(問)今回の北朝鮮の核実験に関して、この実験を日本政府は事前に察知していたのでしょうか。
(事務次官)今回の北朝鮮の核実験実施は核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、安保理決議にも明確に違反しているということで、断じて容認出来ないということが、基本的な日本政府の考えです。これは先ほど総理からもそのような説明があったものと承知しております。事前に察知していたかどうかということですが、そのような意味では実験そのものを、それが今日行われるということについて、事前に察知していたということはありません。しかし、我々は常に緊張感を持って現状をフォローしてきたということです。
(問)今後の対応ですが、まず国連でどのような対応を選ばれるのでしょうか。制裁決議なのか、国連決議なら、どのような内容のものが出されるのでしょうか。
(事務次官)国連については、当然のことながら、国連安保理事会を緊急に招集するようにということで、現在議長国のロシアに、日本から直ちに、実際の時間はニューヨーク時間で日曜の夜でしたが、調整するように要請しました。ロシア側も議長として対応するということで、25日、月曜日、ニューヨーク時間で、当日はニューヨークは休みのようですが、おそらく25日の午後、緊急の会合を招集しようということになっております。大事なことは、国際社会が一致して対応すると、こうした北朝鮮による核実験は絶対に容認出来ないということを、国際社会として一致して確認して対応していかなければならない、かかる日本側の考え方をきちんと国際社会に訴えっていきます。そして、現在ハノイでASEMの外相会合が開かれていますが、中曽根外務大臣からも、各国に働きかけを行っていただいているところです。
(問)日本としては、新たな制裁決議をめざすということでよろしいのでしょうか。
(事務次官)当然のことながら、明確に安保理決議の違反行為が行われた訳ですから、国際社会全体にとっての非常に大きな挑戦であり、懸念材料であるので、我々としては強い決議が必要だという考えで臨んで行きたい、そういう考えです。
(問)前回、2006年の実験の時には、国連憲章7章に基づく制裁決議が出されました。今回の実験はこの決議に反して行われた訳ですが、前回の対応より弱い対応は考えにくいと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
(事務次官)いずれにせよ、日本がイニシアティブをとって緊急会合の要請を行いました。大事なことは国際社会が一致して対応していく、しかもその対応ぶりは、中身のあるしっかりしたものでなければいけない、そういう姿勢で臨んで行きたい、ということであります。
(問)ミサイル発射時の安保理議長声明ですが、その時は中国やロシアの対応が一つの焦点になったのですが、今回の核実験を受けた安保理の対応は今のところ、中国やロシアの対応ぶりについてはどのようなものでしょうか。
(事務次官)具体的に、これから並行していろいろなコンタクト或いは中国を含めた関係国への働きかけを行っているところですが、まだ各国がどのような対応をするかといった具体的な結果というものはありません。しかし、我々としては、国際社会が一致してこうしたことは容認出来ない、そういうことが確認できる、また確認しなければいけないと思っています。
(問)今回の実験ですが、日本政府として実験が行われたという認識なのか、その根拠は何なのか、もう一つは、実験は成功したのかどうか、その点は如何でしょうか。
(事務次官) 実際のところでは、北朝鮮による発表があったということ、そしてまたご承知だと思いますが、日本側においても気象庁が地震波を探知しているということ等々を総合判断して日本政府として考えてきているということです。
(問)北朝鮮がこの時期に実験を行った背景についてどのようにお考えですか。
(事務次官)いずれにせよ、こうしたことが行われてはならないということが基本ですから、そういう基本からいって何故この時期に行ったのかということについて云々するということは適当ではないと思いますが、先般の弾道ミサイルの発射、これに対する国連、国際社会の一致した対応ということで、今お話がありましたように議長声明という名前ですけれども、非常に強い形での強い声明が出た訳です。北朝鮮の行動に対するこれを非難するということで非常に強い決議、しかも中味のある決議がなされた。これに対して、北朝鮮がその強い内容の議長声明に対して国連安保理に謝罪を求めるという、異例の我々にとって考えられないような表現で言っていましたが、そういうことから、相当に国際社会のメッセージは伝わっていたのだろうなと思っていました。しかしそれにもかかわらず、北朝鮮がそういう行動に今回出たということで、我々としてはその背景を云々するよりは、そうした事が絶対認められないということを国際社会で今一度非常に厳しく確認し、またそういうことが二度と行われないように、更には色々の対応をとっていかなければならないということだと思っています。
(問)李明博大統領と総理との電話会談がありましたが、中国や米国とはどういうレベルでどういうコンタクトを取る予定なのでしょうか。
(事務次官)色んな形でのコンタクトを、米国の場合時差があるものですから、既に大使と国務副長官レベルで連絡を取り合っています。今後当然のことながら閣僚レベル或いは首脳レベルでのコンタクト、或いは働きかけなり話し合いということはあると思いますけれども、それから中国についても、今ハノイで中曽根外務大臣が各国に働きかけを行っており、中国ともそうした話し合いが行われるのではないかと思います。
