(問)昨日の日韓首脳会談の中で、五者協議も検討していこうというお話になったみたいですけれども、中国が慎重姿勢を見せていますが、その実現の可能性や具体的な実現の目処というのはどうお考えでしょうか。
(事務次官)いずれにせよ昨日の日韓首脳会談で大事なことというのは、北朝鮮の核保有は絶対に認められないと、そうした中で関係国が一致した努力で北朝鮮に核廃棄を迫るということだと思います。具体的には、当然六者協議がその中でフレームワークとしては基本であると、その中で具体的に、どういう関係国の間で進め方、戦略を作っていくかという中で色々なフレームワークがある、その一つとして北朝鮮がにわかに出てこないのであれば、五者の間で六者協議の進め方についても話し合ってはどうかと、こういう話だと思うのです。
今大事なことは、まず明確に国際社会の声を一つにしてということで、それが安保理決議第1874号にも出ている訳ですから、それをきちんと実施していく、そして北朝鮮に対して核放棄を求めていくということだと思います。具体的なアプローチというのは私もかねてから申し上げていますが、2006年以降、我々のやってきたことが残念ながら具体的に成果を生んでいないと、2009年にまた再び核実験があったということですから、そうした中で六者協議を基本としながら、より実の上がるアプローチはどういうものか、これを皆で今真剣に議論していくべき時にきているということだと思います。五者協議というのは、そういう中の一つの試みでありましょうが、それが今、具体的な実現の見通しがあるのかということであれば、そういう状況にはまだ至っていないということではないでしょうか。
(問)貨物検査法の国会提出の見通しと、国会の会期が迫っていて成立がかなり厳しいことが予想されるのですが、成立出来なかった場合に国際社会に対しての日本の立場が棄損されるのかどうか、受け止めをお願いします。
(事務次官)当然のことながら安保理決議第1874号の完全なきちんとした実施というのは、日本が国連安保理決議を実効あらしめる、中身のあるものにしようということで一番努力をしてきた国の一つですから、当然日本としてはそれを実施していく必要があると思います。その中に今お話のような貨物検査のこともあると。これについては具体的に法的な整備も必要ではないかということを今政府内、与党で検討を進めてきている。これは今本当に政府内関係者は週末も徹夜に近い状態で随分努力をしてきている。相当整備はされつつあると思います。具体的にいつということは私自身が今申し上げられる立場にありませんけれども、外務省の立場としてはそういう形で成果が上がって体制が整備されていくということ、これは非常に望ましいことだと思っています。各国色々な事情があり、果たして法的な整備が必要なのかどうか、色々事情はあるかと思いますけれども、全体として我々は安保理決議をきちんと実施していく、それを日本がある意味率先していく、そういう立場にあると思っています。
(問)今国会で成立しなかった場合は、やはり日本としては国際社会の中の体面が立たないというような。
(事務次官)あまり国際社会の体面がとかいうことではなく、日本としてはやるべきことをやっていくということで全体としては進めていくということだと思います。
(問)村田良平元外務次官が、核持ち込み密約について、いくつかの新聞に証言されていますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)今日の官房長官の記者会見でも、日本政府の立場を明確に述べられていると思いますけれども、核持ち込み、密約といったものは存在しないと歴代の総理も外務大臣も仰って来られた通りです。我々としては、全くそのようなものは存在していないということです。それに尽きるということです。
(問)今回初めて次官が「密約の引き継ぎがあった」ことを証言したということは、かなり重いのではないかと思うのですが。
(事務次官)何れにしましても、答えは一つ、そのような密約は存在しないということです。当然のことながら我々としても勿論、外務省全体として我々の考え方がありますけれども、私自身そのような引き継ぎも一切ありませんし、何も文書はないということは確認しております。
(問)これを受けて、村田元事務次官に話を聞いたり、或いは再調査をするというお考えはないのでしょうか。
