(事務次官)週末ワシントンに行って参りまして、最初に一言感想を含めたことを申し上げます。米国側の政府高官とお話しをしていましても、日本への期待、日本と協力していこうと、正に日米同盟というのが両国間だけではなくアジア地域全体あるいは色々なグローバルな問題の解決のために共にやっていく非常に重要なパートナーなのだ、という思いが非常に強いと感じました。その現れが、クリントン国務長官をですね、ずっと向こうの人が説明してくれましたが、欧州あるいは中東に最初に行くというのが従来のパターンだった、それが今回日本そしてアジアが最初だったというのも十分に向こうの中で考えた上でのことなのだ、と。そして特に、オバマ大統領が初めてホワイトハウスに迎えるゲストが日本の麻生総理であると、これも彼らとしては日本との関係を非常に重視しているということで色々と考えた上でのことであるそうです。まさに日本と一緒にやっていきたいんだという思いが非常に強いということで、金融・経済の問題、それからクリーン・エネルギー、核軍縮や開発の問題であるとか、また、よく3Dと言われていますが、色々な意味で重要な課題というのが日本と一緒にやっていける課題だということ、そういう思いが非常に強いということでした。そしてもう一つ、今回良かったなと思うことは、米国側の政府高官、国務副長官初め先般の日米外相会談の結果を踏まえて、相当我々レベルで詳しく主要課題について話し合い、特に日本側の考え方を早期にオバマ政権の関係者に伝えることができたということでした。
(問)金賢姫元死刑囚と田口さんのご家族との面会が今月中にも行われると一部報道があるのですが、その辺りの可能性については如何でしょうか。
(事務次官)これは正に実現のためにということで、日本政府が韓国側に希望を伝え今調整を行っているというところです。具体的にいつになるかというのはまだ固まっていません。
(問)今の冒頭の発言を踏まえて、明日、日米首脳会談が行われますが、どういう会談になるか、どういうことが成果として想定されているのかという点についてお聞かせ下さい。
(事務次官)日米同盟の重要性を再確認することがまず何より大きく、世界中がオバマ大統領を新しい大統領ということで注目していて、それもホワイトハウスでの最初の会談ですから、両首脳が会う、そのこと自身のメッセージと、それから日米同盟の問題について色々と話すことがあると思いますし、その上でグローバルな問題としての、4月2日に第2回国際金融・世界経済のサミットがありますが、そういうことをひかえての日米での意見調整が大事だと思います。それから、オバマ政権にとって非常に大きな課題の一つになっているのはアフガニスタンです。そういうことについては、恐らく日本側から今まで日本が民政部門を中心に行ってきた貢献、そういう内容についても話をされると思います。色々と話題は豊富にあって、実際には両首脳がどう発言されるかですが、最初の出会いですし、米国の事務方にとってもオバマ大統領がどう発言されるかということは一つ一つが新しい経験になる様ですから、いずれにせよ良い議論が出来るということだと思います。
(問)アジア重視ということで、要求水準と言いますか、日本に対する期待も逆に高くなってくる部分もあると思いますが、例えばシーファー前駐日大使が帰り際の会見等で、「日本がNO WECAN'Tという様なことになって貰っては困る」という懸念も表明されましたが、実際に米国に行かれて、米国側からのそういった懸念は感じられましたか。
(事務次官)全く感じませんでした。正に日本がアフガニスタンで何が出来るか、どういうことを行っているのかということを米側は相当評価してくれていると思います。それから、どういう議論があるかということで言えば、当然日本から東アジアの問題、北朝鮮の問題がありますから、これについては核、ミサイル、拉致問題の包括的な解決の重要性を麻生総理の方から強調され、先方の理解を求めることになると思います。
(問)アフガニスタンに関してですが、米国が増派するという報道がありますが、費用負担を求められた場合、日本としてはそれに応ずる用意はあるのでしょうか。
