(問)民主党政権が誕生することになった訳ですが、その受け止めと、外交案件・日程に対する影響は何かあるかどうか教えて下さい。
(事務次官)昨日の日本の総選挙の結果については、新政権が発足するということで、これは世界各国でも非常に高い関心が現れています。既に米国、例えばホワイトハウスは、オバマ大統領が日本の新政権とのパートナーシップ、同盟関係の強化ということで、また、日本の新しい総理との協力を期待しているというようなコメントを出しておられると承知しています。アジアの国々の間でもそうした意味で日本の新政権との協力関係について期待をするという声が伝わって来ているということは我々も承知しています。いずれにしましても新しい政権の下で日本外交をきちんと実施していくべく、我々としては努力していくと思っています。
(問)民主党政権が脱官僚政治を掲げて圧勝した訳ですが、事務方のトップとしてどのように受け止めていらっしゃいますか。
(事務次官)我々は常に実務家ですから、外交案件についてもきちんと実務的な作業をするということ、これは今までもやって来ています。今後とも実務家としての、或いはプロフェッショナルとしての仕事というのは変わらない。勿論その時々に各々の政治の仕組みがありますから、政権の下で御指示を頂きながら我々として仕事をしていく。その心構えは特に変わっていないということです。
(問)9月は外交日程も目白押しな訳ですが、民主党との今後の接触、連絡というのは、どのように考えていらっしゃるのでしょうか。
(事務次官)これはこれからの話でして、我々としては、むしろいろいろとご指示なりご連絡を待ちながら然るべき準備も進めていくということだと思っています。
(問)鳩山代表がニューヨークタイムズに発表した論文についてですが、アメリカの世界経済に果たした役割について、非常に否定的に捉えているということもあって、日米関係を懸念するような見方がアメリカ側の専門家からでているようですが、これについてどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)新しい政権が発足するということで、そのような意味で各国からの関心が非常に高いのだと思います。ただ、今申し上げたように米国のオバマ大統領からは既に、日本の新しい政権との協力関係が引き続き継続することを期待している、或いはアジアの諸国からもそういう意味での声が寄せられていることがありますから、これは新しい政権ができ、本格的にいろいろな国々との首脳間の協力関係を建設的に築いていかれるということで良いのではないかと思っております。
(問)民主党のマニフェストには、日米地位協定の改定の経緯について、米軍再編の見直しを言及されているのですが、そのマニフェストを掲げて民主党は勝利した訳ですけれども、今後の外交政策にこのマニフェストは影響していくのでしょうか。
(事務次官)マニフェストというのは重要な性格を持っていると承知しておりますが、個々の外交政策については、これから総理、外務大臣の御指示を得ながらきちんとやっていく中での話だと思っております。
(問)政治主導と民主党は言っていますが、官僚のほうが知識とかが豊富だと思いますが、その意味で政治主導が可能か、どう見ていますか。
(事務次官)外交では首脳外交が非常に重要です。外交の世界では政治のリーダーシップ、政治家主導は当然のことであって、我々の仕事はその下できちんと実務家としての準備をする、或いは交渉をしていくということです。外務省においては、或いは外交を進める上においては政治のリーダーシップというのは当然のことだと思っています。
(問)沖縄と核を巡る密約についてですが、昨日も民主党の岡田幹事長が調査をするということをテレビで仰っていましたが、次官はこれ迄この時点では調査は考えてないと言う話でしたけれども、現時点でもそのお考えに変わりないでしょうか。
(事務次官)従来から申し上げているように、歴代の総理、外務大臣の御発言も含めて、これまでの対応はご承知の通りです。そしてまた新しい政権になった時に、それは御指示を得ながら、我々として必要な対応をとる必要があると考えております。これはこれからの問題だと思っています。
(問)日中歴史共同研究が総括的なとりまとめをして記者会見を行う予定のようですが、この日中歴史共同研究に対するこれまでの取り組み、今回の成果への期待についてお伺いしたいのですが。
(事務次官)日中間で両国の学者、有識者が日中の歴史について幅広く、或いは長期間にわたる日中関係について研究を行うということは私は非常に意義があることであると思っています。日本と中国の間で相互理解を深めるという意味合いもありますし、非常に重要な活動です。勿論時代時代のレビューにおいては難しい作業もあったと聞いていますが、真摯な或いは真剣な取り組みが行われてきたことを私は高く評価しています。具体的な報告を来週お伺いすることを楽しみにしています。
(問)昨日韓国の李明博大統領と北朝鮮の高官が会談をしましたけれども、先日は中国の武大偉外務次官が訪朝したり、或いはクリントン元大統領の訪朝もありました。最近、中国、韓国、米国の方で北朝鮮との対話或いは協議が進んでいますが、これについてどう受け止められていますか。
