(問)総理がダボスで、温室効果ガス削減の基準年について見直しを表明されましたけれども、現在、具体的な見直しの年については、どのような方向で調整されているのでしょうか。
(事務次官)今回は総理から、これからの具体的な計画の基本的な考え方を表明された訳です。これは国別総量目標を含めて、中期的なものです。今後はその具体化の中身を日本の中でも考えていく、また国際的にも色々話し合っていくということで、その中で検討していくということだと思います。基準年は、正に京都議定書の時の1990年というのが一つある訳ですが、我々としては元々「クールアース50」を出した時にも「現状に比して」という表現を使っていますけれども、その辺のところをよく、これからの具体的な中身を詰めると共に検討していくということだと思います。
(問)北朝鮮の核無能力化に関して、5,000キロワットの燃料棒の抽出作業が、今年に入ってペースがかなり落ちているという指摘がありますけれども、その無能力化の作業について何か情報はありますか。
(事務次官)実際に無能力化の作業が行われている訳で、そのペースが落ちているということは我々も聞いていますが、全体として今大事なことは完全な申告が為されるということであって、それついての北朝鮮側への働きかけを今、行っています。その中で、それがきちんと進めば、当然その作業もまたペース・アップされるということだと思います。まず、今のところは我々の中心課題は申告の問題であり、きちんと完全かつ正確な申告が為されること。そこについて、北朝鮮側に関係国が働きかけを行っている状況にあるというのが、私の考え方です。
(問)その働きかけに対して、前向きな反応が得られているのでしょうか。
(事務次官)難しいですね。なかなか今の時点で前向きと言えるような材料は、残念ながら持っていないのですが、だからこそ関係国が色々な格好で働きかけを行っているということだと思います。
(問)その働きかけというのは、主に議長国である中国等が中心になって行っているのですか。
(事務次官)中国も勿論、議長国として色々と働きかけを行っていると思いますし、それに限らず色々な働きかけが行われていると思います。
(問)総理の施政方針演説に対する今日の代表質問の答弁の中で、東シナ海のガス田問題について、早期早急に解決すると明言されたのですが、具体的にこの問題をどのような体制で議論していき、早期解決に結び付けていくのでしょうか。改めての質問になりますが、お聞かせ下さい。
(事務次官)総理、外務大臣の指示の下、これを早期に解決していくということで、体制としては勿論、外務省だけではなく関係省庁、特に経済産業省、資源エネルギー庁等々とご相談しながら、それと今までも色々なレベルで中国側と話をしてきていますが、それを鋭意加速化していこうということで、相手の体制も見ながら、我々として判断していきたいと思っています。
(問)例えば、交渉のペースをどれくらいにしたい等、そういう青写真、日本側の意向はあるのでしょうか。
(事務次官)それはこれからの話ですが、交渉を加速化するということで、我々としても対応をきちんと図っていくということです。
前も申し上げたかもしれませんが、双方共に、かなり真剣に向き合ってきているという中で、更に交渉を加速化したいということに尽きると思います。
(問)給油新法に係わる交換公文について、日米間の交渉は今、どの程度まで進んでいるかお聞かせ下さい。
(事務次官)これは関係各国、特に米国ですが、協議を重ねてきているということです。出来るだけ早く整理が出来ればと思っています。
(問)一部報道で、日本の使途の明記、使途の検証の明記を盛り込みたいという意向について米国側が反発をしたということだったのですが、事実関係は如何ですか。
(事務次官)事実関係と言うか、日米間で率直に色々な意見交換をしており、双方共に問題意識は共通だと思います。
今正に調整中ですから、これ以上中へ立ち入るのは差し控えたいと思いますが、基本的に我々としては、法の目的に沿った活動を行っていく訳ですから、その趣旨に沿った形で整理していくということです。
今、話し中ですから、これ以上述べるのは差し控えさせて頂きたいと思います。