(事務次官)全くそういう意味では、存在しないものについて改めて調査をするということは考えておりません。
(問)それで国民は納得するとお考えでしょうか。
(事務次官)我々としては一貫して申し上げてきているころですから、それでご理解戴くという努力をしていかなければいけないと思っております。
(問)それでは、村田元事務次官が虚偽の証言をしているというご認識でしょうか。
(事務次官)核の持ち込みについての密約があるのかないのかということですから、これは一貫して政府が言って来た通りそのような密約は存在しない、これに尽きていると思います。
(問)これまで日本は唯一の被爆国として、非核三原則を貫いて来たということで、今回の証言でそれが揺らぐということはないのでしょうか。
(事務次官)それは全く関係ありません。正に日本は核問題について、核軍縮について先頭に立ってやって行こうということで、先般も中曽根外務大臣の「11のベンチマーク」ということで、これは国際社会は非常に高く評価されておりまして、日本がこれから核軍縮に向かって世界のリーダーシップを取って行くと。これは豪州と日本が議長になっております川口・エバンス委員会(「核不拡散、核軍縮に関する国際委員会」)こうした取り組みもありますし、我々としては、むしろ先頭に立って核軍縮を進めているんだ、こう考えております。
(問)村田元事務次官がこのようなことを証言した意図というのは、どのようにお考えでしょうか。
(事務次官)ご本人に伺って戴きたいということしかありません。
(問)明日から潘基文国連事務総長が来日され総理大臣、外務大臣との会談を予定されていますが、どのようなことが話し合われ、どのような成果が期待されますでしょうか。
(事務次官)国連事務総長は勿論、国際社会全体のことについて責任ある、或いは非常に大きな関心を持っておられる事項が多いと思いますけれども、今この時点では、一つは当然北朝鮮の問題が取り上げられると思います。これは、国連の安保理決議ということは、まさに国連の場でのことですし、事務総長ご自身が非常に強い関心を持っておられますから。アジア全体でいえば、ミャンマーのことについても、ご承知の通りガンバリ事務総長特使がミャンマーにいらしたところですし、今後事務総長ご自身が現地を訪問されるという予定を内々伺っておりますから、このようなことについても話し合いが行われると思います。
(問)潘基文事務総長のミャンマー訪問予定ですが、訪日後はシンガポールに行かれるようですが、その延長線上ということでしょうか。
(事務次官)まだ正確に、どこまで具体的に決まっているのかは承知しておりませんけれども、ミャンマーについてガンバリ特使の後に事務総長ご自身も訪問されるのではないかと、調整中と伺っております。
(問)今週水曜日から訪中なされると思いますが、北朝鮮問題に関して、中国の働きが重要とされていますけれども、どういう方と会って、どのようなお話をされるのでしょうか。
(事務次官)基本的には、王光亜筆頭外務副部長との日中の戦略対話ということ、それが中核です。他、色々な関係者の方とお会いしようと思っています。話の内容は日中間の戦略的対話という名の下ですから、日中二国間の問題、地域グローバルな問題といった幅広い問題について、率直な意見交換をしようと、各々外交の実務担当、その総括をする立場にある私共二人ですから、幅広い問題について実務的な、或いは率直な意見交換をしたいと思っています。その中で当然のことながら、今の北朝鮮の状況は我々にとって最も大きな事項ですから、これについても相当突っ込んだ話をするということだと思います。
(問)今、米軍が北朝鮮船籍「カンナム1号」を追跡中であるということですが、わかる範囲での事実関係をお願いします。
(事務次官)報道は承知しておりますが、大臣も仰ったと思いますけれども、その中での一つ一つの情報についてコメントすることは差し控えたいというのが日本政府の基本的な立場ですから、ご了承いただきたいと思います。
(問)将来的な課題として、日本としてこうした行動に対する協力が可能なのか、視野に入っているのか、情報収集その辺りは如何でしょうか。
(事務次官)従来から情報面では各種の様々な連絡は取り合っているということですし、今後とも連絡を取り合っていくということになります。