(事務次官)そういうそもそもの前提がいかがなものかということもありますが、費用負担を求められる云々という話は、私が行ったときには一切ありませんでした。むしろ先ほどのお話のように、実際に日本が何が出来るのか、どのようなことを行っているのかということをきちんと日本側が米側に説明することが大事だと思います。敢えて言えば、米国政府の中ではアフガニスタンの問題について政策のレビュー中です。その中で、もちろん米国自身としては増派の問題もありますが、民政の問題の大事さについても随分認識しているという感じが窺われました。その中で、日本が行っていることに対して相当の評価が得られていると思います。この後引き続き日本が出来ることを行っていく、その中で、日米で良く協議をしていくことが当然必要だと思います。
(問)北朝鮮がミサイルの発射準備を進めているとされる問題で、今日朝鮮中央通信が「何を打ち上げるかは見ていれば分かる」というようなことを言いまして、事実上ミサイルの発射を予告したような形になったのですが、政府としてその北朝鮮の声明をどう分析されているのか、そして実際に発射の兆候のようなものはあるのか、この2点をお聞かせ下さい。
(事務次官)常にお伝えしていますが、色々と情報は当然のことながら入手、或いは分析し、常に注視していますというのが1つです。2つ目は基本的に国連安保理決議というものがあって、弾道ミサイルの発射というのは、これは安保理決議違反です。個々具体的なことについてはコメントを差し控えることとしています。
(問)現段階で、日本国民に何らかの形で警告を発するような差し迫った段階にはなっていないということでしょうか。
(事務次官)今申しましたように、報道は承知していますが、具体的なことについてはコメントはしないという類の話です。
(問)ミサイル発射の場合は安保理決議違反ということだと思うのですが、衛星の打ち上げということでのロケット発射の場合には、これは安保理決議違反ということになるのでしょうか。
(事務次官)今申し上げましたように、はっきりしているのは、ミサイル問題、核開発問題という中でのことですから、それでそこに重い安保理決議があると、そういうことが基本であるということに尽きます。
(問)イランが人工衛星の打ち上げに成功したということを発表したと思うのですが、これについての安保理決議との関連は如何でしょうか。
(事務次官)今申した安保理決議というのは北朝鮮の2006年の案件についての安保理で、それに対する違反ということです。弾道ミサイルの発射が行われれば当然のことながらその違反になるということで、イランとはまた別です。
(問)北朝鮮のこういう動きは、クリントン米国務長官のアジア歴訪を踏まえて、日米韓、或いは中国に対して揺さぶりをかけるとか、或いは存在感をアピールするという狙いもあると思うのですが、如何でしょうか。
(事務次官)北朝鮮の狙いを一々我々が忖度し、コメントするというのも如何なものかと思っています。何れにせよ関係国との間で緊密な連絡は行っているということです。
(問)クリントン長官の発言では、「核放棄の覚悟があるなら関係を正常化する、平和条約の締結、支援の用意がある」ということですが、核放棄の覚悟があるということで、核放棄をしたらではないという微妙なところなのですが、その辺の認識についてどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)覚悟というのがどういう英語だったのか承知してませんが、要するに本当にコミットしているかどうかということなのかもしれません。重要なことは本当に核の廃棄が行われることですから、覚悟と言われたのはどういう意図かは分かりませんが、実際に核の廃棄が行われることが我々にとっては大事であるということに何ら変わりはありません。
(問)確認ですが、日本政府としては、従来エネルギー支援に関しては、拉致問題があって参加しないという姿勢を取ってきましたが、今後その方針に変わりはないのでしょうか。
(事務次官)基本的に方針に変更はありません。いずれにせよ大事なことは、核、ミサイル、拉致の問題をどうやって解決するか、前に進めていくかということで、それについて改めて、オバマ政権の誕生ということで日米、或いは日米韓、基本的に我々は六者の枠組みは有効だと思っていますが、全体として良く相談をしていくことになると思います。
