(問)東シナ海の局長級協議についてですが、ASEAN首脳会議等が終わってから11月中に早く次回協議を開催すると日本側が提案したということでしたが、あと1週間しかありませんが局長級協議の調整状況は如何でしょうか。
(事務次官)未だ、日程が固まったという話は聞いておりません。
(問)行う方向でしょうか。
(事務次官)我々は行いたいと思っております。都合が付いたのかどうか、未だ調整中だと理解しております。
(問)週末、大臣が共同議長を務める日中ハイレベル経済対話が北京で行われますが、これに対する期待をお聞かせ下さい。
(事務次官)ご承知のように日中両国の関係は、昨年の10月から非常に良い雰囲気の下で進展してきている訳で、特に経済面ではそのような政治面の環境の改善も踏まえて更に進展していく可能性があります。それぞれ関係閣僚の方々もお忙しい中、行かれてお話をされる訳ですから、テーマはそれぞれの大臣が色々持っておられると思いますが、戦略的互恵関係の中身の推進ということになると思います。非常に大雑把なことを申しますと、東シナ海のガス田開発や更にはエネルギー協力、省エネ協力、環境協力等々の大きなことがあるのですが、それを更に大臣がなさるに相応しい各論的な部分を含めて議論されることを期待しております。
(問)先日、豪州の下院選挙が行われ保守党が大敗し、労働党政権になる訳ですが、今後の日豪関係への影響についてお聞かせ下さい。
(事務次官)日本と豪州は基本的には共通の価値観を持っており、且つ利害関係においても大きなところで一致する部分がある訳ですから、政権が変わったといっても国同士のそのような関係は基本的に維持されると思います。また、ラッド労働党首が首相になられるのだと思いますが、京都議定書は批准する方向でいるということですから、これは今までと違ってより日本と近い立場になる訳です。また、イラクについては段階的に縮小すると、少なくともキャンペーンではそのようなお考えだったと思うのですが、現実にどうなるかはまた別な話ではありますが、そういったことで色々と従来と違う面も勿論あるでしょうけれども、基本的に日豪が色々な意味での戦略的な協力を進めていくというところは変わらないのではないかと思っております。
(問)関連ですが、ラッド党首は中国に赴任経験もあり、非常に中国通ということですが、アジアの中の大国である日本と中国との関係について、今後、対日比重よりも対中比重の方が大きくなるとの見通しもありますが、それについては如何ですか。
(事務次官)仰るとおり中国語も非常に流暢で中国に勤務されたご経験もあるので、中国に対する知識やご理解は非常に深いのだと思いますが、だからといって、それが直ちに日本をより軽視して、中国をより重視するということになるとは必ずしも思っておりません。中国に対するより深い理解を持って、更に日本との関係の重要性をご理解頂ければ、それはもっと良いことではないかと思っております。
(問)明日から北朝鮮の核施設に市川とみ子外務省不拡散・科学原子力課長が訪問されますが、どのような成果を期待されていますか。
(事務次官)無能力化を進めるという作業を今まで米国が行っていた訳ですが、今回は日本も参加するということで市川課長と専門の方も行きますから、そういった国際的努力に出来るだけ貢献して無能力化が確実に進められるということを確保したいと思っております。
(問)関連して、来月6日から六者会合の首席代表級協議が行われるという方向で調整しているという話がありますが、その点についてお聞かせ下さい。
(事務次官)それは未だ調整中ということで、日付が6日にセットされたということではないと思っております。6日以降というのは日程調整の一つだと理解しております。
(問)寧辺の核施設の無能力化ですが、この費用負担等の話は日本に来ているのでしょうか。もし来た場合は、どのように対応されるのでしょうか。
(事務次官)日本に負担してくれという話があるとは聞いておりません。
(問)六者会合とは別に行われる日朝の作業部会及び日朝協議なのですが、非公式協議を行っているのかもしれませんが、こちらからみると動きが止まっているように見えるのですが、無能力化が進む中でどのような状態にあるのか、また、どういう風に進むことが望ましいのか改めてお聞かせ下さい。
(事務次官)これは申し上げられる部分と申し上げることが出来ない部分があるのですが、何れにしても六者会合の枠組みの中での作業部会はそれぞれ進捗していかなくてはならないと思っており、どれかが断突に進んで、どれかが非常に遅れるという状況は好ましくないということは北朝鮮も含めて思っていると思います。今ご質問の日朝関係について、我々としてはこれだけが動きとして遅れているとは思っておりません。
(問)ミャンマーで日本人ジャーナリストが殺害された事件について、日本の捜査当局が、至近距離で撃たれたという鑑定結果を発表しましたが、これを受けて外交当局として外交ルート等を通じて更に先方に何か働きかけをする用意はあるのでしょうか。
