(問)週末、「ロス疑惑」で三浦和義さんが滞在先のサイパンで逮捕されたのですが、日本で無罪が確定している人がサイパンで逮捕されたことについて、どのようにお考えでしょうか。また、今後外務省としてどのように対応していくのでしょうか。
(事務次官)これは事件が米国で発生したということで、私はどう考えるかというより寧ろ制度の問題として申し上げますが、そういう意味では米国が裁判権を行使することは可能であると、そういう制度になっている訳です。仮に将来的な問題として、これも制度ですが、日米間には刑事共助条約がありますから、支援手続きの要請があればそれに基づいて対応していくというのが今の日本側の、或いは日本と米国との関係における制度です。そういうことで、我々としては、そういう中で慎重に見守っていきたいと思っています。
(問)日韓首脳会談が行われましたが、シャトル外交の復活やEPA交渉の進展等がありましたが、外務省としてはどのように成果を評価されているのでしょうか。
(事務次官)未だ詳しく会談の内容について報告を受けていませんが、現時点で聞いている範囲では、非常に良い会談が行われたと聞いています。そして今後、日韓両国、日本にとっても隣国であり大事な国ですが、その韓国との間で未来に向けた協力関係を基礎とする関係が築けるということは素晴らしいことだと思いますし、その第一歩になったのではないかと思っています。
(問)日米韓との関係を強固なものにしたいということなのですが、具体的にどういうレベルで今後、日米韓の強化が為されていくのかというお考えはあるのでしょうか。
(事務次官)以前はTCOG(日韓米三国調整グループ)と言っておりましたが、今後については、韓国側とも、或いは米国側ともこれから話をするというところですから、どういうレベルで、或いはどういうことについて話し合うのかということについてはこれから(調整ということ)です。要は日本と韓国、そして米国が、意見を常に調整しながら、或いは意見交換をして、相手の立場をよく理解しながら色々な問題、それは六者の問題もあると思いますが、それについて取り組んでいこうではないかと、今のところはそういう一般的な状況です。私の承知するところでも、韓国新政権はそういうことについて、非常に重視していきたいということですので、我々と思いが同じだなというような気がします。
(問)週末、次官が訪中されましたが、ガス田協議で解決までは至らなかったのですが、どの辺りがネックになったとお考えなのでしょうか。また、次はどのように、いつ頃開催される見通しなのでしょうか。
(事務次官)今回の協議は、私と王毅(オウ・キ)中国外交部副部長との間では初めての戦略対話ということでした。日中戦略対話は数えると(今回が)第8回目になるらしいのですが、日中各々が今後日中関係、これは単に二国間だけではなく、より幅広い地域的な、或いはグローバルなことを描きながら、どうやって協力関係を進めていくのかということ等について随分夜遅くまで話を致しました。それが本来の今回の主目的だったのですが、東シナ海のガス田の問題についてもその際に話し合ったということです。ご承知の通り、長年に亘ってお互いの立場や主張が違う訳です。そういう中でどうやって共通の基盤が作り出せるかということ、これは双方に思いはあるのですが、具体化していくとなると、なかなか未だ難しいことも残されているということです。今までの話し合いを通じて、お互いこの問題を解決するにはどうしたらよいのかということで相当話し合ってきており、そこにおいてはかなり共通点も見いだせるようになっているのですが、やはり未だ残されている点も非常に大きいものがあるという状況です。それを踏まえて、次どういう格好でやっていくのか、これはお互いによく連絡を取り合っていこうということになっています。出来るだけ早期の解決が望ましいということでは、双方の意見の一致というか、同じ気持ちだろうと思いますが、何れにせよ、そういう難しい点が未だ残されていますから、なかなか予断を許さないということです。そういう状況だと思います。
(問)出来るだけ早期ということですが、胡錦濤国家主席の訪日もある訳ですが、それより前に何とか解決したいということでのコンセンサスというのはあるのでしょうか。
(事務次官)それもある意味、これも交渉と関係するのですが、一つの日程を作ると、それによって交渉の立場が弱まるという風に考えるかも知れませんから、今のところは、出来るだけ早期にというところで双方の思いが共通しているということです。
(問)キューバでフィデル・カストロ氏の弟のラウル・カストロ氏が新議長に選ばれましたが、キューバの権力構成とか権力委譲の動き、政権の安定度についてどのように見ているでしょうか。また今後、日・キューバ関係にどのように影響を与えるとお考えでしょうか。