(問)外相レベルでですか。
(事務次官)ハノイで外相レベルでの話し合いが当然行われるのではないかと思います。
(問)それは具体的に時間とか目処とかは。ハノイでの日中外相会談は決まっていますか。
(事務次官)色々な会合が行われているものですから、その中での事として、当然中国は大事ですから。既に韓国とは中曽根大臣が会談をもたれましたけれども、今、各種の会合が予定されていますが、当然の事ながら日中韓でも何らかの形での話し合いの機会はあると私は希望しています。
(問)過去3年間に色々な制裁決議などをやってきて、ただやはりこういう状況は改善されてこないと、一層の強い決議、制裁を改めて行うべきだと改めてお考えですか。
(事務次官)こうした事が再発するということは、本当に国際社会にとって容認できないと、そこのところを一番実効性のある形での対応というのはどういうものかと、これをよく関係国と話し合っていきたいと思っています。日本と北朝鮮との間では累次の日本の制裁措置等で、実際に経済的な取引は非常に限りなくゼロに近いような形で減少してきています。ただ世界全体として見ますと、そういう状況にないということですから、そういうことも踏まえながら、本当に効果的な対応ということが必要だろうというふうに思っています。
(問)世界全体で見てもゼロに近づけて行く努力をしていくと。
(事務次官)実際に世界全体としてどういう対応をとるのかというのが問われて来るだろうと思います。
(問)絶対に北朝鮮が行ったようなことをさせないという日本政府の考えに対して、そういう意味ではこれまでの日本外交は機能していないという指摘があり、そういった指摘に対してはどう応えられるのでしょうか。
(事務次官)日本外交の中には、六者会合もありますし、色々な形で国際社会が取り組んできた課題だと考えています。当然のことながら、その中で日本が大きな責任を持っている訳です。また、日本国民全体にとっても安全保障上の脅威になっている訳です。日本がリーダーシップをとらなければいけないというのはそのとおりです。責任もありますし、他方において北朝鮮との向かい合いはアジア、世界の中での話なものですから、結果として日本外交が機能しなかったという批判があるかもしれませんが、我々としては国際社会全体として取り組む課題であると考えています。
(問)六者会合の早期再開を日本政府は目指してきた訳ですが、この核実験を受けてその気持ちというのは変わらないのでしょうか。
(事務次官)実際に北朝鮮の諸問題、核、ミサイル、拉致問題は大事な問題ですから、我々が、こうした問題を解決する仕組みを作り上げてきた六者会合は、引き続き重要な会合であると考えています。それが実効性のあるものとして進んでいくにはどういう工夫が必要なのか、考えていかなければいけないと認識しています。
(問)一部の報道で、先日のミサイルの発射作業に関わっていた人たちが金正日国防委員長と一緒に写っている記念写真の中に浜松市で拉致された日本人がいたようです。これを受けて、今朝その方の母親の方が会見されて、政府に身元の確認を進めて欲しい、と言っていたようですが、事実関係と今後政府として身元確認を進めていくのでしょうか。
(事務次官)私自身その事実関係について、具体的にこの場でコメントする内容を持ち合わせていないので、今後の政府全体としての取り組みを含め調べていきたいと思います。
(問)マグニチュードの大きさからすると前回3年前の実験に比べると大きいようで、成功と言えるのではないかという意見がありますが、次官はどうお考えでしょうか。
(事務次官)まだ、各国と事実関係について情報の収集分析をしていくという課程にある状況で、各国の地震探知に違いがあるようですので、その点もよく分析していかなければいけないと思います。
(問)プーチン露首相が本日(5月11日)に来日しますが、期待される成果と、とりわけ、領土問題についていかがでしょうか。
(事務次官)プーチン露首相の訪日は日露関係全体を進めていく上で非常に大事な訪問であると考えています。プーチン首相自身も本人の経緯から自らの基本的な役割について、経済を中心としたことに責任を全般的に有していると、外交は大統領(の役割)だと、これまで言っておられますが、プーチン首相は極東東シベリア開発に非常に関心が高く、そのことで日本との協力関係を進めていきたいとも言っておられるので、その分野についても当然話し合いは行われるであろうし、そこで具体的成果もあると思われます。同時に、領土問題は日露問題を全般的に進めていく上で、この領土問題を解決して、平和条約を締結するということが非常に大事なのであり、日本側は予てより露側に言っており、麻生首相とメドヴェージェフ大統領との間でも話し合いがされてきていることであります。またプーチン首相は大変強力な指導者であり、プーチン首相の理解も支持も得られないといけず、それはメドヴェージェフ露大統領とともに進めていかれることでありますから、かかる意味でこの問題についても有益な意見交換が行われると期待しています。
(問)一部には、経済関係の強化により領土問題が置き去りにされてしまうという懸念もあるのですが。