(事務次官)今、李明博大統領と北朝鮮側との話というのがありましたけれども、河野前衆議院議長も特使として行かれて、李明博大統領と会っておられます。そこで韓国の大統領からは、韓国の対北朝鮮政策は一貫している、やはり非常に大事なことは、日本、米国、韓国、その協調の下にきちんと進めていく必要があるということのお話があったというふうに承知しています。我々としては北朝鮮が正に本当の意味での非核化、核計画の廃棄ということで、それに立ち向かってきちんと対応して貰わなければいけないと思っていますから、今まで通り安保理決議を実施しながら、一方において米国、韓国或いは中国と足並みを揃え、或いは意見交換、協調を確認しながら、北朝鮮にそれを求めていく。北朝鮮に対して具体的には、やはり六者協議に戻ってきて、また単に戻るだけではなく、そこできちんと核廃棄をするという心構えをして帰ってきて貰う必要がある。そうであれば、六者の北朝鮮以外の国々がそれに応じた対応をするということだと思いますけれども、その辺のところは大事なものですから、引き続き我々としては一貫した姿勢で臨んでいくということだと思っています。
(問)拉致被害者の家族会などからは、日本がこうした多国間の対話に乗り遅れるのではないか或いは日本も北朝鮮と直接交渉すべきではないかとの意見を出されていますが、それについてどうお考えでしょうか。
(事務次官)勿論、我々としては北朝鮮側に対して日朝の話し合いを進めなければいけない。拉致問題の解決、これは非常に大事な重い課題ですから、我々としてはそれについて引き続き努力をしなければいけないし、また北朝鮮に対してそれに対する対応を求めていかなければならないと思っております。最近のいろいろな動き、例えばジャーナリストの釈放、解放に向けてのクリントン元米大統領の訪朝等々、いろいろなことがあったようですけれども、全体としてまだ各国が核問題等々について北朝鮮と交渉しているといった話ではないと承知しております。ただ何れにせよ我々としては日朝の問題を含めて、そしてまた核の問題についても北朝鮮がもっと前向きになって我々の強い思い、強い要請に応えて欲しいということは言っていきたいと思います。
(問)先日クリントン米元大統領が拉致問題の再調査について金正日総書記に働きかけをしましたが、日本政府として再調査について北朝鮮に働きかけるお考えはありますか。
(事務次官)それについては、北朝鮮に対し我々の考え方は伝えてありますが、それ以上に北朝鮮から特段の反応がないというのが現状です。
(問)東郷元外務省条約局長が論文を発表されて、所謂「密約」とされるものに関連する文書が外務省内にあったということを書かれている訳ですけれども、この点について外務省として確認出来るのかということを伺いたいと思います。
(事務次官)この問題につきましては予てから申し上げていますように、歴代の総理、大臣がそのような「密約」はなかったと説明をして来られている訳です。今の段階に於いて特に具体的に私共で何か考えているということはございません。
(問)それは、調査をするとか、そういうことはお考えではないと。
(事務次官)今この時点で特に具体的に何か考えているということはないということです。
(問)今この時点にということは、例えば民主党などは場合によっては再調査をしたいということを言っているようですけれども、そのような状況が来ればまたその時に対応されるということでしょうか。
(事務次官)我々としては、今この時点で言えることは、今のようなことだということでご理解いただければと思います。
(問)アメリカと日本の間で所謂「核密約」、核の持ち込みというものの定義にずれがあったんだと、これは東郷元局長も書かれているし、他の方もいろいろ仰っているのですが、そのようなずれというものは今あるのかということと、或いはかつてあったのかという点についてはどうお考えでしょうか。
(事務次官)何れにせよ、今この時点に於いては、1991年以降水上艦船に乗せないということを含めて今の問題としてある訳ではないと、私は理解しております。昔にどういう解釈の違いがあったかと、これはいろいろなその時々の話はあったと承知しておりますけれども、今の時点に於いて特段の差があるということではないと思います。
(問)かつてあったということは否定されないのですか。
(事務次官)かつていろいろなやりとりがあったということは聞いておりますけれども、具体的にどうこう、それが「密約」云々という話ではないということです。
(問)民主党の鳩山代表がテレビ番組で「密約がない」と言ってきたことについて、アメリカ側に調査をするということですけれども、その点についてどうお考えでしょうか。
(事務次官)これも今私自身が申し上げられることは、現時点に於いて特に具体的な行動を考えている訳ではありません。
(問)今日の一部報道で、中国側がガス田「白樺」に船を横付けして何らかの作業を行っているという報道がありますが、事実関係と政府の対応についてお願いします。
(事務次官)中国側には、ガス田「白樺」については日中間に合意があり、それをきちんとした条約にしようという段階ですから、新たな動きがあるということは当然我々としては容認できないということを伝えてあります。中国側からは実質的な変更をもたらすようなことは一切していない、保守に必要なことをやっている、しかし実質的な変更はないという確認を取っています。
(問)今仰ったことの前提として中国側は何らかの動きがあったということですが具体的にはどういう動きがあったのでしょうか。
(事務次官)具体的には保守の作業はしていた、しかし、それが「白樺」ガス田について実質的な変更を伴うものでは全くないということです。
(問)中国船が「白樺」に船を横付けして作業をしていることは日本政府としても確認されたということですか。
(事務次官)具体的に、日本政府がどういう形でどのように確認しているかについて、この種のことはコメントしないというのが日本政府の従来からの立場です。ですから、具体的なことは申し上げませんが、我々としてもいろいろな報道があるものですから中国側に確認したところ、先程申し上げた答えがあったということです。
