記者会見

事務次官会見記録(要旨)(平成21年1月)


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事務次官会見記録(平成21年1月26日(月曜日)17時01分~ 於:本省会見室)

日ロ関係

(問)土曜日に、メドべージェフ・ロシア大統領と麻生総理大臣の日ロ首脳電話会談で、サハリンで会えないかというお話になったようですが、その件についての検討状況をお聞かせ下さい。

(事務次官)サハリン2の生産稼働式典だということで、そのこと自身が非常に重要ですし、また、その際には二国間の様々な問題についても引き続き話し合いたいという話が先方からあったということです。私自身はそういったアプローチは結構なことだと思いますが、現在は、正にそこに行けるかということについては、国会中ですから、検討中であるということしか言えません。非常に積極的な展開であると思っています。

(問)サハリンの南半分は帰属が未確定であるというのが日本政府の立場だったと承知していますが、そこに総理が行かれるということで問題が生じ得ないのでしょうか。

(事務次官)サハリン2との関係で総理がサハリンに行かれるというそのこと自身については問題はないと考えています。

(問)外交的な見地から見た場合には、やはり首脳会談を行った方がいいとお考えでしょうか。

(事務次官)一般的に、最近は首脳外交が従来以上に重要性を増していると思いますし、首脳会談が行われることは重要であり、外交上の意義があると思っています。

(問)今回、北方領土に非常に近い場所で会談が行われて、わざわざそこに大統領が来るということですが、ロシア側の意図に関してどのようにお考えでしょうか。

(事務次官)ロシア側と話をしていて、最近感じますのは、ロシアは、自分たちはアジア太平洋国家の側面も持っているということを強調しています。従来からロシアは、地理的にもヨーロッパ側の側面がありましたが、最近ではアジア太平洋国家としての側面も持っており、日本との関係では、東シベリア、極東開発について協力をしていきたいと言っています。また、シベリアでAPECを主催するという一連の動きがあります。先方としては、エネルギー面でもその他の面でも日本と協力していきたいという話なんだと思います。我々は全ての問題でロシアと話をする時には当然ながら平和条約問題についても話をする必要があると、従来からそういうことであります。

(問)メドヴェージェフ大統領との会談について、プーチン首相が年始に訪日するのが未確定ですが、(同首相訪日が)未確定のうちに、大統領が会談を要請したのはどういった考え方なのでしょうか。

(事務次官)個々具体的な背景について考えるよりも、会談のチャンスがあればどう生かすかだと思います。プーチン首相は経済問題を担当しています。ロシア経済も世界経済の影響を受けていて忙しいと思いますが、我々としてはプーチン首相の訪日については、それはそれで進めていきたいと思います。

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王家瑞中国共産党対外連絡部長の訪朝

(問)先週金曜日に、北朝鮮の金正日総書記が王家瑞・中国共産党対外連絡部長と会談し、その様子が写真で報じられると共に、北朝鮮としては、六者協議を必ず推進したいと発言されたということですが、次官自身は、今回金総書記が姿を現したということ、また、このような発言をしたことについて、その意図や発言の目的についてどのように見ていますか。

(事務次官)これはまだ報道で承知しているということであり、かねてから当然色々な動きについては情報収集、分析等々しており、我々としても色々考えていますけれども、これは、例年党交流ということで行かれる、その時期が今だったのだろうということが一つあります。そうした中で金正日国防委員長が出てきたということはその前提にあったのだろうと思います。これから更に情報収集、分析をしていきたいと思います。

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日中関係

(問)中国製冷凍ギョウザの中毒事件ですが、回収した商品が中国国内で広く配給されていた事実が分かったのですが、日本側はそれについて把握していたのか、また中国側に問い合わせをしていたか、また、間もなく1年が経ちますが、解決の目途が立っていないようですが、日本側としてはどのような働きかけをしているのか教えてください。

