記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和2年12月2日(水曜日)15時46分 於:本省会見室)

ロシアによる北方領土へのミサイル配備

【毎日新聞 田所記者】ロシア、北方領土の関係でなんですけれども、ロシア軍が択捉島とされるクリル諸島に地対空ミサイルを実戦配備したと報じられていますけれども、その関係についての所見と、あと日本政府からロシアへの対応といいますか、抗議や照会とかですね、何らかの対応をしているとしたら、それもご紹介いただければと思います。

【吉田外務報道官】お尋ねいただきましたのは、地対空ミサイルシステムS-300V4と言われるものでしょうか、これが択捉島に実戦配備されるというロシアの報道だったかと思います。北方領土におきますロシア軍の動向は常日頃から注視しておって、鋭意情報収集に努めてきてはおります。今回のこういった動きにつきましては北方四島におけるロシア軍が軍備を増強するものであって、我が国の固有の領土である北方四島に対する日本の立場とは全く相容れるものではないということです。従いまして昨日1日に、ロシア側に対して抗議を行いました。

【毎日新聞 田所記者】抗議内容と、例えばどういうところからどういうところ、東京とモスクワでとかですね、ルートも教えていただけますか。

【吉田外務報道官】抗議の中身につきましては、先ほど申し上げたように、今回のこのような動きについては、日本の立場と相容れるものではなくて、受け入れられないということであります。抗議のルートにつきまして、在ロシア日本大使館の公使からロシア外務省の局次長に対して抗議を行っております。

ベルリンの慰安婦像(ミッテ区議会決議)

【産経新聞 石鍋記者】ベルリンのミッテ区に設置された慰安婦像についてお伺いいたします。同区議会が、慰安婦像の永続的な設置を認める決議案を採択したとのことです。これについての外務省の受け止めと、対応をお願いいたします。

【吉田外務報道官】お尋ねいただきました、ベルリン市ミッテ区の区議会ですけれども、1日に行われた区議会におきまして、ミッテ区内に設置されている慰安婦像の維持を求めるという動議、これがかけられて、可決されたということと承知しております。ミッテ区の動きにつきましては、これまでもミッテ区長が、慰安婦像の撤去を命令する決定をして以降も、区議会を含めたミッテ区の関係者に対しては、日本の立場、これを鋭意、説明を行ってきたところです。
 今回の動議の可決、これは日本政府がこれまで説明してきている立場、それからそういった取組と相容れるものではありません。極めて残念なことだと考えております。動議そのものが像の維持を永続させるという内容であるかどうかについては、必ずしもそうではないかとは思いますけれども、いずれにしましても、ミッテ区における動向については、引き続き、高い緊張感を持って、関係者にアプローチをして、日本政府の立場、これを懸命に説明していく中で、像の撤去を求めていくという立場には変わりはありません。

尖閣諸島問題発言(自民党外交部会決議文の大臣への手交)

【朝日新聞 安倍記者】先週もちょっと話題にさせもらいました、王毅(おう・き)外相の尖閣諸島をめぐる発言について、自民党の外交部会などが昨日ですね、こうした発言について強く抗議すべきだという決議文を大臣に手渡したということでした。大臣から重く受け止めるという趣旨のご発言があったということですけれども、大臣も、報道官もこれまで全く受け入れることができないという発言おっしゃってますけれども、今後新たに何らかの対応をとる必要が、更に対応をとる必要があるのかどうか、その点のご認識をお伺いできたらと思います。

【吉田外務報道官】自民党外交部会の決議文につきましては、昨日、受領いたしました。これを重く受け止めております。王毅国務委員の尖閣諸島をめぐる発言につきましては、先週の会見でもご説明したとおりですけれども、詳細な内容については繰り返しませんけれども、中国側の独自の見解・立場については、受け入れられるものではありません。
 それから、大臣もご説明されていますように、当時の共同発表を挟んで、事後のワーキング・ディナーにおきましても、日本の立場、改めてきちんと強調して申し入れたということです。この問題をめぐってはですね、従来より、機会あるごとに、あらゆるレベルにおいて、日本の立場を中国に明確に伝えて、中国側に行動を求めてきております。このような取組を続けていくことにおいては変わりはありません。今回、自民党の方からそういう意思が示されたことも踏まえて、適切な機会に、引き続き、我々としての立場をきっちりと発信していくということをしたいと思います。

外相会談の際の成果発表形式

【朝日新聞 安倍記者】関連して、外相会談の際のですね、成果の発表の仕方についてお伺いしたいんですけども、先日、中国との外相会談は共同記者発表という形で、記者との大臣とのやりとりはなかったわけですが、一方で、大臣がモンゴルを訪問した際には共同記者発表に加えてオンライン上でのぶら下がりというのもありました。過去には共同記者会見が行われているようなケースもありますけれども、こうした発表の仕方というのはどういった基準で設定されてるんでしょうか。

【吉田外務報道官】お尋ねのあった外相会談がある場合の成果についての発表、あるいは発信、この仕方については、今ご説明があったように、様々なやり方があります。それも会談の合間に行う場合もあれば、全ての行事が終わってから行う場合もあります。また、場合によっては会見とか発表ではなくて、紙の形で、文書の形で、報道発表という形でやらせていただく場合もあります。このやり方につきまして、必ずしも明確な何か基準とかルールというものありませんけれども、相手国との間で、そのときに行われる会談の内容であるとか、そういったものを国際社会に対して説明していくのに最もふさわしいやり方、双方のやり取りを通じて、確定していっております。また、そのやり方につきましても、会談が行われる場所であるとか、時間帯であるとか、記者の方のアクセスであるとか、こういったいわゆるロジスティクスの事情も勘案して決めることになろうかと思います。今申し上げたように、いずれにしましても、その成果については、そのときに最も効果的と思われる発信の仕方を追求していくという考え方です。

在日米軍駐留経費

【朝日新聞 安倍記者】もう一点、別の話題なんですが、今、米国との間でホストネーションサポートの交渉が続いてます。いわゆる「思いやり予算」と言われていて、一般にも浸透している言葉だと思いますけども、外務省はこの「思いやり予算」という用語については適切だというふうに考えてるんでしょうか。この点、ご認識を伺いたいと思います。

【吉田外務報道官】在日米軍駐留経費についてのお尋ねだと思いますけれども、政府・外務省は、従来から、ホストネーションサポートにつきましては、そのとおり「ホストネーションサポート」と申し上げるか、あるいは「在日米軍駐留経費」という表現をしてきております。俗に、「思いやり予算」、いろいろ経緯は、あるかと承知しますけれども、「思いやり予算」という表現は、我々はしておりません。
 それについてどう思うかというお尋ねですけれども、おそらく、そういったものについての公式の考え方というものを確定したということはないかと思いますけれども、在日米軍の駐留経費というものは、日本の安全保障、それから、この地域の平和と安定にとって必要不可欠である在日米軍の経費の負担のあり方について、そもそも、地位協定で定められた原則に、諸般の状況を勘案して、それに追加的に規定する特別協定に基づいて、経費の負担についての考え方を示すものであります。
 今、申し上げたように、在日米軍というのは、日本の平和と安全、ではありますけれども、同時に、この地域、それから、アジア太平洋の平和と安定にとっても、極めて重要な役割を担っておって、これらについては日本と米国が協力して対応していくという考え方の下に位置づけられていると思います。したがいまして、一方的にどちらがどちらを思いやるとか、どちらがどちらに借りがあるとか貸しがあるとか、そういった間柄にはないと思っております。

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