(事務次官)鑑定結果はこれが最終的ではないと思いますが、今の段階で分かったことを踏まえて我々が聞いたことだけでも、これまで私どもが主張してきたことを裏付ける結果が出ていると思いますので、より強く、きちんとミャンマー政府の方で対応して頂く、カメラを返してもらう等、そのようなことも含めて対応して頂く必要があると思いますので、そのことについてはまた話をする必要があると思っております。
(問)バングラデシュのサイクロン被害ですが、これに対する政府、外務省としての受け止めと支援等の対応についてお聞かせ下さい。
(事務次官)報道等により大変な被害が出ていることは承知しております。我々も台風で被害を受けることは毎年のようにある訳ですから、非常に心の痛むことであると思っております。我々としても、被災者の方々へ出来る限りの支援や励ましをなるべく早くやるべきだと思っており、今既にとりあえずの措置を取ったと思いますが、これからも状況を見ながら出来るだけの支援をしていきたいと思っております。
目次へ戻る(問)先日の日米首脳会談ですが、北朝鮮のテロ支援国家指定解除の話についてはあまり具体的な内容が分かっていない訳ですが、拉致問題が進展していない現状で解除しては困るという日本側の立場については、米側に理解してもらったということでよろしいでしょうか。
(事務次官)その辺りについての我々の基本的な立場ですが、核、ミサイルと並んで、拉致問題の解決は非常に重要であるということですし、日米で緊密な連携をこれからも保ちながら非核化の問題、或いは拉致問題についても取り組んでいこうということは一般的に伝わっています。私も米国に行った時、そのことを強調してきたところであります。
そのような状況の中でブッシュ大統領は、決して拉致問題を忘れることはないということをはっきり言われ、また、日本国内では非核化措置が進展していく過程で、拉致問題が取り残されるのではないかという心配があることも十分承知しており、元々、北朝鮮との関係が日米関係に悪影響及ぼすことがあってはならないのだということを言っておられたのですが、今回、それがまたブッシュ大統領の方から確認されたということであります。
従って我々としては、拉致問題を十分に念頭に置きながら、テロ支援国家指定解除の問題については、これからも日米で十分な協議を続けつつ取り組んで頂きたいと思っています。そのことは十分に伝わっているということです。
(問)関連ですが、ブッシュ大統領は決して忘れることはないと仰いましたが、4月当時の安倍総理との会談では考慮すると仰っていたのですが、この言葉の言い回しや変化についてどのように捉えていますか。
(事務次官)決して忘れないということは、今回初めて使われた言葉ではないと思います。シドニーでもそのようなことを仰ったのではないかと思います。要するに今申し上げたように、非核化の措置、或いは米朝の話し合いが進展する流れの中で拉致問題が取り残されるのではないかとの懸念が日本側にあるということを十分ご承知の上で、我々は忘れることはないという風に言っておられる訳です。それから米朝協議、或いは六者会合全体と日朝協議が並行して進んでいくということは非常に大事であるということも認めて頂いているところです。
(問)日米が終わりまして、明日は日中首脳会談ですが、この会談への一番の期待やメッセージはどのようなものでしょうか。
(事務次官)温家宝総理と初めて時間をかけてお話する機会になると思います。ご承知のように、昨年10月に日中戦略的互恵関係という大きな方向性が確認された訳で、その中身を実質化していくということがその後の課題になっています。色々な話し合いが行われていますが、未だ具体的にこれが一つ大きな例であるというのは打ち出されていないので、そのようなことも含め、早く日中両国民に、このような形で具体的な形の協力関係が出来ていると言えることは非常に大事だろうと思っています。今回はそのような観点からの話し合いがトップレベルで行われるものと理解しております。
(問)先月、瀋陽で日朝非公式協議が行われてから明日で1ヵ月になりますが、これまでの日朝協議の進捗状況、次官がご覧になっての現状等をどのように見ているかお聞かせ下さい。
(事務次官)今のところ進捗状況としてご報告すべきことは特にありません。日朝間の協議、作業部会も頻繁に行うという話でしたので、我々としては、それも含めてそのようにやっていきたいと思っていたのですが、十分応えて頂けていないという印象を持っております。
(問)現状を打開する方策や妙案等はお持ちでしょうか。
(事務次官)特別な妙案はありません。従来どおり、「対話と圧力」という考え方で臨んでいくより仕方がないと思っております。
(問)ヒル米国務次官補が、年内の六者の外相会談は無理だという話をしたのですが、それについての受け止めをお聞かせ下さい。
(事務次官)我々もそういう感じは持っております。元々これは米国等で一生懸命進めていた話なので、我々もそのようなものが実現し、且つ、何らかの成果が期待出来るのであれば良いと思っておりましたが、出来ないのであればそれはやむを得ないと思います。
(問)外相会談の開催は難しいということですが、なぜ難しいと思っているのか等、その背景についてお聞かせ下さい。