(事務次官)安定度というところでは、今後の展開を見てみないと分からないというのがあると思いますが、基本は、体制的には今までとそう変わらないのではないかと思っています。そういう中で言えば、大きな変化が俄にあるとは見ていませんが、今後の展開をよく見ていこうと思っています。
(問)先だって日本の警察庁の関係者や外務省の方がミャンマーに行かれて、向こうの警察と協議した結果、平行線だったということですが、今後どういった形でこの問題に対処されていくお考えでしょうか。
(事務次官)従来から我々はミャンマー政府に真相の解明ということで強く求めてきている訳です。先般は、日本の警察当局からも我々一行に加わってもらって話をしてきたということです。そこでは相当具体的に日本側の今までの、日本としての調査結果を踏まえたやり取りを行っており、今後とも引き続き、今回のやり取りを踏まえながら、早急な真相究明ということで、より具体的な向こうの調査結果を求めていきたいと思っております。
(問)コソボ独立宣言を受けて、国家承認が出来るかどうかこれから省内で検討されると思いますが、どのような形で、またどれくらいの期間をかけてご検討されるのでしょうか。
(事務次官)これから政府部内で検討を進めていくことになっていますが、基本的には、これまでのコソボ問題に関する国際的交渉の経緯も踏まえながら、独立という新しい流れの中で国家承認の要件を満たしているかということを含め、そして国際的な各国の対応を見ながら日本としての考え方を決めていくということになります。
基本的には、今までの経緯等々に鑑みると国家承認の方向で検討していくのだろうということですが、今申し上げたようなことを踏まえながら、これからも更にきちんと検討していきたいと思っています。
(問)今週末、沖縄で米兵士による住居侵入等幾つかの不祥事がまた起きましたが、米側に綱紀粛正、再発防止を訴えていた中で、またこのようなことが起きたことについてどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)極めて遺憾なことだと思っており、つい先程、高村外務大臣のご指示で、今、国会に出ておられますので、私の方からシーファー米駐日大使に対して申し入れを行いました。
正に先般の事件が起きて以降、綱紀粛正をやっているということでの申し入れを行ってきた訳ですし、米側も深刻に受け止めていたはずですが、そうした中で、さらにこうした事件が幾つも相次いだことは極めて遺憾なことだと思っておりますし、そうした日本側の気持ち、そしてまた、再発防止策の強化、見直しの一層の加速化について申し入れを行いました。シーファー大使からは、「このような一連の事件が発生したことは誠に遺憾だ。再発防止策の強化及び見直しの加速化を鋭意図っていきたい」と、とりあえずの応答がありましたが、我々は正に、実効性のある再発防止策が本当に求められているのだということで、引き続きこうした日本側の気持ち、状況を伝えて、作業を加速化していく必要があると考えています。
(問)高村外務大臣が先週金曜日に、今週中にも再発防止策の概要を取りまとめるという目標を表明されたのですが、また週末に度重なる不祥事があった訳ですが、その目標については変わりはないということでしょうか。
(事務次官)基本的には変わりはありません。益々その必要性が強いという認識ですし、勿論包括的なもの(措置)の中で、どこまでの措置ということで時間を区切って発表していくかということでの作業があると思いますが、出来るものから早く行っていく必要があると考えています。
(問)高村外務大臣等は、日米地位協定の見直しは現時点では必要ないという見解ですが、今日、沖縄県議会の方々が要望書等を外務省に持って来ましたが、改めてお考えをお聞かせ下さい。
(事務次官)何れにしても、この問題については、再発防止策、きちんとした実効性のある再発防止策が本当に求められているのだろうというのが我々の共通の気持ちですし、それが沖縄の方々、日本国民全ての一致した思いだと思いますので、そういう強い思いを受けて外務省としても真剣に取り組みたいと思います。
(問)ミャンマーにようやく日本の関係者も現地入りするということで今日出発しましたが、具体的にどのようなことが出来るのか教えて頂けるでしょうか。
(事務次官)これはご承知の通り、真相の究明ということで、これまでもミャンマー政府に強く求めてきている訳です。ミャンマー政府からも、大使館を通じて今までの先方の調査結果についての話がありましたが、我々は我々で、日本の警察も色々な状況を踏まえて調査・捜査を行ってきていますので、その結果を以て先方とも話をしたいということです。それで真相究明に繋げていきたいと考えています。
