記者会見
岸田外務大臣臨時会見記録
(平成29年6月4日(日曜日)12時07分 於:金沢大学)
【岸田外務大臣】地方の魅力を世界に発信する「地方を世界へ」プロジェクト第5弾を行わせていただきました。今回の訪問におきましては,駐日外交団の方々と共に石川県を訪問いたしました。まず昨日,伝統ある加賀料理を楽しみつつ,石川の魅力をさらに世界に発信する方策について,知事さん,市長さん、そして外交団の皆さんと議論を行わせていただきました。その後,金沢の名産である日本酒の酒蔵を訪問した他,金沢百万石祭りに参加し,また同じく金沢名物で全国的にも有名な伝統工芸であります金箔貼りも体験し,石川の魅力を存分に堪能させていただきました。各国外交団の皆さんにも大変好評であったと受け止めています。そして地元経済界の方々とも意見交換をさせていただきました。そして本日は金沢大学にて「北陸・石川県の魅力を世界に発信」というテーマでシンポジウムを開催させていただきました。この地域の魅力の海外発信について議論をした他,北陸,石川県が先進的な取組を進めておられる「持続可能な目標(SDGs)」についても,地元の方々と議論を深めることができました。来月17日から19日にはニューヨークの国連本部において,このSDGsに関する国際会議が開催されますが,諸般の事情が許せば,私もこの会議に出席をし,北陸・石川県に代表される日本国内の取組を国際的に発信したいと考えております。今回の訪問を通じて日本の伝統と魅力が凝縮された北陸・石川の魅力を,いかに世界に発信していくかについて,議論を深めることができたと感じています。今後とも北陸・石川の魅力をさらに世界に発信していく所存です。私からは以上です。
【記者】2日間の視察を通しての所感についてなんですが,百万石祭りなど文化面の視察を通して感じられた海外からの需要の掘り起こし,また講演でもおっしゃっておられましたように,金沢の企業さんがSDGsへの取組みなどを通しましてこの石川の企業の世界への可能性についてというところをどのようにお感じになられたかお聞かせいただけますか。
【岸田外務大臣】今回の訪問においては,多くの地元の企業の皆さんの海外展開における取組等についてもお話を聞かせていただき,大変有意義な意見交換ができたと感じています。伝統や文化が息づく石川県ならではの強みを活かしながら,積極的に世界に挑戦をする。単に伝統文化に留まるのではなくして,それにしっかりとした新しい付加価値を付けて世界に挑戦している。こうした積極的な姿に大変感銘を受けました。こうした魅力も外務省としてしっかり海外にアピールし,そしてそのことがさらなるビジネスチャンスにつながることを期待したいというふうに思いますし,一方,今SDGsの話もされましたが,これは,要は見方を変えて,地元の強みを生かしながら国際的な世界規模の課題に貢献をする,そのことが地元の元気につながっている,こういった考え方に基づいて地元の活力につなげている。大変高い評価が得られる取組ではないかと思います。こうした取組において,石川県そして金沢市は先駆的な取組みを行っているということを今回紹介させていただきました。是非,地元の皆さんにも地元がこんな素晴らしい活動をしているんだということも理解してもらいたいと思いますし,これを他の地域にも広げることによって,それぞれの地域の活性化にもつなげていく。こういったことにつなげていければということも感じました。いずれにしましても2日間,限られた時間ではありましたが,石川県そして金沢市の大変元気な企業関係者の皆さん等に大きな刺激を頂いた気がいたします。是非,外務省としましても,こうした取組を世界にアピールする取組,いろんな形で続けていきたい,このように感じています。
【記者】もう一つはですね,北朝鮮のことについてなんですが,今回,宇出津事件から40年ということで言及もありましたが,今なお石川県では漁師の方がEEZの近くで操業されるとかということもあって,北朝鮮の脅威にさらされる土地柄でもあるんですが,こちらについての対応といいますか,対策,思いということをお聞かせいただけますでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,石川県と拉致問題との関係で申し上げるならば,講演の中でも申し上げさせていただきましたが,久米裕さん,当時52歳でいらっしゃいましたが,昭和52年9月19日に石川県宇出津海岸付近において北朝鮮の工作員によって拉致されました。政府としては北朝鮮に対し,久米さんの一刻も早い帰国,これを強く求めてきましたが,北朝鮮はこれまで久米さんの入境,要は,北朝鮮の国内に入ったということを認めていない。これが現状であります。捜査当局は,平成15年1月,主犯格である北朝鮮工作員・金世鎬(キム・セホ)の国際手配を行っており,政府としては,北朝鮮に対して,この同人の身柄の引渡しを求めているところです。久米さんの拉致から40年経ちました。これは一刻の猶予も許されない問題であると認識をしています。政府としては,対話と圧力,行動対行動の原則の下に,ストックホルム合意の履行を求めながら,久米さんを含む全ての拉致被害者の一日も早い帰国,これを実現するべく,全力で取り組んでいかなければならない。国の責任でそれを実現しなければならない。こういったことを強く感じています。