(谷内前次官)3年前ですから、約3年と2週間くらいですが、次官をやって参りまして、本日付で退職することになりました。外務省自体には38年と10ヶ月くらいおり、その間色々なことがあったなと思っています。気持ちとしては、自分なりに仕事をやって、一種満足感をもって去れることを喜んでいます。
皆様方とは色々なこともありましたが、適度の緊張関係の下で良きワーキング・リレーションシップがあったのではないかと思っています。皆様方の建設的な御協力に心から感謝を申し上げます。後任は薮中新次官を迎えまして、彼とは入省以来の親友ですので、また能力的には大変優れた人材であり、私としては安心してバトンタッチが出来るということで、この点も満足感をもって去れると思っています。
なお、本日付で外務省顧問を拝命しましたので、ささやかですけれども、高村外務大臣、薮中次官を御要望があれば支えていきたいと思っております。どうも、大変ありがとうございました。
(薮中新次官)本日、大臣から事務次官の辞令を頂きました薮中です。どうぞ宜しくお願い致します。この事務次官の職、谷内前次官の大きな足跡の後を継いでということで、大変責任を痛感しております。微力ではございますけれども、全力を尽くす所存ですので、どうぞ宜しくお願い致します。
特にこの2008年は、日本外交にとって非常に重要な年であると考えております。勿論、山積する諸課題について正面から取り組み、解決に努力していくのは当然です。それに加えて、この2008年は、一つは皆様ご承知の通りG8サミットがございます。この1月から既に日本はG8の議長国としてG8の運営に携わってきていますけれども、各種の閣僚会議を経て7月に北海道洞爺湖サミットがある訳です。それに先立つ5月には、TICAD IV(アフリカ開発会議)が横浜で開催されます。この二大会議を成功裡に終えることは日本外交にとって極めて重要であり、我々の責任は非常に大きいものであると考えています。勿論、外務大臣のご指導の下、全省を挙げて取り組んで参る所存です。また、総理官邸のご指導を仰ぎながら、多くの関係省庁とも緊密な連絡を取り、協力関係を保ち、また、地方公共団体、更には幅広い民間各層の協力を得て、オール・ジャパンということで取り組んでいきたいと思っております。
いずれにしましても、課題山積する中です。皆様の御協力を得ながら、一生懸命やっていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。
(問)谷内前次官にお伺い致しますが、サミット前の大変な時期、国会の合間の時期に人事が断行される理由は、どういうことなのでしょうか。
(谷内前次官)外務省のアクション・プランでも3年を目途にするということに元々なっておりますし、私自身、定年後1年延長するという事態の中で3年を迎えておりましたので、3年というのはキリの良いところであると元々思っており、後進に道を譲りたいと思っていました。たまたま国会が再延長ということで、何か谷間のような時期に行った様に思われるかもしれませんが、それは元々予定された話ではないので、予定通りこの度実施したということです。
(問)薮中新次官にお伺いします。サミットとTICAD IVがありますが、対北朝鮮外交や、胡錦濤主席も春に来られますけれども、対中国外交をどの様に展開していこうとお考えなのでしょうか。
(薮中新次官)課題が山積すると申し上げましたけれども、正に北朝鮮問題は非常に大きな課題です。これについては勿論、拉致問題、核問題、ミサイル問題を包括的に解決して、そしてまた過去の清算をし、国交正常化を図りたい。これは内閣を挙げての立場ですが、私もその方針に沿って、出来るだけ努力をしていきたいと思っています。
それから、中国との関係ですが、先般の福田総理の訪中におきまして、正に日本と中国が二国間だけではなく、地域で、或いは国際問題について色々と協力していこうと申し合わせた訳です。そういう意味で、国際的にも日中が協力していくということは非常に重要なことであろうと思っていますし、またそこに課題もございます。その課題の解決に向けても、全力を挙げて参りたいと思っております。
(問)関連しますが、北朝鮮との関係が、六者会合も含めてかなり足踏み状態にありますけれども、薮中次官はかつて直接担当されていたという経緯もあるので、北朝鮮に対してはどのような態度で臨んでいくのか教えて下さい。