(問)ギョウザ問題が広がりを見せていますが、次官はこの問題が日中関係にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。
(事務次官)この問題は正に、日本と中国が協力して、そして、原因の徹底した究明、また、その上に立った再発防止をすべきだということで考えています。それらは極めて両国関係にとっても大事だと認識しています。 これまでのところ、我が方のこうした態度に対して、中国側も全面的に協力するということを言ってくれている訳ですが、我々としては、今般また、調査団を送ることになりましたけれども、そうしたことを通じて、原因の徹底した究明を行っていきたいと、これは政府一丸となって行っていきたいと考えています。
(問)関連してですが、中国国内には、日本のメディアが騒ぎ過ぎではないかとか、逆に言うと、日本国内でも中国製品への不信感の高まりみたいなものがあると思いますが、そういう国民感情のねじれみたいなところは、なかなか心配な要素だと思うのですが、その辺について、次官はどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)これは各々の国によって、食の安全に対する受け止め方の程度に違いがあるのかもしれませんが、私の理解するところでは、中国側も、中国政府関係者も、食の安全というのは極めて重要であると認識していると思いますし、そういう意味では特段の心配はしていません。お互いに協力して、今申しましたように、原因の徹底した究明をする、そのことが何より大事だと思います。もし、それについて我々から色々説明することが必要であれば、勿論、我々は一生懸命説明していきますが、今のところ中国政府から、徹底した原因の究明の作業について、全面的な協力姿勢というのは示されていますから、心配していません。
(問)この後、唐家セン国務委員を始め胡錦濤国家主席まで、要人が訪日する訳ですが、この話題は議題に上ったりするのでしょうか。
(事務次官)これから正に原因の徹底究明が急がれる訳で、出来るだけむしろ早く、その原因の究明の作業が為されるよう、双方で努力すべき問題だろうと思っております。
(問)日本側の調査団ですが、中国に行って具体的にどういうことを行うのでしょうか。
(事務次官)関係省庁の間で打ち合わせが行われていますが、これは食品工場の視察、関係者との話合いを行うことを主目的にしているという状況です。
(問)原因究明について、この週末にかけて諸説色々出ており、例えば、どの段階でその毒物が入ったのか等、色々なかなか難航している部分がありますが、その点を踏まえると、調査団の現地に行っての調査は、特にどういうところを期待しますか。
(事務次官)これは今申し上げましたように、向こうの食品工場等々の視察、直接現場を見て、直接話を聞くということで、これまで日本側で色々調査をしてきたこととの突き合わせ等々になると思いますが、本件については専門家に委ねたいと思っております。
(問)ガス田協議ですが、改めて共同開発案の協議の進捗状況、次官級協議再開の見通しについてお聞かせ下さい。
(事務次官)この問題については、我々としては、日本の立場を守りながら共同開発を行っていこうという大きな目的に向かって、従来から日中間で話合いが行われてきている訳ですが、問題はその中身、具体策について解決策が見出されるかどうかということだと思います。我々としては、日本の立場を守りながら、良い解決策が見つけられるよう努力していきたいと思っております。
(問)関連してですが、具体的な解決策とは、色々言われているガス田、幾つかありますが、それぞれのガス田についてどうするのかというところまで詰めたいとお考えなのでしょうか。
(事務次官)今、正に交渉の過程にありますから、そういう段階でコメントすることは差し控えたいと思います。
(問)セルビアの大統領選の結果が出て、親西欧派が勝ったということで、これがコソボ独立について与える影響について日本政府としてどう見ているかということと、コソボにはアルバニア系住民が多い訳ですが、アルバニア首相が訪日するということで、日本政府として、コソボ問題についてどういう風に取り組まれるか、大統領選の結果を受けて、お聞かせ下さい。
(事務次官)今、ちょうどEU諸国、具体的にはその中でG8に関係する方々とも少し話をしているところですが、全体として今回、EU側も今回の選挙結果を受けて今後の対応を検討しているという状況だと思いますし、そうした中で大事なことは、問題の平和的な解決ということだと思います。そういう方向に物事が進む、その時に各々の立場の相違というものがありますが、そうした中で大事なことは、平和的な解決、相当今まで話合いのプロセスというのは随分尽くしてきていると思いますので、そういう中で、これからの対応を見守っていきたいと思っております。