【記者】イギリスのテロ事件についてです。邦人の巻き込まれ等がないか情報も含めた政府として把握している状況と,今後の対応についてお願いします。【岸田外務大臣】日本時間4日午前6時過ぎ,英国ロンドンのロンドン橋にてワゴン車が歩行者に突入して歩行者をはねた他,その後付近の市場においても複数の男がナイフで人を刺し,複数の死傷者が発生したと承知をしています。今般のテロ事件に際し,犠牲になられた方々のご家族に対し心からの哀悼の意を表するとともに,負傷された方々にお見舞いを申し上げたいと思います。このような卑劣なテロ,これは断じて許すことができず,断固非難いたします。この困難な時に英国に連帯を表明したいと思います。日本は事件直後,在英国日本大使館に現地対策本部を立ち上げました。情報収集に努めるとともに,邦人の安否確認に全力で取り組んでいるところです。現時点まで邦人が巻き込まれたとの情報には接していない,これが現状であります。
【記者】次に,今週末はシンガポールでアジア安全保障会議が開かれています。稲田防衛大臣も出席して,日米,日米韓の防衛大臣会合等では北朝鮮に対する対応で連携することなどが確認されていますけれども,こうした成果を踏まえて外交として,外交当局としてはどういう対応を取っていくのか,それから特に日米では日米2プラス2を早期にということで合意をしていると思いますが,この調整状況と日米2プラス2でどういったテーマでどういった成果を期待するのか,その点を合わせてお願いいたします。
【岸田外務大臣】まず,3日にシンガポールにおいて日米,そして日米韓防衛大臣会合が開催されたと報告を受けています。改めて日米,あるいは日米韓の連携協力の重要性を確認したということでありました。その中で外交においては,4月,ニューヨークにおいて日米韓の外相会合を開いております。こうした日米韓の連携の重要性については確認をしています。韓国においては文在寅(ムン・ジェイン)新政権が発足しているわけですが,新政権との間においても,日米韓の連携の重要性,これについては確認を行っているところです。日米については,昨日朝もティラソン国務長官との間において,日米外相電話会談を行わせていただきました。電話会談,そして直接の会談を合わせますと,4か月余りの間に11回,日米外相会談を行っています。こうした緊密な連携の下に,まずは北朝鮮に対して圧力を強化することが重要である,こういったことを確認していますし,圧力強化に関しまして,国連の場を含めて日米,あるいは日米韓でしっかり連携を強化していく,こういったことを再確認した次第です。そして,ご質問の2+2ですが,2+2については,首脳間でもこの開催の重要性を確認していますし,外相間においても早期開催の重要性については確認をしています。ただ,まだ今具体的に日にち等を決定するところまでは至っていません。調整を続けています。ただ,早期開催の重要性については,日米で再三確認していますので出来るだけ早く開催に向けて調整を終えたいと考えています。以上です。
【記者】最後ですけれども,講演の中でも大臣,言及なさいました「キャッチオール規制」なんですけれども,これはつまり貨物検査法の中に「キャッチオール規制」が適応されるのが今月中になされるという理解でいいのか,そのスケジュールについて確認をしたいのと,この「キャッチオール規制」の導入によって得られる効果について。それから独自制裁ですね,「キャッチオール」もその一つかとは思うんですけれども,日本が行っていく独自制裁、どういったメニューが考えられるのかお願いいたします。
【岸田外務大臣】北朝鮮と第三国との間の物の流れを更に厳しく規制する,こういった観点から政府としては検討を続けてきました。その中で貨物検査法は今,リスト方式をとっているわけですが,「キャッチオール規制」,この要は規制対象として個別に指定されていない品目についても規制できる,こういった規制について検討を行ってきました。そして,そのスケジュールとして今月中に作業を終える,すなわちこの「キャッチオール規制」を導入する,この作業を終えることについて指示を出した,こういったことを申し上げた次第です。そして,我が国の独自規制については,まずは安保理決議の履行や現在までの独自規制の完全実施を行うべく努力を続けた上で,更にどんな圧力が必要なのかという観点から真剣に検討していく,どういった圧力が効果的なのかということについて検討していく,こういったことであると思っています。いずれにしろ,まずは「キャッチオール規制」の作業を終えるよう努力をさせたいと思いますし,圧力については国際社会の連携が重要です。引き続きまして,圧力についても,米韓はもちろんですが,中国,ロシア,こういった国々とも意思疎通を図っていきたい,このように思っています。