(事務次官)閣僚会合を行って、何をやり、どういう成果を期待するのかというところは、未だ十分に各国の考え方が固まってきていないのではないかということです。
元々米国側は、今年の早い段階からそのようなものを目指しておりますが、今申し上げた意味での実際の成果は未だ見通せていないということだと思います。
(問)非核化に向けた実質的な作業は始まっている部分もありますが、それでも未だ、成果というものが見えていないということでしょうか。
(事務次官)閣僚会議を行って、例えば何をするのかというところが見えてきていないのではないでしょうか。
(問)14日(水曜日)に、次官級の日中のガス田協議が東京で開催されますが、見通しや意気込み等をお聞かせ下さい。
(事務次官)度々私も申し上げておりますが、ご存知のように、日中間では今年の秋までに話し合いを出来る限り進め、その結果を両首脳に報告するとなっております。その秋もそろそろ終わりか終わったのではないかという時期になっておりますので、そういう意味ではタイミング的に厳しい状況なのですが、出来るだけ議論を加速化していきたいという状況だと思っております。
その協議の結果を、総理の訪中の時に何らかの形で上げたいと思っていますが、協議が実質的、顕著に進んでいるかというと、そこはそうでもありません。もう少し議論を加速化し、もっと大きな決断をしてもらう必要があると思っております。
(問)議論を加速させるということは、議論する頻度を増やすということでしょうか。
(事務次官)そのようなことも必要であれば、我々は徹夜を厭わずやるつもりはある訳です。
(問)総理の訪中時期についてですが、一部では、年内にという報道もありましたが、どのような状況でしょうか。
(事務次官)これも日中間では元々、年内に総理に訪中して頂くということで話し合いが出来ておりましたから、そういう意味では我々としては、可能であれば年内にと思っております。それは、国会の状況等々色々な事情がありますので、今は未だ、そういうラインで実現の方向になるということを申し上げる段階には至っていないと思います。
(問)先程、総理の訪米日程が発表されましたが、初めての訪米になりますが、今回の訪米で改めて一番重要視していること、つまり、米側にこれだけは伝えなくてはいけないということですが、どのような優先順位で考えていますか。
(事務次官)福田総理の最初の外国訪問の国として米国を選んでおられる訳ですから、そのこと自体が意味するように、日米関係が極めて重要である、日本外交の基礎である、要石であるということを再確認するということが先ず第一に重要です。
それから福田総理は元々、「アジア外交と日米同盟の共鳴」ということを言っておられ、我々事務的には、その共鳴は英語で言えばsynergyという言葉を考えておりますが、これは相乗効果を期待出来る、或いは日米同盟が堅実、強固なものであれば、それは日本のアジア外交にも良い影響を与えるし、またアジア外交が力強く進めれば、それは日米同盟にとっても良いことであると、何れにしても両方が相乗効果を起こして、日本外交の質と力強さを高めていくのではないかという考えがあります。そういった共鳴関係を議論し米国側と考え方の歩調を揃えると、こういう意味もあるように思っております。
(問)今日、新テロ特措法案が衆議院の委員会で可決されましたが、首相の訪米を控えて、訪米の際に、日本が継続して給油活動を行うというアピールは一つの大きなステップになるとお考えでしょうか。
(事務次官)米国も当然そうですが、国際社会に対して、政府が石油の補給活動を続けるということで努力をしているということを示すことが、今残念ながら中断されていますが、そのことに対する懸念に応える道であると思っています。一生懸命努力した結果、本日、衆議院の委員会で承認を得たということは、その努力が一つの節目を超えたという意味があり、そういう意味では、米国を含む国際社会に対する良いメッセージになっていると思います。
(問)週末ヒル米国務次官補が、よど号犯の送還問題について米朝で協議が進んでいることを明らかにし、解決まで近いとの認識を示しましたが、日本政府として何か情報、或いは感触のようなものは掴んでいるのでしょうか。
(事務次官)最近特別な、何か新しい情報がある等ということは聞いておりません。何れにしても、本件は、佐々江アジア大洋州局長とヒル次官補の間では話し合われたのではないかと思っておりますが、具体的にどのような話があったかは聞いておりません。
(問)よど号犯は、拉致に関わって逮捕状を請求させるものとしている訳ですが、彼らの帰国が、拉致問題の進展にあたるかどうかについての認識をお聞かせ下さい。
(事務次官)それは、あたらないと思います。
(問)どのような理由からでしょうか。逮捕状が出ていますが。
(事務次官)我々が、拉致問題で進展と考えているのは、あくまでも生存者及び家族の方々が帰って来るということに関して、その解決に向けてどのようなことが行われるかということですから、そのような意味では、よど号関係者が帰って来ることが解決に直接繋がるプロセスだとは思っておりません。