(問)日本政府としては、米朝が直接対話といいますか、90年代初頭のようなことがあったとしても、その時に方針の変更はないのでしょうか。
(事務次官)時代は変わっていまして、基本的にオバマ政権も六者会合に一定の有効性を認めておられると、直接、間接に伺っていますが、そういうことを含めて今回非常にいい機会だと思っていますから、外相レベルできちんとした話が出来るのではないかと、それは非常に大事なことだと思っています。
(問)クリントン米国務長官がお見えになるということで、外務大臣との会談も予定されていますが、北朝鮮の関連ではどのような部分で話されて、確認、合意したいと思われていますでしょうか。
(事務次官)今回の日米外相会談が明日行われますが、クリントン国務長官として初の外国訪問で日本に来られるということで、クリントン米国務長官そしてオバマ政権として日米同盟関係を非常に重視しているということだと思います。そういう中で、大きな意味でのアジアの情勢について、或いは大きな意味でのグローバルな情勢について、日米が同盟国として話し合うということは極めて大事だという基本認識がまずあると思います。その上で、個々具体的な問題についてですが、北朝鮮について日本側としては当然のことながら核、ミサイル、拉致の問題を包括的に解決することが大事であるということで、それについての基本的な確認を北朝鮮問題についてはクリントン米国務長官との間でも行いたいという気持ちで、当然のことながら大臣はお臨みになるのだろうということで準備をしています。
(問)18日の麻生総理のサハリン訪問についてですが、戦後では日本の首相として初めてのサハリン訪問となります。南樺太の帰属は未定となっていますが、今の日本政府の立場をもう一度お願いします。
(事務次官)日本政府は、そこに総理が行かれることについては何ら問題はないという考えです。総領事館もサハリンに持っていますし、そういう整理を行っています。
(問)明日から外務大臣が訪韓されるご予定ですが、この中でアフガニスタンの支援等で日本と韓国が協力して出来ることについてはどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)これは先の日韓の首脳会談で話が出ました。従来よりアフガニスタンについて各々日本も韓国も支援してきているのですが、日韓がお互いに協力し合えば何か出来るのではないか、効率的なことが出来るのではないかということで、実務レベルで話をしているところです。具体的に、職業訓練の分野等々、日韓で更に協力出来る分野があるのではないかと、その作業を今しているところです。外相会談でもその辺についても全体の方向性が確認されるのではないかと思います。
(問)具体的なプロジェクトとか案件、やり方等での合意は想定されているのでしょうか。
(事務次官)今調整中です。一歩一歩やっていきたいと思っています。
(問)クリントン米国務長官が、日本、韓国を訪問する前の日韓の外相会談になる訳ですが、今回の日韓外相会談は北朝鮮問題に関してどのような位置づけ、或いは意義になるのでしょうか。
(事務次官)六者の中でも、日米韓三カ国は従来から協調し、協力してやってきている訳ですが、そうした中で新しいクリントン国務長官が日本と韓国においでになるということ、オバマ新政権の発足ということを受けて、日本と韓国の間でよく意見調整をしておくことが大事なことだと思っています。そういう意味で、外務大臣の訪韓は非常に時宜を得たことだと思います。そこで、日韓の間での意志疎通、ポジションの再確認ということは当然行われると思います。
(問)昨年の8月の日朝実務者協議で、再調査委員会の合意がありましたが、未だ動いていないという現状についてのそれに対する見解をお願いします。それから、元駐韓大使が、北朝鮮は米国と直接対話を望んでいるのではないかという見解を示されましたが、1990年代初頭のカーター元大統領が(北朝鮮に)行って直接対話をしたというのが思い出されます。今回もその二国間交渉というものに先じるのではないかという懸念がありますが、それに対する見解もお願いします。