(問)船舶検査を可能にする為の法律ですけれども、今国会で成立させたいというお考えだと思いますが、どのような内容が盛り込まれるべきだとお考えでしょうか。
(事務次官)基本は国連安保理決議1874号で定められたことは、日本としても全体として実施出来なければいけないということです。その中で船舶検査については、今回の1874号については更に法制面を含めて、整備していく必要があると私共は思っております。当然、北朝鮮の問題であり、また日本が中心プレーヤーの一つとなって決議された1874号ですから、それがきちんと実施出来る態勢を今作っていかなければいけないと思っています。
(問)カンナム号のケースですが、これが事実とすれば1874号のキモとなる部分に関わってくる訳ですけれども、中国に対する協力要請というのは、今回の訪中ではお考えになられているのでしょうか。
(事務次官)先程申し上げましたように、中国との間では相当幅広く、且つ北朝鮮問題についても具体的に突っ込んだ話をしたいと思っておりますけれども、より基本的に双方が現在の北朝鮮の問題、状況をどのように考えているのかと、その辺りのところから基本認識を率直にぶつけ合って、その上での話だと思います。
(問)次官はかねてより六者協議が十分な成果を上げていない現状をお認めになって、新しいアプローチが必要だということを仰っていますが、そういう点についても意見交換をされるのでしょうか。
(事務次官)私としては、そういうことも頭の中に置いて中国側と話をしてみたいと思っています。
(問)今週G8外相会合がありますが、日本政府としてはどういうメッセージを発出されるのでしょうか。
(事務次官)G8外相会談は非常に幅広い問題を取り扱う訳ですが、そうした中で、今の核不拡散の問題ということから、当然の事ながら日本としては北朝鮮の問題についてもきちんとした日本の立場の表明、そして各国の理解を求めていくということは、当然のことながら、日本として大きな課題だと思いますし、大臣もそういうふうにされるのではないかと期待しています。それ以外には勿論色々な国際情勢の問題を取り上げる訳で、その中の一つがアフガニスタン、パキスタンの問題でもあり、イランの問題でもあると。色々な問題についてその時々に重要な問題を取り上げていくということですから、当然今回のG8外相会談でも今世界が抱える政治的な側面から見た重要な問題について議論がされると理解しています。
(問)防衛関係の問題なのですが、F22の輸出問題について、アメリカ国内でも議論があるようですけれども、防衛省は非常に前向きですが、外務省としてのスタンスはどうでしょうか。
(事務次官)これは外務省というよりは、日本政府全体として、国防力、自衛力の増強の中で必要であるかということについて、これは相当防衛の専門、正に防衛省の意見というのが中核ですから、我々はそれを尊重しながら見守っていくというのが、外務省の基本的なスタンスです。
(問)ロシアのナルィシュキン大統領府長官が麻生総理と会談されましたが、7月の首脳会談に向け領土問題に何らかの進展があるような感触が得られているのでしょうか。
(事務次官)今回7月のイタリアにおけるG8サミットの際に、日露首脳会談を行おうということについては以前から両首脳の間でも合意があった訳です。そうした中で大きく言って二つのこと、一つは東シベリア、極東の開発についての協力を含めて色々話し合おうということになっていますし、もう一つは当然の事ながら平和条約、領土問題、その両輪、双方について話し合うということ、そういう中で、日露両国の首脳レベルでの色々と今までから解決の必要性については話し合われてきていると。そういう延長線上で話し合いが継続されると私としても考えています。
(問)ナルィシュキン大統領府長官が来て何らかの進展が図られそうだという期待感はあるのですか。
(事務次官)そういう簡単な問題ではないということだろうと思います。
(問)今日、日韓両政府の方から来週の日韓首脳会談の発表がありましたが、取り上げられるテーマとしては北朝鮮がメインになるのでしょうか。
(事務次官)今のこの状況ですから、当然北朝鮮の問題についての日本と韓国との協力とかそういったことが中核の課題であるというふうには思います。それ以外に、日本と韓国の様々な分野での協力ということは当然色々と話題になると思います。
(問)北朝鮮ですが、決議に対する声明としてウラン濃縮をやるのだと、読み方によっては、これまでにも手懸けてきたような作りですけれども、これはどう受け止めていらっしゃいますか。