(事務次官)その懸念は我々は持っておりません。メドヴェージェフ大統領自身も領土問題、平和条約の締結問題が日露関係を格段と進めていく上での障害になっているという日本側の考えに基本的な同意をされていると考えています。そういう意味で(領土問題が)置き去りにされるということはない、これははっきりしていると思います。経済関係、実務関係において、各々の問題が双方の利益になるということもあるということは我々は確認してきているところです。
(問)谷内政府代表の「3.5島発言」が今回のプーチン首相訪日 における日露間の領土問題の交渉に現時点で影響を与えているのでしょうか。
(事務次官)影響は全く与えていないと思います。基本的に日本政府の立場は極めてはっきりしています。北方四島の帰属の問題の最終的な解決を図るということが、全ての日本側の立場であり、総理も予てから言っておられることであります。また、「3.5島発言」については、本人も発言していないと言っており、誤解を与えるような発言をしたことについては大臣から本人に注意をしています。そういう経緯はあったが、それも含めて、全てオープンになっているわけであり、ロシア側において、なんら日本政府の立場について誤解はないと考えています。
(問)谷内政府代表の「3.5島発言」、および麻生首相の「2島でも4島でもない」という発言に対して、今朝の朝刊各紙に批判する内容の意見広告が掲載されていますが、この中の署名者に小川郷太郎大使(外務参与・イラク復興支援担当大使)が名を連ねていますが、現職の大使が時の首相、政府代表の発言を表立って批判するということは中々異例のことであると思いますが、それが対露関係に影響を与えないかについてはどうでしょうか。
(事務次官)対露関係については今申し上げた通り、日本政府の立場は極めて明確であり、それについては間違いなくロシア側に伝わっている訳です。ですから、そういうことでの影響がないということが第一点です。第二点目に「3.5島発言」云々については本人は言っていないとしており、言っていないと我々は理解していて、しかし、誤解を与えたことは良くないことで本人も反省している、注意もしてあるということです。
(問)現職の大使がかかる表明をすることについてはなんら問題はないということでしょうか。
(事務次官)実際にその広告を見ていないので、承知しておりませんが重要なことはまず第一点目として、日本政府の立場は極めて明確であり、それについてはなんらロシア側に誤解を与えていないということです。第二点目として本人が発言していないと言っているわけですから、それにつきていると、要するに日本政府の立場は変わらないということです。
(問)プーチン首相は、インタビューにおいて、「3.5島返還論」の質問について、「日本政府の立場は決まっていない、決まっていない立場については答えられない」と回答しましたが、プーチン首相に「立場が決まっていない」と解釈されること自体、何か誤解を与えていると考えられないでしょうか。
(事務次官)報道振りと実際のプーチン首相の発言はニュアンスが少し違うのではないかと思います。基本的な日本側の考えはロシア側にしっかりと伝わっているということです。
(問)プーチン首相は、領土問題解決の前に条件作りや関係の発展が必要だということで、まだ領土問題を解決する段階ではないという認識を示されているのですが、どのようにお考えでしょうか。
(事務次官)プーチン首相の記者会見に於ける発言、全文を読みましたけれど、少しニュアンスが違う気が致します。いずれにしても、ロシア側がはっきり言っていることは我々の考え方を理解していると、つまり、日露関係を大きく進めていく上では領土問題を解決しなければいけないのだと、それが解決されていないことが障害になっているということです。これについてのロシア側の考え方、日本側の立場に対する受け止め方というのははっきりしています。そうした中で問題を解決する際には、いろいろと関係を改善しておく方が良いということは、ロシア側も予てより言っていることです。
(問)ボズワース米特別代表と会談をされましたけれども、北朝鮮の核実験について、何かやりとりはありましたか。
(事務次官)国連安保理で強力な内容を含んだ議長声明を出せたことは、日米双方の協力と各国の理解を得て出来たことであると確認を致しました。非常に強力なメッセージということで、北朝鮮側がいろいろと反応していると、その中には北朝鮮側の発表、報道があったと思いますが、我々はその一々に反応しないということです。その上で関係国の間でしっかりと基本的な意見調整を行って、その上で北朝鮮に対して六者協議に戻るように呼びかけていこうということです。
(問)米朝協議についてはどのようなお話があったのでしょうか。
(事務次官)ボズワーズ特別代表から六者協議の枠内で米朝の話し合いを進めていく用意はあるという考えであることを我々の方に話がありました。私の方からも当然のことながらと六者協議の枠内で米朝が話し合うということについては十分理解できると、大事なことは日本とアメリカ、或いは関係国とよく意見調整をしながら臨んでいくということで、アメリカ側もまさにそうしたい、そうするつもりであるいうことで、日本との意思疎通についてはその重要性を何度も強調されておりました。
(問)先週の一部報道で、中朝国境付近で精巧な偽一万円札が見つかったという外交ルートで話があったということですが、その後何か事実関係等々判明しているでしょうか。
(事務次官)特にコメントする立場でなく、はっきりしていることはありません。ただ、情報は収集しております。