(薮中新次官)北朝鮮は御承知の通り、一筋縄ではいかないというか、非常に難しい交渉が控えていることは皆様御承知の通りです。従って、従来から対話と圧力ということでやって参りましたけれども、やはり対話をしなければいけない。そういう時には、我々としては勿論、断固とした姿勢も示す必要がありますし、同時に如何に効果的な対話をするかということで言えば、粘り強い交渉が必要だと、その両方で引き続きやっていくしかない。その時に、勿論、日朝の関係もありますし、国際的な枠組みというか、国際的な協調というものも非常に大事だろうと思っています。そういう意味ではこれから益々、日米、そしてまた韓国、中国等々、足並みを揃えて北朝鮮と向き合っていくと。そしてやはり核廃棄がどうしても彼らにとっても必要だということをよく分からせる、分かってもらう必要があると思っていますし、同時に日朝関係、拉致問題の解決についても同様に努力していきたいと思っています。
(問)谷内前次官にお伺いしたいのですが、歴代政権、大臣にお仕えされて、やり残したこと、これが残念だったという点について、今だから振り返られるということはございませんか。
(谷内前次官)やり残したというよりも、3年間一生懸命やったけれども、結果が出なかったなということであれば、これはやはり拉致問題だろうと思います。元々難しい問題は色々ありますから、北方領土の問題も含めて、結果が出ていないという、或いはまた多少は成果があるのだけれども、まだ申し上げる段階に至っていないというものもありますし、総合して言えば拉致問題で結果が出なかったことは非常に残念に思っています。ただ、薮中新次官はこの問題については長らく取り組んで来られた方なので、私以上に色々なことに配慮して、問題の解決に向けて進めて頂けるのではないかと大いに期待しているところです。
(問)今の質問と逆になりますが、これは胸を張れる仕事だったという成果は、振り返ってみて如何でしょうか。
(谷内前次官)かつてのマッカーサー将軍ではありませんが、「老兵は死なず、ただ去りゆくのみ。」ということで、「俺はこれをやったんだ。」ということはあまり申し上げたくないと思っております。それこそ、もし成果が出たということであれば、皆様方に客観的にご判断頂きたいと思います。
(問)新次官にお伺いします。先ほどお話のありましたTICAD IVですが、日本の経済力が相対的に低下する中で、ODAがなかなか増やせない状況にあります。その中で、日本の開発戦略をどの様にお考えになっているのか、それをまた日本の外交力としてどのように構築されていきますか。
(薮中新次官)アフリカの開発の問題は今、全世界的に非常に重要視されていることだと思います。我々が胸を張っていいのは、TICADは15年前、1993年に各国に先駆けてこの問題に取り組んだということです。最近ではEU、或いは中国がアフリカ諸国との対話を始めている。そうした中で、我々は15年前から取り組んでいる。ただ、今お話しのように、最近はODAが昔ほどには大きくない形になっています。当然のことながら、アフリカへの倍増と言ってもなかなか難しい状況が生じているのは御承知の通りです。ただ、今、非常に新しいチャンスが芽生えつつあるのはアフリカが経済成長を始めているということです。日本が今まで非常に重視してきたのは、アフリカのオーナーシップという言葉で言っていますけれども、やはりアフリカ自身に考えてもらうと、日本はそれと共にやるのだという姿勢、これがかなり実を結びつつあるということだと思います。今回、TICAD IVでは、かかる新しい動き、アフリカの経済成長を受けて、更なる活気あるアフリカを目指して具体的にアクション・プランを色々と考えていき、そしてまた国際機関、或いは色々な国々にも呼びかける、日本のやり方は非常に透明性を高くして、またアフリカ自身の努力を促す形で進めていきたいと思っています。
(問)お二方にお伺いします。先程官邸で福田総理にお会いされたと思いますが、谷内前次官にはどういった労いの言葉、それから新次官には改めて具体的な指示があったのでしょうか。
(谷内前次官)官邸でお話されたことは、御挨拶も含めて言わないということで徹底しておりますが、「ご苦労様でした。」と仰って頂いたと受け止めております。