(事務次官)今回の安保理決議は、非常に厳しい内容を北朝鮮に対して突きつけていると思います。これは正に国際社会で一致した北朝鮮に対する呼びかけでもあって、一日も早く北朝鮮が非核化に向けて具体的な行動をとるようにということです。それに対して、今お話しのように北朝鮮側は声明を出して色々なことを言ってます。その中にはウラン濃縮の話も入っているというのは私も見ていますが、我々としては、正にそのような行動を取るというのは国際社会での孤立化を招くだけですから、国際社会の声をきちんと聞いて、非核化に向けて正しい行動を取るよう改めて強く求めていきたいと思っています。
(問)ウラン濃縮をこれまでやっていたとすれば、北朝鮮が行った申告も嘘だったということになりますし、六者協議そのものがこの間、虚構の上に進められてきたようなイメージだと思うのですが、これから六者協議の今後に影響を与えることはないのでしょうか。
(事務次官)勿論ウラン濃縮について、どういう段階で何をしているのか、これは確たることは我々も分からない訳ですが、むしろ大事なことは、六者協議自身も共同声明で言っていますように、北朝鮮が完全な非核化をするということが我々国際社会として、日本を中心に共通の目標ですから、それを働きかけていくことに尽きるのだろうと思います。ですから六者協議と言っても単に話し合いだけではなく、具体的に非核化に向けて効果的な対応が取れるようなものに我々は更に努力をしていかなければいけないと思っています。
(問)昨年後半から進んで、第2段階から第3段階へ向けてのステップなのですが、これは見直しは必至だと思いますが、それについて如何ですか。
(事務次官)六者協議も、単に再開すれば良いというだけではないのだろうと私は思います。やはり具体的に今までやってきたことで何処がきちんと機能しなかったのかということも見ながら、勿論、六者協議自身というのは重要なフレームワークだろうと思いますから、その中で、やり方をよく考えていかなければならない、そういう段階にきているのだろうと考えています。
(問)何処が機能してこなかったのかという点ですが、これまで「行動対行動」という原則に従ってやってきたわけですけれども、北朝鮮がそれをちゃんとやっていなかった可能性が高まってくる訳ですよね。そうすると、このやり方そのものを見直す必要性があるのではないのでしょうか。
(事務次官)「行動対行動」というのは一つの考え方だと思います。しかし、あまりにその「行動対行動」の中で、具体的な手順、段取りが細分化されたものですから、あまりにもそこで大きな姿、それは大きな目標というのは非核化ですけれども、それがかえって遠ざかってしまったと、そういう結果にもなっているのではないかと。ですから六者協議を再開する必要がありますが、その際には改めて完全な非核化を実現する、その為には具体的に何をしなければならないのか、これを明確に認識しながらやっていかなければいけない、その為に具体的な取り組み姿勢として、何が最も効果的であるかということをもう一度レビューする必要があると思っています。
(問)韓国がARFの場で五者協議というものをするということですが、これについてどのようにお考えですか。
(事務次官)五者協議というのは、六者協議の中で北朝鮮を除いてということだと思いますけれども、ある意味で国連安保理決議、それは国際社会が一致した形で北朝鮮に投げかけている訳です。そうした中で六者協議が基本的には解決の枠組だと思っております。ただ、それに臨むに当たって関係国が色々と具体的な検討始める、どのようにすれば六者協議が有効に機能するのかと、そういうところでは、いろいろな取り組みというか、打ち合わせの場があるのだと思います。今まで最も自然にやってきているのは日米韓三カ国です。これは従来から北朝鮮問題については、緊密な協調協議の場があったということだと思います。我々はそれは引き続き有効であると思っていますし、その上で中国ともよく相談をしなければいけない、よく話をしなければいけない、中国の協力を求めなければいけない、あるいはロシアもあります。色々な枠組みがあると思いますけれども、私自身はまた改めて中国と具体的な話をしていきたいと思っています。この時点で五者云々という決まった考えがある訳ではありません。