(事務次官)日朝の間では、今お話しされました通り、昨年、拉致問題等についての本格的な調査の段取りについての話し合いが進んでいたところだったのですが、先方からの状況で、少し様子見の段階になったということでした。この問題と、今お話がありました核の問題、国際的な取組みの問題は、いつものことですが、動きには若干の連動性もあるのかもしれません。それで今、お話にありましたが、北朝鮮側としてはオバマ政権を見守っているというところがあるかもしれません。ここは推測ですが。残念ながら日朝についての先程の再調査の話については、我々は督促してきていますが、確たる返事がないという状況です。引き続き我々としては実現の方向で努力していくことは勿論であります。もう一つのお話の、米朝二国間での話し合いが先行するのではないかという懸念があるかどうかということですが、これについてはいずれにせよオバマ政権との間で北朝鮮の問題についてよく意思疎通を図っていき、意見交換・調整を行っていきたいと思っています。今まではっきりしているのは、オバマ政権においてもやはり六者会合が重要な、有効な枠組みであるということが伝わってきています。そういう中でクリントン長官がおいでになりますが、また日米間での話し合いが出来ることになると思っています。
(問)六者協議が中断している訳ですが、枠組みの重要性に鑑みて、米国の新しい大統領が決まれば早期に顔合わせをするべきなのか、それとも、ある程度具体的な成果が固まった段階で開くべきなのでしょうか。
(事務次官)いずれにせよ、まだ米新政権の体制が固まっておらず、米国側の代表がまだ決まっていない状態ですが、国務長官もおられる訳ですし、国務副長官ともその内に私も話し合うことになりますので、新しい北朝鮮問題についての米国の代表が決まったところで、それまでの議論を踏まえながら日米間で協調していきたいと思います。(決まるまでに)それほど時間はかからないと思いますから、そうした中で六者会合が早期に立ち上がることが大事だと思います。
(問)今日一部報道で、パキスタンの支援会合を日本で開く考えがあるということでしたが、現在の調整状況は如何でしょうか。
(事務次官)パキスタンとアフガニスタンは双方非常に関連がありますが、パキスタンに対する支援というのは国際的にも非常に重要な問題だと考えています。従来から日本はパキスタンに対しての援助協力ということで非常に重要な地位を占めていますし、国際的にリードしていく必要があると思っていますが、今、具体的にパキスタンについての援助支援国会合というものが、具体化しているということではなくて、現在まだ調整をしている、話し合っているという状況にあります。
(問)日本としては出来れば開きたいという考えでしょうか。
(事務次官)日本は、今申しました通りパキスタン支援ということに関して言えば、非常に重要な役割を果たしていますから、そういう意味では指導力を発揮していきたいと思っています。
(問)話し合っている状況というのは、参加を期待されている国と話し合っているのでしょうか。
(事務次官)国際機関や関係国等色々ありますから、それから当該パキスタンとの関係もありますし、色々なアイデアがまだまだ関係国の間にあるということでご理解頂きたいと思います。
(問)パキスタンの支援会合について、現在調整をしている段階だということですが、開催の時期は3月乃至は4月を想定して調整をしているのでしょうか。
(事務次官)調整というのはどういう形で行うのかということを含めてですから、具体的な時期について、具体的な方向性がある訳ではありません。
(問)北方領土の四島交流の件ですが、引き返すことになって、合意された枠組みの中で今後協議をしていくということですが、その見通しと、先方はあくまで出入国カードの提出を求めるという立場のようですが、それに対する日本政府の立場をご説明頂けますでしょうか。
(事務次官)今までやってきたことを継続して行っていきたという気持ちを双方持っていると思います。出入国カードについては、従来の理解と全く違う、先方の主権を認めることになりますからこれは認められない、これには応じる訳にはいかないということが基本としてあります。その上で具体的に継続するための双方の話し合いということについては並行して行っていきたいと思っています。
(問)両国間の話し合いについて、現時点でいつ頃というのはあるのでしょうか。
(事務次官)基本的には外交ルート、大使館を通じてお互いに行うことになると思います。