(事務次官)そのこと自体については、我々は把握しておりませんでして、現在事実関係について照会をしているところです。我々としては、このギョウザ問題を非常に重視しており、真相究明を中国側にもかねてから求めております。中国側も、我々も一生懸命捜査していますが、難航しているということを伝えてきています。日中の捜査当局間でも連絡を取り合っています。確かに時間が随分経ってしまっていますが、我々は引き続き真相究明に向けて日本側からの働きかけを行っていきたいと思っています。

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事務次官会見記録(平成21年1月19日(月曜日)17時11分~ 於:本省会見室)

日米関係

(問)オバマ次期米大統領が、明日就任されますが、これを機にオバマ次期政権とどういった形で日米関係を築いていくのか、また、日米首脳会談の日程等についてどのようなスケジュールをお持ちなのか伺いたいと思います。

(事務次官)オバマ新政権がいよいよ発足するということで世界中が期待感を持って、待ち受けていることだと思います。我々としては、日本と米国の強い絆、同盟関係を、新しいオバマ政権との間でも維持・継続して更に強化していくということ、これが日本外交の基本であると思っています。オバマ政権の抱える色々な課題がありますが、日本と考え方が共通するもの、色々と日本が国際舞台でも一緒になってやっていけるものも多いと思いますし、先般のクリントン次期国務長官の議会での証言でもありましたように、双方にとってこの日米同盟というのはアジア地域の平和と繁栄に欠かすことの出来ないものであるという思いの中で、この関係を一層進めていきたいと我々も思っているところです。そのためには早期に日米の両首脳が会談するということも非常に大事なことだと思っておりまして、今後とも米国側と、よく打ち合わせをしていきたいと思っています。

(問)国際舞台で日米が一緒に取り組んでいくことは具体的には何でしょうか。

(事務次官)まず第一にオバマ新政権にとって取り組んでいくことは、経済の問題だと思います。昨年のG20首脳会談でもそうですが、日本はまさに米国と一緒になって第一、第二の世界の経済大国ですからそれは協力できることです。まさにアジアのことは日本が相当主導的にできる分野ですから引き続き米国とも一緒になって取り組んでいく。それから今年は、気候変動が大きな問題ですが、オバマ政権はこの気候変動問題でも相当積極的に前向きな取組姿勢を示していこうとするのではないかと思います。こういう分野でもまさに日本が今まで働き掛けてきたことを更に米国と共同歩調・共同戦線が張れるのではないでしょうか。

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日中関係

(問)今月の30日で、中国製の冷凍ギョーザ事件の発生から一年経ちますが、まだ解決の道筋が立っていないのですが、この問題が長期化している理由を次官はどのようにご覧になっているでしょうか。

(事務次官)これはまさに、先般の日中戦略対話の時にも私から申し上げましたが、食の安全というのは日本にとって大変大きな問題であり、これは双方の利益のためにも一日も早い真相究明が必要であるということを申し上げました。先方からも、これは中国側としても非常に重視しているとのことで、その中で捜査当局も、例えば懸賞金を掛けるなど色々な形で一生懸命やっているようですが、捜査を強化しているのだということでした。日中の捜査当局間でも、連携は取れている状況です。しかし、今お話があったように、もう一年経っているのではないかということで、なかなか状況は我々にとって詳かにされないところがありますが、こういう種類の捜査はなかなか難しいと聞かされており、我々としては一日も早い真相究明を求めていきたいと思っています。

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北朝鮮問題

(問)北朝鮮問題で、1990年代に米朝枠組み合意があり、その後拉致問題が置き去りにされたり、あるいは政府高官が拉致問題は解決したんだなどという発言があったり、日米韓のトライアングルに揺さぶりを掛けているようですが、この点は如何でしょうか。

(事務次官)オバマ次期大統領は、大統領候補の時も選挙中も選挙に勝った後も、同大統領の口から拉致問題の重要性についても言及がありました。また、北朝鮮問題全体についても対話の取組はなされるけれども、基本は日本と米国そして韓国などで協調の出来るところを作り上げて、そういう対話がなされることが重要であるということです。核問題、ミサイル問題そして拉致問題は日本は包括的な解決を目指して取り組んでいく訳ですが、私はオバマ新政権との間でも心配していません。十分協調出来ることだと思っています。