(問)間もなく中国との戦略会議ですが、今後、米国等とも次官自ら意見交換をされるご予定はあるのでしょうか。
(事務次官)米国とは、この間スタインバーグ米国務副長官一行も訪日され、齋木局長も派遣し緊密に連絡は取り合っています。私自身も連絡を取り合い、具体的に色々な考え方を纏めながら、中国とも話しをしていくと、それが一貫したプロセスの中にあると考えています。
(問)今回の北朝鮮のウラン濃縮ですが、北朝鮮の声明では、あくまでも軽水炉用の燃料だということで、ウランの低濃縮ということを言っているのではないか思いますが、要するに平和利用の為のウラン濃縮であると、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)平和利用だと何とも書いていませんし、具体的にあの中でどのように受け止めるかということですが、基本的にはウラン濃縮開発を進めるという書き方がされていたのだと思います。それは、我々からみれば、北朝鮮の完全な非核化という観点からは相容れないものだと思っております。
(問)貨物検査の国内法の整備のことについてですが、今国内法でどこまで対応できるかという振り分けの作業が進んでいると思いますが、具体的な作業に向けた目途はどのような感じでしょうか。
(事務次官)出来るだけ速やかに安保理の決議を実施する必要があるということが、我々の基本的な考え方です。その基本的な考え方に基づいて必要な作業を進めている段階です。
(問)イランの大統領選挙で現職のアフマディネジャード大統領が勝利したとのアナウンスがありました。またイラン国内では混乱が起きているようですが、政府としてはどうお考えでしょうか。
(事務次官)最終確定というのは、憲法擁護評議会でなされると、それがまだ行われていないと承知していますけれども、このようなことを含めて事態を注視していきたいと考えています。
(問)国後島等から、人道的に急病人を受け入れるということですが、これについて一言お願いします。
(事務次官)平成10年度から続けている、人道上の観点から行ってきていることでして、今回それがまた引き続き行われるということです。北海道の病院で(北方四島の住民が)手当を受ける住民支援の一環です。
(問)北朝鮮を巡る国連決議の状況ですが、先週末までに取り纏めができなかったのですが、現在の状況はどうなっていますか。
(事務次官)引き続き基本的にニューヨークにおいて作業を行うということで、これは我々はできるだけ早い方が良いと思っていますから、もう2週間経ちましたので、今週には是非まとめたいと思っています。
(問)義務化或いは要請という区別はさておき、貨物検査が盛り込まれた場合に、日本政府としてはそれを実行する考えはあるのでしょうか。
(事務次官)勿論国連の安保理決議ですから、その決議で決まった内容というのは、日本は当然きっちりと実施していくということです。
(問)それでは、必要な法改正などの法整備を早急に着手すると。
(事務次官)いずれにせよ具体的に何が決議として決まるかということで、今作業中ですからまずその結果次第です。
(問)貨物検査そのものについては、北朝鮮に対する制裁としては、有意義なものであるとお考えですか。
(事務次官)今色々な形で、何が効果的な国連安保理決議の中で盛り込む項目であるかということで、幅広い分野で話をしてきている訳ですから、その各項目が大事だと思いますが、その中身、それが具体的にどういう形で、その文言が取りまとめられて制裁の措置が決められるのかと、それにかかってくると思います。
(問)齋木アジア大洋州局長をワシントンに派遣されたと伺っていますが、スタインバーグ国務副長官が日本に来られたばかりですが、あらためて齋木局長がそちらへ行かれるというのは、どういう意見交換を目指しているのでしょうか。
(事務次官)スタインバーグ国務副長官一行がまず日本に来られて、各関係省庁集まった中で話をしたと、その後に韓国、中国に行ってこられたわけで、日本との話し合いに基づきながら各国と話をしてくるということだったので、その結果がどのような状況であるか、こちらからも人を送って話しましょうと、刈り取りというか、その後の展開を確実に確認をして、更に意見交換をするということだと思います。
(問)例えば六者協議のあり方とか、安保理の話にとどまらない対北朝鮮政策についてもということでしょうか?