(薮中新次官)同様でございまして、「とにかく、頑張れよ。」ということで、受け止めております。
(問)薮中新次官にお伺いしたいのですが、先程の話とも関連するのですが、ODAもなかなか増やせないような状況の中で、日本の発信力と言いますか、プレゼンスというものを今後考えていくと、どういう外交に転換していくべきだとお考えでしょうか。
(薮中新次官)我々としては、今までかなり規模に頼っていた面は、正直言ってあると思うのです。日本の経済力が非常に右肩上がりの時代から、やはり今でも世界第2位の経済大国であるということを背景とした日本外交というものがあったと思います。けれども、これからは益々、規模ではなく中身で、質で勝負するということだと思います。そういう意味は、大きな概念、コンセプトを打ち出して、日本というものが位置付けられるようなことを行っていく必要があるのではないかと思います。
今、大きな変革が世界にありますけれども、そうした中で、何と言っても開発途上国、先進国を問わず重要なのは気候変動問題です。これは正に、環境に優しい日本、エネルギー効率の良い日本というのは浸透していますから、そこの比較優位を生かして、受け身の外交ではなく、日本が世界をリードするくらいの気概を持ってやっていく必要があるのではないかと思っています。
(問)福田総理は、共鳴外交、シナジー外交という仰り方をされていますが、新次官はこれをどの様に理解されていて、どの様に位置づけていかれるのでしょうか。
(薮中新次官)私自身の理解というか、去年、福田総理の訪米に同行させて頂きましたし、その後、東アジア・サミットがあり、また、総理の中国訪問がありましたけれども、それらを通じて実感しているのですが、強固な日米同盟が基本にあり、また、その中で日本が積極的なアジア外交を展開していく、これが各々に共鳴し合って、日本の為にも、米国の為にも、そしてアジアの為にもなるのだと、アジアの平和と安定に繋がるのだということを実感している訳で、多分、そういうことを念頭においておられるのではないかと思っています。
(問)六者会合の関連で、北朝鮮側が米国に対して申告を一部行ったような言い方をし、それに対しヒル次官補が受けていないと言っています。どうも大分おかしくなって来ているような雰囲気があるのですが、その辺は大丈夫なのでしょうか。
(事務次官)去年の12月にヒル米国務次官補が北朝鮮に行かれて話をした訳です。ご承知のように、北朝鮮は昨年中に完全かつ正確な核計画についての申告を行うことになっていた訳で、米国側から言えば、そういった意味での申告は為されなかったということであり、北朝鮮の方は、その点はやったのだと言っているということだろうと思います。少なくとも米国が完全かつ正確な申告とは言えないものを、説明を受けたのかどうかよく知りませんけれども、いずれにしても受けていないということは、恐らく我々としても同じような受け止め方をせざるを得ないような説明を受けたのではないかと思っています。
(問)今日、ヒル次官補が東京に来て佐々江局長と会談します。昨年末には申告が間に合わなかったのですが、申告を巡る今年の状況、六者会合の見通しを、次官の見方で結構ですのでお願いします。
(事務次官)見通しは立っていないということではないかと思います。そう簡単には、完全かつ正確な申告をしないということが、昨年中の経緯を経て明らかになった訳で、今年になったら急にそれが実現するとは必ずしも思えません。遺憾ではありますが、そういう状況だと思います。
(問)テロ新法が成立した後の自衛隊による海上補給活動について、運用方針を明記した交換公文を新たに結ぶ方針との一部報道がありますが、これについて、そういった厳格な交換公文を結ぶ必要があるとお考えでしょうか。
(事務次官)この点は、今まさにそういった法案が最終的な段階に入っているところなので、その段階で当然成立した、或いは成立することを前提にどういう交換公文を作るのかということを申し上げるのは、国会との関係でも適切ではないと思います。いずれにしても、従来、法案が成立すればそれに基づいて交換公文を作ったことは事実ですし、当然作らなくてはいけないと思い、色々と頭の体操はしておりますが、具体的に米国側と話し合っている訳ではありませんので、いずれにしても内容に立ち入ることは差し控えさせて頂きたいと思います。