(問)例えば米国が特使を派遣するようなことがあれば、日本と韓国も歩調を合わせて特使を派遣することになるのでしょうか。

(事務次官)まだ具体的にどうなるかというシナリオがある訳ではありませんが、まず日本としては日米に韓国も加えて共同のポジションと言いますか認識を深めることが第一だと思っています。

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谷内前事務次官の政府代表就任

(問)谷内前事務次官が政府代表に就任が予定されていますが、外交上どういった役割を今後担っていくのでしょうか。

(事務次官)必要に応じて、色々な形でお手伝い頂けるのではないでしょうか。

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事務次官会見記録(平成21年1月5日(月曜日)17時36分~ 於:本省会見室)

東シナ海資源開発

(問)東シナ海のガス田の樫の件ですが、日本政府として樫について中国側が開発を続けているということについて、いつ、どのように状況を確認したのかということと、日本政府として、いつ抗議を申し入れて、中国政府はどう回答したのかについて、事実関係をお聞かせください。

(事務次官)事実関係について、この東シナ海の問題についてはよくご承知かと思いますが、私はたまたまずっとこの交渉を5年位前からやってきましたので、少し背景をご説明しても宜しいでしょうか。全体としてこの問題をどう理解すべきかということだと思います。元々中国側はご承知の通り、沖縄トラフまでの水域を自分たちの水域であると主張しています。日本側はそうではなく、これは中間線、日本側と中国側の200海里が重なる時には中間線が基本になるということで、日中の立場の違いがあり、それで我々は交渉をずっと行って参りました。そして日中間首脳レベルでの非常に高い政治的判断と言いますか、東シナ海を平和と協力の海にするんだという日中双方の首脳の基本的な認識の下にでき上がったのが昨年6月の合意です。これは我々から見れば日本側の主張が十分反映された合意であると思っています。今大事なことは、これを国際約束にしなければならない訳で、それを締結する実務的な交渉を早く進めなければならないということだと思っています。それが我々日本の国益にかなうと思っています。まだ実際の交渉がスタートしていませんが、所謂我々が行った合意を実務的にどう条約文に反映させるかということが大事で、この努力を行っていきたいということがまず大事です。次に、白樺の時に言われた議論ですが、ストロー効果という点です。これはどういうことかといいますと、ご承知かと思いますが、中間線の西側で行う中国側の開発であっても、それが東側と繋がっているのではないか、東側のガスが吸い上げられるのではないか、それがストロー効果という議論です。昨年6月の合意では、ストロー効果があるかもしれないということで、白樺について日本側が参画するということが合意されました。それから昨年6月の合意のもう一つの大きな点は、北部水域について共同開発をするということで、これについてはバランスのとれた形でやりましょうと、そしてそれ以外については継続協議ということで、日本側から見れば日本側の主張が、中国側から見れば中国側の主張があるということですが、継続して協議していこうということになりました。繰り返しになりますが、私はこの合意は日本の国益に十分にかなうと思いますので、これをどのように実施していくかということが極めて大事だと思っています。今のご質問の件については、具体的に我々がどのような形でどのようなことをしているかということは言わない世界の話ですから、具体的にどのような活動が行われているのかということについては色々な方法で見ていき、問題があればその都度中国側に対して抗議していくということでご理解頂きたいと思っています。大きなところをご覧頂いて、何が日本の国益であるかということを考えた上で我々も対処していくというところです。

(問)今のお話を伺っていますと、条約交渉がまとまらない限りにおいては、中国側が開発することにもそれなりの利があると理解されていらっしゃるのでしょうか。

(事務次官)どうしてそのような理解になるのか分かりません。私が申し上げたのは、まず必要なことはこの合意をどうやって実施に移すかということに双方が力を注ぐべきだということであり、それが日本の国益にかなうと私は考えています。