(事務次官)それもまさにこの間日米で話し合った訳で、スタインバーグ国務副長官一行の訪日、或いは中国、韓国へということは、安保理決議一つの事ではなく、むしろより幅広い、北朝鮮に対する対応ぶりということを意見交換したのですから、そういうこともカバーされると思います。
(問)北朝鮮が弾道ミサイルの発射の準備を始めているという見方もありますが、外務省としてどのように見ていますか。
(事務次官)何について質問しておられるのかということもありますが、具体的に海上保安庁の話によれば北朝鮮沿岸ということで、非常に短いものだと思います。いずれにせよ北朝鮮の動きについては我々は注意深く見守っていますし、弾道ミサイル等は発射してはならないという安保理決議1718号もありますから、そういうことも踏まえながらさらに今回安保理できっちりとした決議が出されることが大事だという思いの中で外交努力をしてきています。
(問)北朝鮮が中距離、長距離ミサイルの発射を準備しているという見方もありますが、仮にミサイルを発射して日本の領海、領空に落下する可能性がある場合、迎撃の準備をするという考えでしょうか。
(事務次官)仮定に仮定を重ねて日本はどうするのかという話ではなくて、今まずは国連の中で国際社会の一致したメッセージとして、そのようなことがあってはならないということで、関係国、中国も入れて努力している、ということでご理解いただければと思います。
(問)クリントン国務長官がテロ支援国家指定について、改めて認定を検討しようということをインタビューで答えているのですが、日本の受け止めをお聞かせください。
(事務次官)基本的に米国の国内法の関係ということで、予てから日米で話し合ってきた時にも米国側から説明があり、日本としては日本の考え方を伝えてきていた訳ですが、今回については、米国の中での一つの国内法の整理の問題だと思いますが、我々としては関心を持って見守っています。ただし、どこ迄、どういう状況にあるかということから言うと、事務的には慎重な答えぶりをされていたと思いますが、いずれにせよ我々としては関心を持って見守っていると、当然大事なことは、日本として米国政府に引き続いて拉致問題の解決に向けての努力について支持を得たいと、こういうことで話してきております。
(問)あくまでも拉致はテロだと、そのような証拠を提示していくということでしょうか。
(事務次官)証拠ということはどのような意味で言っておられるのかわかりませんが、いずれにせよ、この拉致問題は非常に大事な問題であると、この問題の解決、これが日本政府にとって極めて大事なことだと、このことについて同盟国たる米国の理解、支持を得たいと、これは変わりません。
(問)クリントン長官の発言ですが、慎重な言い方もされているようですがこの問題に対する米国の対応が変わってきたという認識でしょうか。
(事務次官)直接具体的な話としては聞いていませんが、彼らは常にレビューはしていくということになっていますし、米国の議会の中でそうした声が出ているということで、両政府としてレビューをしていくと、こういうことであるのではないかと理解しています。
(問)今のクリントン長官の発言にも表現されているように、米国の北朝鮮政策が「圧力」の方に重心が移ってきていると感じるのですが、そのことは日本の対北朝鮮政策にどのような影響を与えるのでしょうか。
(事務次官)北朝鮮との問題で、日本と米国、更には韓国も加えて同盟国が一致した考え方でいるということは非常に大事なことだと思っています。そうした中で中国の協力をどのように得られるのかということですが、そういうことから申しますと、米国の考え方、日本の考え方がきっちりと合ってるということは北朝鮮の問題を解決する上でも当然のことながらプラスであると思っております。
(問)北朝鮮が米国人記者二人に対して「労働教化の罰則12年」という判決を下したそうですが、これに対して米国は核、ミサイルに加えて拉致問題だと、即時釈放をというようなことを求めていますが日本政府も同じような考えでしょうか。
(事務次官)具体的に正確なところを聞いていませんが、当然のことながら、日本政府としても強い関心持って見守っているということです。
(問)スタインバーグ米国務副長官を中心とする米国代表団が来訪しましたが、北朝鮮問題について米側から新しい方針、対応は示されたのでしょうか。