(問)しばらく前にも同じようなケースがあったと思いますが、こういった場合に中国から日本に事前に通報するシステムが必要であるとか、運用を変えていく必要があるとお考えでしょうか。
(事務次官)むしろ、一番大事なのは早く条約を作ることであり、早く共同開発作業をすることに我々が本来力を注ぐべきであると思います。現状を固定するような格好でシステムを作るということは考えておりません。
(問)民主党が政権公約の中で事務次官会議を廃止すると主張していますが、その点についてはどのようにお考えですか。
(事務次官)政府の仕組みの話ですから、一人ひとり次官が自分の考えを言うのは適当ではないと私は思います。
(問)ただ長年続いてきている仕組みで、もし政権が交代したらの話ですが、これがなくなったりしたら様変わりするかと思うのですが、驚きを持って見ていらっしゃいますか。
(事務次官)驚きとかではなくて、どういう仕組みにするかという話ですから、一つの知恵として今までやってきたのは事実だと思いますが、それは時々の問題であると思います。
(問)ミャンマーの軍事政権が北朝鮮の支援を得て原子炉とプルトニウム再処理施設を建設中との報道がありましたけれども、日本政府として事実関係をどのようにつかんでいらっしゃるのでしょうか。
(事務次官)我々としてもその報道は承知しております。予てより色々な状況については情報収集もしてきていますし、また注視して物事を見ておりますけれども、個々具体的なことについては今この時点で特にお話をする内容はございません。
(問)北朝鮮からミャンマーへの核技術の移転の可能性については、どのようにお考えでしょうか。
(事務次官)具体的な話について今確かな話ということでは、特に情報はございません。ただ、北朝鮮とミャンマーとの関係はいろいろと言われているということがありますから、我々としては注視し、情報収集に努めているということです。
(問)核軍縮の関連でお聞きしたいと思います。オバマ大統領が核のない世界を目指すとプラハで演説したことを受けて世界各国で核軍縮に向けた気運が生まれつつありますが、日本としても核軍縮の先頭に立つために、核の先制不使用を各国に働きかけるというお考えは今のところありませんでしょうか。
(事務次官)日本は正に核軍縮の問題については、これまで国際社会の先頭に立ってやってきている訳です。従来からもう十数年に亘って国連総会で核廃絶の決議については正に日本がリーダーシップを執ってやってきているということですし、中曽根大臣が核軍縮についての具体的なベンチマークということで、この時点においての日本の考え方を包括的に述べられていますし、その上で今後ともこの問題については日本が先頭に立っていきたいと、その中でオバマ大統領が核軍縮について非常に強いコミットメントをされている。これは我々にとっても大歓迎であります。そうした中で核軍縮の前進ということ、具体化、これをやっていかなければならないと思っております。具体的に今お話の問題については、個々具体的に色々な問題があります。そこは包括的にいろんな観点から考えていかなければならないということを今申し上げておきたいと思います。
(問)今の段階ではそこまで至ってないということでしょうか。
(事務次官)今いろいろなことについて、何が本当に核軍縮にとって効果的なものであるかどうか、そしてまた今日、日本が抱える、同時に国際的な環境、北朝鮮の核問題、そうしたこと全般をよく検討しながら具体的な物事については考えていかなければいけないと思います。
(問)イラン大統領の就任式に日本の大使が出席するという報道がありましたが、これは日本政府として今回の大統領選の結果を追認したと、そういう意味を持つのでしょうか。
(事務次官)大統領の認証式が行われたと、そして任地の各国大使に招待がありましたので、日本としてもこれに出席したということです。政府の今回の大統領選挙その結果等々については、所謂政府承認の問題ではないのです。ですからそれは各々の国内で定まっていく話であり、そこで大統領の認証式が行われたので参加したということです。
(問)大統領選をめぐる混乱に懸念を表明してきた訳ですが、そういった認証式にあえて出席しないという選択肢はなかったのでしょうか。
(事務次官)そういうことは考えておりません。
(問)アザデガン油田についてですが、中国が70%の権益をということで調整しているという報道がありますが、事実関係と対応について。
(事務次官)中国とイランとの関係については、具体的に今どういう状況にあるかということについて我々はコメントする立場にはありません。アザデガン油田については当然のことながら、日本とイランの間で長年に渡って話し合って、そして権益も持ってきた。しかし、やはり国際社会がイランとの関係で核問題等々の疑念がある中で、日本として一定の対応を取る必要があったということで、その結果として限定的な権益しか持っていないというのが現状です。その上でイランがどういう対応をするのか、これを我々も見守ってはいますが具体的に今コメントする内容はございません。
(問)民主党の鳩山代表が、9月の国連総会及びG20サミット出席についてかなり意欲を持っておられるようですが、これについてご所見があればお願いします。
(事務次官)これはいずれにせよ総選挙の結果ということです。9月については、いずれの結果であっても日本の総理が当然出席されることが期待されていますし、非常に重要な会議であると我々は考えています。