記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和2年12月9日(水曜日)15時45分 於:本省会見室)
冒頭発言
アジア・太平洋電気通信共同体(APT)事務局長選挙(近藤勝則氏の当選)
【吉田外務報道官】冒頭、私の方から一点ご報告があります。アジア・太平洋電気通信共同体(APT)という国際機関があるのですが、その事務局長選挙についてです。
12月4日、第15回アジア・太平洋電気通信共同体総会におきまして、APTの事務局長選挙が行われました。日本の近藤勝則(こんどう まさのり)氏、現在はAPTの事務次長を務めておられますが、事務局長に当選をいたしました。
この選挙は、総会出席加盟国36か国のうち、有効投票数の過半数の獲得が当選条件となっていますけれども、近藤氏は35票を獲得した次第です。近藤新事務局長の任期は、2021年2月9日から3年間になります。
今回の近藤氏の当選は、近藤氏の優れた資質、それからこれまでのAPT事務局次長としての実績、これに対するアジア太平洋地域各国の高い評価の表れだと考えています。
このAPTといいますのは、アジア太平洋地域における電気通信及び情報基盤の均衡した発展を目的とした地域国際機関でありまして、1979年に設立されています。
日本としては、今後とも、このAPTでの活動を通じて、アジア太平洋地域における日本の情報通信分野でのプレゼンス向上に向けて、積極的に貢献していきたいと考えています。私の方からのご報告は以上です。
第5次アーミテージ・ナイ報告書(日米同盟)
【朝日新聞 北見記者】先日アメリカのシンクタンクから、いわゆるアーミテージ・ナイ・リポート、最新のものが公表されたと思います。そこで改めて、日米同盟をより対等な形を求めることが言及されていたと思うんですが、改めて日本政府として、日米同盟をより対等にしていく形というのは、どういう形があると思われるでしょうか。
【吉田外務報道官】今ご質問がありましたのは、アメリカのシンクタンク、CSISが出している「アーミテージ・ナイ報告書」です。この報告書は日本でも非常によく知られていますアーミテージ元国務副長官、それからジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授が過去にも数度出してきているものですが、日米同盟、それからインド太平洋地域情勢に非常に明るい見識を持たれた有数の知日家でありまして、この内容についてはしっかりと受け止めたいと思っています。
ご質問のありました日米同盟の対等性ですが、今回の報告書の中におきまして、まず日米同盟については、その重要性はアメリカで超党派のコンセンサスが得られていると。それから「自由で開かれたインド太平洋」の推進、これを含めて、現在日本は同盟において歴史上初めてですけれども、アメリカと対等な、あるいは主導的な役割を果たしているということで、日米間の同盟の対等性について評価をされていると、このように承知をしています。
これまでも日米同盟につきましては、このアジア太平洋地域、更には世界的な平和と繁栄、こういったものに資するものとして、日米双方がその時々の情勢に応じて、責任と役割を分担し、それを随時見直して発展してきたものと、このように認識していますけれども、今後も厳しい安全保障環境が続くこのアジア太平洋地域、インド太平洋地域と言いましょうか、におきまして、適切な役割、これを緊密に連携して確認、分担をしながら、更なる日米同盟の発展、それから引き続いての対等性、こういったものを確保していきたいと、このように考えています。
第5次アーミテージ・ナイ報告書(ファイブ・アイズへの参加)
【毎日新聞 田所記者】今の報告書に関連してなんですけれども、報告書の中には米英5か国などの「ファイブ・アイズ」への日本参加についてのくだりがありまして、日本の「ファイブ・アイズ」への参加については、米国国内から、あるいは英国の一部、あるいは日本の政府高官、閣僚などからですね、いろいろ繰り返し、提案あるいは提言が出ているところですけれども、政府として今後何らかの検討をしていく必要性とかですね、外報官、今どのようにお考えでしょうか。
【吉田外務報道官】今お尋ねのありましたこのアーミテージ・ナイ報告書の中で、「ファイブ・アイズ」に日本を含めて「シックス・アイズ」にすることに向けた努力を行うべきという提言がなされているというくだりのことと認識します。
「ファイブ・アイズ」というのは、ご案内のように、米・英・豪・カナダ・ニュージーランドという英語圏、元々英連邦に属していた国々の間にある情報共有網のことだと言われていますけれども、実際、これらに所属している国々、特にその中の中心的な国である米国や英国、こういった国々をはじめとして、日本政府はこれまでも、諸外国の政府、関係機関と平素から様々な情報協力を強化してきています。そういったものが、どういう形に発展していくのかということについては、現時点で、まだ申し上げられるような、何らかの定かな目標があるとか、そういうことではないと思いますけれども、そういったインテリジェンス面を含めた情報面での協力、これを「ファイブ・アイズ」の国々とも一層強化して、日本としての情報協力の強化に努力をしていきたいと思います。
核廃絶決議案の国連総会本会議における採択
【朝日新聞 北見記者】国連で採択されました、核廃絶決議案についてお伺いします。採択されたものをですね、昨年より10か国、賛成国が減るという形になりました。いわゆる核禁条約に関してですね、言及がないことに批判もあると思うんですけれども、この10か国減ったことに関して受け止めをお願します。
【吉田外務報道官】今年の国連総会本会議におきまして、ニューヨーク時間の7日、日本時間では8日ですけれども、日本が提出した「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」、こういうタイトルの決議案が採択されました。今回150か国の支持を得ています。11月に採択された第一委員会は139でしたので、本会議では11か国、更に支持が広がったということです。
今回の決議は、まず、核兵器の究極的な廃絶へのコミットメント、これを再確認するとともに、来年に延期されていますが、第10回NPT運用検討会議を視野に入れて、NPT体制の維持・強化、そのために立場が今、分断している国際社会にあって、核兵器国・非核兵器国、双方が共同で直ちに取り組める行動、あるいは取組、それとともに未来志向での対話、この重要性を強調するものとして、今回の決議を提出しています。
ご指摘のように、賛成国につきましては、その年々によって増減がありますし、以前の特定の年と比べると減っているという状況はあるかもしれませんけれども、それは今申し上げたように、今回の決議がNPT運用検討会議を成功に導く、成果のあるものに導く、そのための共通の基盤・土台を提供するという目的を有していて、このNPT運用検討会議というのはコンセンサス方式で行われるわけです。実際、核軍縮・核廃絶を実現していくためには、実際に核兵器を持っている核兵器国が、その取組に巻き込まれないといけないということを踏まえれば、この文書を、NPTで採択していくに当たりましては、核兵器国・非核兵器国、双方の支持が得られる、そういった文言を調整していく必要があろうかと思います。
そういった意味では、150か国、しかもその中には米国や英国という共同提案国が入っております。そういった賛同を得て採択されたというのは、一定の意義があるのではないかと認識をしています。
ちなみに、昨年に比べると賛成国数が減少しているということですけれども、本年、国連総会に提出されている日本以外の核軍縮を包括的に扱う決議案、これはいくつかあります。その投票結果は、例えば「NAM」というグループが提出している決議、これは賛成143です。ミャンマーが提出している核軍縮決議、これは123です。「NAC」という、新アジェンダ連合が提出している決議、これは賛成138です。それから核兵器禁止条約の賛成国が提出している、核禁条約に関する決議案、これは賛成130です。これらと比較して、150という数字は決して低いものではないと認識しています。