(事務次官)米側から国務副長官がトップですが、国防省、財務省といった関係省庁、統合参謀本部、ホワイトハウスから構成された幅広い代表団を六者協議関係国に送るということで、まず日本に来られ、今後韓国、中国等に行かれると承知していますが、我々の方もそういう意味での関係省庁ということで、外務省、防衛省、財務省も入って、意見交換を行いました。まず、お互いに今の状況をどう見ているか現状分析をやって、その上でお互い今後戦略を考えていかなければならないと、そのことについて幅広く意見交換をしようと、むしろ、日本の考え方を聞きたいということが中心でした。非常に中身がある議論ができたと思います。
(問)現状分析について、今回2回目の核実験が行われて、状況は根本的に変わったと考えているのか、それとも2回目ということでそんなに変わらないということなのか、どのように見ていますか。
(事務次官)非常に厳しい状況に来ていると認識しているということです。今後北朝鮮の核開発・ミサイルに関するこういう形での行動はやはり容認できないと、そういう思いをより強く持っていると思います。かつ、2006年安保理の決議が出て、それ以降、今回またこういう事態になったということで、これからより効果的に国際社会が対応をとれるかという意味での深刻さを認識しているということではないでしょうか。
(問)北朝鮮のねらいについて、北朝鮮は米国と対話を望んでいるという見方もありますが、一方で北朝鮮は本格的に核保有国としての地位を持とうとしていると、そうなると対応が違ってくると思うのですが、どのような共通認識を持っているのでしょうか。
(事務次官)いずれにしても、今回のような意見交換、協議は相当深く掘り下げてやると、その分、外には言うものではないという最初の申し合わせがあり、その申し合わせの中でやったもので、またそういう申し合わせを守らないとこういう協議では実際に本当のところを議論できないということですから、どういう話があったかについては申し上げられません。私自身は勿論、日本政府の立場や米国政府の立場もそうであると思いますが、北朝鮮が核保有国として認められることは絶対にあり得ないと、そういう基本的な認識の下に色々議論をしたとご理解していただきたいと思います。
(問)六カ国協議についても話題に上がり、日米で共通の認識を持っていると思いますが、その点についてお話しできる範囲で教えていただけますか。
(事務次官)六カ国協議についてはいろいろな形で分析してきており、今後のあり方について考えなくてはいけないということだと思います。今までのアプローチがどこまで成功してきたのか、或いは今回のような状況になって実際にどこまで効果があったのかどうかとか、その辺の反省を含めて新しいアプローチも考えていくと、しかし、六者協議自体は引き続き有効なフレームワークであると考えます。
(問)そのフレームワークを満たしながら新しいアプローチを同時並行的に考えるという認識では一致していないのですか。
(事務次官)日米でどういう話をしたかについては、先程述べたとおり、詳しく申し上げられません。
(問)新しいフレームワークというか、新しいことをやっていかなければならないということでは日米で一致しているのですか。
(事務次官)掘り下げて話はしていますが、何に一致があったとか、一々については申し上げられません。
(問)オバマ政権は北朝鮮に対して対話を重視しているという印象が強かったと思いますが、今回の米国の代表団との会談において、その方針に変化、或いは転換があったとお考えでしょうか。
(事務次官)オバマ政権自身も今の北朝鮮の状況を非常に厳しく認識しているということが伝わってきました。対話の姿勢は従来から示しているわけですが、その上で本当に北朝鮮に対してどういう効果的な対応が必要なのか、それを皆で検討していこうと、今の状況は非常に厳しいものがあると、そういう感じを私は受けました。
(問)弾道ミサイルを再び発射する兆候があると見られていますが、今日もその点につき話し合いはされたのでしょうか。
(事務次官)我々は当然のことながら状況をよく見てきています。そういう中でのことですが、この種の話はコメントを差し控えるということです。
(問)国連安保理の現状はどういう状況にあるのか、中国の立場がはっきりしないと言われていますが、その点どのように認識されていますか。
(事務次官)ニューヨーク時間で月曜からいろいろな形で協議に入るということだと私は見ています。各々の国が本国政府の考え方・指示に基づいてやってきたかということから言うと、本格的な意見の調整はこれからであると思っています。大事なことは、中国・ロシアも国連決議が必要だと、そこは一致しているところでして、それをどこまで実効的なものにするかどうか、日本の考え方はありますし、そういう中で各国の理解を求めていかなければならない、まさにこれからが勝負だと思っています。
(問)新しいアプローチということでしたが、細かい議論をすると、姿勢としては圧力をかけていくという意味における新しいアプローチでしょうか。