(問)条約交渉について、日本側の働きかけに中国側が応じてないという状況がある訳ですが、その見通しは如何でしょうか。

(事務次官)それは正に大事な点でして、我々としてはできるだけ早くやりたいと思っています。中国側に対してそのことは相当強く働きかけを行っているという状況ですが、まだ調整がついていません。ただ我々としては早期に開催できるだろうという期待感を持っています。

(問)今回の件で条約交渉が遅れる可能性はあるのでしょうか。

(事務次官)日本の国益は正にそれを実施に移すことですから、できるだけそういう形でスムーズにいくように対応していきたいと思います。

(問)条約交渉とその他の海域の継続協議ですが、まず条約交渉を優先的に進めた上で、条約が締結された後にその他の海域の協議に移るのでしょうか。

(事務次官)よく読んで頂きたいのですが、昨年6月の合意というのは、今まで大変、(日中間に)色々と意見の相違があった中で日中間の交渉が行われ、(合意文にも)「第一歩」としてこういう共同開発をやりましょうということが書かれています。今はそれを早く実施に移して、信頼関係を築く努力を双方がしていかなければいけないということが重要であり、我々として全力を尽くすべきは、まずその合意を一日も早く実施できるようにしていきたいと思っています。

(問)6月の合意では、その他の海域については共同開発が早期に実現することを目指して協議を継続するとその間中国側が開発をストップするなどそういう部分は明文的には書かれていないけれども、日本としては継続協議である以上中断するべきだという立場でしょうか。

(事務次官)日中双方の考え方があると思います。我々はそういった考え方です。

(問)今まで中国政府に抗議したことを公表していなかったのですが、今朝の大臣の会見の中で、今後も同様の行為があった場合でも、公表する考えは今のところないと仰っていましたが、国民にとっては非常に分かりにくい対応ではないかと思いますが、その点についてどのように考えているのでしょうか。

(事務次官)どういう活動があるのかについては、我々としても相当作業が必要なところで、その一々については公表する性格のものではないということです。分かりにくいと言えばそうかもしれませんが、政府の活動にはそのようなところもあります。そうした中で、全体の国益を守るためには何をすべきか、相手が間違っていればそれに抗議をする、大事なことは合意を実施に移すことであり、それが日本の国益にかなうことだと思います。

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ソマリア沖における海賊対策

(問)ソマリア沖の海賊対策についてですが、昨4日の総理の記者会見で、集団的自衛権の関連でソマリア沖の対策もあると言及されつつ、集団的自衛権を研究していかなければいけないという言い方をされているのですが、ソマリア沖の海賊対策に日本の自衛隊が参加する時に、集団的自衛権が問題になり得るのかという点は如何でしょうか。

(事務次官)集団的自衛権については憲法上の解釈の問題がありますが、その立場は変わらない、他方、もっと研究しなくはならないと総理は仰ったのだと理解しています。ソマリア沖の海賊対策について言えば、日本の国民、船、財産の安全をどう確保するのかは非常に大事なことで、現行法の下で何ができるかも含めて検討をすべきとの総理からの指示が出ており、政府内で鋭意検討を重ねているところです。なお、海賊の問題では、集団的自衛権の行使が直接的に関係することは必ずしもないと思います。海賊の問題については、総理の御指示に基づいて、早急に何ができるかということについて検討をしているということです。

(問)具体的には海上警備行動の発令が現行法では考えられるのでしょうが、今までの発令の例であれば、ソマリア沖のように日本から非常に離れたところでの海賊対策に発令することは、法律が想定していた事態とは違うのではないかと考えもありますがどうでしょうか。

(事務次官)そもそもソマリア沖でこのような海賊行為が頻繁に行われるのは全く新しい事態であります。それにより日本の国民や財産が侵害を受けるということでもあり、また、国際社会全体がこの問題に取り組まなければならないということが新しい問題として起きています。その中で、色々な新しい事態に対して、現行法の枠内でできることであればそれはやっていくということです。

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