威のある原子力関係の国際機関に情報提供を詳細に行っていますし、また東京におきましても、在京の外交団に対して度重なる説明会を実施してきています。
だから、中国を含めて国際社会に対しては、日本としては、高い透明性を持って対応するということを積極的にやってきているということであります。そんな中にあって、その報道官の今回のツイートというのは、こういった日本側の真摯な努力に対して、何ら科学的根拠にも基づかず、一方的に、かつ感情的に煽るといったような内容であって、極めて遺憾だと考えます。
こういった自身のツイートでやられるということは、一国の、しかも世界に冠たる大国である中国という国の、しかるべき立場にある方として、果たして国際社会がどういうふうに見るのかなと、このように思ったりもする、こういう次第です。
いずれにしても、私どもとしては、引き続きこのALPS処理水の件については、どういう反応があろうとも高い透明性をもって、我々の説明をしっかりと行って、このような残念な言動に対しては、きっちりと反論していきたいと、このように考えます。
【読売新聞 大藪記者】今の件に関しまして、その風刺画はもうツイッターから削除されたのかどうか、現時点でどのように確認されていますでしょうか。
【吉田外務報道官】私自身ちょっと確認しておりませんけれども、現時点で削除されたというふうに伝え聞いてはおりません。ですので、私自身が確認したわけではありません。
2021年版外交青書(中国と韓国に関する記述)
【朝日新聞 安倍記者】別の話題ですけれど、外交青書は21年度のものが公表されています。韓国については「重要な隣国」という書きぶりで、中国については「最も重要な二国間関係の一つ」というふうになっています。中国も隣国であるわけですけども、この「重要な隣国」というのと、「最も重要な二国間関係の一つ」というのは、どういった違いがあるのでしょうか。
【吉田外務報道官】外交青書に対するお訊ねですけれども、まず、総論として申し上げると、外交青書はその時々の国際情勢を踏まえて、発表する年における日本の外交活動の概要を紹介するといったものであります。
お訊ねのあった、韓国それから中国に対する記述ぶりですけれども、それぞれ日本との関係、あるいは両国を取り巻く情勢が異なりますので、そういった直近の状況を、しかも近隣国ということで、極めて関係が非常に複雑な、いいものも悪いも含めて複雑な状況にありますから、こういったものを事実を踏まえて表現していくのに、その観点からそれぞれの国にとってふさわしい書き方をしている結果だと認識しています。
具体的に、比べてどういう違いがあるのかというご質問でしょうけれども、多分、恐らく、比較する前提となるそれぞれの状況が違うということだろうと思います。
【朝日新聞 安倍記者】そうなると、中国については「最も重要な」という表現になっているわけですね、韓国については「重要な」となっていて、この文章だけ見ると、中国の方が、韓国よりも重要なのかなと思えるんですけれども、そういうわけじゃないんですか。
【吉田外務報道官】韓国、中国に限らず、世界中に190以上の国があると思いますけれども、それぞれとの関係は、それぞれとの、我々の二国間関係に応じて重要だというふうに認識しております。
当然、最も地理的に近い近隣国である中国と韓国は、日中関係、日韓関係、それぞれ波が高かったり、そうでなかったりしますけれども、それに拘わらず最重要であるということは、変わりはないだろうと思います。
今、ご指摘のあった表現において、どっちの方がより重要であるということを意図して書いたものというよりは、それぞれの国の置かれた日本との関係、記述量もありますし、全体を踏まえて、そういう表現がとられていると理解しています。
東電福島第一原発ALPS処理水
【NHK 渡辺記者】先ほどの福島の処理水の関係に戻るんですけれども、この問題を巡ってその例えば韓国の反応を見てますと、米国のケリー特使が韓国を訪問した折には、そういう日本の対応について訴えて、ケリー氏もそれに対してきちんと発言するということがあったりとかですね、今回の中国の報道官の対応もそうですけれども、ある種の政治問題化してるというか、近隣国で地理的に近いから懸念するという、そういうことは純粋にあるかもしれませんけども、それプラス、何か日頃の外交関係を反映した形で、やり取りがあると思うんですけども、そうしたことがある中で、これから日本政府として、どうやって、そういったことによって、結果的には福島の漁業者というよりも、日本全体の問題だと思いますけども、この問題で被害を被る人たちも実際にいると思うんですけど、そういうことを少しでも防いでいくための何か努力というかですね、対外的にどういうことを、これから決意を持ってやってくのかというところをもう少しお願いします。
【吉田外務報道官】韓国であるとか中国であるとか、ALPS処理水の日本の決定に対して、それぞれ反応があるわけですけども、これがどういう思惑、あるいは考慮によって、そうなっているかというのは、我々が推測する立場にありませんので、何か政治的背景があるかどうかということについて、コメントするのは適切ではないと思いますけれども、日本政府からすれば、先ほど申し上げたように、国際社会に対しては、非常に関心が高いだろうということで、透明性をもって詳細な説明を、ことある毎に行ってきていると。今後は、IAEA等のご協力も得ながら、そういった透明性を、更にしっかりと確保していくために、最大限の対応を我々としても行っていくということになろうかと思います。
そういったものを通じて、やはりこういった問題については、事実関係に基づいて、科学的に、これは安全に関わる問題ですから、科学的に理解をいただけるように尽力していきたいと思います。
今後の対応については、もちろん今予断できる状況にありませんけれども、実際に処理水が希釈されて、基準以下の数値になって放出されるのは、もう少し先の話になりますので、それまでの間に、先ほど申し上げたような国際機関との協力、あるいは各国への説明、場合によっては、そういった個別の国に対して、よりしっかりとした説明・働きかけということもあろうかと思いますし、近隣国でない国における客観的な評価が、きちんと得られるということも頭に入れながら、しっかり対応していきたいと思います。
外交に関する世論調査(ミャンマーに関する設問)
【朝日新聞 安倍記者】度々すみません。3月に行われました外交に関する世論調査についてお伺いしたいと思います。設問についての疑問なんですけども、ミャンマーを巡る日本政府の対応についての質問では、「日本は長らく支援の手を差し伸べ、欧米とは異なるやり方で粘り強く変化を促し、独自の立場を築いてきました」という前提を置いた上で、「日本は独自のパイプを活用し、積極的に関与すべきと思いますか」というふうに訊ねています。日本がミャンマーについて積極的に関わってきたという前提条件を置けば、答える方としてもですね、肯定的な回答に流されるんじゃないかと思うんですけども、こうした設問の仕方というのは適切なのかなという疑問を持っているんですけれど、どのように思われますか。
【吉田外務報道官】ご質問のあった、先日発表させていただいた外交に関する世論調査、その時々、外務省として国民が関心を持っているであろうという話題を交えながら、同時に定点観測していくべきような、基本的な設問も含めて行ってきているものです。今年は、ミャンマー情勢ということについて耳目を集めているという中で、今回、ミャンマーも設問の一つに加えたということであります。
設問の仕方については、いろいろな評価があるかもしれません。そういうことであれば、今ご指摘になったようなことも、今後の世論調査の実施においては、十分考慮したいと思います。
他方、設問の仕方によって回答を誘導する意図を持って、そういうような設問をしたということはありません。事実関係として、日本政府としてのミャンマー外交への認識を説明した上で意見を聞く、という考え方で作成したものです。従いまして、そのような調査結果を予断する意図を持っていたということはありませんけれども、そういうものが適切かどうかということについては、ご指摘があれば、今後、きちんとそういったことも考慮していきたいと思います。