(事務次官)これは私の考え方ですが、何が効果的な結果を生み出すかという観点から、まだまだ国際的に関係国等々とこれからやっていくところです。今までのアプローチがはたして効果的であったかどうか、それは必ずしも圧力云々という話ではないのかもしれませんが、どのようにすれば六者協議が効果的な結果を生み出していけるのか、どのようなアプローチが良いのか、様々なアイデアを出していかなければいけません。
(問)認識としては、基本的には米国側と同じような思いを持っていらっしゃるということでしょうか。
(事務次官)米国にも色々な意見があると思います。日本にも、まだこれという決定的なものはないのですが、何が一番効果的か考えていかなければならないと思います。
(問)今回代表団の中で財務省からも来ていますが、これは金融関係の話があったということでしょうか。
(事務次官)財務省ですから金融関係とご理解いただいて結構です。
(問) 金融制裁ということでしょうか。
(事務次官)具体的な中身は申し上げられませんが、金融の問題も当然話としてあるために財務省の方が出席しているということです。
(問)スタインバーグ米国務副長官と在日米軍関連のお話はされましたか。
(事務次官)今朝日米の戦略対話を行いました。その中では、幅広い色々な日米二国間の問題、それから、国際的な主要課題ということで、北朝鮮問題は午後に話し合うということでしたので、それ以外の問題については幅広く取り上げました。その中では当然のことながら、日米の同盟関係、安保条約の問題色々なことについてもレビューをしたということはございます。
(問)普天間飛行場の移設問題に関して言及はありましたか。
(事務次官)具体的に個別のケースについての議論はしておりません。
(問)今月中に温室効果ガス削減の日本の中期目標が決められますが、外務省としては、国際交渉を進めていく上でどのような数値、或いはどのようなスタンスが望ましいと考えていますか。
(事務次官)12月までが気候変動の問題についての交渉期限として設定されているという前提の中で、我々としては当然日本がこの気候変動の問題でリーダーシップをとっていかなければならないという強い思いがあります。その中で具体的に今までクールアースパートナーシップに取り組んできていますが、日本として大事なことは、全ての主要排出国がメンバーになること、その思いが一つあって、米国、中国、インド等々も入らなければいけない、その中で出来るだけのことをやる、今ご質問の具体的な今後の中期目標については、日本のおかれた国際的な立場、それから、各々具体的に相当経済的にも痛みを伴うものですから、何が本当に最大限できるのか、これを当然日本として自分で考えるということだと思います。
(問)具体的な数字については。
(事務次官)この場で申し上げることは出来ません。
(問)一部報道で、「60年安保の核持ち込み密約」があったと報じられています。報道によれば、外務官僚が文書を管理して出す出さないを判断していたと、そして総理、外務大臣にも教えたり教えなかったりと、実際に引継ぎもされていたと、具体的に匿名ですが4人の次官の証言も報じられていると、これについて、事実関係を教えてください。
(事務次官)これは明白であり、そのような密約は存在しないということ、これは繰り返し歴代の総理、外務大臣も説明をされておられますけれども、これに尽きているということですし、私が承知していることもそれに尽きているということです。
(問)特段引き継がれてはいないと。
(事務次官)全くありません。
(問)その4人の中には、日本政府は国民に嘘をついていたと証言されている方もいます。否定するということは、その4人の方が嘘をついているというご認識なのでしょうか。
(事務次官)その4人の方というのが、どういう方で、どのような形でインタビューされたのかよくわかりませんが、私が申し上げたいことは、そのような密約は存在しないということです。私自身もそれ以外一切承知していませんし、大事なことは歴代の総理も外務大臣もきちんと明確に説明をされていると、これに尽きていると私は考えています。
(問)国民の方から見ると、どちらが本当なのか、むしろ具体的な4人の方のお話の内容からみると、外務省の方が嘘をついているのではないかと思うのではないかと思うのですが、80年代から90年代に次官をされていたということで、ある程度特定されるのですが、外務省として話しを聞いて事実関係を調べるというお気持ちはあるのでしょうか。
(事務次官)その必要は全くないと思っています。我々としての説明は一貫している訳ですから、それ以上の事は必要ないと考えております。